インテグリティは「誠実さ」を意味する言葉で、現代のビジネスシーンで強く求められている要素の一つです。
インテグリティの有無が、企業生命を左右すると言ってもいいかもしれません。
本記事ではインテグリティの意味や企業事例を紹介していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
インテグリティとは?【誠実さ】
インテグリティ(integrity)は「誠実さ」「真摯さ」「高潔さ」などの概念を表す単語です。
近年、社会ではコンプライアンスの強化や社会的責任が注目されているため、それに伴う形で、インテグリティが企業活動で重視されるようになっています。
一方で、企業経営におけるインテグリティは、実に様々な意味を内包しています。
ここでは経済・経営にまつわる著名人が考えるインテグリティについて解説していきます。
ドラッカーが考えるインテグリティ
マネジメントの始祖であるドラッカーは、自身の著書『マネジメント』で、以下のように述べています。
真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる
以上のことから、ドラッカーは「真摯さ」という意味でインテグリティを重視していることがわかります。
詳しくは以下の記事を読んでみてください。
関連記事:「真摯さ」とは?組織に与える影響力とドラッカーが伝えたかった真のインテグリティの意味を徹底解説
ウォーレン・バフェットが考えるインテグリティ
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは「人を雇うときは高潔さ、知性、活力を求めるべきだ」と述べ、そのあとに「高潔さに欠ける人を雇うと、ほかの2つの資質が組織に大損害をもたらす」とも述べています。
つまり、ウォーレン・バフェットは、人を雇う時は「高潔さ」を最重要項目にすべきだと言っているのです。
たしかに、どれだけ知性と活力があっても、高潔さがなければ、それらの力が誤った方向に向けられる可能性があります。
そう考えると「高潔さに欠ける人を雇うと、ほかの2つの資質が組織に大損害をもたらす」のかもしれません。
カルロス・ゴーンが考えるインテグリティ
日産の元・CEOであるカルロス・ゴーンは、「サステナビリティレポート2016」で、以下のように述べています。
私たちはイノベーションをもたらすことに焦点を当て、誠意と透明性をもって行動することにより、長期的な成長の実現を目指しています
以上のように、カルロス・ゴーンは「誠意」という意味でインテグリティを用いています。
詳しくは以下の記事を読んでみてください。
関連記事:カルロス・ゴーンも使った“integrity” ドラッカーの翻訳者はなぜ「真摯さ」と訳したのか
インテグリティが求められる3つの理由
インテグリティが求められる理由として以下の3つが挙げられます。
- コンプライアンスを強化するため
- 健全な経営のため
- 社会的責任を果たすため
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:コンプライアンスを強化するため
インテグリティが求められる理由として、まず挙げられるのがコンプライアンスの強化です。
近年のテレビ番組は「コンプライアンス強化」を意識し、過激な演出が抑えられるようになっています。
それと同じく、ビジネスシーンでもコンプライアンスが強化されているようです。
その理由はいくつか挙げられますが、最もイメージしやすいのは「SNS」でしょう。
SNSの普及によって、不祥事があっという間に拡散される時代になっています。
そうして低迷した社会的信用は、そのまま業績に悪影響を及ぼすでしょう。
そのため、常日頃からインテグリティを意識して、不祥事を防ぐ必要が出てきているのです。
コンプライアンスを強化したいのであれば、組織全体でインテグリティを重視する必要があるでしょう。
理由②:健全な経営のため
インテグリティが求められる理由として、健全な経営が挙げられます。
近年、政府主導で働き方改革が進められており、その中で、多くの雇用問題が注目を浴びるようになりました。
正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差や、外国人労働者の低賃金が挙げられます。
また、過度の成果主義のために、倫理観に欠ける経営が実施されてきた歴史もあります。
そのカウンターとして、現在は「健全かつオープンな経営」が求められているのです。
そして、健全な経営のためにはインテグリティが必要不可欠だと言えます。
理由③:社会的責任を果たすため
インテグリティが求められる理由として、社会的責任が挙げられます。
近年、企業は法令を遵守することに加え、社会的責任を果たすことが実質的に義務付けられています。
例えば「温室効果ガスを大量にばら撒いてきた自動車メーカーは、温室効果ガス削減に貢献しなければならない」というようなものが挙げられます。
これらの社会的責任は、利益に直結することはありませんが、ステークホルダーとの関係性などを鑑みると、非常に重要な要素と言えるでしょう。
組織全体の真摯さ(インテグリティ)が、社会的責任を強くします。
企業が社会的責任を果たせるように、従業員にインテグリティを意識させる時代になっているのです。
インテグリティのある人になるための6要素
アメリカの精神科医であるヘンリー・クラウドは、自著『リーダーの人間力 人徳を備えるための6つの資質』で、インテグリティのある人になるためには、以下の6つの要素が必要だとしています。
- 信頼を確立する
- 現実と向き合う
- 成果を上げる
- 逆境を受け止め問題を解決する
- 成長・発展する
- 自己を超え、人生の意味を見つける
それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
要素①:信頼を確立する
インテグリティに限らず、ビジネスシーン全体において、信頼は非常に重要な要素です。
常日頃から誠実な態度で仕事に向き合っている人は、同僚・部下・上司からの印象が良いのはもちろんのこと、顧客からも信頼されるようになります。
社内での信頼を確立すればマネジメントやコミュニケーションに役立ち、顧客からの信頼を確立できれば、取引も有利に進めることができるでしょう。
インテグリティでまず大切なのは「信頼」です。
要素②:現実と向き合う
インテグリティのある人は、現実逃避することがありません。
仮に仕事で失敗してしまったとしても、責任を誰かに押し付けることはせず、失敗に対して真摯に向き合うことができます。
逆に言うと、仕事の失敗に対して逃避したり、誰かに責任を押し付けてしまったりする人は、インテグリティに欠ける人ということになります。
以上のことから、現実と向き合うということは「自分で責任を持つ」ということなのかもしれません。
目の前の仕事に限らず、恋愛でも家族でもキャリアプランでも、社会や他人のせいにはせず「全て自分で責任を持つ」という意思が必要なのでしょう。
要素③:成果を上げる
ビジネスシーンでインテグリティのある人になるためには、やはり成果を上げることが欠かせません。
どれだけ素晴らしい人格を持っていても、仕事でパフォーマンスを発揮できないようであれば、ビジネスの場で信頼を勝ち取ることはできません。
そして「成果を上げる」と言っても「自分1人だけよければそれでいい」という考えではなく「組織全体の成果に繋がるかどうか」を最優先に考える必要があると言えます。
自らのパフォーマンスはもちろんのこと、チーム全体のパフォーマンスも見る必要があります。
要素④:逆境を受け止め問題を解決する
インテグリティのある人は、逆境を受け止め問題を解決することができます。
調子がいい時というのは誰でも素晴らしいパフォーマンスを発揮できるものです。
だからこそ、調子が悪い時にこそ、どのように立ち振る舞えるかが重要なのです。
調子が悪い時に重要になってくるのがインテグリティです。
どんなに辛い時でも、一歩ずつ前に歩いていける真摯さがあれば、いつか必ず突破口を見つけられるはずです。
逆境に強い人はインテグリティがあると言えます。
要素⑤:成長・発展する
インテグリティのある人は、これまで紹介してきた4つの要素を満たしていく中で、人として成長していきます。
つまり「インテグリティのある人=成長し続けられる人」なのです。
たしかに、真摯に仕事に取り組んでいれば、それが成長に繋がらないわけがありません。
インテグリティのある人は、半自動的に成長し続けられるのです。
要素⑥:自己を超え、人生の意味を見つける
インテグリティのある人は、飽くなき成長心を保有しているため、常に成長して、自己を超え続けます。
インテグリティのある人は、ある意味、ストイックなのかもしれません。可能な限り高いパフォーマンスを発揮できるように、常に自己研鑽に励みます。
これが「真摯さ」や「誠実さ」に繋がっていくのです。
組織全体のインテグリティを強化する方法3選
組織全体のインテグリティを強化する方法として、以下の3つが挙げられます。
- 説明会を実施する
- 監査機能を強化する
- 苦情対応を強化する
それぞれ詳しく解説していきます。
方法①:説明会を実施する
まずは、インテグリティの重要性を説明会で共有するのがいいでしょう。
そもそも「インテグリティ」という単語を知らない従業員の方が多いはずです。
まずはインテグリティがどのようなもので、それがどれだけ重要なのかを、ゼロから説明する必要があります。
方法②:監査機能を強化する
説明会形式で一方的にインテグリティを強化しようと思っても、従業員の自発性がなければ意味がありません。
従業員が自発的にインテグリティを強化するには、それなりのシステムが必要です。
そこで、監査機能の強化に努めます。
監査機能の強化とは、簡単に言えばコンプライアンスの強化です。
法令に違反するような働き方をしていないか、不正な金銭の取引がないかを、徹底的に監査できる仕組みを作ります。
少々強引ですが、監査機能を強化することで、従業員が自発的にインテグリティを強化するようになるでしょう。
方法③:苦情対応を強化する
監査機能と同じタイミングで、社内の苦情対応を強化するのもいいでしょう。
社内の苦情対応を強化することで、内部告発が容易になり、社内の動向が透明化されます。
また、社内に限らず、ステークホルダー全体での苦情対応を強化することで「あらゆる視点から見られている」ということを従業員に意識づけることができます。
社内のインテグリティを強化するのであれば、苦情対応を充実させるのがいいかもしれません。
インテグリティの企業事例3選
ここではインテグリティの企業事例について紹介していきます。
事例①:伊藤忠商事
伊藤忠商事は、インテグレックス社による「誠実な企業賞2015」を受賞しています。
受賞理由としては「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神を土台に、一人ひとりの従業員が社会貢献を目指している点が挙げられています。
また、伊藤忠商事はアニュアルレポート(統合レポート)で積極的に自社に関して情報開示しており、これがインテグリティに繋がっていると考えられているようです。
事例②:ブリヂストン
ブリヂストンは「誠実な企業賞2013」を受賞している企業です。
まずブリヂストンは「最高の品質で社会に貢献」をミッションとしており、その心構えとして「誠実協調(Integrity and Teamwork)」を挙げています。
実際、ブリヂストンはコンプライアンスを相当に強化しており、2020年にはグローバル贈収賄防止ポリシーを発表しています。
そして2021年には、当ポリシーの普及のためのeラーニングを開始したそうです。
インテグリティを社内に普及させるには、やはり最初はコツコツと、研修を積み重ねる必要があるのでしょう。
事例③:野村総合研究所
野村総合研究所は「誠実な企業賞2014」を受賞している企業です。
現在、野村総合研究所は「NRIグループビジネスパートナー行動規範」を公開しており、そこに「労働・安全衛生・環境・企業倫理・マネジメントシステム」の5つの項目における行動規範が記載されています。
これはビジネスパートナーに向けて発信されている情報です。
つまり、野村総合研究所は、一緒に仕事をするクライアントも含めて、インテグリティの強化に努めているのです。
持続可能な社会を作り上げるには、1つの企業だけでなく、複数の企業が協同することが必要不可欠です。
その真摯さの現れが「NRIグループビジネスパートナー行動規範」に詰まっていると言えます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- インテグリティは「誠実さ」「真摯さ」「高潔さ」を表す言葉
- コンプライアンスの強化や社会的責任が求められる現代社会でインテグリティが重要な要素になっている
- インテグリティを社内に普及させたいのであれば、まずは研修からスタートする
インテグリティは、ビジネスに限らず、あらゆるシチュエーションで求められている要素です。
インテグリティとは、言い換えれば「飽くなき成長心と利他的な精神」です。
この2つさえあれば、インテグリティを十分に養うことができるでしょう。