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【対処法】「言ってもわからない人」「話してもわからない人」の対処に困った上司の話

【対処法】「言ってもわからない人」「話してもわからない人」の対処に困った上司の話

個人的には、課長、部長、あたりの、いわゆる「中間管理職」は、会社の中で一番難しい仕事の一つだと思っている。

なぜなら「言ってもわからない人」「話してもわからない人」というのが、世の中にいるからだ。

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「期待の新人」の事例

あるシステム開発会社でのこと。
一人の中途採用の話だ。

彼は、どう見ても能力不足だった。
おそらく、採用の失敗だった。

が、何事も「百発百中」はありえない。

「なぜこの人が採用されたのだろう」と首をかしげてしまうような人が、ときおり、会社に入ってくるのは、どうしても仕方のないことだ。

だが、その尻ぬぐいは、採用を担った人物、つまり人事と本部長/社長ではなく、末端の中間管理職が担うことになる。

彼も、そんな事例の一人だった。
「期待の新人」と聞いていたのだが、配属されて1か月も経たないうちに「期待の」とは程遠く、単なる「お荷物」だったことが判明した。

良いのは、採用を騙せるほどの、しゃべりだけ。
ミスが多く、最低限のルールも納期も、守れない、一言でいうと「だらしない人」だった。

当然、お客さんを任せることもままならず、先輩・上司がつきっきりで面倒を見なければならない。

だがもちろん、一旦雇った以上は、「戦力化に全力を尽くす」のが、会社としての筋ではある。
先輩・上司たちは彼を何とか戦力化するために、様々な策を講じた。

その日の仕事の反省会。
成果品のレビュー。
業務の割り当ての工夫と標準化。
モチベーションへの関与。

だが、それであっても能力的に「平均レベル」にはほど遠く、
良くて、並みの水準になるまで2、3年は掛かりそうな見通しだった。

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成績の悪い人への対応は慎重に

そして、最初の人事評価の時期がやってきた。

もちろん、彼の評価は最低ランク。
「求められている成果に対して、かなり不足している」という評価だ。
あらゆる客観的な数値も、それを示している。

ただ、成績の悪い人への対応は、慎重にせねばならない。

・評価のほとんどは、能力や期待ではなく、客観的な「成果」で決まること。
・昇給・昇格は、成果をもとにした、相対的なものであること。

こういった制度の彼への説明は、慎重に慎重を重ね、繰り返された。

そして、今期の評価を彼に説明したのち、上司は来期の活躍に期待しているが
「今期は昇給なし」
だということを、彼に丁寧に伝えた。

ところが、彼は納得しなかった。


評価は一部の隙もないものであったし、成果は客観的な基準に照らし合わせて、明らかに平均よりも劣っていたが、彼は「これだけ頑張ったのに」という。

もちろん、彼の上司は、明らかな能力不足の中、彼がそれなりの努力したことを知ってはいた。

だが、評価は評価。成果は成果であり、彼を特別扱いするわけにもいかない。

しかも皆の努力の水準からすれば、彼の努力はよく言って「並み」だった。
彼にかけた周りの労力から考えれば、トータルで見て彼の存在は会社にとってまだマイナスだった。

もちろん、以前から「目標を達成しなければ、昇給はない」ということは、社員に伝えられていた。
そして、彼も入社に際して、それを知っていた。

だが、それが現実になるとは思っていなかったのだろう。
あるいは、会社を甘く見ていたのかもしれない。

「昇給なし」は、彼に大きなショックを与えたのだった。

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頑張ったことと評価は別の話

そして予想通り、それだけでは終わらなかった。

しばらくして、「彼が会社の悪口を言っている」との噂が流れ、それが、彼の上司の耳にも入ったのだ。

上司は当初、「昇給なし」がショックであったことを知っていたので、「言わせておいてよい。誰でもそういう時期はある。」と、しばらくそれを静観していた。

が、一人の部下から、その彼が「上司は好き嫌いで評価している。俺は嫌われているので、評価が低かった」と言っていると聞き、これは捨てておけない、と、彼を呼び出した。

上司は事実確認をし、それが事実であると知ると、
彼に告げた。

「好き嫌いで評価している、というのは事実無根だ。会社は制度に従って評価をしているのであって、この成績では昇給できないのは当然だ。
会社に対して批判的な意見を言うのは構わないが、ウソはやめてほしい」と要請した。

すると、彼は言った。
「事実無根ではないです。だって、わたしを嫌っているでしょう。」

だが、上司は言った。
「好き嫌いを述べた覚えはないし、たとえ嫌いであったしても、現在の評価制度は、好き嫌いと関係がない。」

しかし、彼は上司の言うことに無関心だった。
「頑張ったことに対して、適正な評価をしないのは、おかしいと思う。」

上司は言った。
「頑張ったことは認めるが、評価とは別の話だ。それは前にも説明したはず。開発職ではなく事務職であれば、「頑張り」も、ある程度は評価の対象になるので、事務職に転属したらよいのでは?」

「事務職は希望ではありません。」

「ならば、制度には従ってもらう。」

彼は不承不承ながら、それを聞き入れたように見えた。

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新人たちからの苦情

ところがその後、再び上司のところへ、問題が持ち込まれた。
今度は新卒の新人たちからの苦情だった。

内容を聞くと、例の彼が「こんな会社辞めたほうがいい。おれももうすぐ辞めてやる」と、良く言っているとのこと。

新人たちはそれを聞いて呆れており「こんな人を放置してる会社はどうなの」とまで言う人も出ているという。

上司は新人の「会社の悪口を許さない」純粋さにも若干の怖さを感じたが、さりとて、これを放置するわけにもいかず、再び彼を呼び出して、事実確認をした。

「こんな会社辞めたほうがいい、と言う発言を、いろいろな人の前でしていると聞いたのだが、事実か?」

すると、彼は言った。
「そんなことは言ってません。」

「しかし、複数の人から、君がそのように言っていると聞いた。」

「言ってません。」

「心当たりもない?」

「ありません。」

上司はあきらめて、彼に告げた。
「わかった。おそらく、誤解を招くような発言をした可能性があるので、十分注意してほしい。」

彼は何も言わず、そこを立ち去った。

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一縷の望み

その後しばらくしてまた、上司のもとへ彼に対する苦情が来た。
今度は彼が、「上司から、会社批判をするな、と言われた」と言いふらしているらしいのだ。

「またあいつか」と、上司も半ば呆れてしまった。

だが、前回の「言葉に気をつけろ」という話が、そうとられてしまっていたのかもしれない。

とはいえ、その程度で彼を呼び出すのも時間の無駄だし、「言論統制」という言葉を信じる社員もいないだろう、ということで、上司は彼を例によって、しばらく放置していた。

すると、その後、複数の社員から
「あの人をどうにかしてください」という訴えがあった。

どうやら、事あるごとに「人の悪口」を言うので、周りをうんざりさせているとのこと。

上司は当初、「悪口と思うなら、取り合わなければよい」と社員たちに言っていた。
しかし、話をよく聞くと、「あの人と一緒に働きたくない」という訴えもある。

さすがにこれは無視できず、上司は彼を呼び出した。
これで、3度目だ。

上司は、彼に言った。
「こんなことを言いたくはないのだが、ネガティブな発言はほどほどにしてほしい。」

ところが彼は言った。
「ネガティブな発言をした覚えはないです。私の発言がネガティブに聞こえるのは、私の問題ではなく、彼らの問題です。」

上司は、今度こそ本当に呆れてしまった。
「この期に及んで、まだそんなことを言っているのか……もういい。行きたまえ。」

この上司は、いろいろなうわさはあるが、まだ「彼は頑張れば、何とか戦力になるのではないか」という一縷の望みを持っていた。
だが、このやり取りで、この上司は彼に対して、もう時間を割こうと言う気を持てなくなってしまった。

そして、彼はその数か月後、ひっそりと退職した。

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まとめ 「誰もが共に働ける」というのは幻想

後になって、「私の何が悪かったのですかね」と、その上司から、私は意見を求められた。

その上司は言った。
「正直、彼がきちんと仕事ができるよう、かなりの時間を割き、誠実に対応したつもりだったのですが。」

正直なところ、私にも正解はわからない。
この上司がやったことには、特に不誠実な点はないし、できうる限りのことはしている。

また、「彼」に対して高圧的な要求をしているわけでもない。
その時の事情を鑑みて、やれることをやっているだろう。

だが、彼は結果として会社に揉め事をもたらし、そして、会社を去った。
だから、ここから得られる教訓は、あまりないかもしれない。

だが、2つほど、何とか言えることもある。

一つは、採用は本当に重要だということ。

従来の面接では、わずかな情報をもとに採用をせねばならないため、「実務能力」を判断することができない。新たな面接のやり方が必要だ。

もしくは、試用期間中に、早めに見切りをつけるなどの意思決定を早くすること。
人をクビにするのは嫌な仕事ではあるが、避けて通っても、それは結局問題の先送りに過ぎない。

そして二つめは、こちらのほうが重要なのだが、「話してもわからない人」が、世の中には存在しているということ。

誰でも話し合える、誰でも戦力化できる、というのはなく、企業とそこで働く人の能力には限界がある。
だから、中には「話し合えない人」がいるのも事実であり、それを中間管理職が気に病みすぎることはあまり健全ではない。
それは単に「運が悪かった」というだけのことだ。

人は多様で、「誰もが共に働ける」というのは幻想である。

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