チームリーダーは、目標達成のためにチームを率いる存在です。
一方で、管理職は一定の権限を持った部や課を率いる「役職」のことです。
チームリーダーとなる人材は管理職のように役職者とは限りません。
しかし、部下やチームメンバーを管理・育成する役割を担う管理職がチームリーダーとなる場合も多いのではないでしょうか。
本記事では、チームリーダーと管理職の違いと、管理職がチームリーダーとなる場合、ならない場合の注意点4つを解説します。
目次
チームリーダーとは1つのチームを管理・統括する人材
チームリーダーは、1つのチームを管理・統括する役割を持つ人材のことを指します。
チームリーダーの具体的な役割は以下の通りです。
- チームの目標を設定し、目標達成のためにチームを率いる
- チームメンバーの育成
- チーム内の情報共有
- チーム内のわだかまりを解消する力
- メンバーのモチベーション管理
チームとしてのパフォーマンスを最大限に引き出すためにも、チームリーダーは重要な存在であり、これらの役割を全うするため、決断力や判断力、リスクマネジメントスキルやコミュニケーション能力などが求められます。
企業や組織によって管理職がリーダーとなる場合もあれば、チームメンバーからリーダーが選出される場合もあります。
関連記事:マネジメントは分類した方がいい【階層別に求められるアプローチ】
チームリーダーとグループリーダーの違い
チームリーダーとグループリーダーの違いは、1つのチームを束ねるか、複数のチームを束ねるかにあります。
そもそも辞書を引くと、チームとは「ある目的のために協力して行動するグループ」や「共同作業を行なうための数人から成る集団」という意味を持ちます。
一方で、グループとは「仲間」や「集団」という意味です。
組織においてグループリーダーは複数のチームを束ねる役割を担っており、以下のような特徴があります。
- 各チームリーダーと連携し、グループ全体の状況や課題を把握する
- グループの目標や方針を決め、各チームに伝える
- チーム間のコミュニケーションや協力を促進し、グループの一体感を高める
それぞれの役職におけるチームリーダーとの違い
「課長」「主任」といった役職には役職の役割が、チームリーダーにはチームリーダーの役割があります。
本章では、「主任」「マネージャー」といったそれぞれ別の役職とチームリーダーとの違いを解説します。
- 主任とチームリーダーの違いは責任の範囲
- マネージャーとチームリーダーの違いは管理する組織の大きさ
主任とチームリーダーの違いは責任の範囲
主任とチームリーダーの違いは責任の範囲です。
主任は、役職の中では最下位であり、現場で熟練したスキルのある人に与えられることの多い立場です。
主任として、新人や後輩の育成を任せられますが、あくまでプレイヤーとしてのポジションです。
一方、チームリーダーにはチーム全体の目標を設定し、メンバー全員をまとめて成果を上げる必要があります。
主任は自分の仕事に責任を持てばよいですが、チームリーダーはチーム全体の成果に責任を持つ責任の範囲に違いがあります。
マネージャーとチームリーダーの違いは管理する組織の大きさ
マネージャーとチームリーダーの違いは管理する組織の大きさです。
マネージャーは規模で言えば課長、部長級の役職であり、部門や課など、比較的大きな組織を管理する立場です。
人員配置や能力開発、モチベーション管理などを通じて組織全体を導く役割があります。
一方、チームリーダーは数名から十数名程度の小規模なグループを管理する立場です。
メンバーと一緒に現場に立ちながら、チーム全体をまとめて成果を上げます。
マネージャーは組織全体の視点から戦略や目標を示しますが、チームリーダーは現場レベルから戦略や目標を示す点に違いがあります。
関連記事:マネジメントにおけるマネージャーとプレイヤーの違い|適性と必要な能力を解説
管理職に求められるもの|管理職がチームリーダーとなる場合
企業や組織によっては、一般的に管理職と言われる「部長」や「課長」がチームリーダーとなる場合があります。
管理職として経営的な視点でのマネジメントを求められる一方で、より実業務やチームメンバーとより近い距離で関わり、目標達成を目指すことも重要となります。
管理職がチームリーダーとなる場合、管理職に求められるものは以下の通りです。
- 頑張りを評価しない
- ルールを作る
- 細かく指示を出しすぎない
頑張りを評価しない
チームリーダーである管理職には、チームメンバーを頑張りで評価しないことが大切です。
頑張りとは、結果に至るまでのプロセスを指し、たとえば「夜遅くまで残って残業をする」や「忙しい素振り、様子を見せる」などが挙げられます。
プロセス評価は、自身が見えている範囲内でしか行えません。
主観的な評価はチームメンバーの不公平感を生むことになるため、客観的な評価を行う必要があります。
ルールを作る
チームメンバーが実力を出せる環境を作るためにも、ルールを作ることも大切です。
ルールは「整理整頓をする」というように人によって基準の異なる曖昧なものではなく、明確である必要もあります。
また、チームメンバーのスキルや経験に左右されない「誰でも守れるルール」であることも大切です。
「誰でも守れるルール」を作る際は、以下の点に注意しましょう。
- 「守っている」か「守っていない」が明確なルール
- 「やる」か「やらない」で区別できるルール
チームメンバー全員が守れる同一のルールを作ることで、帰属意識を持ってもらうことに繋がります。
細かく指示を出しすぎない
チームメンバーが成長できる環境をつくるためにも、チームリーダーが細かく指示を出しすぎないことも大切です。
細かい指示を出されたメンバーは言われた通りにしかやらなくなり、結果に対して責任を持ちづらくなります。
管理職兼チームリーダーの業務を、よりひっ迫させることにもなるでしょう。
また、プロセスに関しての指示は部下の成長機会を奪ってしまうことになります。
結果に対して責任を持ってもらうためにも、細かい指示は出さずチームメンバーが自分で考える環境を作るようにしましょう。
チームへ協力を仰ぐ
チームリーダーはチームメンバーに指示を出すだけでなく、メンバーの意見やアイデアを尊重する必要があります。
チームとして成功を収めるために協力は不可欠です。メンバー同士協力しやすい環境や雰囲気を作り、チームワークを高めます。
チームワークを高める方法、チームワークを高めるためにリーダーが行うべきことは以下の通りです。
- 目標管理制度の導入
- チームビルディング研修の実施
- 1on1ミーティングの実施
- 目標やチームメンバーの役割を明確にする
- チームに必要なスキルを持つ人材を配置する
- コミュニケーションツールの活用
管理職がチームリーダーにならない場合
管理職がチームリーダーとなる企業や組織がある一方で、管理職がチームリーダーにならない場合もあります。
管理職がチームリーダーにならない場合に考えられることは以下の通りです。
- 管理職にプロジェクトに必要な専門知識が不足している場合
- 専任のチームリーダーやプロジェクトマネージャーがいる場合
- チームメンバーからリーダーを選出するルールや文化がある場合
- 管理職のリーダーシップがプロジェクトに合致しない場合
- 管理職への負荷を考慮する場合
さまざまな理由から、管理職がチームリーダーとならない場合もあります。
管理職がチームリーダーとなることが自社やプロジェクトに合うかを確認してから起用しましょう。
管理職がチームリーダーにならなくてもよい
株式会社ラーニングエージェンシーが2022年に実施した「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」。
同調査では「非管理職の社員に期待されることの変化」として、現在と10年前を比較した設問があります。
10年前と比べて一般社員に期待されることで最も増加した回答項目は、+51.5ptで「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する」となっています。
近年の傾向として非定型的な業務・プロジェクト型の業務が増えていることで、管理職がチームリーダーにならずに仕事が進んでいく場合もあります。
参考:【組織・チームの在り方を5,000人に調査】10年間で一般社員に期待されることが大きく変わった|株式会社ラーニングエージェンシー
管理職がチームリーダーとなる場合、企業が行うべきこと3つ
管理職がチームリーダーとなる場合、その役割や権限の大きさからチームのモチベーションと生産性を高めるのに役立ちます。
管理職をチームリーダーとして任命する場合、それより上の管理職および企業は以下のようなアクションを起こすべきでしょう。
- 役割と責任を明確にする
- リーダーシップを向上させるために支援が必要
- 必要があれば評価制度を改善
1.役割と責任を明確にする
管理職をチームリーダーとする場合、その役職が形骸化しないよう、該当者に対して役割と責任を明確に定義することが重要です。
チームリーダーとなる管理職には以下の役割を説明し、責任を負う範囲も明確にします。
- 管理職としての役割
- チームリーダーとしての役割
- チームメンバーそれぞれの役割
- プロジェクトの目標を明確
管理職とチームリーダーの役割は共通する部分もありますが、企業全体の経営に関わる視点が求められる管理職に対して、チームリーダではプロジェクト単位での目標やメンバー育成など、より実業務や従業員ひとり一人に近い距離でアクションを起こす必要があります。
そのため、まずはその目標、役割とそれに対する責任を的確に把握することが大切なのです。
関連記事:管理職と一般社員の違いとは?管理職の定義や役割、必要な能力などと併せて徹底解説!
2.リーダーシップを向上させるために支援が必要
チームリーダーとなる管理職のリーダーシップスキルを向上させるために、適切なプログラムや自己啓発の機会を提供します。
リーダーシップスキルは、チームリーダーとなるうえで欠かせないスキルです。
リーダーシップを養うために企業は、以下のような支援が可能です。
- 自社で研修を行う
- 講座や研修を外部に委託する
- 書籍の購入費用を負担する
- セミナーへの参加費用を負担する
リーダーシップを高める方法や養い方についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事も確認してみてください。
関連記事:リーダーシップを養う方法とは?具体的な行動やおすすめのゲームを紹介
3.必要があれば評価制度を改善
管理職がチームリーダーとなる場合、人事評価制度を改善する必要も出てきます。
一般的に評価制度は等級制度や報酬制度と連動し、評価が良ければ昇進・昇給する仕組みです。
チームリーダーとしての仕事が評価されないことがないよう、チームリーダーとしての役割も評価し、報酬を支払うことも検討できます。
管理職としてのチームリーダーの役割とチームへの貢献が評価基準に反映され、適切な報酬の支払いや評価がされることが重要です。
また、評価制度を改善する場合は、評価基準を明確にしたり、改善した点を公表したりして、公平性と透明性を確保しましょう。
リーダーシップのある人材を育成しよう
本記事では、チームリーダーと管理職の違いと管理職がチームリーダーとなる場合、ならない場合の注意点4つを解説しました。
チームリーダーにも管理職にも欠かせないのはリーダーシップです。リーダーシップは研修を実施したり、自己啓発機会の支援をしたりすることで養えます。
チームの目標を管理してチームメンバーが成長できる環境を作れるチームリーダーの育成が大切です。