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「ポーターの競争優位の戦略」とは?3つの戦略の基本とリスク、中小企業が活用するべき理由

「ポーターの競争優位の戦略」とは?3つの戦略の基本とリスク、中小企業が活用するべき理由

突然ですが、このようなことを感じたことはないでしょうか?

  • 「経営資源が乏しい中小企業が生き残るにはどうすればいいのだろうか?」
  • 「ライバル企業に対して競争優位性を維持・獲得できる戦略が知りたい」

このような疑問に答えを出してくれるのが「ポーターの競争優位の戦略」です。この戦略は、3つの基本的な戦略からなる、企業がライバルとの競争に勝つためのフレームワークです。

簡単に説明すると、コストを下げるか、差別化をするか、顧客を限定して経営資源を集中させるか、このいずれかによって競争優位性を確保するというもの。

この記事を読むことで、ポーターの競争優位の戦略について、

  • 3つの戦略の内容がわかる
  • 3つの戦略のリスクがわかる
  • 中小企業が活用するべき理由がわかる

ようになります。ぜひ、3つの基本的な戦略について理解を深めて、自社に最適な戦略を検討してみてください。

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「ポーターの競争優位の戦略」とは

先ほど紹介したように、「ポーターの競争優位の戦略(Three Generic Strategies)」は、ライバル企業との生存競争に勝ち、競争優位性を確保し続けるための戦略として提唱されたフレームワークであり、経営戦略論です。この戦略は「ポーターの3つの基本戦略」や「ポーターの基本戦略」とも呼ばれています。

1980年にアメリカのハーバード大学経営大学院教授であるマイケル・ポーター氏が、著書「競争の戦略」で、企業が競争で勝ち続けるために必要な下記の「3つの基本戦略」を提唱したことが始まりです。

  • コストリーダーシップ戦略(ライバルより低価格・低コストで提供する戦略)
  • 差別化戦略(独自のポジショニングをとる戦略)
  • 集中戦略(上記のどちらかを狭いターゲットに対してのみ用いてリソースを集中させる戦略)

この3つのなかから自社に最適な戦略を1つだけ選んで展開していくことが一般的ですが、その時の環境や組織の状態によっては、上記のなかからいくつか選んで並行して展開することもあります。また、この戦略は世界中で用いられています。

ポーター氏はこの戦略論の目的として、下記の3つを挙げています。

  • 組織のトップが自社がどのような環境で戦っているか把握する
  • 将来的にその環境がどのように変わっていくかを推察する
  • 強力なポジショニングができる戦い方を実行する

現時点で会社がどのようなポジションにあり、どのように戦えば競争で優位に立てるのかを考え、戦略を選んでいくことが重要です。

ターゲットを狭くとるか、広くとるか

市場における自社の立ち位置に関する戦略には、基本的には2つしかありません。他の企業よりもコストを抑えたポジショニングか、機能性や質の高さといった差別化をするポジショニングかのどちらかです。

つまり、安価な価格で優位に立つか、価格以上の付加価値をつけて優位に立つかということになります。このどちらかを選ぶ際に、ターゲットをライバル企業よりも広くとるか、狭くとるかといった、競争の幅を検討する必要があります。

したがって、

  • コストリーダーシップ戦略においては、価格を抑えて多くの消費者を対象とする
  • 差別化戦略においては、差別化しつつ多くの消費者を対象とする
  • 集中戦略においては、対象とする消費者を限定したうえで、コストか差別化のどちらかにリソースを集中させる

といったかたちになります。

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中小企業こそ「ポーターの競争優位の戦略」を活用するべき理由とは

「ポーターの競争優位の戦略」は、うまく使うことができれば、中小企業にとって非常に強力な武器となり得ます。

なぜなら、中小企業は規模が大きい企業よりも、経営資源の面で圧倒的に不利な立場にあるため、戦略も持たずに立ち向かったところで勝てないからです。また、1つの戦略に絞らずに、いくつかの戦略を同時に展開してもリソースが分散してしまい、成果をあげられません。

しかし、例えば「集中戦略」を用いて、ライバル企業とは何らかの違う優位性を自社の商品やサービスにもたせたうえで、ターゲットとする消費者を限定してリソースを集中投下する戦略なら、中小企業でも大企業と渡り合えます。

この戦略が効果的な理由は、中小企業の数少ない経営資源をムダにせずに用いることができるからなのです。

「窮地に陥った企業」とは?

ポーター氏は「3つの基本戦略」を提唱しましたが、このうちの1つも実行できない状況にある企業を「窮地に陥った企業」と定義し、高い利益をあげられないことを問題視しています。

一度そうなってしまうと、その状態から抜け出すことは容易ではなく、長期的な戦略とそれを地道に実行し続けるために骨を折る覚悟が求められます。

つまり、このような状況に陥りがちな中小企業こそ、ポーターの3つの戦略のうちから1つ選んで、実行しなければならないのです。

上記では「場合によっては複数の戦略を同時併用する」と解説しましたが、差別化戦略とコストリーダーシップ戦略を同時に用いるのは、リソースが少ない中小企業には厳しいため、まずは1つだけを選ぶべきでしょう。

「ポーターの競争優位の戦略」① コストリーダーシップ戦略とは

製品やサービスの製造・提供コストを下げることで、ライバル企業よりも競争優位性を保つ戦略が「コストリーダーシップ戦略」です。

安く消費者に提供することによって、ライバル企業よりもマーケットシェアを拡大できます。また、ライバル企業も価格を同じ水準に下げてきた場合でも、製品やサービスを製造・提供するコストをライバル企業よりも下げることができていれば、同じ価格帯でも自社のほうが大きな利益をあげられます。

また、市場シェアを広げられると仕入れるコストを減らせるため、さらに低コストでの提供ができるのです。

コストを減らすための方法

コストカットを実現するためには、下記のような施策があげられます。

  • 生産する規模や生産量を大きくすることで固定費を効率化する
  • 業務や作業効率をあげて従業員の生産性を向上させる

上記のような施策をすることで「規模の経済」という理論が働くため、単位当たりのコストを減らせます。

また、「生産量を増やせば増やすほど、製品一つ当たりのコスト削減につながる」という学習曲線の理論も用いられます。

技術によるコストカット

生産の規模を大きくすることで「規模の経済」が働き、コスト削減につなげられますが、「技術」には規模の経済が働きません。つまり、技術によってコストの差が生じるのです。例えば、製鉄会社は新たな技術が実用化されることで、製鉄するコストを削減できるかもしれません。

さらに、このようなハード的な技術ではなくても、ソフト面の技術でもコストカットに大きく寄与します。例えば、トヨタの「カイゼン」は秒単位で作業時間を減らすなどの活動が積み重なることで、大きなコスト削減につながっています。

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「ポーターの競争優位の戦略」② 差別化戦略とは

自社が提供する商品やサービスに、ライバル会社とは違う機能やデザインを採用し、何らかの優位性を持たせることで高価格帯でも売れるようにする戦略が「差別化戦略」です

戦略的に差別化を推し進めて、そのサービスや製品の差異が消費者にとって有益なものであれば、価格を下げることでシェアを拡大しようとする価格競争から抜け出すことができます。

差別化が成功すればブランド価値の向上にもつながるため、ライバル企業には容易に真似されない戦略となり、さらに競争優位性を確立できます。同じジャンルの製品やサービスを提供するライバル企業が、低価格戦略で勝負を仕掛けてきたとしても、ブランドがあるため有利に立ち回れるのです。

さらに、そもそも差別化しているので、そう簡単には代替品の提供がされることはありません。

差別化戦略の成功事例

この戦略で成功している企業は、シャネルやエルメス、ルイヴィトンといったハイグレードな商品を扱う企業があげられます。

バッグとしての機能を満たすのであれば、数千円のものでも事足りるはずです。しかし、一般的にこれらの企業のバッグは、普通のバッグよりも数十倍も値段が高いにも関わらず、飛ぶように売れていますよね。

これは、「機能性のある数千円のバッグ」に対して「所有すること自体が嬉しい、持つこと自体がカッコいいバッグ」といったステータスを感じるような差別化を図ることで、一気にブランド価値が向上しているのです。

これらのハイブランドは、価格を下げて競争する必要がありません。

また、こういった数十倍もの価格差をつけなくても、差別化戦略で成功している企業も存在します。例えば、マクドナルドに対して品質や価格で差別化を図っているのがモスバーガーです。

モスバーガーは国産の食材を用いたり、できたてを提供するといった「高品質のものを提供する」という戦略でマクドナルドと差別化しています。また、低価格帯のハンバーガーならマクドナルド、高級志向ならアメリカ発の高価格帯のハンバーガー店という選択肢もありますが、モスバーガーではそのどちらでもない中間に位置する価格帯です。

「中途半端」とも言われることもありますが、あえて誰もいない中間の価格帯にポジショニングしているともいえます。

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「ポーターの競争優位の戦略」③ 集中戦略とは

ターゲットとなる消費者を限定して経営資源を集中する戦略が「集中戦略」です。これは「ニッチ戦略」と呼ばれることもあり、「市場が小さすぎる」や「ブランドに悪影響がある」などの理由から大企業が手を出さない市場に参入します。

集中戦略には下記のような二通りの方法があります。

  • 特定の消費者に対してコストリーダーシップ戦略を展開する
  • 特定の消費者に対して差別化戦略を展開する

集中戦略を実行する際に欠かせないことは、顧客を限定し、ターゲットを狭めることです。特定のセグメントに対して経営資源を集中させることで、より効果的・効率的に競争優位を確保できます。

ターゲットを狭めることでニーズを満たしやすくなり、特定の市場においては自社が「コストリーダーシップ戦略」と「差別化戦略」を並行して実現できるようにもなります。

また、集中戦略は経営資源が乏しい組織でも成果を出しやすいため、中小企業に向いている戦略です。戦略においては「選択と集中」が重要であり、何を選び、何を捨てるかという「集中戦略」は戦略の基本でもあります。

「ポーターの競争優位の戦略」が持つそれぞれのリスク

現代社会で企業として存続させていくためには、どのような組織でもポーターの3つの基本戦略のなかから、どれかを用いる必要があります。どの戦略にも採用することで期待できる効果はありますが、その一方でリスクもあります。

それぞれのリスクを考慮した上で、自社が置かれた状況と照らし合わせて戦略を実行していかなければなりません。

ここでは、それぞれの戦略が持つリスクを解説していきます。

コストリーダーシップ戦略のリスク

この戦略のリスクは、経営資源が豊富なライバル企業が同じ戦略を展開することで、利益を無視した価格競争に陥る危険性があることです。

また、低コストを実現したとしても、そのポジションを確保し続けるためには生産設備などを常に最新にする必要があり、そのための投資などが負担となるでしょう。さらに、技術革新により市場の環境が変化し、投資が無意味になることもあるかもしれません。

コストカットに集中するあまり、ニーズの変化に気づけなかったりマーケティングに注力できなくなることもあります。

差別化戦略のリスク

いくら商品やサービスを差別化したとしても、その「違い」をライバル企業にマネされてしまっては差別化戦略も意味をありません。つまり、模倣により差別化が無価値になるというリスクがあります。

また、「差別化すること」自体が目的化してしまい、差別ポイントが消費者に求められていないものとなる危険性もあり、こうなってしまうと顧客を失いかねません。

集中戦略のリスク

集中戦略では小さい市場を開拓していきますが、市場が小さすぎるがあまり、利益が確保できない状態に陥るリスクがあります。

また、市場が小さいため生産の規模を大きくすることが困難です。したがって「規模の経済」が働かず、ライバル企業とコストの差が大幅に広がってしまうかもしれません。

このように、それぞれの戦略を展開する際に生じる可能性のあるリスクを把握しておかなければ、臨機応変な対処ができなくなるでしょう。

まとめ

「ポーターの競争優位の戦略」である3つの戦略を解説しました。

基本的に経営資源が豊富な企業以外は「コストリーダーシップ戦略」は実現することは難しいでしょう。経営資源が乏しい中小企業や、創業して間もない企業であればなおさら困難であるため、必然的に残り2つの戦略のどちらかを選ぶことになります。

ここで、「両方の戦略を同時に実行していけば、さらに効果がでるのではないか?」と考える方もいるのではないでしょうか。

しかし、この選択はあまり懸命ではありません。なぜなら、ポーター氏は経営資源が乏しい企業が複数の戦略を展開してしまうと、中途半端な結果に終わる可能性が高く、パフォーマンスを最大限発揮できない「スタック・イン・ザ・ミドル」という状態になるとしているからです。

重要なことは、1つの戦略を選び、その戦略に徹底的に集中し、他の戦略には手を出さないことです。実際、戦略がうまくいっている企業は、集中と選択を徹底して行っています。

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