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イノベーションを起こすために必要な力は「問題解決能力」ではなく「問題発見能力」の時代に

イノベーションを起こすために必要な力は「問題解決能力」ではなく「問題発見能力」の時代に

イノベーションを起こしたい企業が考えるべき戦略は、今や「正解を出せる力」から、「問題発見能力」になりつつあります。
では「問題発見能力」とは何でしょうか。具体的なビジネスの例を見ながら、考えてみましょう。

今までのビジネスでは「正解を出せる力」が重要でした。
かつての日本の企業、例えば、家電メーカーは、高い技術力と総合力で勝負するのが得意です。

高性能の液晶を持っている
特許がある
技術がある
ブランドがある

「これらを組み合わせて何をするか?」を考え、それぞれが工夫を凝らして、多機能の製品を作っていたのです。
とくに日本企業は、既存のものをどんどん小型化したり、改良したり、新しい機能をつけたりすることが得意で、またそれが売れる秘訣だった時代でした。
自社で全てをまかない、ワンストップで作るーーまさに日本企業のお家芸でした。
だからこそ、学校教育も「正解を出すこと」に重きを置いていたのです。

このように、総合力で戦う方法を、大前研一さんは「フルセット主義」と読んでいます。

これまでの総合電機メーカーは左側の図のように「フルセット型」「垂直統合型」でした。つまり「全ての機能を自前で抱える」というモデルです。[1]

しかし、時代が変わりました。今は、分業の時代。不得意なところをパートナーにまかせ、技術がなくてもモノが作れる時代なのです。

ところがデジタル化が進み、基幹部品が共通化され、台湾や韓国、中国の企業でも安く組み立てられるようになりました。
そして自動組立機械も外販されるようになり、中国などの習熟度の低い労働者でも、日本製と比べても遜色のない商品を作れるようになったのです。[2]

では、今、イノベーションのために重要な力は何なのか。それは「正解を出す力」より、「問題を発見する能力」です。

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「問題を解ける人」「正解を出せる人」の価値が下がる理由

ではなぜ、技術がなくても戦える時代には、「問題を解ける人」「正解を出せる人」の価値が下がるのでしょうか。
その理由について、独立研究者・著作家・パブリックスピーカーの山口周さんは世界に「問題自体が少なくなってきたから」と解説します。

だからこそ20世紀後半の数十年間という長いあいだ「問題を解ける人」「正解を出せる人」は労働市場で高く評価され、高水準の報酬を得ることが可能でした。[3]

しかしその関係は、今日では逆転しつつあります。
「問題が多かった時代」が終わりつつあるからです。

つまり「問題が希少」で「解決能力が過剰」になっているということです。

ビジネスが「問題の発見」と「問題の解決」という組み合わせで成り立っているのであれば、今後のビジネスではボトルネックとなる「問題」をいかにして発見し提起するのかがカギになります。

そして、この「問題を見出し、他者に提起する人」こそがニュータイプとして高く評価されることになるでしょう。[4]

つまり、問題を発見する能力の方が重要になりつつあるというわけです。

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グラブはなぜアジアの一大デカコーンとなったのか

東南アジアに一大シェアリングエコノミーを生んだGrabは、今や東南アジアのデカコーンとなりました。Grabは実は「問題を発見する能力」から生まれた企業です。

当時のマレーシアのタクシーは「世界で1番質が悪い」とまで言われ、遠回りする運転手や料金を割増するドライバーに、車がない人や観光客は大変困っていました。
マレーシア人のアンソニー・タンは、マレーシアのタクシーのひどさに困っているインドネシア人友人の話を聞いて「なんとかできないか?」と考えます。[5]

そして、ハーバード大学で、同じマレーシア出身の同級生と一緒にアイデアを練って起業しました。それがGrabの前身となった「マイテクシ(Mytexi)」というアプリだったのです。これは瞬く間に地元で口コミで広がっていきました。

当時、私自身もマレーシアに住んでおり、タクシーには困っていました。そして「マイテクシ」には、おおいに助かったのです。

別に最初から特許などの技術があったわけではないのです。あるのはアイデアだけ。そしてもっとも重要なのが、「問題を発見する能力」です。マレーシアは車社会で、そもそも車の所有率が非常に高いので、実は案外気づかない視点なのです。

海外のビジネスキャンプで教えていることは「ビジネスって誰かの困りごとを解決すること」

今、海外のインターナショナル・スクールや、欧米の子供向けビジネス・キャンプを見ていると、やはり「問題発見能力」が重視されていることに気づきます。

とあるオーストラリアの子ども向けのオンライン・ビジネスキャンプを取材しました。まず第一ステップとして周りの人への「インタビュー」があります。子どもたちは、周りの人に「何に困っていますか?」と聞きまくるのです。そして友達や家族が「誰が何に困っているか」を発見するのです。

「朝起きられない」「宿題をやりたくない」「学校に行きたくない」そんな友達の悩みをまずは聞いていく。こうして世の中の「問題」を発見します。それこそがビジネスのタネになると教えるのです。

自分が持っているものを棚卸して、「では何ができますか?」って考えるのとは逆です。発展途上国と言われるマレーシアですら、そうなのです。

新しい時代の「ニュータイプ」になる方法

山口さんは「問題発見」ができる人を、「ニュータイプ」と定義しています。

オールドタイプが「与えられた問題を解く」ことに長けている一方で、ニュータイプはまだ誰も気づいていない問題を見出し、それを社会に向けて提起します。[6]

気づいてない問題を洗い出すーーこれが新しい時代には重要になります。もう一つ、「顧客視点で考える」ことも大事です。大前研一さんは、このように語っています。

世界企業として成長するためには、イノベーションを”実現する”能力が重要です。この能力を構成する要素の1つは、やはり「顧客視点の発想」です。日本の企業は「うちの商品の方があっちの会社のものよりいいですよ、ぜひうちの商品を選んでください」という発想が強いのですが、これからはそうではなくて、「お客さんはどっち選ぶのか」あるいは「お客さんはどういうものを欲しがっているのか」という観点で考えることが重要です。[7]

グラブのアンソニー・タンが気づいたように、社会の問題点を見つけ出して解決するーーそんな視点はこれからいよいよ大事になってきそうです。

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参照
[1][2]大前研一ビジネスジャーナル NO3「なぜ日本から世界的イノベーションが生まれなくなったのか」(Kindle版)
[3]ー[4][6][7]新R25 山口周著『ニュータイプの時代』より「これからの時代、「問題解決に長けた人」はオールドタイプとして急速に価値を失っていく」
https://r25.jp/article/721640326239841648
[5]ハーバード・ビジネス・スクール「Anthony Tan MBA 2011」抄訳は筆者
https://entrepreneurship.hbs.edu/founders/Pages/profile.aspx?num=195
entrepreneurship

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