新人営業を即戦力にするには、どのような育成方法が効果的なのでしょうか。営業職に必要なスキルから逆算し、7つの方法で新人営業を育てましょう。本記事では、営業職に必要なスキルや、新人営業を即戦力に育成する具体的な方法、営業スキルやモチベーションを向上させるコツについて分かりやすく解説します。
目次
営業職に必要な4つのスキル
新人営業を育てる場合は、まず営業職に必要なスキルセットについて知る必要があります。営業職が身に付けるべき主なスキルは以下の4点です。
- ヒアリング力
- 課題発見力
- コミュニケーション力
- 論理的思考力
こうしたスキルは、営業活動のどのようなシーンで役立つのでしょうか。ここからは営業職に必要なスキルとその重要性について紹介します。
1. ヒアリング力
営業職に欠かせないのが、相手の話を聞くヒアリング力(傾聴力)です。営業活動では、顧客が求めているものを把握し、ニーズに合わせた提案を行うことが求められます。
そのため、顧客の隠れたニーズを引き出す質問力や、顧客が話しやすい場づくりをするスキルが必要不可欠です。
商談の場では、営業担当者が話す時間よりも、顧客が話す時間の方が長くなりがちです。そのため、自社の商品やサービスを売り込むトークスキルよりも、相手の話を引き出すヒアリング力の重要性の方が高いとされています。
しかし、新入社員がいきなりベテラン営業スタッフのようなヒアリング力を身に付けるのは難しいかもしれません。
後の項目で説明するとおり、あらかじめ相手企業の商品やサービスに関する知識をインプットしておくと、適切な質問やトークが思い浮かびやすくなり、顧客が求めていることを理解できます。
またヒアリングをするときは、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の5W1Hを念頭に置くと、頭の中で相手の話を整理整頓しやすくなります。
2. 課題発見力
営業担当者というとコミュニケーション力が求められるイメージがありますが、実は重要視されるスキルの一つであるのが課題発見力です。課題発見力とは、顧客の話を分析し、隠れた課題を見つけるスキルを指します。
商談を成功に導くには、顧客の課題を明らかにした上で、自社の商品やサービスがその解決策となることをアピールしなければなりません。課題発見力を高めることで、顧客自身も気付いていないような課題を発見し、商品やサービスを効果的に提案できます。
なお、課題発見力はヒアリング力とセットで力を発揮するスキルです。ヒアリングによって相手の話を深掘りし、課題発見力で隠れたニーズを発見することで、顧客の興味関心を引くことが可能です。
課題発見力を高めるには、新聞やインターネットなどでニュースをチェックし、情報収集を行う習慣を身に付けるのがおすすめです。自分の知識の幅を広げることで、思考の引き出しが増え、顧客の潜在的な課題を見抜く目を育てられます。
3. コミュニケーション力
コミュニケーション力も営業担当者には欠かせないスキルです。例えばコミュニケーション力には、相手の話の意図を汲み取るスキルや、顧客が興味関心を持ちそうな話題を選ぶスキル、相手に伝わるように噛み砕いて説明するスキルなどが含まれます。
コミュニケーション力が高い人とは、単に話すのが上手い人や、話を聞くのが上手な人を指す言葉ではありません。コミュニケーション力が高い営業担当者は、話すことと聞くことのバランスがとれています。
例えばトークが上手な人でも、自分だけ話しすぎてしまう人や、ついつい顧客の先回りをして話してしまう人は、商談がなかなか成約に結びつきません。反対に相手の話を聞いてばかりいる人も、自社の商品やサービスの魅力を十分にアピールできません。
顧客の話にきちんと耳を傾けながら、相手が興味関心を持ちそうな話題を選び、噛み砕いて説明できるスキルがコミュニケーション力です。
コミュニケーションの良し悪しは、自分の視点だけでは判断できません。上司や先輩社員が商談についてのフィードバックをすることで、コミュニケーションの改善点を見つけられます。
4. 論理的思考力
営業職に欠かせないスキルとして、論理的思考力(ロジカルシンキング)があります。論理的思考力とは、物事の因果関係を整理し、筋道を立てて考えるスキルのことです。営業担当者はもちろんこと、ビジネスパーソンに欠かせないスキルでもあります。
論理的思考力に優れる営業担当者は、商談の際の説得力が増します。そのため論理的思考力は商談の成功率を高める上で必須のスキルです。また論理的思考力は地頭の良し悪しも影響しますが、後天的に身に付けることが可能です。
論理的な思考をするときに役立つのが、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)、ロジックツリー、ゼロベース思考、ピラミッド構造などのフレームワークです。
フレームワーク | 考え方の概要 |
MECE(ミーシー) | 全体を俯瞰し、漏れやダブりがないかチェックする考え方 |
ロジックツリー | 一つの問題を木の枝のように分解していく課題解決方法 |
ゼロベース思考 | 偏見や先入観を意識的に捨て、白紙に戻して考える方法 |
ピラミッド構造 | 結論や仮説をピラミッドの頂点に置き、根拠を階層状に並べていく手法 |
問題やトラブルが発生したときは、上記のフレームワークを意識することで、論理的にアプローチしやすくなります。
新人営業を即戦力に育成する7つの方法
新人営業を即戦力に育成する方法は、大きく分けて7つあります。前章で説明した営業職に必要な4つのスキルを踏まえて、新人営業の教育計画を立てましょう。
- 商品やサービスに関する知識のインプット
- ビジネスマナー研修
- ロールプレイング
- 営業同行
- OJT(On-the-Job Training)
- 外部研修
- オンライン研修
なお同じ研修でも、外部研修とオンライン研修ではそれぞれ強みが違います。育成方法ごとの違いを知っておくことが大切です。ここからは7つの方法について詳しく紹介します。
1. 商品やサービスに関する知識のインプット
新人研修では、新人営業に自社が取り扱う商品やサービスの基礎知識のインプットさせる必要があります。また業界用語や市場の動向など、業界全体の知識を伝えることも大切です。
具体的な方法としては、自社のパンフレットや商品カタログを読んでもらう他、先輩社員などが講師役を務め、座学で学んでもらう方法があります。また商品の製造工程を見学し、商品知識を深める方法も効果的です。
商品の見本があれば、新入社員が実際に手に取って学ぶことが可能です。特に操作やオペレーションが必要な商品は、顧客に操作方法をきちんと説明できるまで使い方を覚えさせましょう。
2. ビジネスマナー研修
営業職に限らず、社会人に欠かせないのがビジネスマナーです。営業担当者が基本的な礼儀や作法、言葉遣いをわきまえていない場合、顧客からの自社のイメージが低下し、今後の取引に影響が出るリスクがあります。
営業職の場合、通常の社員よりも高い水準のビジネスマナーが求められるため、ビジネスマナー研修を実施しましょう。
3. ロールプレイング
ロールプレイングとは、上司や先輩社員が顧客の役(ロール)を演じ、実際の商談に近い形で行うトレーニングです。新人社員同士が顧客の役と営業担当者の役に分かれ、ロールプレイングを実施することもあります。
ロールプレイングは、新人社員が営業現場に出るよりも前のタイミングで実施すべきトレーニングです。新人営業に多い課題は2つあります。
- 失敗を恐れ、普段のパフォーマンスを発揮できない
- 成功体験が少なく、自分のスキルに自信を持てない
ロールプレイングは練習の場で成功体験を積み重ね、失敗を恐れる心を克服するためにぴったりのトレーニング方法です。営業職の基礎スキルも学べるため、新人研修の初期に行う内容として適しています。
商談だけでなく、クロージング、アフターフォロー、インサイドセールスなど、さまざまなシーンを想定したロールプレイングを行う方法もおすすめです。
4. 営業同行
営業同行(商談同行)は、営業部門で昔から使われている研修方法です。具体的には、営業同行は以下の2つを指します。
- 先輩社員の商談に同行し、営業トークや商談を見て勉強する
- 自分がメインの商談に上司や先輩社員が同行し、サポートを受ける
最初は前者の方法からスタートし、だんだん商談に慣れてきた段階で、後者の方法に切り替えることが一般的です。先輩社員の商談に同行してもらう場合は、新人営業に課題を出しましょう。
例えば、「5W1Hを意識してメモをとる」「正確に議事録を書く(顧客に提出する)」といった基本的な課題でも構いません。まずは商談の雰囲気に慣れてもらうことが、営業同行の主な目的です。
5. OJT(On-the-Job Training)
OJT(On-the-Job Training)とは、実際の業務を経験しながら、必要な知識やスキルを獲得していく研修方法を指します。OJTは以下の4つのステップで実施します。
ステップ | 内容 |
Show | 先輩社員が手本を見せる |
Tell | 仕事のコツやポイントを教える |
Do | 新人に仕事をさせる |
Check | 改善点をフィードバックする |
新人営業に仕事をさせるだけでなく、先輩社員がフォローし、改善点をフィードバックすることが大切です。
6. 外部研修
人手が足りず、新人営業を教育する時間がない場合は、外部研修を利用する方法もあります。
外部研修とは、外部の企業から講師を招き、新入社員を指導してもらうプログラムです。研修費用が必要なものの、営業のプロの指導を受けられるため、短期間で営業担当者を育てることができます。
7. オンライン研修
コロナ禍をきっかけとして、テレワークやリモートワークを導入する企業が増加しました。新入社員の研修もオンラインで実施するケースが増えています。オンライン研修であれば、いつでもどこでも研修を受けられるのがメリットです。
オンライン研修には、Web会議システムなどを利用して行う外部研修や、教育コンテンツをダウンロードして自習させるeラーニングなどの方法があります。
新人営業のスキルやモチベーションを向上させるコツ
新人教育の効果を高めるには、以下の6つのポイントを意識する必要があります。
- 仕事の全体像や目的を伝える
- 目標達成への意識を持たせる
- フィードバックの数を多くする
- クライアントへのヒアリングを徹底させる
- 本人に考えさせる
- 事前準備を徹底させる
新人営業のスキルやモチベーションを向上させるため、教育研修のあり方を見直しましょう。
仕事の全体像や目的を伝える
新人営業はまだまだできることが少ないため、タスクを細分化し、少しずつ仕事に携わってもらう企業がほとんどです。
その場合、新人営業は仕事の全体像が見えにくくなり、今取り組んでいることの意味を理解できない可能性もあります。新入社員にタスクを割り振るときは、仕事の全体像や目的を伝えるようにしましょう。
目標達成への意識を持たせる
新人営業に目標達成への意識を持たせることも大切です。営業職は、「1日5件のアポイントを獲得する」「1カ月で20件の商談機会を得る」など、常にノルマを達成することが求められる職種です。
新人営業のうちから目標を設定し、ノルマをクリアする習慣や意識を身に付けてもらいましょう。
実現可能な目標にする
新人社員に目標を与えるのは、早い段階から成功体験を積ませ自信を持ってもらうためでもあります。そのため、非現実的な目標や達成不可能な目標ではなく、今の実力で十分に達成できそうなストレッチゴールを設定することが大切です。
定量的に判断できる目標にする
目標を達成できたかどうかを客観的に判断するため、定量的な(数字で表せるような)目標を設定することも大切です。成果が数字に表れると、社員のモチベーション向上にもつながります。
目標達成するためのアクションや期限を設定する
新入社員に目標を与えるときは期限を設けましょう。目標達成の期限が設定されていないと、緊張感が薄れ、真面目に取り組まない社員も出てきます。こうした目標設定の際に役立つのが、SMARTの法則と呼ばれるフレームワークです。
- Specific(具体的な)
- Measurable(測定可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Realistic(現実的な)
- Time-related(期限が決められた)
新入社員の目標設定に困ったら、上記の5つのポイントを意識しましょう。
フィードバックの数を多くする
ロールプレイングやOJTを実施するときに大切なのが、フィードバックの数です。新人営業を即戦力に育てるには、上司や先輩社員からのフィードバックを充実させ、課題を一つひとつ解決してもらうことが大切です。
ただし一度に大量のフィードバックを行っても、相手は内容を全部理解できません。フィードバックは複数に分け、優先順位の高いものに絞って伝えることが大切です。
クライアントへのヒアリングを徹底させる
商談に不慣れなうちは、研修で教えたことが本番で上手くできないケースも多々あります。特に疎かになりやすいのが、顧客へのヒアリングです。
まずは顧客へのヒアリングを徹底させ、相手のニーズを汲み取る意識を持たせましょう。事前にヒアリングシートを作成し、顧客に聞きたい項目を洗い出しておく方法も効果的です。
本人に考えさせる
新人営業への研修では、ついつい上司や先輩社員が口を出してしまい、本人に考えさせないケースが散見されます。上司や先輩社員の指導も大切ですが、新入社員が自分の頭で考える習慣を付けないと、長期的には本人のためになりません。
OJTなどを実施する際は、業務に必要な心構えを全て教えるのではなく、本人が考えて行動する余地を残すことが大切です。
事前準備を徹底させる
新人営業はまだまだアドリブ力が乏しいため、事前準備にかけた時間が商談の成功率に大きく影響します。
新人営業のうちから事前準備の習慣を身に付け、顧客情報のリサーチや、提案する商品・サービスの強みの整理、トークスクリプトの見直しなどを行ってもらうことが大切です。
ポイントを押さえた指導を行い、新人営業を即戦力として育てよう
新人営業を育てるときには、営業職に求められるスキルから逆算し、教育計画を立てることが大切です。営業職には、主にヒアリング力、課題発見力、コミュニケーション力、論理的思考の4つのスキルが求められます。
商品知識のインプットやビジネスマナー研修などの座学や、営業同行やOJTをはじめとした実践の場を通じて、新人営業を即戦力に育てましょう。
また新人教育の効果を高めるには、社員のモチベーションを高めることも大切です。本記事で紹介したスキルやモチベーションを向上させるコツを参考にして、新人教育のあり方を見直しましょう。
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