一般的に「管理職」と聞くと、課長や部長といった役職名が思い浮かぶでしょう。
では、公務員における役職や、管理職をどこから定義するのかをご存じですか。
民間企業とは異なり、公務員の役職には特有の名称や役割があります。
そのためどこから管理職とするのかも不鮮明に感じるかもしれません。
この記事では公務員における管理職の定義や役職一覧、また公務員と管理職に関する課題点について詳しく解説します。
目次
公務員における「管理職」はどこからか
公務員のうち国家公務員においては「室長級」また「課長級」から管理職と定義されています。
一方で地方公務員における管理職は「課長補佐級」から上の役職を指します。
組織によってはより細かな役職に区分されていたり兼任があったりする関係から、さらに下の「係長級」から管理職と呼ぶケースもあります。
参考:内閣官房『国家公務員の管理職の現状等について』
参考:g-reiki.net『管理職手当に関する規則』
昇格基準について
公務員の役職昇格基準は民間企業の基準とは異なる部分があり、主な昇格基準は「昇任試験型」と「年功序列型」のふたつです。
まず昇任試験型は、資格要件を満たした上で昇格を望む者が志願して実施される試験制度で、合格によって昇任する仕組みです。
一方の年功序列型はいわゆるキャリア・システムのことで、一定の年数(キャリア)を積んだ者が自動的に管理職になる仕組みを指します。
慣例的に施行されてきたキャリア・システムは能力や実績に比例していないとして廃止する自治体もあり、昨今見直しを求める声が出ています。
参考:人事院『5 キャリア・システムに係る現状』
民間企業の管理職との違い
公務員と民間企業の管理職には、権限の大きさに違いがあります。
例えば同じ課長ポジションであっても、組織内の課を統括する民間企業の課長に対して、公務員の課長級は多大な責任を担う立場です。
公務員の課長級が携わる業務は、地域に住まう人々や国全体にも影響を与える可能性があるため、一挙手一投足に大きな責任が伴います。
公務員の種類
公務員の種類は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の二つがあります。
それぞれの採用先は、国家公務員が政府の根幹を支える国の機関であるのに対して、地方公務員は地域ごとに設置された地方自治体です。
- 国家公務員
- 地方公務員
国家公務員
国家公務員は主に中央官庁や国会、裁判所などの機関に属し、国家運営に直接関わるさまざまな業務を担います。
また職種が二つに区別され、給与法適用職員(省庁勤務)・検察官などの一般職と、自衛官・裁判官・国会議員などの特別職に分かれています。
地方公務員
地方公務員には採用試験に合格した者がなれる一般職と、選挙投票によって選出される特別職があります。
一般職に該当するのは都道府県・市区町村の役場や学校などの教育関係から、警察や消防部門です。
また特別職には議会議員や自治会長などがあります。
公務員の役職序列一覧
公務員特有の役職名は聞きなじみがなく、序列が分かりにくいと感じる方も多いでしょう。
そこで公務員における役職の序列を紹介すると共に、業務内容やどこから管理職とするのかを解説します。
関連記事:管理職に求められる3つの能力とは?優秀な上司が行っている5つのことを解説!
国家公務員の役職一覧
国家公務員における管理職の扱いは民間企業とは異なり、その多くは聞きなじみのない役職で構成されています。
役職の序列とそれぞれの役割についてまとめました。
- 事務次官
- 省名審議官
- 官房長・局長・政策統括官
- 部長・総括審議官
- 審議官
- 官房三課長
- 課長・参事官
- 室長・企画官・調査官
- 課長補佐・専門官
- 係長・主査・専門職
- 主任
- 係員
事務次官
国家公務員における管理職の最上位が事務次官です。
直接業務よりも大臣や長官の補佐など、俯瞰した立場で監督業務を担う、省庁内の最高責任者といえます。
省名審議官
事務次官に次ぐ国家公務員の二番手が、省名審議官です。
各省のトップを務める管理職の総称で、省名の箇所には外務省や総務省、防衛省などの名称が入ります。
官房長・局長・政策統括官
国家公務員の管理職で三番手に格付けされるのが局長です。
局長のほかに、官房長や政策統括官は同等位の役職として認識されています。
部長・総括審議官
民間企業にも存在する部長は、国家公務員において各部の最高責任者に位置する管理職です。
また総括審議官は、一段下の審議官内で事務職を総括します。
審議官
民間企業におけるスタッフの立ち位置に類似した管理職が公務員の審議官です。
メイン業務の調整・補佐役として、業務を統制する役割を持ちます。
官房三課長
公務員の人事・総務・会計課長を総じた呼び名が官房三課長です。
各課長はほかの省庁との交渉が多く重要視されるポストのため、管理職の通称として官房三課長と呼ばれることがあります。
課長・参事官
国家公務員の組織内で課のマネジメントを担う中間管理職が課長です。
また参事官は実務においてスタッフの責任者に位置しており、課長と同格とみてよいでしょう。
室長・企画官・調査官
室長は課長と課長補佐の間に置かれることが多い国家公務員の中間管理職です。
それぞれ企画や調査を担う企画官と調査官も、室長と同等程度といえます。
課長補佐・専門官
課長補佐は業務量の多い課長職の補佐を務める立場です。
また専門官は国税や財務、情報技術など専門的な業務を担います。
どちらも国家公務員の管理職として最下位にあたります。
係長・主査・専門職
およそ4~6人で構成された係を取りまとめるのが係長・主査です。
また専門職はメインの業務の中でも特化した専門分野を担います。一般的に係長級よりも下位は公務員管理職に該当しません。
主任
国家公務員における最初の出世先は主任です。
管理職ではないものの、一般職員(後述する係員)である係員から一つ昇格して主任となり、主に係員で構成された現場の指揮を執ります。
係員
民間企業でいう一般社員の立ち位置が国家公務員の係員で、管理職には該当しません。
入社後昇格するまでのポジションで、プレイヤーとして現場業務に就きます。
関連記事:従業員一人ひとりが経営課題に目を向ける組織へ | 識学総研
地方公務員の役職一覧
地方公務員の管理職は民間企業と似た部分が多く、聞き覚えのある役職がほとんどです。
あらためて役職の序列と役割について解説します。
- 部長
- 次長
- 統括課長
- 課長
- 課長補佐
- 係長
- 係員
部長
地方公務員の部長は部を取り仕切る管理職です。
民間企業同様、部長級の役職は管理職における最高位として、責任の最終所在であるとともに、組織を俯瞰するスキルが求められます。
次長
次長は部長級管理職の補佐として、地方公務員のナンバー2に位置する管理職です。
課長と部長の間にあたる重要なポジションとして、大きな権限を与えられます。
統括課長
地方公務員の統括課長は複数の課・部を統括し、各課長に指示を出す権限を持つ管理職です。
全庁の人事や予算など、重要な物事を決定する立場にあります。
課長
民間企業同様、地方公務員の課長級ポジションは一つの課を任され、マネジメントする立場です。
なお課長の中でも専門的なジャンルに特化した場合は、頭に担当・専門が付きます。
課長補佐
地方公務員の管理職は、主に課長補佐までを管理職として扱います。
課長補佐はマネージャー兼プレイヤーとして、課長の業務補佐から課の意思決定権限まで担う役職です。
係長
係長は単なるプレイヤーとしてだけでなく係の責任も担う一方、管理職には該当しません。
地方公務員において昇格試験が未導入の自治体では、一定の年齢に達すると自動的に係長になるケースもあります。
係員
公務員の係員クラスは民間企業でいう一般社員と同等で、入庁して最初に与えられる役職です。
管理職ではなく、いちプレイヤーとして業務にあたります。
公務員の管理職に関する今後の課題
近年公務員の離職率は増加しており、定着しないことが課題といわれています。
また管理職にスポットを当てた際に浮き彫りになる課題点は、昇格基準と業務量が大きく関係しています。
参考:人事院『2「一般職の国家公務員の任用状況調査」の実施』
一定の年齢でないと管理職になれない
課題の一つに、公務員が管理職になるための仕組みである年功序列型があります。
一定の年齢や勤続年数に比例して昇給・昇格するエスカレーター式デメリットは、正しく各個の能力や実績が評価されづらいことです。
しかし、まだ多くの公務員組織内で慣例的に続いているのが現状で、問題視する声もあります。
関連記事:日本の人手不足問題の原因とは?人手不足の背景や企業ができる対策を紹介
管理職未満の業務量と給料が不釣り合い
管理職の業務量と給料のバランスが不釣り合いになる事態が発生してます。
管理職公務員のみならず民間企業内においても、多忙を極めた課長級がプレイヤー兼マネージャーとして働かなければならないケースもみられています。
離職率増加・管理職になりたくない人材が増えているのは、こういったバランスの取れていない体制も大きな原因です。
関連記事:過重労働とは?定義やリスク、対策を解説 | 識学総研
まとめ 公務員とその管理職は国や地域を支える役目を担う
公務員には国家公務員と地方公務員の二種類があり、それぞれ国・自治体と異なる領域で業務にあたります。
特に管理職ともなれば給料が安定しているとのイメージから、公務員を目指す者も多い一方、実情は古くからある年功序列制度への懸念や離職率の高さなどさまざまな課題が残ります。
公務員は国や地域を裏と表から支える大きな役割を持ち、人々の未来を担う存在として、今後も優れたスキルと人間性を持った人材が増えることが望まれるとともに、そういった人材の流出を防ぐべく、適切な制度への改革も求められるでしょう。