自社の管理職の割合が適正かどうか、把握したいと考えている経営者は多いのではないでしょうか。
管理職は、組織の方向性や戦略を決めたり、部下を育成したりと非常に重要なポジションです。
だからこそ、割合が適正かどうかが経営に大きく影響を及ぼします。
本記事では、管理職の適正割合についてデータを用いながら具体的に解説します。
割合が不適切な場合に起こりうるリスクや改善策など、組織活性化のアクションに役立つため、ぜひご覧ください。
目次
厚生労働省統計資料から読み解く日本の管理職割合の状況
厚生労働省が発表した「令和3年賃金構造基本統計調査」の内容をもとに、取りまとめられた「セレクションアンドバリエーションオフィシャルレポート」では、管理職の割合は産業全体で以下のように整理されています。
- 部長比率は3.8%、課長比率は7.7%であり、管理職比率は11.5%が平均値
- 部長比率および課長比率を足し合わせた管理職比率が高い産業は「学術研究,専門・技術サービス業」で 17.7%、「情報通信業」で 16.0%と続く
また、同レポートのなかでは、管理職の割合がもつ意味合いについて以下のように取りまとめています。
- 管理職比率が高い産業では、管理職の勤続年数が長く、管理職の平均年齢が低い
- 管理職比率が低い産業では、管理職の勤続年数が短く、管理職の平均年齢が高い
自社における管理職の割合の妥当性を確認するためには、管理職の勤続年数や平均年齢から算出してみると立ち位置が掴みやすいでしょう。
もし、管理職の割合が高い場合、現状維持ではなく新しいチャレンジができているのか確認をおすすめします。
漫然と管理職が多くなっていると年功序列制の傾向が強く、現状維持バイアスが蔓延っている可能性があるためです。
成長を続ける企業であり続けるためにも、一度数値で管理職の割合を明確にしておくとよいでしょう。
参考:セレクションアンドバリエーションオフィシャルレポート2022年6月20日|セレクションアンドバリエーション株式会社
女性管理職比率の状況
厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等法基本調査」では、女性管理職の比率はおおよそ12.3%でした。
経年の変化をたどると緩やかに増加傾向ではありますが、海外と比較すると少ない状況です。
具体的に他国の状況をみると、フランスで45.3%・ノルウェーで41.5%と40%を超える国もあり、企業役員における女性のクオータ制を導入の成果が見られます。
国として女性の管理職比率を高める制度が大きく底上げに貢献している好事例といえるでしょう。
一方、日本国内では同様の取り組みは導入されておらず、家庭と仕事の両立に対するサポートの遅れへの措置が望まれます。
なお、女性管理職の比率が高まると、深刻化している労働力の減少や多様化社会への対応など、多くのメリットがあります。
企業成長の鍵を握っている取り組みといえるため、女性管理職の比率は定期的に確認しておくべき指標の一つです。
参考:諸外国における企業役員の女性登用について|内閣府男女共同参画局
関連記事:女性リーダーを増やすには?女性リーダーのメリットや特徴を徹底解説!
適正な管理職の割合を算出する計算方法
適正な管理職の割合を把握するためには、「管理職人数÷全社員数×100」の計算式で算出が可能です。
実際に算出ができたあとは、厚生労働省データとの比較(外部比較)と自社内での経年比較(内部比較)で現状を理解できます。
例えば、厚生労働省データでみると、部長比率は3.8%・課長比率は7.7%・管理職比率は11.5%が平均値です。
自社の割合と比較することで、自社のポジショニングを明らかにできます。
低い場合は、高めるためのアクションとして採用の施策を考えたり、離職率低減に必要なアイデアを募ったりと次の一手を検討しましょう。
高い場合は、外部へのアピール材料として活用できます。
また、経年比較も社内体制を考えるうえで重要な指標です。
社内全体のマクロな視点はもちろん、部署ごとのミクロな視点で充足しているかを確認し、全体の最適化を図りましょう。
管理職の比率が高い場合に考えられる2つのリスク
管理職の比率は、高ければ高いほどよいわけではありません。
具体的には以下2つのリスクが挙げられます。自社の状況と当てはまる内容がないか、確認してみてください。
- 人件費の増加
- 組織活性化の停滞
人件費の増加
管理職はそのほかの従業員よりも高い給与となることが多く、管理職の比率が高くなると、人件費の割合も増えます。
さらに気をつけなければならないのは、成果が思うように出せていない管理職に対しても、慣例的に高い給与を支払っている場合です。
給与を上げればパフォーマンスも向上すると期待していると、反比例する状況になりかねません。
なぜなら、管理職の中でも管理監督者に該当する場合は労働時間に関係なく給与が固定されているためです。
残業して労働時間を増やしても残業代が支給されないのであれば、時間や労力をかけて成果を出そうという意欲は上がらないでしょう。
成果を出せていないにもかかわらず高い給与を支払っている管理職が多ければ、それだけ人件費を圧迫する可能性も高まります。
年々人件費が増加している場合には、人事評価制度の導入や見直しなど、体制にメスを入れる必要があるでしょう。
関連記事:人件費が高い!そんな時に確認すべきポイントとは?経営危機を乗り切る方法を解説
組織活性化の停滞
生え抜きの管理職が多い組織では、昔ながらのやり方を捨てられない場合があり、結果として蛸壺の状況に陥りやすいため注意が必要です。
特に注意すべきは、人材育成に力を入れられていない管理職がいる組織です。
企業の成長において、人材育成は最も重要といえます。
しかし、教育や研修の必要性を理解していない管理職がいる場合、若手は育たずに離職したり、上司と同様の人材に育ったりして、組織は活性化せずに停滞してしまうでしょう。
管理職の割合を適正な状態にするために必要な2つのアクション
管理職の割合が高かったり、低かったりした場合のアクションとして以下2つのアクションを解説します。
- 人事評価制度の導入・見直し
- スパンオブコントロールの見直し
人事評価制度の導入・見直し
まず取り組むべきは人事評価制度です。
具体的には以下の表のように4つの枠組みで整理できます。
人事評価制度の枠組み | 具体的な内容 |
目的 |
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基準 |
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種類 |
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手順 |
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ただし、弊社では360°調査は推奨してはいません。
人事評価制度と一言でいっても内容が広範囲にわたるため、短期的に解決するのは難しいでしょう。
つまり、中長期的な視点を持って、自社に最適な仕組みとして作り上げていく意識が大切です。
例えば、管理職の割合適正化を図るための目的一つとっても、4つの視点から検討を進めなければなりません。
ただ変化させればいいのではなく、現状の理解と、あるべき姿を具体的に描き、ギャップを埋めるための施策を打ち出すことを強く意識しましょう。
関連記事:評価制度を徹底解説!【目的・種類・導入手順を人事向けに紹介】
関連記事:中小企業が導入するべき人事評価制度とは?活用ポイントを解説
スパンオブコントロールの見直し
管理職の人数を適正にするには、スパンオブコントロールが有効です。
スパンオブコントロールとは、1人がコントロールできる範囲を意味します。
つまり、部署の所属人数から必要な管理職の人数を割り出す方法です。
具体的には、1人の管理職が適切に管理できる部下の人数は5〜8人といわれています。
部下の人数が多くても少なくても、スパンオブコントロールの効果は発揮できません。
多ければマンパワーは増えますが、管理が行き届かず業務は非効率になってしまいます。
少なければ、コミュニケーションは取りやすいですが、マンパワー不足で進捗は遅くなる可能性が高まります。
管理職を採用して増やしたり、部下の育成方法を見直したりと、対処法はひとつではありません。
自社の現状を評価し、着手すべきポイントを明らかにするところから始めてみてください。
関連記事:ひとりの管理職がマネジメントできる人数とは?適性人数オーバーの対処法も伝授
女性管理職比率は、今後よりいっそう重視されるようになる
管理職のなかでも、女性管理職の比率は今後重要度を増してくると予想されます。
なぜなら、将来的な労働人口不足が深刻な状況となっているためです。
国としても、女性活躍推進法を制定し、女性の社会進出を後押しすべく環境を整えています。
実際に、経団連は301人以上の事業者に以下1〜4の内容を義務付けており、300人以下の事業者にも努力義務として、積極的な現状把握を進めています。
- 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
- 状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
- 行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
- 女性の活躍に関する状況の情報の公表
状況報告の準備等、負担となる部分はありますが、情報の公表によって女性が働きやすい企業として認知されやすくなるのは、企業成長の観点で大きなメリットです。
女性管理職が増えれば、従来とは違う空気を社内に取り込める可能性を秘めています。
魅力的な企業として永く繁栄させるためにも、積極的な姿勢で取り組んでいきましょう。
まとめ
管理職の割合は、企業としての成果を最大化させるために重要な指標です。
高ければコストを圧迫し、低ければ思うような成果を上げられません。
ただし、国内全体の傾向として少子高齢化が進み、労働力の低下が懸念されているなか、より生産性を高めることの重要度が増しています。
これには、適切な管理職の割合も非常に重要です。
まずは、自社の管理職の割合を算出し、外部データとの比較や自社内での経年変化をもとに、最適な人数の把握から始めてみてはいかがでしょうか。
それを元に、社内育成や採用等、取るべきアクションも見えてくるはずです。