従来では、リーダーシップは先天的な要因が大きいとされてきました。
しかし現代では、リーダーシップは後天的に誰でも育成することが可能だとされています。
とはいえ、リーダーシップを育成するのは簡単ではありません。
実際、リーダー人材の育成に頭を悩ませる企業は多いように感じられます。
そこで本記事では、リーダーシップの育成方法について解説していきます。
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目次
リーダーシップとは?
リーダーシップの意味は、実はかなり曖昧です。
「チームを統率する能力」と表現することもあれば、「メンバーに行動を促す力」とされることもあります。
ただし「leader」が直訳で「指導者」なのだとするなら、リーダーシップは「チームを導く力」ということになるでしょう。
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リーダーシップは育成できる!
リーダーシップ理論の研究が始まった当初は、個人が生まれ持った特性で決まる「特性理論」が一般的でした。
しかしこの理論は全く実践的ではない上に、リーダーに適した特性を持っていても、中々優秀なリーダーになれない人材も一定数いました。
そこで注目されるようになったのが「行動理論」です。
行動理論は、優秀なリーダーの共通の行動を研究する理論となっています。
この行動理論が登場してから「リーダーシップを後天的に獲得できる」という考えが広がっていくようになります。
現在、リーダーシップは可能な限り体系化されており、座学と実践を積み重ねることで、リーダーシップを後天的に獲得することができるようにもなるといわれています。
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リーダー人材を育成した方がいい3つの理由
リーダー人材を育成した方がいい理由は以下の3つです。
- 組織の生産性が大きく向上するから
- リーダー人材が不足しているから
- 一般従業員でもリーダー目線を持てるようになるから
それぞれ詳しく解説していきます。
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理由①:組織の生産性が大きく向上するから
リーダー人材を育成した方がいい理由としてまず挙げられるのが「組織の生産性向上」です。
組織の生産性を向上させるには、従業員1人あたりの生産性を向上させる必要があります。
しかしだからと言って、全従業員に生産性向上のアプローチを取るのは非効率的です。
一方で、優秀なリーダー人材が1人でもいれば、そのチームメンバー全員の生産性を向上させることができます。
つまり、優秀なリーダー人材を少人数育成するだけで、組織のパフォーマンスを劇的に向上させられる可能性があるということです。
実際、経営者が変わっただけで、企業の業績が大きく変わるケースはいくつもあります。
組織の生産性を効果的に向上させたいのであれば、リーダー人材を育成する必要があるでしょう。
理由②:リーダー人材が不足しているから
リーダー人材が不足していることも理由として挙げられます。
株式会社マネジメントサービスセンターの『グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023』によると、リーダーの役割を担うことができる優れた人材の供給体制があると回答した人事担当者の割合は12%でした。
つまり約9割の組織が、優秀なリーダー人材を供給できていないことになります。
これを考慮すると、リーダー人材を中途で採用するのは、かなり厳しいのではないでしょうか。
社会全体としてリーダー人材が不足しているためです。
そのため、中途でリーダー人材を確保しにいくだけでなく、社内でイチからリーダー人材を育成することが求められています。
理由③:一般従業員でもリーダー目線を持てるようになるから
リーダー人材を育成することで、一般従業員でもリーダー目線を持てるようになります。
実のところ「全従業員がリーダーシップを有していた方がいい」というのが本音です。
リーダーシップを理解している従業員は、リーダーの目線に立って組織を俯瞰できるようになります。
リーダーや経営層の意向をスピーディーに理解でき、チームのための行動を優先するようになるのです。
そう考えると、全従業員に対してリーダーシップ研修を実施するのがいいかもしれません。
リーダーシップで求められる5つの力
リーダーシップで求められる力は以下の5つです。
- コミュニケーション力
- ビジョン設定力
- 目標設定力
- 意思決定力
- プレゼン力
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:リーダーシップ力とは?リーダーに求められる7つの力
①:コミュニケーション力
リーダーシップでは高度なコミュニケーション力が求められます。
基本的にリーダーは、チームメンバー全員とコミュニケーションを取る必要があります。
また、チームの代表として、他部署や社外の人とやり取りすることもあるでしょう。
一般従業員に比べて、様々な場所でコミュニケーションが発生します。
また、チームによっては、リーダーが部下へのフィードバックや指導を行うことがあります。
このような場合でも、メンバーのやる気を引き出せる高度なコミュニケーション力が求められるでしょう。
②:ビジョン設定力
リーダーシップではビジョン設定力が求められます。
冒頭でも述べた通り、リーダーはチームを導く存在です。
チームメンバーを導くには、リーダーが明確なビジョンを設定して、チームの方向性を決定づける必要があります。
ビジョン設定で重要になるのは「方向性」です。
チームがやっていることとは全く異なる方向性だと、メンバーはモチベーションを高く保てなくなります。
適切なビジョンを設定する力がリーダーシップで求められます。
③:目標設定力
ビジョン設定力と同じく、目標設定力も重要です。
目標がないチームは、モチベーションの行き場を失い、迷走するようになってしまいます。
そこでリーダーが目標を設定することで、業務の方向性を高めて、メンバーのモチベーションを促すのです。
目標設定で重要なのは、難易度です。
難しすぎたり易しすぎたりすると、メンバーのモチベーションが低下する恐れがあります。
適切な難易度で目標を設定するようにしましょう。
④:意思決定力
リーダーシップでは意思決定力が求められます。
チームリーダーやマネージャーの仕事は、基本的に意思決定につきます。
「この仕事を誰に回すのか」「この案件を受けるべきか」などの判断を迅速かつ適切にこなす必要があるのです。
特に現代社会ではスピードが求められるので、スピーディーな意思決定でタスクを溜めないようにする能力が必要です。
⑤:プレゼン力
リーダーシップではプレゼン力も求められます。
リーダーは一般従業員に比べて、チームの代表者として社内でプレゼンする機会が多いです。
また、チームメンバーに対してプレゼンすることもあるでしょう。
ただし、プレゼン力といっても、Appleの新製品発表会のようにおしゃれなプレゼンを実施する必要はありません。
重要なのはわかりやすさです。
どう伝えれば従業員が納得してくれるかを考えながらプレゼンできれば十分でしょう。
リーダーシップの育成方法5選
リーダーシップの育成方法は以下の5つです。
- 研修を実施する
- eラーニングを導入する
- 自主学習に任せる
- プロジェクト単位でリーダーをやってもらう
- ロールモデルを設定しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
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方法①:研修を実施する
リーダーシップを育成する方法としてまず挙げられるのが「研修」です。
リーダーシップの研究は50年以上にわたって取り組まれており、既にかなり体系化されています。
まずは研修でリーダーシップの知識を学習させるのが一般的です。
方法②:eラーニングを導入する
eラーニングでもリーダーシップを育成可能です。
eラーニングのメリットは、やはりコストパフォーマンスの良さにあります。
場所を確保し、講師を呼ぶ必要のある研修に比べると、全体的に費用が小さいです。
特にUdemyのような動画教材サービスであれば、従業員はいつでもどこでもリーダーシップを学べます。
キャリア支援の1つとして導入してみるのがいいかもしれません。
方法③:自主学習に任せる
あえて自主学習に任せるのも手です。
リーダーシップに限らず、自らのスキルを主体的に高めていく力は全従業員に求められます。
リーダーシップでも数々の名著があるので、それを読むだけでも十分な知識が得られるはずです。
もちろん、完全に従業員任せでは、主体的に取り組んでもらえない可能性があります。
書籍購入のサポートを充実させるなどして、自主学習を促す環境を構築するのがいいでしょう。
方法④:プロジェクト単位でリーダーをやってもらう
やはりリーダーシップには実践学習が必要不可欠です。
しかし、いきなりチームのリーダーを任せてしまうのはリスクがあります。
そこで、まずはプロジェクト単位でリーダーを試験的にやってもらうのがいいのではないでしょうか。
プロジェクトと言っても数年を要する大規模なものではなく、1ヶ月程度で終わる規模のプロジェクトです。
小規模のプロジェクトでリーダーをやってもらうことで、少しずつ経験値を積ませていきます。
この方法であれば、リスクも小さく、かつ実践的なリーダーシップを育成できるでしょう。
方法⑤:ロールモデルを設定しておく
リーダーシップを育成するにあたって、ロールモデルを設定できると、より具体性のある育成が可能になります。
リーダーシップはある程度体系化されているものの、その人の特性や周囲の状況によって、求められるリーダーシップが異なるのです。
だからこそ、自分が「なりたい!」と思うリーダーシップスタイルを見極めて、そのスタイルに近いリーダーをロールモデルにするのがいいと考えられます。
そのロールモデルは、世間的に有名なリーダーでも構いませんし、社内の上司でもいいでしょう。
どちらにせよ、ロールモデルを設定して、リーダー像を具体化させることが重要です。
リーダーシップを育成する際の注意点
リーダーシップを育成する際の注意点は以下の3つです。
- 座学と実践のバランスを整える
- 育成が短期的なものにならないようにする
- 一定の失敗を許容するようにする
それぞれ詳しく解説していきます。
注意点①:座学と実践のバランスを整える
リーダーシップを育成する際は、座学と実践のバランスを整えるようにしましょう。
座学に偏りすぎると知識ばかりで力を身につけることができず、逆に、実践に偏りすぎると問題解決のアプローチに幅を利かせられなくなります。
リーダーシップに限った話ではなく、何かしらのスキルや資質を獲得するには、座学と実践のサイクルを回し続けることが大切です。
特に最初は、どうしても座学に偏ってしまう傾向があるので、少し実践を重きに調整します。
この「座学と実践のバランス調整」は、リーダー候補人材を客観的に見られる上司が担当するのがいいかもしれません。
注意点②:育成が短期的なものにならないようにする
リーダーシップを育成する際は、育成が短期的なものにならないように注意する必要があります。
よくあるのは「手っ取り早くリーダー人材に仕立て上げて、1人前になったらそれで終わり」というものです。
しかし、求められるリーダー像はリアルタイムで変動します。
そのため、1人前になったあとも、長期的にサポートする必要があると言えます。
また、短期的なアプローチでは知識が疎かになる傾向があるので、その点も注意が必要です。
リーダーシップは一朝一夕で身につくものではありません。
表面的なリーダー像ではなく、もっと本質的な部分を追求した方がいいでしょう。
注意点③:一定の失敗を許容するようにする
リーダーシップを育成する際は、一定の失敗を許容するようにしましょう。
もし、失敗を許容しない環境でリーダーシップを育成してしまうと、リーダーの最大の特権である「権限」を有効活用できない人材ばかりが生まれてしまいます。
なぜなら、失敗を許容しない環境では、責任を厳しく追求されてしまうからです。
リーダーやマネージャーの肝は「責任」と「権限」の使い方にあると考えられます。
責任によってもたらされる権限が鍵を握っているのです。
責任のあるリーダーは、常にリスクをかける必要があります。
一定の失敗を許容するようにして、権限を積極的に行使できるリーダーを育成するのがいいでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- リーダーシップは後天的に育成できる
- 一般従業員でもリーダーシップを持たせた方がいい
- リーダーシップを育成する際は座学と実践のバランスに気をつける
リーダーシップは後天的に育成できますが、それ相応の時間をかける必要があります。
早い段階でリーダーシップの育成に着手するのがいいでしょう。