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ブラック企業なのに?なぜすぐに辞められないのかをモチベーション理論から解説

ブラック企業なのに?なぜすぐに辞められないのかをモチベーション理論から解説

日本企業固有のブラック企業問題。当事者以外の人たちがいつも抱く疑問があります。

「ブラック企業なぜ辞めないの?」

政府が押し進めている働き方改革の一つの原因となったブラック企業問題。笑い話のようですが、欧米などの先進諸国では、ブラック企業問題はまず発生しません。社員がブラック企業と考えるとすぐ辞めてしまうからです。


時代背景は変わっていますが、筆者も今の考え方ではブラック企業とみなされるような働き方を経験しました。会社(上場企業)が成長・拡大期にあったため、実質100時間以上の残業が数年間続きました。もちろん辞めようかと思ったことは幾度もありましたが、最終的には納得の上では働きつづけました。

この記事では、「ブラック企業なぜ辞めないの?」という疑問についてモチベーション理論から考えてみたいと思います。

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ブラック企業とは?

ブラック企業については明確な定義はありません。受け止める人によって色々な要素があります。サービス残業など過酷な労働時間や環境、セクハラ・パワハラ、社員の心身の健康への無関心などが挙げられます。

(1)厚生労働省による過重労働重点監督
厚生労働省では、長時間労働の是正に向けた取組を進めるため、毎年、「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果について公開しています。
この調査では、主に労働時間や賃金不払残業などについて重点的に確認・調査しています。確認した結果、法令違反があると認められる場合は、是正指導されます。

・時間外・休日労働に関する協定届の範囲内であるかについての確認
・賃金不払残業がないかについての確認
・不適切な労働時間管理についての確認
・長時間労働者に対する医師による面接指導等、健康確保措置の確認

[1]出所)厚生労働省
平成30年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04526.html

(2)ハラスメントと暴力に関する実態調査
パワハラ・セクハラなどハラスメントが多いこともブラック企業の特徴です。ハラスメントは、加害者・被害者そして周囲の人も意識しないまま深刻な問題となってしまうこともあります。悪質なブラック企業の場合は、意図的にハラスメントを横行させ、被害者が自分を追いつめて行く事例もあります。
2017年の連合(日本労働組合総連合会)による「ハラスメントと暴力に関する実態調査」では、ハラスメントを受けた・見聞きしたことがある人は5割を超えています。[2] 職場でのハラスメントは「上司や先輩」から受けているケースが最も多くなっています。
被害を受けた人の4割強が「誰にも相談しなかった」状況にあり深刻な問題となっています。

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ブラック企業をなかなか辞められない理由

同じく連合の2014年「ブラック企業の調査」によれば、「勤務先はブラック企業だと思う!」は4人に1人、20代では3人に1人となっています。[3] 同調査によれば、勤務先がブラック企業だと思う人は私生活の満足度が低い傾向にあり、仕事が原因の「心の不調」を感じる人も8割いるとされます。
こういう状況にあるにもかかわらずなかなか転職に踏み切れない人が多くなっていることも現実です。
色々な「辞められない理由」はありますが、個人の思いや環境などの内的な理由と、自分ではどうすることもできない外的な理由に大別できそうです。

【内的理由】

  1. 再チャレンジをする自信がない

退職したとしてもスキルや年齢面の不安があり、転職する自信がない

  1. 再チャレンジに希望が持てない

再就職先が見つからない不安や、環境を変えても問題が解決しないという不安がある

  1. 再チャレンジを考える時間や余裕がない

長時間労働のため、心身が疲労し、転職先を探す時間も心の余裕もない

  1. 退職後の生活設計ができない

給料が安く貯金が充分でない場合には、退職後の生活に不安がある

  1. 他の社員に迷惑がかかる

自分が辞めると他の社員の負担が増え、辞めることへの罪悪感を感じる

  1. 退職はプライドが許さない

退職は辛いことから逃げるみたいで自分自身が許せない

  1. 大変だけど今の仕事に充実感がある

心身共に疲れるけど仕事自体は大好きであり充実感がある

【外的理由】

  1. 会社が辞めさせてくれない

執拗な引き留めや脅迫、最悪な場合は退職手当未払いなど不当な扱いを受ける

  1. 家族やパートナーが辞めさせてくれない

自分の中では辞める決心はできているけど家族など周囲が許してくれない

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モチベーションとは?モチベーション理論とは

モチベーションは日本語で「動機づけ」と訳されます。人が行動する場合に、夢や目標に向かって行動する力を言います。わかりやすく言えば「行動する理由」です。
モチベーションには2つの要因があり、自分自身の感情によって行動する「動因(ドライブ)」と、報酬など外からの影響で行動が始まる「誘因(インセンティブ)」です。
モチベーション理論は、個人の立場ではなく、組織の視点で社員の心理的側面からアプローチして、モチベーションをコントロールする方法論をいいます。


モチベーション理論には、色々なアプローチがありますが、代表的な例としては次の理論があります。

  • マズローの欲求5段階説
  • ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
  • マクレランドの欲求理論

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マズローの欲求5段階説とブラック企業を辞めない理由

「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」という考え方がマズローの
基本です。自己実現理論とも呼ばれ、人間は一つの欲求が満たされると、次の段階の欲求を目指すと考えています。そのため、マズローは、一番下の一段階から上に進むにつれて高次な欲求になると考えています。
5つの各段階の定義と2で述べた「ブラック企業を辞めない理由(内的要因)」をマッピングすると次のようになります。

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ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」は、人間には2種類の欲求があり、苦痛を避けようとする動物的な欲求と、心理的に成長しようとする人間的欲求があるとしています。
動物的な欲求は「衛生要因」と呼ばれ、不足すると不満足を引き起こしますが、満たしても満足感につながるわけではないとされます。
人間的な欲求は「動機付け要因」と呼ばれ、満たされると満足感を覚えますが、不足しても不満足につながるわけでないとされます。
言い換えると「不満足―不満足でない」を引き起こす要因が衛生要因、「満足-満足でない」を引き起こす要因が動機づけ要因となります。

2つの要因と2で述べた「ブラック企業を辞めない理由(内的要因)」をマッピングすると次のようになります。

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マクレランドは、人の動機は、「達成」「権力」「親和」「回避」の4つに区分できると提唱しました。4つの動機のどれがより強いかは人それぞれ異なりますが、行動の背景にはいずれかの動機があるとしています。
4つの欲求と2で述べた「ブラック企業を辞めない理由(内的要因)」をマッピングすると次のようになります。

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まとめ モチベーション理論を理解して、ブラック企業はすぐ辞めるべき

なぜ辞めたいと思っているのに、行動に移せないのでしょうか?
3つのモチベーション理論から見えてくるのは、基本的には、「安全の為に現状を維持したい」との考え方が根強いことにあります。
人には、ホメオスタシス(恒常性の維持)という、身心が変化することを嫌う本能が備わっています。この本能によって「辞めたいけど辞めない」選択肢を選ぶのです。
しかし、この本能は欧米なども同じ筈です。なぜ日本だけブラック企業が存在するのでしょうか?筆者は二つの理由があると感じます。

一つ目は、転職という行動が安全ではないという労働市場環境です。現在は状況が変わりつつありますが、「終身雇用」を前提とした労使の考え方、人事の仕組みが日本には染みついています。「転職は不利になる」この環境が変わらない限りブラック企業はなくなりません。

二つ目は、マズローの唱える社会的欲求(友人や家庭、会社から受け入れられたいと願う欲求)が、日本人の場合特に強いことにあります。「個人」より「社会」を優先する考え方もブラック企業が存在し続ける理由です。

この考察を経営者として活かすのか。
あるいは労働力を提供する側として活かすのか。
それぞれの立場でぜひ、一度お考え下さい。

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[1]出所)厚生労働省
平成30年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04526.html
[2] 出所)連合 「ハラスメントと暴力に関する実態調査」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20171116.pdf?v1120
[3]出所)連合 「ブラック企業に関する調査」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20141128.pdf

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