日本では新卒一括採用が主流となっているため、一定期間で多数の応募者に対応する必要があります。
当然、一人一人に多くの時間をかけていてはキリがありません。
そこで活躍するのが採用テストです。採用テストを活用すれば、優れた応募者を一気に絞り出すことができます。
本記事では採用テストについて徹底解説していきます。
目次
採用テストとは?
採用テストは、採用プロセスの中で実施されるテストのことです。
一般的には「適性検査」が採用テストに該当します。
テスト内容は国語、算数、英語などの学力テストに近いです。
ただし、多くの人にとって、最低限のテスト対策を実施しなければ解けない問題となっています。
採用テストは「大量にいる応募者の足切り」という印象が強いですが、必ずしも「成績が悪い=適性なし」というわけではありません。
あくまでも、採用テストの結果は評価材料の一部に過ぎません。
関連記事:適性検査とは?活用方法や選ぶ際のポイント、導入時の注意点を解説
採用テストで測定できること
採用テストは能力検査と性格検査の2種類に分かれていることがほとんどで、それぞれで測定できることが異なります。
まず能力検査では、論理的思考力や数字に対する理解などの基本的な能力を測定できます。
例えば国語の問題では文章理解力、算数の問題であれば数値能力がなければ解くことができません。
実際の職務でも、書類に目を通したり、グラフを作成したりするのは日常茶飯事です。
最低限の能力がなければ職務に耐えられないので、能力検査でしっかり測定されます。
一方の性格検査は、人間性や思考法などの個人特性を測定できます。
例えば外向的か内向的かどうかは、性格検査で測定可能です。
営業職であれば外向性が重視されますし、事務職であれば内向的である方がいいかもしれません。
このように、自社が求める人物像と、応募者の性格がマッチするかどうかを、性格検査で測定します。
関連記事:定量評価とは?定性評価との違いやメリット、注意点から効果的な運用方法を解説
採用テストの現状
現在、採用テストの普及率や傾向などは一体どのような状況なのでしょうか。
抑えておくべきポイントは以下の3つです。
- 採用テスト実施率は88.5%
- SPI3と玉手箱Ⅲが人気
- オンライン受検が人気
それぞれ詳しくみていきましょう。
現状①:採用テスト実施率は88.5%
リクルートキャリアの『就職白書2023』によると、2023年卒の採用プロセスにおいて「適性検査・筆記試験(対面・Web含む)」の実施率は88.5%となっています。
また、dodaのエージェントサービスに寄せられた約3,000社の中途採用の求人情報では、全体の約51%が筆記試験を選考に取り入れていることがわかったそうです。
つまり、新卒採用のほとんどの採用プロセスで採用テストが用いられており、中途採用でも約半数の企業が採用テストを用いていることがわかります。
なお、『就職白書2019』では、2019年卒の採用プロセスでの「適性検査・筆記試験」の全体の実施率が91.8%でした。
その中でも従業員規模が5,000人以上の場合は95.8%、1,000人以上5,000人未満の場合は96.0%、300人以上から900人未満が94.5%、300人未満の場合は82.9%です。
このことから、従業員規模が大きければ大きいほど応募者数が多いと仮定するならば、応募者数が多い企業ほど、採用テストを実施する傾向があると想定できます。
現状②:SPI3と玉手箱が人気
現代はさまざまな採用テストが存在していますが、その中でも「SPI3」と「玉手箱」の人気度の高さは特筆しています。
実際、本屋で就活関連のコーナーに赴くと、大部分を占めるのが「SPI3」の対策本で、約2割の割合で「玉手箱」の対策本が置かれています。
それ以外の採用テストの対策本が置かれていることは滅多にありません。
まずSPIは、日本最大手の就活斡旋企業であるリクルートが手がけている採用テストです。
誕生からリニューアルされ、現在はバージョン3であるSPI3が主流となっています。
全国で最も利用されている採用テストであり、2020年の年間利用社数は約13,500社、受検者数は約203万人です。
一方の玉手箱は、日本国内企業向けに人材アセスメントサービスを提供している日本エス・エイチ・エルが手がけている採用テストです。
こちらも、バージョンアップされた玉手箱Ⅲが一般的となっています。
SPI3ほどではありませんが、富士通などの大手企業で用いられることのある採用テストです。
現状③:オンライン受検が人気
2020年以降の新型コロナウイルス拡大に伴い、採用プロセスのオンライン化が急速に進みました。
エントリーシートの電子化やWeb面接の普及があり、当然のことながら、採用テストもオンライン化しています。
この場合、テストセンターなどの試験会場に赴く必要がないため、応募者目線でオンライン受検は非常に人気です。
また、企業目線でも、試験会場を押さえる手間がなくなるなど、高い利便性で人気があります。
その一方で、オンライン受検だと替え玉受検が容易となっている点に注意が必要です。
実際に、京大院卒の20代男性が替え玉受検を多数実施していたことで、検察に摘発された件も話題になっています。
とはいえ、リモートワークが当たり前になりつつある現代では、やはりオンライン受検の検討は必要不可欠です。
採用テストを実施する目的
採用テストを実施する目的としては①集客、②見極め、③惹きつけの3つがあります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
関連記事:中途採用者向けの適性検査(能力検査・性格検査)を徹底解説
目的①:集客
近年は、採用テストにフィードバックを付随することで、より多くの応募者を集客するケースが増えています。
つまり、採用テストは応募者の集客促進のための手段として活用できるのです。
たしかに応募者としては、採用テストの結果がどのようになっているかに強い興味があります。
そこにフィードバックを付け加えることで、多くの応募が発生する可能性も十分あるでしょう。
もし集客目的で採用テストを実施するのであれば、夏のインターンシップ前などの比較的早い時期がおすすめです。
早期段階では多くの就活生が採用テストの結果に興味を抱いているので、なるべく早いタイミングで採用テストを実施するのが良いでしょう。
目的②:見極め
採用テストを実施する目的として最も一般的なのが「見極め」です。
特にたくさんの応募者を抱える大規模な企業では、見極めの際に採用テストでボーダーラインを設定する必要があるでしょう。
この際、まずは自社の従業員が採用テストを実施してみるのが良さそうです。
そこで抽出された結果をボーダーラインに設定しておけば、自社が望む人材を絞り込むことができます。
もし、たくさんの応募者を捌くのに苦労しているのであれば、採用テストで一気に絞り込んでみるのも悪くない選択でしょう。
目的③:惹きつけ
近年は少子高齢化の影響もあり、全体を通して売り手市場の傾向にあります。
その中で企業が就活生にアピールする手段として、採用テストを活用するケースが増えているようです。
具体的には、最終面接前に採用テストを実施することで、学生との接触機会を増やします。
このフィードバックを基に、面接を通して配属希望やキャリアプランを練り合わせていくことで、企業と就活生の結びつきを強めるのです。
優秀な人材であればあるほど、多くの企業で内々定を獲得しています。
その中で自社を選んでもらうためにも、採用テストを実施して、優秀な人材を惹きつけておくことが重要なのです。
採用テストの受検方式
採用テストの受検方式は以下の3つです。
- Web受検
- 紙受検
- テストセンター受検
それぞれ解説していきます。
Web受検
Web受検は、その名の通りオンライン環境で実施される受検方式のことです。
会場と時間に囚われないため、応募者としては受検ハードルが低いのがメリットです。
また、企業としても採用テスト実施の手間がかなり省けます。
ただし、替え玉受検を防ぐ手立てがほとんどない点がデメリットです。
もし替え玉受検を可能な限り防ぎたいのであれば、Web受検はおすすめできません。
逆に効率性を重視したいのであれば、Web受検がおすすめです。
紙受検
紙受検は、受検生を会場に招いて実施する採用方式です。
Web受験と異なり、替え玉受検などの不正を防げるのがメリットとなります。
ただし、企業が会場やスケジュールを調整したり、検査結果を集計したりなど、莫大な手間が発生する点がデメリットです。
また、地理的にアクセスが難しい優秀な応募者を逃してしまう機会損失も考えられます。
テストセンター受検
テストセンター受検は、受検者をテストセンターに招きながらも、テスト運営の大半を外部に委託できる採用方式です。
不正を防ぐことができ、かつ採用テストの手間を外注できるのがメリットとなります。
ただし、やはり地理的にアクセスが難しい応募者を逃してしまう可能性がある点と、委託にかかるコストが高い点がデメリットです。
もし経済的に余裕があり、かつ不正リスクをゼロにしたいのであれば、テストセンター受検がおすすめとなります。
採用テストの選び方
採用テストは以下の3つの項目で選ぶのがおすすめです。
- 費用
- テスト形式
- テスト内容
それぞれ詳しくみていきましょう。
選び方①:費用
まずは採用テストにどれほどの予算をかけられるかを明確にしましょう。
その上で、予算に見合った採用テストを選ぶのがおすすめです。
また、採用テストによって料金形式が異なる点に注意が必要です。
例えば「SPI3」の場合、初期費用ゼロで、受検人数ごとに料金が請求されます。
一方、「玉手箱Ⅲ」は受検料の前に年間利用料が120万円(または250万円)発生します。
「玉手箱Ⅲ」が中小企業より大手企業での利用率が高いのは、このためです。
選び方②:テスト形式
先ほども述べた通り、採用テストには「Web受検」「紙受検」「テストセンター受検」の3種類のテスト形式があります。
採用テストによっては、テストセンター受検やWeb受検に対応していないこともあるため、注意が必要です。
また、自社にとってどのテスト形式が最適かを見極めることも必要でしょう。
採用テストにどれだけの労力をかけられるかを意識するのが重要です。
選び方③:テスト内容
採用テストは、応募者の能力や素質を見極めることが目的です。
そのため、自社のマッチ度を測定できるテスト内容かどうかを基準に、採用テストを選ぶ必要があるでしょう。
また、採用テストを利用する目的によって、求められるテスト内容も異なります。
例えば「集客」のために採用テストを活用したいのであれば、フィードバックに対応している採用テストを選ぶべきです。
「なぜ採用テストを用いるのか?」を明確にしてから、採用テストを選ぶようにしましょう。
おすすめの採用テスト3選
採用テストのおすすめは以下の3つです。
- SPI
- 玉手箱
- ソシキサーベイ
それぞれ詳しくみていきましょう。
SPI3
まず検討すべきなのは「SPI3」です。
SPI3は全国的に用いられている採用テストなので、応募者の多くが対策を実施しています。
「SPI3以外は応募しない」という応募者もいるほどなので、より多くの応募者を集めたいのであれば、SPI3を選んでおくのが無難かもしれません。
SPI3は能力検査、性格検査に分けられており、大卒採用だけでなく中途採用や高卒採用にも対応しているのが特長です。
また、Web受検、紙受検、テストセンター受験のいずれにも対応しています。
料金は、初期費用ゼロで、実施1名あたり4,000円から5,500円です。
応募者が少ない中小企業におすすめの料金体系となっています。
玉手箱Ⅲ
玉手箱ⅢもSPI3と同様に全国的に用いられている採用テストで、能力検査と性格検査で構成されています。
Web受検、紙受検、テストセンター受検のいずれにも対応しています。
料金は、年間利用料が120万円か250万円のどちらかで、1人あたりの受検料が500円か1,000円のどちらかです。
そのため、大規模の実施であればあるほど、お得に利用できます。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 採用テストは採用プロセスの中で実施されるテストのことで、能力検査と性格検査で構成されていることが一般的
- 採用テスト実施率は約90%で、SPI3と玉手箱Ⅲが人気
- 採用テストは「見極め」だけでなく「集客」や「惹きつけ」といった目的で実施されることが増えている
新卒一括採用の性質上、採用テストを用いてボーダーラインを設定することは必要不可欠です。
また、売り手市場の傾向が強い現代では、「集客」や「惹きつけ」で採用テストを活用するケースが増えています。
活用のやり方次第では、優秀な人材を獲得できる可能性がグンと高まるでしょう。
「とりあえずSPI3を実施する」ではなく、明確な目的を持って、採用テストを実施するのがおすすめです。