イノベーションは、企業の成長ひいては経済の成長に欠かせないものですが、生み出すことや実用化することはかなり難しいと言われています。
ただし、「イノベーションマネジメント」を行えば、どのような企業でも革新的なイノベーションを創出できるかもしれません。
本記事では、イノベーションマネジメントの概要や方法、ポイントを解説します。
目次
イノベーションマネジメントとは「新規事業を生み出しやすくするマネジメント手法」
そもそも「イノベーション(innovation)」とは、日本語で革新や刷新という意味です。
企業においても同様であり、これまでにない商品やサービスを生み出す事を指します。
既存事業にはライフサイクルがあり、どんなに好調でもいつかは衰退期に突入するため、企業はイノベーションを続けなければ運営を続けられません。
企業を存続させるため、これまでにない革新的な商品やサービスを継続的に生み出しやすくするマネジメント手法を「イノベーションマネジメント」と呼びます。
関連記事:イノベーションを起こすために必要な力は「問題解決能力」ではなく「問題発見能力」の時代に
イノベーションマネジメントが注目されている理由
現在日本では、15〜64歳以降の「生産年齢人口」が減少し続けており、人材不足は多くの企業が抱える悩みです。
ただし、人材不足であっても会社存続のためにイノベーションが必要なことは変わりません。
限られた人材リソースの中で、企業のさらなる成長のためのイノベーションを起こし続けるのは至難の技といえるでしょう。
そういった状況下でも、イノベーションマネジメントが確立していれば可能性はあります。
人手が不足していても、優秀な人間がいなくとも、継続的に企業が成長していく仕組みを作ることができるのです。
つまりイノベーションマネジメントは、どのような状況でも効果的なイノベーションを創出し続けるための手法として注目されているのです。
参考:第1部 特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~|総務省
参考:正社員の人手不足は 51.4%、高止まり続く「旅館・ホテル」は 8 割に迫る高水準|株式会社帝国データバンク
イノベーションマネジメントを行うための3ステップ
イノベーションマネジメントは下記3つのステップで進めていきます。
- 方向性と目的を決定
- 要素を設計する
- 実行
1つずつ詳しく解説します。
関連記事:テレワークによる働き方改革 イノベーションに成功しつつある企業は何が違うのか
①方向性と目的を決定
イノベーションの方向性と目的が決まっていなければ、どこに向けた商品・サービスなのかわからなくなり、会議の途中で混乱してしまいます。
新事業に何を期待するのか、目標達成のためには何に投資するべきなのかを決めておきましょう。
また、立案には社長や幹部などの上級役職やそれ以外の役職、両方の取り組みが必要です。
規模や必要な組織の検討など、全社で認識を揃えておく必要があります。
②要素を設計する
イノベーションの開発にはアイデアも重要ですが、下記のような要素を設計する必要があります。
- スキルやノウハウの共有
- プロセスの決定
- 人事考課
- 予算の決定 など
新規事業で競合になるのは、スタートアップ企業である場合もあるでしょう。
資本やブランド力で勝っていたとしても、動き出しの遅さで負けてしまうことはありえます。
特にIT関連の事業では、最初に始めた企業がほぼ全ての利益を独占することもあるため、対応スピードは重要です。
また、自社にいる人材だけではスキルが足らない場合もあるため、社内や社外の人材をすぐにアサインできるような準備もしておきましょう。
③実行
要素が決まれば、すぐ実行に移しましょう。
最初から成功することは少ないため、事前に取り決めたプロセスどおりに冷静に実行していくことが重要です。
また、短期的に結果がでることは少ないため、長駆的な目線で取り組む必要があります。
ただ、あまりにも途中結果が芳しくない場合は、要素設計を見直したり社外の有識者に聞くなどして軌道修正を行いましょう。
イノベーションマネジメントの3つのポイント
イノベーションマネジメントのポイントは下記3つです。
- 管理者の知識
- 管理者によるチーム編成
- 余裕のある計画
大きな結果を得るために重要な項目であるため、必ず押さえておきましょう。
関連記事:人口減少の日本でどのようにイノベーションを起こすか
管理者の知識
イノベーションはコントロールしにくいものです。
従業員も日々知識を向上させる必要はありますが、管理者はすべての状況に対応できるよう、幅広い知識を身に着ける必要があります。
経営についてはもちろん、これまで知識のない事業であったとしてもカバーできるよう、全ての知識をインプットしておかなければなりません。
チームで勉強会や研修会を開き、チーム全体の知識レベルを揃える必要もあります。
管理者によるチーム編成
イノベーションマネジメントを円滑に進めるためには、管理者だけのチームを作るのもよいでしょう。
チームで取り組めれば、ナレッジの共有だけでなく管理者育成にもつながります。
また、複数人で管理していれば、メインの管理者が抜けてしまっても、滞り無くプロジェクトを進めることが可能です。
長期的に取り組む場合には、管理者チームを組織することも検討しましょう。
余裕のある計画
要素をしっかりと決めていても、抜け漏れやアクシデントが起こり、計画どおりに進まないことのほうが多いでしょう。
さらに、予定を詰め込んでいては期日に追われるばかりで、良いアイデアは生まれません。
管理者とメンバーどちらも安心してすすめられるように、計画にはあらかじめ余裕を持たせておきましょう。
イノベーションマネジメントシステム 「ISO56002」
「ISO56002」とは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)が、イノベーションマネジメントをシステム化した国際規格です。
発行の背景としては、企業におけるイノベーションは、日本だけでなく世界的な課題となっており「既存組織からイノベーションは生み出しにくい」という共通認識があったためです。
議論には、日本を始め、アメリカやカナダ、南米の主要国など59カ国が参加し、決定されました。
なお、ISO56002に強制力はなく、あくまで推奨される規格です。管理者や従業員と話し合った上で導入を検討しましょう。
参考:ISO56002に則したイノベーション・マネジメントシステム(IMS)構築と実践が「新しい価値」を社会に⽣み出す|国立科学技術振興機構
「ISO56002」と取り入れるメリット
ISO56002は、強制力はありませんが、取り入れることで下記のようなメリットを受けられます。
- 既存組織においてイノベーションが生まれやすくなる
- 社内外へのアピールになる
既存組織においてイノベーションが生まれやすくなる
ISO56002は、既存組織においてイノベーションが生まれやすくなることを目的とした規格です。
そのため、現在新たなアイデアや意見がなく、停滞している既存企業においては導入することで、革新的なイノベーションを起こすことができるかもしれません。
また、ISO56002を取り入れることで、一過性ではなく継続的にイノベーションを創出していく土壌を作れます。
刻一刻と変化する社会のニーズに適応し、継続的に結果を出すため、重要なシステムと言えるでしょう。
社内外へのアピールになる
ISO56002に準拠していることを社内外に発信することで、従業員の意識はもちろん、社外にはイノベーション創出に積極的に動いている企業であることをアピールできます。
アピールによって、イノベーションを起こす熱意のある人材が集まる可能性が高まり、組織としての強化にも繋がるでしょう。
まとめ
かつては「イノベーションを起こせる人」というのは才能がある、優秀な人材だけと思われてきました。
しかし、イノベーションマネジメントを行うことで、誰でも革新的な事業を生み出す可能性があります。
また、自社でマネジメントのフローを生み出すのが難しい場合は、ISO56002を用いることで、人員やメンバーが変わっても継続的にイノベーションを生み出すことができるでしょう。