部下ができると、より高い生産性を上げるためにリーダーシップの取り方に焦点が当たりがちです。
しかしながら、高いパフォーマンスを発揮するためには、対人関係にも注意を払うマネジメントスキルも不可欠です。
一方的なリーダーシップでは理解が得られずに、離職者や休職者を生むことになるからです。
加えて、部下一人ひとりの性格や能力も異なります。
そこで必要になるのがリーダーシップとマネジメントスキルを兼ね備え、部下に合わせて使い分けることです。PM理論の4タイプ を知り、使い分けを進めましょう。
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目次
PM理論とは?
社会心理学者である三隅二不二(みすみ じゅうじ)は、リーダーに必要なのはリーダーシップとマネジメントであるとしてPM理論を提唱しています。
Pとは目標達成能力(Performance function)を指し、部下への指示や命令などのチームを率いることです。
Mとは集団維持能力(Maintenance function)を指し、部下のフォローや相談などのチームの人間関係を円滑に保つことです。
P値とM値をもとにPM型、Pm型、pM型、pm型の4つに分類されます。
PM型は目標達成能力も集団維持能力も高い状態を指します。
Pm型は目標達成能力は高いものの、集団維持能力が低い状態を指します。
pM型は目標達成能力は低いものの、集団維持能力が高い状態を指します。
pm型は目標達成能力も集団維持能力も低い状態を指します。
PM理論においては、リーダーはPM型を目指すように推奨されています。その理由として、大多数の部下において効果性が期待されるリーダーの在り方であるためです。
PM型はリーダーとして業務の問題点を明らかにし、一人ひとりに業務の指示を出し、チーム全体を率います。同時に躓いている部下がいれば、助け舟を出したり、個別に相談に乗ってフォローしたりします。
部下は目標やチームとしての方向性が明確に示され、一人ひとりの取り組むべき業務が与えられているため、安心して取り組むことができるでしょう。
部下ができたのならば、まずは一人ひとりの力量を正確に見極めて指示を出し、チームの抱える課題にいち早く気づいて手を打てるようになるのが望ましいです。
チーム全体を見渡す心のゆとりを持ち、部下たちのフォローを欠かさず行えることで部下の不満や予期せぬ退職なども防止し、高いパフォーマンスを上げることができます。
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問題の解決策の提示と励ましが必要な部下タイプ
1つ目が問題の解決策の提示と励ましが必要な部下タイプです。一般的にはリーダーには明確な指示だしとともに、チーム全体が良好な関係で業務に当たれるようなサポートの両面が求められます。PM理論上はPMタイプ型のリーダーとしてのかかわりになります。
たとえばこのような具合です。
Sさんが別の部署から異動してきました。新部署は今までの業務と全く異なり、当初は慣れない業務内容で時間がかかり、ミスも目立ちました。ミスの改善がされずに、同じチームメンバーから疎まれるようにもなっていました。
上司はSさんに対して個別で呼び出し、業務の手順書を配布とフローの確認を実施しました。個別指導によって躓いているポイントがわかり、改善策を講じました。
また、ランチの際に積極的にSさんを誘って、仕事上の相談に乗ったり、「Sさんはできると信じている」と励ましたりなど、フォローも続けました。結果的にミスは激減し、チームメンバーとも良好な関係を築けるようになりました。
このように部下の業績不振やミス等の原因を見つけ、解決策を提示するなどの指導だけでなく、相談や励ましなどのサポートを行うことが効果性を発揮します。
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指示出しや目標数字の明確化が効果的な部下タイプ
2つ目がリーダーシップのみが効果的なタイプです。PM理論上は、Pm型のリーダーとしてのかかわりになります。
PM理論ではPM型が最も生産性が高いとされていますが、ケースバイケースでPm型が良いときも存在します。
Pm型のかかわりが良い部下は、対人関係的なマネジメントがほとんど必要なく、指示出しや目標の明確化などが必要となる部下とのかかわり時です。転職社員や部署移動してきたものなどに必要になります。
例えば、こんな話があります。
新しく転職してきたAさんは、前職で優秀な営業成績を収めていましたが、一向に成績が振るいません。
上司は様子見の状態からテレアポ方法の指導をし始めました。テレアポと対面営業の違いに苦しんで業績不振だったAさんも、具体的な営業法などの指導を受け、やがて業績が伸びていきました。
これは某企業内のリーダーシップの実例になります。
仕事のやり方がわからない部下や目標となる数字の追い方ができない部下に対しては、心理的側面から相談に乗るのではなく、具体的な業務に合わせた指示出しや週ごとの目標数字の明確化などの手法が有効となり、生産性向上に結び付きます。
ただし、Aさんが業績不振に陥っている原因が周囲との対人関係の不和の場合には、次に紹介するpM型のリーダーが効力を発揮します。
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仕事の指示ではなく、悩みを聞くことから入るべき部下タイプ
3つ目は指示不要で面倒を見た方が良い部下タイプです。PM理論ではpM型のリーダーとしてのかかわりになります。
例えば、こんな具合です。
Sさんが女性だけのチームのまとめ役を引き受けた際、具体的な業務の指示出しや一人ひとりに合わせた目標設定、明確な業務ルールなどを与えました。
しかし、部下が次々と離職し、数か月が経過する頃にはほぼメンバーが総入れ替わりとなりました。危機感を感じたSさんは「何かあったらいつでも相談に乗る」と伝え、部下とのコミュニケーションを増やしました。その結果、離職率が低下していきました。
この事例はPm型のコミュニケーションからpM型に変えたリーダーの事例です。Sさんは業務の細かな指示ではなく、面倒を見ることを高めました。このことかわかるのが、常にリーダーとして指示を出すことだけが有効ではないことです。
部下は励ましや相談などと言ったサポートや面倒を必要としていました。Sさんがその機能を向上させたことで、部下たちの不満は減少し、大幅な離職となっていた状況が改善したのです。
必ずしも女性の部下だからpM型が良いわけではありません。しかし離職や休職、チーム内のぎすぎすした雰囲気などが発生したときにはP値が高く、M値が低い状況に陥っています。M値を上げることで改善をすることができるでしょう。
また、先ほどのAさんの業務成績が上がらない状況が特定のだれかとの人間関係の不和、もしくはチームメンバーと馴染めないことなどの場合には、個別相談に応じて関係性の調整を試みたり、輪の中に入れるように率先して面倒を見たりすることも大切なことです。
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口を出さない方がよい部下タイプ
4つ目は静観が効果を発揮する部下タイプです。PM理論ではpm型のリーダーとしてのかかわりになります。
pm型のリーダーは放任主義に見られ、生産性もチームの親和性も下がりやすいとされています。
しかしながら、ある特定の部下に対しては有効になります。その部下タイプは、能力を引き上げたい部下や主体性を高めたい部下です。
例えば、ある小学校の教師は新卒で高学年の担任となりましたが、まだ指導力もサポートする力も不十分でした。的確な指導やフォローができない結果、児童同士の連結が強まり、自ら考えて行動するようになりました。
またある会社の役職のあるKさんは、「全責任は自分がとるから」と、まだ若手の部下にプロジェクトを任せました。具体的な指示をせずに、黙って見守った結果、信頼されていると感じ取った部下が拙いながらもプレゼンテーションで成功を収めました。
アプローチ方法は2つの実例ともに異なりますが、パフォーマンスもマネジメントもほとんど発揮していない点では共通しています。
pm型は部下の主体性が高まり、能力を底上げする可能性を秘めています。一方で完全に静観してフォローをしないと大失敗に至るケースやモチベーションが著しく低下するケースもあるため、部下の性格に合わせてPm型やpM型のリーダーシップをした方が良いこともあります。きちんと状況と部下の性格を見極め、気質として主体性があって開花できそうと見込む相手に使うのが無難です。
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まとめ 部下のタイプに合わせたリーダーシップを
一人ひとりに合わせたマネジメントができるようにするためには自らのリーダーの方をPM型にすることが必要です。
現在の自身のスキルとして、チームとしての課題点に気づく力がなければ高い目標達成能力がなく、pM型もしくはpm型のかかわり方しかできません。これはマネジメントにおいても同じことが言えます。
チームの成功を収めるために的確な指示を出す力や業務の割り振り、いち早くチームの課題点や解決すべき点などを見出して計画を立てる力があったとしても、チームを円滑にするためのサポート力がないのでは、チーム全体がぎくしゃくします。適宜様子を見ながら、困っている部下の相談に乗ったり、相手が意見を言いやすいようにコミュニケーションを円滑にしたりなどをしなくては、人間関係の不和による大事な人材の離職を誘発します。
部下ができたのならば、まずはPM型のかかわり方を習得することが不可欠です。その上で、部下に合わせてP値やM値を弱めて必要なかかわりだけをすることも求められます。
状況に応じたかかわり方ができることで、チーム全体が良い雰囲気で高い生産性を上げることができるでしょう。
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