信託型ストックオプションとは?従来型と比較したメリットやデメリット・注意点を解説

投稿日:2021/02/24

会社への貢献に対するインセンティブを与える目的で付与される「ストックオプション」ですが、近年では「信託型」のストックオプションが注目を集めています。

信託型ストックオプションは、従来型ストックオプションの問題を解決できる特徴を有しており、企業にとって使い勝手のよい仕組みです。
ストックオプションの活用を検討中、または従来型のストックオプションを活用中の企業は、信託型ストックオプションも選択肢の一つとして検討してみてください。

この記事では、信託型ストックオプションの仕組み・メリット・注意点などについて解説します。

 

従来型ストックオプションの問題点

 

従来型のストックオプションは、会社が役員・従業員に対して直接新株予約権を発行するという形をとっています。
そして、行使条件を満たした役員・従業員が、市場の株価よりも低い行使価格で新株予約権を行使し、キャピタルゲインを得るというものです。

しかし、従来型のストックオプションには以下の問題点があり、会社にとって必ずしも使い勝手が良いとはいえません。

 

付与するたびに新株予約権の発行手続きを要する

会社が個別に発行する従来型のストックオプションは、付与対象の役員・従業員が現れるたびに発行手続きをとることが必要です。
具体的には、主に以下の手続きが必要になります。

・株主総会決議
・申込みと割当ての手続き
・新株予約権原簿の作成
・新株予約権の登記

上記の工程には、弁護士・司法書士などの専門家報酬を中心としたコストがかかります。
さらに、会社内担当者と専門家とのやり取りもその都度発生するので、事務的な手間も無視できません。

このように、従来型ストックオプションの発行頻度が高くなると、手続きコストがかさんでしまう点に注意が必要です。

 

数量を予め決めておく必要がある|付与後の貢献を考慮できない

従来型のストックオプションでは、当初の発行時点で付与数量を予め決めておく必要があります。
そのためどうしても、役員・従業員の入社時点での資質・能力から、会社に対する将来の貢献度を推測してストックオプションという形にならざるを得ません。

逆に言えば、入社後の貢献度を当初発行の数量に反映できないことが、従来型ストックオプションのデメリットといえます。

 

行使価格が付与タイミングによってバラバラ

従来型のストックオプションの行使価格は、新株予約権発行時点での株価を基準として決定されます。
会社が成長している場合には、発行時期が後になるほど行使価格が高騰しますので、能力のある人材に対する適切なインセンティブを与えるために必要なストックオプションの付与数量がどんどん増えます。

しかし、ストックオプションを大量に発行することには株式の希薄化の問題がありますから、会社の事業規模が大きくなればなるほど、従来型のストックオプションは使いづらくなる側面があります。

 

税制適格要件の制約を強く受ける

ストックオプションは、付与時・権利行使時の所得税などの課税を回避できるように設計しなければ、役員・従業員に与えるインセンティブが削がれてしまいます。

この観点から、無償割当ての方法により発行される従来型ストックオプションは、厳格な税制適格ストックオプションの要件を満たすように設計する必要があり、制度設計に柔軟性を欠くという難点があります。

 

信託型ストックオプションとは?

 

信託型ストックオプションは、従来型ストックオプションにおける問題点に対するソリューションとして、近年注目を集めています。

 

信託型ストックオプションの仕組み

信託型ストックオプションは、大要以下の仕組みから成り立っています。

①代表取締役などの主要経営者が信託を組成する
②会社がその信託に対してまとめてストックオプションを付与する
③信託から従業員・役員にストックオプションを割り当てる

 

信託型ストックオプションは従来型の問題点を解決する

上記の信託を介在させてストックオプションを付与する仕組みにより、信託型ストックオプションは、以下のように従来型ストックオプションの問題点を解決できます。

①信託期間中はストックオプションの新規発行が1回で済む
信託型ストックオプションの場合、新株予約権の新規発行が行われるのは、信託期間を通じて、信託組成直後の1回のみです。

信託期間は3~5年程度に設定されることが多いのですが、その期間中の新株予約権の新規発行コストを抑えられることは、信託型のメリットの一つといえます。

②ポイント制によって入社後の貢献を考慮できる
信託から役員・従業員に対するストックオプションの付与数量は、勤続年数・会社業績・個人別の貢献度などを反映して付与されるポイントによって決まります。
信託型の場合、入社時にストックオプションの付与数量を予め決めておく必要がないので、このように入社後の貢献を考慮した付与を行うことができます。

③信託期間中は行使価格が一定
信託期間中、新株予約権の新規発行は1回しか行われないので、その信託から付与されるストックオプションの行使価格は一定になります。
そのため信託型には、後から入社する優秀な人材を正当に優遇・評価しやすいという特徴があります。

④制度設計に対する税制上の制約が緩やか
信託型ストックオプションは、会社から信託に対して有償で新規発行が行われます。

無償発行の従来型ストックオプションとは異なり、有償発行の場合は、ストックオプションの行使によって得られた株式を売却した際のキャピタルゲインに対してのみ、所得税などが課税されます。
この際、厳格な税制適格要件の制約を受けることはありませんので、信託型ストックオプションの制度は、税制上もかなり柔軟に設計することが可能です。

 

信託型ストックオプションの注意点|初期費用・ランニングコストに注意

 

信託型ストックオプションには、上記のとおり多くのメリットがありますが、その一方で、コストの観点から以下のことに気を付ける必要があります。

 

当初信託用のまとまったキャッシュが必要

信託型ストックオプションは、信託が会社から発行を受ける際に払い込みを行うことが必要です。

払い込みの原資は、信託の委託者となる代表取締役などの主要経営者が拠出する必要があります。
会社の株価やストックオプションの総数量にもよりますが、ある程度まとまった金額の拠出が必要となることに注意しましょう。

 

信託組成のための各種コストがかかる

信託型ストックオプションを導入するには、制度設計や信託契約書の作成などに関して、企業法務を取り扱う弁護士事務所の監修を受けることが必須です。
そのため、信託型ストックオプションの導入時には、弁護士事務所に対して支払う数百万円規模のタイムチャージが一般的に発生します。

また、税務・会計上の処理を確認するため、税理士・公認会計士のチェックを受ける必要があるほか、信託組成後は、信託会社に対する信託報酬の支払いも発生します。

このように、信託型ストックオプションの導入には各種コストがかかるので、メリットと比較しつつ、トータルで導入の効果を見積もる必要があるでしょう。

 

まとめ

 

信託型ストックオプションを導入することにより、役員・従業員に対してより適切なインセンティブを付与できる可能性があります。

これからストックオプションの導入を検討する企業や、従来型ストックオプションの制度に問題点を感じている企業は、選択肢の一つとして信託型ストックオプションの利用可能性を検討してみてください。

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