ビジネスでは、簡潔で分かりやすい文章を作成するスキルが求められます。特に社内・外に提出する頻度の多い報告書は、分かりづらい文章で書いてしまうと、起きた事柄についてきちんと共有できないのはもちろん、ご自身の評価にも影響しかねません。
本記事では、報告書の作成に苦手意識がある方や初めて報告書の作成を任された方に向けて、簡潔で分かりやすい報告書のポイントや作成の手順について解説します。報告書の対象者によって気を付ける点についても併せて紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
報告書とは?
報告書とは起きた事柄についての報告をまとめた書類です。ビジネスシーンにおける報告書には次のとおり、いくつもの種類があります。
- 営業報告書:営業活動の進捗や打ち合わせ内容を上司へ報告する
- 経緯報告書:トラブルが発生した際の経緯を報告する
- 研修報告書:参加した研修の内容や得た知識、気付きを報告する
- 調査報告書:依頼内容に応じた調査結果を報告する
報告書を作成する目的
報告書を作成する目的はさまざまです。社内に提出するケースもあれば、社外に提出するケースもあります。それぞれの主な目的は次のとおりです。
- 社内に提出する:担当者の業務進捗や経験を共有して、次回以降の業務に反映
- 社外に提出する:取引先との信頼関係の構築や回復
例えば、研修報告書であれば研修の内容や研修で身に付いたスキル・経験を上司やチーム員へ報告することが目的です。一方、クレームの経緯報告書であればクレームが発生した経緯と原因、再発防止策を社内や社外(顧客)に報告することが目的となります。
報告書は社内、社外どちらに提出するケースであっても分かりやすく作成する必要があります。報告書を受け取った相手が内容を理解できなければ、書面で提出する意味がありません。
また、スピーディに情報を共有する、トラブルに対応するためには、報告書を迅速に作成することが大切です。
報告書の構成
報告書は企業によって独自の様式がありますが、一般的な構成に変わりはありません。一般的に報告書は次の3つの階層で構成されています。
- 標題
- 内容の概要
- 詳細内容
この3つは標題を最上部にして、ピラミッドのような構造になっています。上に行くほど内容が要約されていき、下に行くほど詳細な説明になるのが特徴です。例えば、顧客との打ち合わせについての報告書を作成する場合は、次のようになります。
階層 | 内容 |
標題 | 何についての報告書なのかを明記、タイトルの役割 例)打ち合わせ報告書、営業活動報告書 など |
内容の概要 | 打ち合わせ内容で取り上げた議題など 例)・2023年6月の売上経緯について 例)・競合A社の動向について など |
詳細内容 | 打ち合わせで提示したデータや資料、議題についての詳細 例)・2023年6月の商材別売上一覧(図や資料など)とデータから読み取れる現状 例)・対応策については~~。 |
報告書の作成が苦手な場合は標題からスタートするのではなく、報告書の説明文にあたる詳細内容から作成してみましょう。
詳細内容、その要約である内容の概要、最終的に標題を記載するといったように下から内容をまとめ上げていくことでスムーズに報告書を作成することが可能です。
報告書における文章の書き方
報告書全体の構成がピラミッド構造になっているのと同様に、報告書の文章(詳細内容)もピラミッド構造になっています。報告書における文章は次の3つの階層で構成されています。
- 見出し
- 小見出し
- 説明文
それぞれの関係性も報告書の構成と同じです。見出しを頂点に下に行くほど説明的になっていきます。
階層 | 内容 |
見出し | 小見出しの要約(15文字ほど) |
小見出し | 説明文の要約(20文字ほど) |
説明文 | 説明文(小見出しの説明) |
報告書の文章がなかなか書けない場合、説明文からスタートして、小見出し、見出しと進めていきましょう。
報告書を書く際に押さえておくべき基本のポイント
報告書を書く際は次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 目的と誰に向けての報告書かを意識する
- 報告する相手によって書き方を調整する
- 5W2Hを意識して作成する
- 簡潔に書く
- ですます調、である調を混合させない
- 事実と所見・所感を混合させない
- 読みやすいレイアウトにする
それぞれのポイントについて解説します。
目的と誰に向けての報告書かを意識する
報告書を書く際は、なぜ報告書を書くのかという目的と誰に向けて書くのかを意識しましょう。例えば、報告書の種類によって次のように提出先と提出する目的が異なります。
報告書の種類 | 提出先 | 目的 |
営業の報告書 | 社内 | 業務の進捗や成果を共有して、業務に役立てる |
研修参加の報告書 | 社内 | 研修内容と身に付いたスキルを共有して、社員同士のレベルを高める |
備品の紛失報告書 | 社内 | 備品を紛失した経緯と原因、対策を共有して、再発防止策を共有する |
クレームへの対応報告書 | 社内・社外 | クレームが発生した原因と対策を共有して、今後の対応策を周知する |
社内の中でも直属の上司に提出するのか、さらに高い役職の社員に提出するのかでも内容は変わります。例えば、経営層は現場で用いられている専門用語が分からない可能性もあるため、使用は控えるのが望ましいです。
また、重大なトラブルについての報告であれば客観的な視点に立った報告書が求められます。
同様に社外へ報告書を提出する場合も、社内で使用している専門用語は交えずに、客観的な視点で事実を伝えることが大切です。
報告する相手によって書き方を調整する
先述のとおり、報告者の提出先は1カ所に限りません。そのため、次のように報告する相手によって書き方を調整するようにしましょう。
提出する相手 | 書き方のポイント |
上司や先輩 | 現場を理解している上司や先輩に対しては、A4用紙数枚ほどの詳細な報告書を作成する |
社内の役員 | 専門用語は使わず要点を端的にまとめた上で、所見を添える |
社外 | A4用紙の1枚目に要旨を書き、以降は専門用語を使わずに詳細をまとめる |
特に顧客に提出する報告書は事実誤認がないか、ビジネスマナーに則っているかなどの確認も忘れずに行う必要があります。
5W2Hを意識して作成する
分かりやすい報告書を作成するには、5W2Hを意識します。5W2Hとは以下の頭文字を取ったフレームワークです。
- Who(誰が)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
- How much(いくら)
5W1Hという言い方もよく耳にしますが、5W2HにはHow much(いくら)という価格や費用を盛り込む要素が存在します。
ビジネスシーンにおいては価格や費用は重要な情報です。そのため、報告書は5W1Hではなく5W2Hに基づいて作成すると、重要な情報の伝達漏れを防げ、具体性が増します
簡潔に書く
簡潔に書くことも大切です。報告書の読み手が求めているのは、報告内容の結論です。そのため、冒頭で必ず結論を述べるようにしましょう。冒頭に結論を述べず経緯や理由から書き始めてしまうと、いたずらに読み手の時間を割いてしまいます。
冒頭から結論を述べる文章の構成を考える際はPREP法を意識するのがおすすめです。PREP法とは以下の単語の頭文字を取ったフレームワークです。
- Point:結論
- Reason:理由
- Example:具体例
- Point:結論
PREP法を意識して報告書を作成すれば、読み手へ簡潔に結論を伝えられます。さらにPREP法は具体例を盛り込むため、論理的で説得力のある文章になる点も特徴です。
また簡潔に報告書を書くためには、箇条書きの活用も効果的です。例えば、研修報告書を作成する際、研修内容を〇〇と〇〇を行い、さらに〇〇の研修も行いましたと書くと長々とした印象を与えてしまいます。
そのため、次のように箇条書きを用いるのがおすすめです。
【研修内容】
● 〇〇
● 〇〇
● 〇〇
箇条書きは文章よりも読み手に負担を掛けさせずに要点を理解してもらうことができます。
「ですます調」「である調」を混合させない
語尾の表現がですます調と、である調とで混じってしまうと、読みづらい文章になってしまいます。そのため、ですます調とである調が混じらないように注意しましょう。
表現をきちんと統一するために報告書を書き終えたら、見直しをしてそれぞれが混じっていないかの確認が必要です。
ですます調と、である調には、それぞれ以下のようなメリットとデメリットがあります。
語尾の表現 | メリット | デメリット |
ですます調 | 丁寧で柔らかい印象を与える読み手に伝わりやすい | 語尾に変化を付けづらい文章が長くなる |
である調 | 文章の説得力が増す文章を短くできる | 固い印象を与える尊大に思われてしまう |
ですます調、である調は報告書を提出する相手に応じて使い分けましょう。例えば、顧客に提出する場合はビジネスマナーが求められるため、ですます調が適しています。
またですます調、である調を統一するのと合わせて、助詞が連続していないかを確認するのもポイントです。例えば、次のような一文の場合は「の」が連続してしまい、読み手に読みづらさを感じさせてしまいます。
- 商品の納品の期限の依頼をしました
この場合であれば、次のように整えることが可能です。
- 商品の納期変更を依頼しました
同じ助詞が連続してしまうと読みづらい文章になるとされています。一文に同じ助詞が複数回以上連続していないか、読みづらい印象になっていないかを確認しておきましょう。
事実と所見・所感を混合させない
報告書はデータや実際に起きたことなど、客観的な事実を記載します。
例えば打ち合わせ時の顧客の反応を共有しておいた方がよさそうと判断した場合は、報告書の中井に所見を明記することがありますが、ほとんどの場合は報告書に所見や所感は内容が望ましいです。
もし所見を盛り込見たい場合は、報告書ではなくレポートとして意見や主張をまとめましょう。
読みやすいレイアウトにする
読みやすいレイアウトを心掛けることも、分かりやすい報告書を作る上で大切です。フォントサイズやフォントのスタイル、改行などのレイアウトが崩れていないかを確認しましょう。
印刷物の場合、フォントサイズは10〜12ptほどの大きさが読みやすいとされています。また、フォントのスタイルはメイリオやゴシック体が判読性に長けている傾向にあります。
一方、明朝体は線が細くすっきりとしたデザインのため、何ページにも及ぶ長文を読むのに適したフォントです。報告書を含めて、数枚以上になる印刷物であれば、判読性を優先してメイリオやゴシック体を選ぶと良いでしょう。
報告書を書く手順
実際に報告書を書くとなれば、次のような手順で進めていきましょう。
- 情報や素材を収集する
- 目的を明確にする
- 本文を作成する
- 本文に合わせて見出しや小見出しをつける
- 結論をまとめて標題にする
- 声に出して読み上げてみる
1. 情報や素材を収集する
報告書を書き始める前に、記載する情報や素材を収集します。情報や素材を十分に収集しないと報告書を書き始めてから、内容がぶれてしまったり所見などが混在してしまったりする恐れがあります。
営業報告書であれば顧客との打ち合わせ内容、クレーム報告書であればクレーム発生の経緯や原因などの情報や素材を収集した上で、報告書を書き始めましょう。
2. 目的を明確にする
報告書をなぜ提出するかの目的を明確にしておきます。目的が明確になっていないまま書き進めてしまうと、本来報告すべき内容と実際に書いた内容が異なってしまうかもしれません。
例えば、上司へミスを謝罪する謝罪報告書は、本来であればミスの再発を防ぐことも目的です。しかし、目的が明確になっていないまま報告書を作成してしまうと、謝罪のみで再発防止策の記載が漏れてしまう可能性があります。
また、目的と同時に誰に宛てた報告書なのかも確認した上で作成を始めましょう。
3. 本文を作成する
報告書の本文は標題や内容の概要につなげるための土台といえる要素です。何を伝えるのかを明確にするためにも、報告書は本文から作成すると良いでしょう。
報告書の本文を作成する際は、冒頭を「標題の件につき、下記のとおり、ご報告いたします」から始めます。書面で提出する場合は、真ん中に記と記載するのが一般的です。また本文を作成し終えたら、以上で終えるようにしましょう。
4. 本文に合わせて見出しや小見出しをつける
報告書を読みやすくするには、本文に応じた見出し、小見出しを設定します。見出しは本文の内容を要約して読み手に伝わりやすくする役割があります見出し、小見出しは一文で簡潔にまとめ、本文の内容がきちんと伝わるよう意識しましょう。
5. 結論をまとめて標題にする
報告書の結論をまとめて標題にします。標題は報告書がどのような内容であるかを示す重要な部分です。そのため、本文や見出しを読み返して、内容と標題に齟齬が生まれないようにしましょう。
標題も見出し、小見出し同様長くならないことが大切です。しかし、具体性に欠けてしまっては、読み手がすぐにどのような報告書なのかを把握できません。
例えば、出張の報告書の場合は出張報告・〇〇社への出張報告とするのではなく、〇〇社への〇〇販売に関する報告書のように、具体的に記載します。
6. 声に出して読み上げてみる
報告書を書き終えたら、声に出して報告書を読み上げてみましょう。報告書を提出した際、口頭での説明を求められるケースもあります。
その際にスムーズに読み上げるためにも、報告書を音読します。声に出して読み上げる際のスピードの目安は200〜300文字程度で1分ほどです。
読み上げるのに時間がかかると感じた文章があれば、短くするか読点を活用して読みやすくしましょう。
また、報告書を声に出して読み上げることで、誤字脱字や意味が通らない文章なども見つけやすくなります。
報告書は目的と提出する相手を意識して作成する
報告書は営業報告書、経緯報告書などいくつもの種類があります。また、報告書によっては社内だけではなく社外に提出するものもあります。報告書は作成前に目的や対象者を明確にしましょう。
例えば、上司や先輩に提出するのであれば詳細に、役員に提出するのであれば簡潔に、社外の顧客に提出するのであれば事実誤認がないようにします。
報告書を作成する際は情報や素材を十分に集めて、説明文、見出し、標題の順番に作成していきます。作成した後は、提出時に口頭で報告書の内容を説明できるように音読することも大切です。
報告書の構成や書き方の基本、手順を押さえ、読みやすい報告書を作成しましょう。