採用広報は、採用活動において候補者を集めるために有効な手段です。
しかし、KPI(重要業績評価指数)やKGI(重要目標達成指数)など具体的な行動指針が曖昧になりやすく、成果がわかりづらいという課題があります。
この記事では、採用広報で失敗しないための具体的なKPI設定について解説します。
採用広報におけるKPI設定で悩んでいる担当者の方は、PDCAサイクルを回しながら採用広報が実施できるようになるため、参考にしてください。
目次
採用広報におけるKPI設定とは
採用広報のKPI設定は、使用するチャネルや採用活動とどれだけ連携させるかで異なります。
業界・業種を問わず、定められた基準はありません。
よって、自社に合ったKPIを設定することが重要です。
なお、重要なポイントとしては、採用広報では採用決定数(内定者数)をKPIに設定しません。
採用決定数をKPIに設定してしまうと、求人媒体やダイレクトリクルーティングの採用結果など広報以外の要素が入り込んでしまい、成果を正しく把握できなくなるためです。
採用広報では、認知度拡大やWebメディアのエンゲージメント率向上など、会社のブランディングを目的としたKPI設定が適切です。
関連記事:KPIとは?意味や設定の手順とコツ、KGIとの違いを徹底解説!
採用広報でKPI設定が重要な3つの理由
採用広報でKPIを設定する主な理由は、下記の3つです。
- 採用広報と採用活動の目標を連携できる
- 採用広報の進捗管理と課題発見がしやすい
- 採用広報の貢献度が可視化できる
採用広報と採用活動の目標を連携できる
採用広報と採用活動における最終的な目標は、自社が求める人材を必要な人数採用することです。
KPIを設定すれば、KGI(重要目標達成指標)に合わせて双方の行動指針を立てやすくなります。
たとえば「現場で1ヶ月10人の中途採用」をKGIとした場合「広報メディアからの問い合わせ件数100件目指す」とKPIを立てます。
このように、KGIを見据えたKPIを設定することで、実際の行動計画を具体的に立案可能です。
関連記事:採用戦略の成功事例を徹底解剖!成功の秘訣と注意点とは?
採用広報の進捗管理と課題発見がしやすい
採用広報は成果が示しにくく、KPIを設定しなければ進捗管理と課題発見につながりません。
KPI設定で成果を定量的・定性的に計測し、数値化できれば、KGIと現状との差を比較して客観的に進捗管理を実施できます。
もしKPIの達成状況が芳しくなければ、問題となっている項目の数値を分析し、課題発見が可能です。
採用広報のメディアやコンテンツの成果は、数値化しなければどの要素で改善が必要かが明確になりません。
効果検証するためにも、KPIを設定し、課題を発見しやすくする仕組みは必要不可欠です。
採用広報の貢献度が可視化できる
採用広報は現場での採用活動とは異なるため、どれだけ貢献できているのかが関係者以外に伝わりづらい部分があります。
そこで、採用広報の成果を数値で可視化すれば、貢献度の社内共有は容易なものへ変化が可能です。
採用広報では、社長インタビューや社員アンケートの実施など、社内全体の協力が必要な場面もあるでしょう。
協力者の時間を奪うことになるため、貢献度を数字で端的に伝えることが重要です。
社内での理解が深まれば協力者が増え、より効率的に採用広報を推し進められます。
採用広報におけるKPIの具体的な設定方法
採用広報のKPI設定は、採用活動のフェーズごとに定めなければなりません。
以下6つのフェーズにおけるKPIの具体的な設定方法を解説します。
- 認知拡大
- 興味・関心
- 比較・検討
- 求人への応募
- 選考・面接
- 内定・採用
1.認知拡大
KPI設定の重要な目的として挙げられるのが「認知拡大」です。
求職者は、自分が入社したい企業を探すために、インターネットやSNS、求人紙を活用してリサーチします。
リサーチ対象に選んでもらうためには「自社を知ってもらう」ことが重要です。
オウンドメディア・SNS・求人サイトなど、さまざまなメディアを活用してアピールしましょう。
認知拡大フェーズで設定する主なKPIは、以下の指標です。
認知拡大フェーズの指標 | KPI設定における特徴 |
各メディアのコンテンツ配信数 | 採用広報における情報発信の基盤 |
オウンドメディアの閲覧数(PV・アクセス数) | 自社メディアが閲覧された回数 |
SNSアカウントのインプレッション数 | 自社アカウントが閲覧された回数 |
SNS投稿のリーチ数 | 自社の投稿を閲覧した人数 |
関連記事:採用広告の成功事例を解説|特徴や種類から見える傾向とは?
2.興味・関心
認知が拡大できたあと重要になるのが「興味・関心」を抱いてもらうことです。
どれだけ求職者に認知されても、魅力的に感じなかったり、入社したくないと思われたりすると、実際の応募にはつながりません。
そのため、メディアのコンテンツの質を高め、ユーザーニーズに合った情報発信が必要です。
社長・社員のインタビュー記事の掲載や、業務のやりがいなどを発信し、興味づけを行ないましょう。
興味・関心フェーズで設定する主なKPIは、以下の4指標です。
興味・関心フェーズの指標 | KPI設定における特徴 |
SNSのエンゲージメント率 | いいね・保存・コメントなど自社コンテンツの内容へ興味を抱いている人の数 |
SNSのフォロワー数 | 何度も自社アカウントを見たいと考えている人の数 |
オウンドメディアの滞在時間 | 興味・関心を持って自社メディアを真剣に閲覧されているかを測る |
採用広報用動画の視聴回数(チャンネル登録数) | 何度も自社の動画を見たいと考えている人の数 |
3.比較・検討
求職者は、いくつかの企業をリサーチして興味・関心を持った後、ピックアップした企業の比較・検討に入ります。
このフェーズでは「他社と差別化」し、魅力的に感じてもらうための工夫が重要です。
すでに興味・関心は高いため、求人サイトや自社の求人ページの中で、実際に働き始めた姿を具体的にイメージしてもらえるかがポイントです。
比較・検討フェーズで設定する主なKPIは、以下の3指標です。
比較・検討フェーズの指標 | KPI設定における特徴 |
求人サイト・自社求人ページのPV数(アクセス数) | 求人への応募を検討している人の数 |
求人サイト・自社求人ページの滞在時間 | 就労条件や業務内容が吟味されているかを測る |
求人サイト・自社求人ページのユニークユーザー数(一定期間内のアクセス数) | 直近で求人への応募を検討している人の数 |
4.求人への応募
求職者は、比較・検討した後、最終的に絞った企業へ応募します。
このフェーズでのKPIは「応募者数」です。
応募者数と採用広報の成果は比例するため、SNSやメディアのコンテンツで求職者に行動を促すCTA(行動喚起)や動画でメッセージを残すなどの工夫をして、応募者数の増加につなげましょう。
また、応募後の辞退を防ぐための施策も重要です。
応募者に向けて「面接対策」や「入社までにすること」などのメッセージを配信することで、KPIの達成につながります。
5.選考・面接
選考・面接のフェーズでは、応募者の離脱を防ぐ必要があります。
応募者が選考を辞退したり、面接に来なかったりすることは少なくありません。
そのため、メールやSNSを通じて応募者に対してダイレクトメッセージを送り、直接のコミュニケーションによるフォローが大切です。
選考・面接のフェーズで設定する主なKPIは、以下の2指標です。
- 選考・面接の辞退者数
- 選考・面接の参加率
どちらもプロセスを評価する上で重要な指標です。
大きな変動が見られた際に、すぐ改善が図れるようにしておきましょう。
関連記事:採用を成功に導くカギ
6.内定・採用
最後は、選考通過者を内定・採用するフェーズです。
内定・採用を決めても、通知後に辞退する人は少なくありません。
内定辞退者をできる限りゼロにするため、個別のフォローを徹底しましょう。
入社前の研修を実施したり、内定者同士で楽しめるイベントを開催したりして、交流を深める場を設けると、辞退者軽減につながります。
内定・採用のフェーズで設定する主なKPIは、以下の2指標です。
- 内定辞退率
- 早期離職率
採用広報のプランニングに関わる指標として、定期的な観測と評価が大切になります。
KPIを効果的に管理するためのポイント
フェーズごとに異なるKPIを設定するため、指標・数値の決定と進捗管理を正しく行なわないと、採用広報における課題解決に生かせません。
以下では、KPI設定を効果的に管理し、採用広報を成功させるためのポイントを解説します。
KGIと具体的な行動フローを明確にする
採用広報としてのKGIはもちろん、人事・採用を担当する部署全体のKGI設定が重要です。
KPIはあくまで中間目標であり、最終的にKGIの達成を目指します。
KGI設定でゴールを定めれば、具体的な行動フローにつなげられます。
たとえば、一般的にKGIとして設定される指標は「採用人数」です。
「1年間の採用人数は20人を目標とする」「新卒採用では、10人確保する」などのKGIを設定しましょう。
自社が求める人材をどれだけ採用できるかが鍵となります。
関連記事:KGIの意味とは?KPI・OKRとの違いやメリット、設定方法、注意点を解説
日々の数値測定をもとにPDCAサイクルを回す
KGI・KPIを設定した後は、日々数値を測定し採用広報における課題を洗い出しましょう。
KPIを達成できていない項目があれば、分析・改善を実施します。
KPIを達成できている項目は、さらに高い目標を再設定することもおすすめです。
PDCAサイクルを回し続け、採用の精度を最適化することで、KGIの達成も可能になります。
関連記事:効果的なPDCAとは?失敗要因やデメリット、対策方法を解説
まとめ
採用広報では、採用活動全体の目的を達成するためにKPIの設定が重要です。
認知拡大から人材の採用まで具体的なKPIを設定し、フェーズごとにコンテンツを制作・発信することで、最終的なKGIの達成が期待できるようになります。
運用する際には、ぜひこの記事を参考にして、PDCAサイクルを回しながら、採用広報を成功させてください。