デファクトスタンダードとは?意味・事例・対義語・ポイントを解説

デファクトスタンダードを獲得して大きなメリットを手に入れよう

デファクトスタンダードとは、市場競争を勝ち抜いた製品や規格が事実上の標準となることです。たとえば、パソコンのOSではWindows、ビジネスシーンのソフトではMicrosoft Officeがデファクトスタンダードです。デファクトスタンダードになると市場に左右されずに利益が上げられ、パテント料も入ってきます。

デファクトスタンダードには大きなメリットがあります。今回の記事ではデファクトスタンダードの意味や対義語、デファクトスタンダードの事例を紹介します。くわえて、デファクトスタンダードを獲得するためのマーケットシェア理論についても触れます。

デファクトスタンダードとは

デファクトスタンダード(De facto standard)とは「事実上の標準」意味します。公的な標準化機関から認証を受けるのではなく、市場競争によって業界標準と認められた規格を指します。たとえば、ある商品が大人気になり誰もが当たり前に使うようになると、その後に発売される商品は人気商品を参考にします。

こうして、デファクトスタンダードとして定着していきます。デファクトスタンダードとは逆に、標準化機関から認証を受けて標準になることをデジュールスタンダードと呼びます。

デファクトスタンダードの特徴

一般的に新興市場であるほど複数の規格が乱立します。しかし、市場競争が進む中で最終的に1つの規格が市場を占める流れが多く見られます。こうして勝ち残ることができた規格は、公的な認証を持っていなくても業界標準として認められます。企業にとってデファクトスタンダードになることは、市場競争に勝利したことを意味します

必ずしも技術的優位の規格がデファクトスタンダードになるわけではありません。いかに消費者やメーカーに受け入れられ、市場シェアを握るかが勝負のポイントです。複数の企業が連携して統一的な規格を策定するケースもあります。

デファクトスタンダードの対義語

デファクトスタンダードの対義語はデジュールスタンダードです。英語では「De jure standard」と書き、「De jure」は「法律上の」という意味を持つラテン語です。デジュールスタンダードは、公的機関や標準化機関によって標準規格と定められたものを指します

デジュールスタンダードの代表的な例は乾電池です。乾電池の大きさや種類、材料などの規格は国際標準化機関や企業、専門家が議論して策定しました。市場競争で決定されたわけではなく、デジュールスタンダードの代表例として挙げられます。

デジュールスタンダードの規格

デジュールスタンダードの代表的な規格について紹介します。代表的な規格は「国際標準化機構(ISO)」「米国国家規格協会(ANSI)」「日本産業規格(JIS)」です。

 国際標準化機構(ISO)

国際標準化機構(ISO)は「International Organization for Standardization」の略称です。ISOは「アイエスオー」「イソ」「アイソ」と読みます。162の標準化団体で構成されている国際規格の世界的相互扶助を目的とする独立組織で、国家間に共通の標準規格を提供しています。

ISOの規格の例は「非常口のマーク」「カメラの感度」「カードのサイズ」「ネジの大きさ」などがあります。ISO標準は製品やサービスの消費者を保護し、認定製品が国際的な最低限の基準に達していることを保証します。

米国国家規格協会(ANSI)

米国国家規格協会(ANSI)は「American National Standards Institute」の略称です。アメリカ合衆国内の工業分野における標準化組織がANSIです。ANSI自体は規格を作成せず、SDOsと呼ばれる280以上の規格開発団体が作成した規格を承認します。ANSIに承認された規格は米国国家規格として認定されます。

ANSIは「アンシ」「アンジ」「アンシー」と読みます。ANSI規格は日本のJISに相当するとされますが、日本のJISは政府が認定するのに対して、ANSIは政府から独立した非営利組織です。

日本産業規格(JIS)

日本産業規格(JIS)は「Japanese Industrial Standards」の略称です。産業標準化法に基づき政府が制定する国家標準の1つで、JIS(ジス)やJIS規格と通称されています。1949年より長らく日本工業規格と呼ばれてきましたが、2019年の法改正に伴って改称されました。

JIS規格の身近な例では「マッチ」「蛍光灯」「道路の誘導ブロック」「鉛筆」などがあります。

デファクトスタンダードのメリット

デファクトスタンダードを獲得することは大きなメリットがあります。市場の動向に製品が左右されにくくなりますし、規格を他社が利用するならパテント料が入ります。広く消費者に認知されればマーケティングコストの軽減も可能です。デファクトスタンダードを目指して他社と連携すれば、新しい技術やノウハウが得られます。

デファクトスタンダードを獲得することは企業にとって大きな魅力です。

市場の変化に左右されない

デファクトスタンダードの大きなメリットの1つは、市場の変化に左右されないことです。デファクトスタンダードを確立した製品には安定した顧客がつき、その商品に基づいた商品がさらに開発されていきます。Windowsがその好例でしょう。Windowsで動くソフトが次々と開発され、Windowsの資産としてストックされていきます。

自社製品でデファクトスタンダードを狙う企業も少なくありません。しかし、デファクトスタンダードは市場独占につながる懸念もありますので、市場へのアプローチには注意が必要です。

パテント料を得られる

自社の技術がデファクトスタンダードの地位を確立するとパテント料が得られます。パテント(Patent)の意味は特許や特許権です。パテント料とは権利者以外が、権利者の許可に基づいて特許を使用するときに支払うライセンス料やロイヤリティーのことです。

価格も優位に決定できるため、競合他社と争うことなく有利な立場でビジネスを進められます

他の企業と連携して技術開発

デファクトスタンダードの恩恵は巨大です。そのため、1つの企業でデファクトスタンダードを独占せず、複数の企業で連携してデファクトスタンダードを作り出そうとする動きがあります。デファクトスタンダードを目指して他の企業と連携できるのは大きなメリットです

昨今ではニーズが多様化しており、さまざまな企業が協力して1つの商品や企画を成長させていく傾向があります。他の企業との連携により技術力が向上したり、新たなノウハウを手に入れられたりします。

コストの削減

デファクトスタンダードに企画や製品が成長すると、消費者に広く認知されることになります。消費者に広く認知されると、自社製品や規格を広めるためのマーケティングコストが軽減できます。

デファクトスタンダードのデメリット

デファクトスタンダードは大きなメリットがありますが、デメリットが皆無ではありません。デファクトスタンダードを獲得することのデメリットについて紹介します。

消費者にとってマイナスの場合も

市場競争の中でデファクトスタンダードとなった製品や規格が、必ずしも消費者にとってよいものだとは限りません。たとえば、WindowsはOS市場シェアを握りデファクトスタンダードになりましたが、少なくないユーザーがWindowsに不満を抱いていました。

Windowsでしか使えないソフトやツールがあり、仕方なくWindowsを使っている人も多くいました。必ずしもデファクトスタンダードは消費者にとってよいものではありません。市場が独占されてしまうと、消費者はニーズに合ったものを選べないことが往々にしてあります。

特許権侵害などへの対応

デファクトスタンダードは模倣品が作られる危険性があります。模倣品が特許権を侵害しているなら、訴訟で対応しなければなりません。訴訟には多くの手間と時間がかかります。国際的なデファクトスタンダードだと国によって法律が異なるため、さらに対応が複雑化する恐れもあります。

独占禁止法に抵触する恐れ 

デファクトスタンダードを獲得して市場を独占しすぎると、独占禁止法に抵触していると訴訟される可能性があります。独占禁止法とは、有力企業が競合相手を排除して市場を独占したり、談合で価格競争を制限したりすることを防ぐ法律です。略して「独禁法」とも呼ばれます。公正な市場競争を促すのが独占禁止法です。

デファクトスタンダードが生まれる過程

デファクトスタンダードは市場競争によって生まれます。市場競争に勝ち抜くことだけがデファクトスタンダードを生み出す条件です。しかし、複数の企業で連携すれば市場競争を有利に進められます。デファクトスタンダードが生み出される過程について解説します。

市場競争に勝利して獲得

デファクトスタンダードは公的な標準化機関や団体に認められてるわけではなく、市場競争の勝利によって獲得できるものです。デファクトスタンダードを獲得するためには市場競争への勝利が不可欠です。他の製品よりシェアを獲得し、消費者やメーカーに支持されなくてはなりません。

そうして、激しい競争を勝ち抜いた製品や規格だけがデファクトスタンダードとなれます。

複数の企業で連携してする

市場競争で勝ち抜くために必要なのは、必ずしも技術力とは限りません。多くのシェアを獲得し、消費者に支持されることが求められます。そのため、複数の企業で連携を取る方法が考えられます。複数の企業で連携を取ればライバルが少なくなりますし、お互いのノウハウによって質の高い製品を生み出すことが可能です

デファクトスタンダードの事例

ここではデファクトスタンダードの事例をいくつか示します。どういった製品があったのか参照することでデファクトスタンダートのイメージがつかみやすくなるはずです。

Windows

パソコンのOSとして大きなシェアを握るWindowsは、デファクトスタンダードの代表格です。1985年に発売された当初、WindowsよりMacの方がクオリティが高いと評価されていました。にもかかわらず、Windowsは世界的なシェアを握りました。

「多くの人が使っているから」「思想的にWindowsが優れていたから」「時代に合ったから」などの理由が考えられています。

DVDやブルーレイ

テレビ番組を録画するときのデファクトスタンダードはDVDやブルーレイです。テレビ録画のスタンダードはビデオテープ(VHS)でしたが、DVDがデファクトスタンダードとなり、近年ではブルーレイがシェアを広げつつあります。デファクトスタンダードはこのように、時代とともに移り変わっていきます。

USB端子

USB端子はパソコンやスマートフォン、タブレットに搭載されています。USB端子にはType-AやType-B、Type-Cといった形状がありますが、最近のスマートフォンやタブレットではType-Cがデファクトスタンダードになりつつあります。逆に、ノートパソコンやデスクトップパソコンでは今まで通り、Type-Aがデファクトスタンダードです。

USB端子のように、デバイスによってデファクトスタンダードになる形状や規格が異なる製品もあります。

QWERTY配列

QWERTY配列とはパソコンのキーボード配列です。QWERTY配列はタイプライター時代に確立され、経路依存性によって現在もデファクトスタンダードであり続けています。経路依存性とは「合理的な理由なく決定した過去が現在を制約する」という現象のことです。

QWERTY配列はその代表例とされます。デファクトスタンダードになると経路依存性によって、よりデファクトスタンダードである経路が強化されます。

LINE

日本のSNSシェアにおいてLINEはダントツの1位です。Twitterに利用者数が4500万人に対してLINEは8800万人とほぼ2倍に達します。LINEとはクローズドのSNSで、無料のチャットや電話が楽しめるツールです。LINEの代替アプリであるSkypeやMessenger、ハングアウトを押さえてデファクトスタンダードになりました

現在、ビジネスシーンではLINEよりChatworkがデファクトスタンダードになりつつあります。今後の動向が注目されます。

Zoom

新型コロナウイルスでテレワークが推奨され、テレワークで会議するためのツールとしてZoomが注目されています。ビジネスシーンのビデオ会議のみならず、Zoom飲み会にも利用されています。Zoomの代替アプリとしてはWebexやGoogle Meet、Microsoft Teamsがありますが、Zoomがそれらを押さえてデファクトスタンダードになっています

TCP/IP

TCP/IPはインターネット接続するためのプロトコルの一種で、TCP(Transmission Control Protocol)とIP(Internet Protocol)を組み合わせたものです。TCP/IPはインターネットプロトコルとして急速に発展し、世界標準のデファクトスタンダードとなりました。インターネットに接続できるパソコンはTCP/IPに対応したOSを備えています。

TCP/IPに対応していれば異なるOSやモデム、デバイスであっても相互に通信することができます。

イーサネット(Ethernet)

イーサネットもデファクトスタンダードの一種です。パソコンやタブレットの通信は有線LANと無線LANに分かれますが、有線LANを備えているデバイスに搭載されているのがイーサネットです。イーサネットは1976年に正式に発表され、1980年代になって実用化されてデファクトスタンダードになっていきました

一方、無線LANの規格である「Wi-Fi」もデファクトスタンダードの一種です。パソコンやプログラミング、インターネットの世界ではデファクトスタンダードが生まれやすいと言えます。

Microsoft Office

Microsoft Officeはビジネスシーンで多く使用されている定番のソフトです。Microsoft Officeは1983年に「Multi-Tool Word」として発売されました。複数のオフィス用ソフトがセットになった状態で発売されたのは1989年です。Windows向けには1990年に初めて発売されました。

WordやExcel、PowerPointといったビジネスシーンで欠かせないソフトがセットになったデファクトスタンダードです

VHS

VHSはVideo Home Systemの略で、日本ビクターが1976年に開発した家庭用ビデオ規格です。当時は家庭用ビデオレコーダーの規格争いが勃発しており、VHS対ベータマックスのビデオ戦争と呼ばれました。その他にも、最初期にはカセット規格としてU規格やVコード、オートビジョン方式、VX方式などもリリースされました。

ビデオ戦争制してVHSはデファクトスタンダードになりました。その他にも、ビデオ戦争としてはBlu-ray Disc対HD DVDが有名です。

デファクトスタンダードを獲得するための市場シェア理論

デファクトスタンダードになるためには市場競争に勝利する必要があります。市場競争に勝利するとは、すなわちシェアを獲得することです。マーケットのシェア獲得のための理論をいくつか紹介します

クープマンの目標値

ランチェスターの法則を研究したアメリカの数学者B・O・クープマンによって作られた市場シェア理論のことで、クープマンの目標値によって市場でのポジションや意味付け、優劣を判断できます

  1. 独占的市場シェア 73.9%
  2. 安定的トップシェア 41.7%
  3. 市場影響シェア 26.1%
  4. 並列的競争シェア 19.3%
  5. 市場認知シェア 10.9%
  6. 市場存在シェア 6.8%

 

これら6つの市場シェアにそれぞれ意味付けがなされています。どの程度シェアを取ればデファクトスタンダードになれるか、クープマンの目標値からわかります。

イノベーター理論

イノベーター理論とはアメリカ・スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャースが提唱した理論です。消費者を5つの層に分類することで、製品やサービスがどのように市場に普及していくのかを分析した理論です。イノベーター理論では以下のように消費者を分類します。

  1. イノベーター(革新者) 2.5%
  2. アーリーアダプター(初期採用者) 13.5%
  3. アーリーマジョリティ(前期追随者) 34%
  4. レイトマジョリティ(後期追随者) 34%
  5. ラガード(遅滞者) 16%

そして、それぞれの消費者に向けたアプローチが必要だとイノベーター理論は説きます。性格の異なる消費者に、段階ごとにマーケティングすることでシェアを拡大していく理論です。

コトラーの競争地位戦略

コトラーの競争地位戦略はマーケットシェアの大小に着目し、競争地位に応じた企業の戦略目標を提示する理論です。1980年にフィリップ・コトラーが提案した競争戦略理論で、マーケットシェアの観点から企業を4つに類型化し、競争地位に応じた戦略を提示しています。

4つの類型は「マーケットリーダー」「マーケットチャレンジャー」「マーケットフォロワー」「マーケットニッチャー」です。

まとめ

デファクトスタンダード(De facto standard)とは「事実上の標準」を意味し、市場競争によって業界標準と認められた規格や製品を指します。新興市場では複数の規格や製品が乱立しますが、市場競争を勝ち抜いた規格や製品がデファクトスタンダードとして残ります。

デファクトスタンダードの例は「Windows」「LINE」「イーサネット」など枚挙に暇がありません。もっとも象徴的な例はビデオ戦争におけるVHSかもしれません。デファクトスタンダードを獲得するには市場競争で勝ち抜くための技術力やマーケティング力が必要です。