企業が事業を進めるためには、チームが同じ目的達成に向かって行動する必要があります。チームが同じ目的達成に向かうために求められるのが、リーダーシップです。
リーダーシップは、管理者に求められる能力だと考えられがちです。しかし、実際は若手社員にも必要なものです。
若手社員であっても、リーダーシップを発揮することで、チームにとってさまざまなメリットが生まれます。そのため、若手社員の段階からリーダーシップの開発に注力するのがおすすめです。
本記事では、リーダーシップの定義や企業が若手社員のリーダーシップ開発に力を入れるメリット、若手社員でも発揮できるリーダーシップ、リーダーシップを高める方法などを解説します。
目次
企業では若手社員のリーダーシップ開発に力を入れている
近年組織の成長を見据えて、若手社員のリーダーシップ開発に力を入れている企業は多いです。若手社員に求められるリーダーシップは、役割や肩書にかかわらず自ら考えて動くことができる能力を指します。
若手社員のリーダーシップ開発を行う際は、リーダーシップの定義について事前に理解しておくことが大切です。
変わりゆくリーダーシップの定義
リーダーシップは管理職やリーダー職だけでなく、誰でも養えていつでも強化できる能力です。これまでは、リーダーシップは役職や権限、カリスマ性などを持つ、限定的な人しか発揮できない能力だと考えられていました。
しかし近年、リーダーシップは、訓練や研修、経験を積み重ねることで誰でも発揮できる能力だと考えられています。例えば、自分だけでなくチーム全員のために行動するといった、職場にプラスに作用するような行動も、リーダーシップを発揮したといえるでしょう。
若手社員のリーダーシップを開発するメリット
リーダーシップは誰でも発揮できる能力です。そのため、若手社員であってもリーダーシップ開発を経て、能力を発揮することができます。
企業が若手社員のリーダーシップを開発することで、次のようなメリットが期待できます。
- 早い段階からリーダーシップの基礎を作れる
- 生産性の向上
- 離職の防止
早い段階からリーダーシップの基礎を作れる
若手社員の時期からリーダーシップ開発に取り組むことで、早い段階からリーダーシップの基礎を構築できます。
リーダーシップの育成にはある程度の時間を要するため、組織を統括するような役職者になってからリーダーシップ開発に取り組んでいては遅くなってしまいます。
また若手であれば、リーダーシップに欠かせない内面的自己認識と外面的自己認識という2つの視点を高めるための時間も十分に設けられます。
内面的自己認識とは、自分がどのような人間なのかを認識する視点です。例えば、自分が業務を進める上で大切にしている価値観などを自らが認識することを意味します。
対して、外面的自己認識とは周囲から自分がどう見られているかを認識することです。具体的には、職場の同僚や先輩、上司から自分はどう見られているかを把握できる力といえます。
内面的自己認識、外面的自己認識それぞれを備えている人は、客観的な視点をもったり状況の分析をしたりするのが用意になるためリーダーシップを発揮しやすいでしょう。
ただしこの2つの視点の把握は、すぐに習得できる訳ではありません。そのため、若手社員の早い段階からリーダーシップの基礎作りに励むことが大切です。
生産性の向上
若手社員の時期からリーダーシップ開発に取り組むことは、生産性の向上につながります。若手社員の時期からリーダーシップが発揮できれば、難しい案件に自発的に挑戦する自己効力感や自己決定感の向上が期待できるでしょう。
これらが高まることで、業務に対してのモチベーションも上がり生産性向上につながります。
労働人口がどんどん減少している現代において、一人ひとりの生産性向上が図れればリソース不足による企業の衰退が避けられ、限られた人数であっても業務を遂行できるようになります。さらに、無駄な残業の削減や企業の競争力の強化にもつながるでしょう。
離職の防止
若手社員のリーダーシップ開発は、離職の防止も期待できます。リーダーシップ開発によって業務に対してのモチベーションが高い状態を維持できれば、離職の防止につながるでしょう。
若手社員が離職してしまうと、将来的な人員不足につながりかねません。厚生労働省の発表によれば、平成31年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、高校で35.9%、大学で31.5%となっています。
高校、大学とも約3人に1人が就職後3年以内に離職している状況です。事業所規模別に傾向を見ると次のとおりです。(※)
事業所規模 | 高校 | 大学 |
5人未満 | 60.5% | 55.9% |
5~29人 | 51.7% | 48.8% |
30~99人 | 43.4% | 39.4% |
100~499人 | 35.1% | 31.8% |
500~999人 | 30.1% | 29.6% |
1,000人以上 | 24.9% | 25.3% |
高校卒業、大学卒業いずれも事業所の従業員が少ない方が離職率は高くなっています。そのため、自社の従業員が少ないのであれば、より若手社員へのリーダーシップ開発が重要になるでしょう。
※参考:厚生労働省. 「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」
若手社員でも行えるリーダーシップとは?
若手社員でも行えるリーダーシップとして以下が挙げられます。
- 自主的に学ぶ
- みんなのために動く
- 何ができるかを把握し、率先して動く
- 目標を共有する
- 相手を理解する
若手社員の上司や先輩はこれらの方法を把握して、若手社員のリーダーシップ開発に努めましょう。
自主的に学ぶ
自主的に学ぶことは若手社員が発揮できるリーダーシップの一つです。若手社員が自主的にさまざまなことを学んでいく姿は、チームに好影響を与える可能性があります。
これまで分からないことや苦手だったことを自主的に学んで挑戦していくことで、チームに良い影響が生まれて、全体の生産性向上が期待できます。
みんなのために動く
若手社員は自分のためでだけでなく、チームや組織のみんなのために働くことでリーダーシップの発揮が可能です。自分の目的のためだけに働いていては、チームのメンバーはついてきてくれません。
チームのメンバーに行動を促すには自分の目的だけでなく、チームや組織のために働くという考えを持つことが大切です。
例えばプロジェクトの担当変更を申し出るのであれば、自分の負担を理由とするのではなく、チーム全体やメンバーの負担を考えた上で申し出るようにしましょう。
みんなのために働く際に注意すべきなのが、自分のためということも忘れない点です。みんなのためだけを優先してしまうと、さまざまな業務を請け負ってしまい、キャパシティオーバーで自分に負荷をかけてしまいかねません。
何ができるかを把握し、率先して動く
若手社員は自分で何ができるのかを把握して、率先して動きましょう。自分ができることを積極的に見つけていく姿勢が、リーダーシップの発揮につながります。
例えば、自分に何ができるのかを周囲に聞いてみるのがおすすめです。自分では認識していない実力や能力に気付くかもしれません。
他にも次のような方法で、何ができるかを把握してみましょう。
- 人の力を借りる
- できる人のサポートをする
- できるレベルまで細分化する
目標を共有する
メンバーと目標を共有することも、若手社員が発揮するリーダーシップとして適しています。チームが一丸となるには目標の設定が欠かせません。
目標が設定されていないとチームはどこに向かってよいか分からず、メンバーごとで目指す方向も異なってしまいます。メンバーごとで目指す方向が異なると協力体制も整わず、チームとしての生産性が低下しかねません。
共有する目標は自分だけで決めないことが大切です。メンバーと話し合い、チーム全体が納得して向かっていける目標を設定しましょう。
相手を理解する
若手社員がリーダーシップを発揮する際は、相手の状況を理解することを意識しましょう。自分の意見を相手に理解してもらおうとするだけでは、メンバーに受け入れられず好循環は生まれません。
相手のことを理解するためには、傾聴を心掛けましょう。傾聴は次の3原則から成り立っています。
- 共感的理解:相手の立場に立って相手の気持ちを理解する
- 無条件の肯定的関心:相手を無条件で受け入れて良し悪しの評価をしない
- 自己一致:現実の自分のままで相手の話を聞く
具体的には、メンバーがミスで悩んでいれば「同じミスをしたことがある」と自分の経験に重ねて伝えれば、相手の理解が深まる上に相手からの信頼も高まりやすくなります。
企業が若手社員のリーダーシップを高めるために行うべきこと
企業が若手社員のリーダーシップを高めるためには、次のような教育方法を検討してみましょう。
- 一人ひとりの特性に合わせて教育をする
- 上司や先輩へ相談しやすいようコミュニケーションの場を設ける
- フィードバックをする
一人ひとりの特性に合わせて教育をする
若手社員のリーダーシップを高めるために、一人ひとりの特性に合わせて教育することが大切です。若手社員であっても、ベテラン社員と同じく業務に対しての考え方や得意不得意は人それぞれです。
そのため、従業員の特性に合わせず均一な教育を施してしまうと、リーダーシップが十分に高まらないだけでなく、若手社員のモチベーションを下げてしまいかねません。
若手社員に企業が求めるリーダーシップを押し付けるのではなく、一人ひとりの特性に合わせた教育を心掛けてください。一人ひとりの特性は、作家で心理学者のダニエル・ゴールマンが提唱した6つのリーダーシップスタイルを参考にするのがおすすめです。
上司や先輩へ相談しやすいようコミュニケーションの場を設ける
リーダーシップを発揮するには周囲とのコミュニケーションが欠かせません。しかし若手社員の場合、上司や先輩とはコミュニケーションが取りづらい可能性があります。
特にテレワークを導入している企業の場合、若手社員は自発的にコミュニケーションを取れないかもしれません。
そのため、若手社員のリーダーシップを開発するには上司や先輩に相談しやすいようにコミュニケーションの場を設けましょう。例えば、若手社員と上司、先輩と1on1のミーティングを定期的に実施する、日報にコメントを付けるといった方法が挙げられます。
なお上司や先輩とのコミュニケーションは、若手社員のリーダーシップ開発だけに役立つものではありません。若手社員が上司、先輩とコミュニケーションを取れることで、組織やチームの心理的安全性の向上にもつながります。
フィードバックをする
若手社員がリーダーシップを発揮した際は、すぐにフィードバックをしましょう。フィードバックをする際はポジティブな内容を伝えることが大切です。
例えば、若手社員が研修会や会議などで自主的に発言をしたら、発言を褒めるようにしましょう。発言の内容ではなく、発言自体を褒めることで自主性が育ちます。
若手社員がリーダーになりたがらない場合の対処法
若手社員のリーダーシップ開発を実施していても、若手社員自身がリーダーになりたがらない可能性があります。若手社員がリーダーになりたがらない場合は次のような対処法を取りましょう。
- 若手社員が持っているリーダー像についてヒアリングする
- 組織が何を期待しているかを説明する
若手社員が持っているリーダー像についてヒアリングする
若手社員がリーダーになりたがらないのであれば、若手社員が持っているリーダー像についてヒアリングしてみましょう。例えば想像しているリーダー像が、達成困難なものだったりカリスマ性を前面に押し出したものだったりする可能性があります。
このような場合、若手社員は自分とリーダー像とに乖離を感じてしまいリーダーになりたがらないかもしれません。
そのため、どのようなリーダー像を持っているかをヒアリングした上で、現在のリーダーシップの定義について解説してあげましょう。
組織が何を期待しているかを説明する
若手社員の中には周囲が自分に何を求めているかを、過剰に気にしてしまう人もいます。このような従業員の場合、評価が他人軸になってしまうため、成長や達成感を感じにくくなるでしょう。その結果、リーダーの役割にストレスを感じてしまうかもしれません。
このようなことが原因で若手社員がリーダーになりたがらないのであれば、組織が何を期待しているかを説明することが大切です。組織の意図が明確になるので、リーダーになることを前向きに捉えてくれる可能性があります。
また周囲が何を期待しているかではなく、自分がどうありたいかを考えるように伝えることも大切です。評価の軸を他人に求めないことで、目的意識を持ったり自主性の成長につながったりする効果も期待できます。
若手社員のリーダーシップが高まる環境を整えよう
これまでリーダーシップは特別な人だけが発揮できる能力と考えられていました。しかし、最近ではリーダーシップは誰でも発揮できる能力と考えられています。
若手社員であってもみんなのために動く、目標を共有する、相手を理解するなどの行動によって、リーダーシップを発揮することが十分可能です。
そのため若手社員向けにリーダーシップ開発をしている企業も増えています。若手社員のリーダーシップ開発に取り組むことで、生産性の向上や離職の防止などが期待できます。
なお、若手社員の中にはリーダーになりたがらない人がいる場合は、若手社員としっかり面談をしてリーダー像についてヒアリングしたり組織が何を期待しているかを説明したりして、若手社員が自主的にリーダーシップを発揮できるように促しましょう。
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若手社員のリーダーシップ開発を検討している際は、ぜひご覧ください。