年功序列の文化が薄れ、実力主義の傾向が強くなっている現代では、評価制度が非常に注目されるようになっています。
はたしてどのような評価制度が現代的で、かつ自社にマッチしているのでしょうか。
本記事では評価制度について解説していきます。人事担当者や経営者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
評価制度とは?
評価制度は人事評価制度の1つで、従業員の能力や企業への貢献度を「評価」する制度を指します。
一般的に、人事評価制度には以下の3つの制度があります。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
その中でも評価制度は、その評価内容に応じて等級・報酬が決定されることがあるため、より重要度が高いと言えるでしょう。
だからこそ、等級や報酬とは異なり、評価制度では定量性のある基準が設けられることも多いです。
評価制度は、従業員のパフォーマンスを最大限引き出すツールでもあり、上手に設計することで、従業員もモチベーションや企業の業績を向上させることも可能です。
関連記事:評価制度とは?種類や導入・設計方法、メリット、運用のポイントを解説
評価制度を導入する目的4選
評価制度を導入する目的として挙げられるのは以下の4つです。
- 業績向上
- 処遇決定
- 適切な人材配置
- 人材育成
それぞれ解説していきます。
関連記事:中小企業が導入するべき人事評価制度とは?活用ポイントを解説
目的①:業績向上
評価制度を上手く設計することで、企業の業績向上が見込めます。
具体的には、評価制度の評価基準に、以下のような項目を加えることで可能です。
- 自社のビジョンを深く理解しているかどうか
- 自発的な行動がとれているか
- 実際に結果を出しているかどうか
- 組織の雰囲気作りに欠かせない人材であるか
上記の項目は、いずれも企業の業績向上に繋がるものです。
そのため、従業員が評価制度の元で高く評価されるためには、上記の「企業の業績向上に繋がる評価項目」をクリアしなければなりません。
こうすることで「従業員が高評価を狙う過程で、自然と企業の業績が向上していく」というサイクルが構築できます。
目的②:処遇決定
先ほど述べた通り、等級や報酬は、評価制度で下された評価内容で決定することができます。
つまり評価制度は、従業員の処遇決定のためにも活用できるのです。
一般的に、評価制度は可能な限り客観的な視点で評価できるように構築されています。
そのため、上司の主観的な評価が介入する確率が比較的低いのです。
昇進や給与の決定のために、不公平感の少ない客観的な評価制度を導入することは、従業員のモチベーション維持の観点から非常に意義のあることだと言えます。
それに加えて、公平性の高い評価制度で処遇を決定できれば、従業員も高評価を得るために、より高いモチベーションを持つようになるでしょう。
目的③:適切な人材配置
評価項目が充実した評価制度を導入することで、従業員の能力を判定しやすくなり、結果的に適切な人材配置に繋がっていきます。
昭和の日本式経営では、年功序列制度によって、優秀な若手社員の昇進が妨げられてきた過去があります。
しかし評価制度は、年齢に関係なく、従業員の能力・成果・情意によって評価が決定されることがほとんどです。
そのため、それぞれの従業員を適した部署への配属が可能となります。
そして、その部署に適した人材を配置できれば、当然のことながら企業活動の効率が高まっていくでしょう。
結果的に企業の業績向上に繋がっていくのです。
目的④:人材育成
評価制度は人材育成のためにも活用できます。
評価制度と処遇を連動させることで、従業員が高評価を得るために主体的な行動を取るようになるからです。
その際は評価基準を公平なものにして、従業員の不満が出ないようにする必要があります。
また「自社が求める人物像」を評価項目に組み込むのもおすすめです。
例えば「ジャンルを問わない知識を有する人材」が自社の求める人物像だとしましょう。
この場合は「さまざまな業界の知識習得に意欲的かどうか」といった評価項目を設けます。
そうすることで、従業員が高評価を得るために、さまざまな業界の知識習得に力を入れるようになるかもしれません。
くわえて、評価制度でのフィードバック内容を用いた1on1ミーティングも、その後の成長につながるでしょう。
評価制度における3つの評価基準
評価制度では以下の3つの評価基準が設けられます。
- 能力評価
- 成果評価
- 情意評価
それぞれ詳しくみていきましょう。
関連記事:人事評価制度の作り方!失敗してしまう人事評価が生まれてしまう背景を解説
基準①:能力評価
能力評価は、従業員の業務遂行能力や知識を評価する方法です。
例えば営業職であれば営業に関するスキルを、経理であれば経費に関するスキルが評価されます。
また、業界特有の専門的な知識も評価対象です。
厚生労働省が職業能力評価シートを公開しているので参考にするといいでしょう。
基準②:成果評価
成果評価は、会社への貢献度や業績を評価する方法です。
例えば営業職であれば、営業成績を評価します。
また、経理であればコスト削減などが評価対象です。
能力評価や情意評価とは異なり、成果評価は数字を基準に評価しやすいのが特徴となっています。
そのため成果評価を重視することで、公平性の高い評価制度を構築できます。
ただし、あまりにも成果評価を強調しすぎると、社内の競争が熾烈を極め、雰囲気が悪化する恐れがある点には注意が必要です。
基準③:情意評価
情意評価は、仕事に対する姿勢や企業に対する忠誠心を評価する方法です。
そのため、まだ経験が浅く能力の低い新入社員の評価の際は、情意評価が大きなウエイトを占めます。
例えば営業職であれば、営業成績というよりは、営業に対する姿勢や、部署全体の士気を高めたかどうかが評価されます。
また、毎日の勤怠や出勤状況も評価対象です。
そのため、出勤状況を除くと、情意評価は定量化しづらい評価方法だと言えます。
従業員の頑張りを発見できる仕組みを構築する必要がありそうです。
評価制度の種類
代表的な評価制度の種類として以下の3つが挙げられます。
- MBO
- コンピテンシー評価
- 360度評価
それぞれ詳しく解説していきます。
評価制度①:MBO(目標管理制度)
「Management By Objectives(目標管理制度)」の略称であるMBOは、マネジメントの父・ドラッカーによって提唱された評価制度です。
従業員自らが設定した目標の達成度に応じて評価する仕組みとなっています。
例えば「営業成績1億円」を目標とし、最終的な営業成績が8,000万円だった場合は「目標達成度80%」という形で評価されます。
MBOの最大の特徴は、従業員自らが目標を設定する点です。
この際、企業や上司はあくまでもサポートするだけで、基本的に従業員が主体性を持って目標を設定します。
こうすることで、自身が抱える目標に責任感を持つようになり、従業員が主体的に成長していくというわけです。
ただし、目標設定の際に時間がかかる点と、社会情勢が変化する度に修正の手間がかかる点に注意が必要です。
関連記事:MBOとは?目標管理制度のメリットや効果的な運用方法、OKRとの違いを解説
評価制度②:コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、優秀な従業員が持つ行動特性を基に評価項目を設定する方法です。
例えば、社内で最も優秀な人材がいたら、その人材の特徴や行動特性をそのまま評価項目にしてしまいます。
そのため、評価項目が具体的かつ客観的なものになりやすいです。
ただし、コンピテンシー評価を導入するには、まず社内に優秀な人材がいなければなりません。
また、市場の変化で優秀な人材の定義が変わるため、常に見直しが必要です。
評価制度③:360度評価
360度評価は、従業員を評価する際に、上司だけではなく同僚・部下・他部署の従業員など、複数の人が評価する方法です。
他の評価方法に比べて多くの人が評価に携わるため、さまざまな視点で評価できるのがメリットです。
また、直属の上司1人による主観的な評価を取り除きやすいのも特徴と言えます。
その一方で、評価に慣れていない部下や同僚などの若手社員が評価に参加するため、評価の質が低下する恐れがある点に注意が必要です。
また、360度評価の担当者の負担が大きいのもデメリットでしょう。
評価制度の導入手順
評価制度の導入手順は以下の通りです。
- 現状分析
- 目的設定
- 評価基準・項目を策定
- 評価方法を構築
- 導入スケジュールの作成
- 全体へ共有
それぞれ解説していきます。
手順①:現状分析
まずは自社の現状を分析します。
- 現在の評価制度が自社にどのような影響を与えているのか
- 自社が持つ強み・弱み(課題)は何か
- 自社がより成長していくためにはどのような人材が必要なのか
この現状分析の段階で「自社が求める人物像」を明確にしておきたいところです。
そうすれば「自社が求める人物像」を基に評価項目を構築できます。
また、営業成績や利益などの定量的なものだけでなく、社内の雰囲気や従業員のモチベーションなどの定性的な部分も徹底的に分析しましょう。
手順②:目的設定
現状を分析した後は、評価制度を構築する目的を設定します。
先述した通り、評価制度には複数の目的が存在するので、具体的にどのような目的で評価制度を導入するのかを明確にしておきましょう。
この際、いくつも目的を設けるのではなく、可能であれば一つに絞った方がいいです。
手順③:評価基準・項目を策定
評価制度の目的を設定した後は、その目的に沿う形で評価基準や評価項目を策定していきます。
この際、企業単位だけでなく、部署や職務単位で評価項目を決定するのがいいでしょう。
部署によって求められる能力が異なるためです。
また「自社が求める人物像」を評価項目に組み込むことで、人材育成にも応用できます。
手順④:評価方法を構築
評価基準を決定した後は、どのように評価するのか、その仕組みを決めていきます。
一般的に評価制度は、通信簿のように数字で評価することがほとんどです。
ただし、5段階評価なのか10段階評価なのか4段階評価なのかで、それぞれ特性が異なります。
また、報酬や人材配置の際に、評価内容をどの程度反映させるかも事前に決めておきましょう。
手順⑤:導入スケジュールの作成
評価制度の内容が大まかに決まったら、導入スケジュールを作成しておきます。
この段階で評価制度を全従業員に公開する必要はなく、まずは担当者や関係者だけでスケジュールを作成するのがいいでしょう。
評価制度の適用期間はもちろんのこと、評価者向けの研修や説明会、評価制度の内容の発表日まで決めておくと安心です。
手順⑥:全体へ共有
導入スケジュールを作成したら、いよいよ全体への共有です。
従業員が納得するように、余裕のあるスケジュールで共有できるといいでしょう。
評価制度を全体に共有する際には「なぜこのような評価基準になったのか」を論理的に説明することが大切です。
評価制度の最新トレンドは?
評価制度の最新トレンドとしては「高頻度でのフィードバック」と「ノーレイティング」が挙げられます。
最近はChatGPTが話題になるなど、誰もがAIを使える時代になったことで、社会の変化がより一層激しくなっています。
この変化の激しい時代では、数ヶ月に一度のペースで社会情勢が変わるため、その都度、業務内容を修正する必要があると言えるでしょう。
それに合わせて、評価期間のサイクルを小さくし、高頻度でのフィードバックを実施する企業が増えています。
1週間に1度のペースでフィードバックを実施している企業も珍しくありません。
また、評価内容で順位付けしないノーレイティングも注目を集めています。
順位を設けないことで社内の「いきすぎた競争」が無くなり、チーム間で協力するようになるとのことです。
社内の雰囲気がギスギスしているのであれば、ノーレイティングを導入するのがいいかもしれません。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 評価制度は従業員の能力や企業への貢献度を評価する制度
- 評価制度の手法としては「MBO」「コンピテンシー評価」「360度評価」が挙げられる
- 従業員が納得する評価制度の構築が大事
評価制度は、可能な限り主観的な視点を排除し、公平性が保てるようにするのが無難です。
実際「評価が納得いかない」というのは「退職した理由ランキング」で必ず出てくるトピックです。
従業員が納得できる評価制度を構築することを重要視しましょう。
また、評価制度を上手く構築できれば、企業の業績向上や人材育成に繋げることが可能です。
長期的な視点で評価制度を構築・活用することをおすすめします。