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事業承継に関する法律や税務の注意点とは?遺留分や事業承継税制について徹底解説!

事業承継に関する法律や税務の注意点とは?遺留分や事業承継税制について徹底解説!

中小企業の経営者の方にとって、「事業承継」はいつかは考えなければならない問題です。
後継者を誰にするか、あるいは退任後に自分がどのように会社と関わっていくかなど、考えることは尽きないでしょう。

事業承継を行う際、特に法律と税金の問題については、注意しておかなければ思わぬ落とし穴にはまってしまいかねません。

この記事では、弁護士である筆者が、法律・税務の観点から事業承継の際に注意しておかなければならないことについて解説します。
必要に応じて専門家のサポートを得ながら、ぜひ思い描く形での事業承継を実現してください。

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中小企業の事業承継は株式の譲渡が基本

 

法律上、事業承継を行う方法には、株式譲渡、事業譲渡、合併……などさまざまなものがあります。
中小企業で事業承継が行われる際には、現経営者から後継者に対して株式の譲渡を行うことが基本となります。

株式の譲渡であれば、株式譲渡契約書を締結して、契約内容に従って株式を譲渡すればOKです。
法律上は比較的簡単な手続きで、事業承継を行うことができます。

ただし、株式譲渡によって事業の承継自体はできたとしても、それ以外に検討・対処しておくべき問題は山ほどあります。
その中の一部として、

①相続時の遺留分の問題
②贈与税・相続税の問題

があります。

 

株式の生前贈与は遺留分に注意

 

遺留分とは、相続人(兄弟姉妹以外)が、相続の際に承継できることが保障された財産の金額です。
直系尊属のみが相続人である場合には法定相続分の3分の1、それ以外の場合には法定相続分の2分の1が、各相続人の遺留分として認められています(民法1042条1項)。

 

株式の生前贈与を受けた後継者は、他の相続人の遺留分を侵害する可能性が高い

遺留分の金額は、被相続人が死亡時(=相続開始時)に有していた財産の金額から算定されるのが原則です。

しかし、被相続人から生前贈与が行われた財産については、相続人に対する場合は10年間、それ以外の者に対する場合は1年間、相続開始時点から遡って遺留分計算の際に考慮されてしまいます(民法1044条1項、3項)。

たとえば先代経営者から、その子どもが後継者として、会社株式の生前贈与を受け、その5年後に先代経営者が死亡したとします。

このとき、後継者は先代経営者の相続人ですので、先代経営者の死亡から10年前までの生前贈与は、遺留分の計算に当たって考慮されます。
会社経営が順調にいっていれば、会社株式の価値はかなり高額になっていることが予想されます。
もし後継者以外にも相続人がいる場合、遺留分計算の上では、後継者は
「他の相続人を差し置いて、非常に高額な財産を被相続人から承継した人」
つまり遺留分侵害者となってしまいます。

そうなってしまうと大変です。
後継者は他の相続人から請求を受けた場合、侵害した遺留分に相当する金銭を支払わなければなりません。
会社株式が高額である場合、金銭を工面することは事実上困難でしょう。

 

後継者が会社を成長させても、他の相続人に利益を横取りされてしまうかも

また、遺留分算定の際に考慮される会社株式の価格は、被相続人の死亡時(=相続開始時)における時価が基準とされています。

しかし、実際に後継者が事業を承継したのはもっと前のことです。
事業承継以来、後継者は身を粉にして会社を成長させてきました。
その間、会社の株式の価値は上昇を続けています。

それなのに、
「会社が成長した後の相続開始時点の株価を基準として」
算定された遺留分を根拠に、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けてしまったらどうなるでしょうか?
他の相続人に会社の利益を横取りされてしまうことになってしまいますね。

 

中小企業経営承継円滑化法を活用しよう

こうした事態を避けるためには、
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(中小企業経営承継円滑化法)
の特例を活用することが有効となります。

中小企業経営承継円滑化法は、民法の遺留分ルールが事業承継を阻害しないように、相続人全員の同意を条件として遺留分ルールの適用を排除することを認めています。

相続人間の合意内容としては、以下の3つが認められています。

合意の種類 合意の内容 期待される機能
除外合意 後継者に生前贈与された株式を遺留分算定の際に考慮しないという合意 後継者の遺留分負担を軽減する
固定合意 後継者に生前贈与された株式の価値を、合意時点の価格に固定して遺留分算定の際に考慮するという合意 後継者の努力で得られた会社の成長分の利益が、他の相続人に横取りされることを防ぐ
付随合意 後継者以外の相続人が生前贈与を受けた財産を遺留分算定の際に考慮しないという合意 上記2種類の合意について交渉する際の、他の相続人に対する交渉材料

上記の合意を適切に利用すれば、遺留分問題のせいで後継者の事業承継に対するインセンティブが歪められることなく、スムーズに事業承継を行うことが可能となります。

 

株式を後継者に無償で譲渡する場合、贈与税・相続税に注意

 

先代経営者が後継者に対して株式を無償で生前贈与する場合、贈与税の課税が問題となります。
また、先代経営者が事業承継未了のまま死亡してしまった場合、今度は相続税が課税されます。

会社株式の価値が高い場合には、こうした贈与税や相続税の負担はかなりの金額に及んでしまう場合があります。
しかし、後継者としては株式を処分するわけにはいかないため、納税資金の捻出に苦慮することになるでしょう。

 

事業承継税制を活用した贈与税・相続税の納税猶予

後継者の納税負担の重さによって事業承継が阻害されることを防ぐために設けられたのが「事業承継税制」です。

現行法上、事業承継税制の特例措置を利用すれば、株式の生前贈与・相続などについては、贈与税・相続税の納税が全額猶予されることになっています。
さらに、最終的に後継者が死亡するか、次の後継者に事業を承継した場合には、猶予されていた税金がすべて免除となります。

なお、現行法下で事業承継税制の特例措置を受けるためには以下の2つの要件を満たす必要があり、期間限定の制度となっています。

①2018年4月1日から2023年3月31日までの間に、都道府県庁に対して「特例承継計画」を提出し、確認を受けたこと
②2018年1月1日から2027年12月31日までの間に、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式などを取得すること

税制上の優遇措置については、措置の必要性が社会的に継続している場合には期間延長されることも多いところです。
中小企業の事業承継の必要性・重要性は今後も中長期的に継続する可能性が高いため、事業承継税制の適用期間が延長される可能性も相応にあると考えられます。

しかし、この点は今後の法改正の動向次第となりますので、早めに事業承継の対策をしておくに越したことはないでしょう。

 

まとめ:事業承継は早めの検討を

事業承継には、後継者の選定などの経営の実質面にかかわる事項のみならず、法律や税務の観点からも対処すべき課題が存在します。
そのため、確実な事業承継を行うためには、それなりの準備期間が必要になるでしょう。

今すぐに後継者に事業を譲るつもりはないという経営者の方も、一度事業承継についてのイメージを持つためにシミュレーションを行ってみるのも良いかもしれません。

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