POCAサイクルとは多くの組織で用いられている業務効率化や品質・生産性向上のための手法です。
しかし、使い方を誤ると効果を発揮しないことがあるので注意が必要です。
今回はPDCAについて注意点やプロセスを1つずつ解説し、より効果を発揮する方法を解説しています。
この記事を読むことで、
- PDCAの本質がわかる
- PDCAを用いるメリットがわかる
- 近年注目されているOODAループがわかる
ようになります。ぜひ本記事を参考に効果的にPDCAサイクルを回して、生産性の向上につなげてみてください。
<<あわせて読みたい>>
メタバースとは?メタバースの語源や意味、具体例をわかりやすく解説!
DXとは?なぜDXと略すの?デジタルトランスフォーメーションの意味や定義をわかりやすく解説
目次
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは下記の言葉の頭文字をつなげたもので、マネジメント品質や生産性の向上を継続して行う概念や改善方法を指します。
- Plan / 計画する
- Do / 実行する
- Check / 評価する
- Action / 改善する
これは日本に品質管理をもたらしたと言われるアメリカの統計学者W・エドワーズ・デミング氏が1950年代に提唱したフレームワークです。現在では国際的な品質管理の基準となっています。
上記のプロセスの最後である「Action」まで進むと再び最初の「Plan」に戻り、継続して改善を行っていくことを「PDCAサイクルを回す」と表現されます。このように回し続けていくことで、従業員一人ひとりの生産性が上がり、結果的に企業の業績が上がる仕組みです。
<<あわせて読みたい>>
半導体不足はなぜ起きた?いつまで続く?半導体不足の影響や原因、解消の見込みについて
PDCAサイクルの4つのプロセスを解説
PDCAのプロセスを1つずつを理解していなければ、効果的な運用はできません。ここではPlanから順に詳しく解説していきます。
①.Plan / 計画する
まずPlan(計画)では、主に下記の2つを行います。
- 目標と目的の設定
- 目標を達成するためのアクションプラン(実行計画)の作成
目標を設定するときに注意するべきポイントは、抽象的で曖昧な目標にせず、下記の5W2Hの要素を明確にしておくことです。
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- Where(どこで)
- When(いつ)
- How(どのように)
- Hou much(いくらで)
また、目標を決める際は現実的で達成可能なものにすることや、その目標にする理由をハッキリさせておくこと、期限を決めておくことも重要です。行動計画を作成する際も、可能な限り具体的な内容にしておきます。
②.Do / 実行する
Do(実行する)では、Planの段階で作成した目標や計画に基づいて、実際に行動をしていきます。
ただ、単純に「計画に沿って行動する」だけではなく、下記のポイントを検証・評価していくプロセスでもあります。
- 課題をクリアできたかどうか
- 他に望ましい方法はないか
また、計画を実行する際にどのように進めていったのかを記録しておくことも必要です。ただ単に文章で記録するのではなく、数字や指標を意識して行動の結果を数値化しておくと、客観的な評価が可能になります。こうすることで後にさらなる質の高い実行につなげられます。
他にも下記のポイントに注意しましょう。
- 少しずつ実行にうつす
- 目標の進捗度を記録する
- 数値として記録しておく
- 計画からずれた際は、その様子も記録しておく
③.Check / 評価する
Check(評価する)では、下記のようにDo(実行する)の検証・評価をしていきます。
- 計画に沿って実行できたのか
- 目標に向かって実行できたか
- 目標の達成度はどの程度か
もし計画通りに実行できていなかった場合、「なぜできなかったのか」という原因の分析も行います。そして計画に沿って行動できた場合においても、その成功要因について分析します。この際、どちらにせよ数値を根拠とした具体的な評価が重要です。
また、目標達成の成否という2択ではなく、「どれだけ目標を達成できたのか」という達成度合いを測る必要があります。この際も数値をもとにした定量的な測定をしましょう。
この分析は後のAction(改善する)につながります。
④.Action / 改善する
Action(改善する)のプロセスでは、Check(評価する)での分析結果をもとに、今度の課題への対策や改善策を練ります。ここでしっかりと仮説の検証や原因の究明が行われないと、的はずれな改善策を立てて失敗に陥る危険性があるので注意しましょう。
改善策を練る際は、下記のようにいくつかの選択肢をもっておくことが重要です。
- 継続して計画を進める
- 計画を進める最中に、いくつかのポイントを改善する
- 計画を取りやめるか、延期する
また、PDCAでは「Action」で終わりでも、「Plan」が始まりでもありません。「Action」をまた新たなスタートととして、さらなる改善を続けていきましょう。
<<あわせて読みたい>>

PDCAサイクルによって得られる4つのメリット・効果
PDCAで得られるメリットは下記の4つです。
- 目標や行動の明確化が可能
- やるべきことに集中できる
- 課題や問題点が明確になる
- 継続的な業務改善や品質管理が可能
それでは1つずつ解説していきます。
目標や行動の明確化が可能
まず1つ目のメリットは、目標や行動の明確化ができることです。
組織においても個人においても目標がハッキリしていなければ、仕事の進めようがなく、本来到達すべきポイントとのズレが生じます。さらに、具体的に何をするべきかも不明確になります。
反対に、個人や組織の目標が明確になれば、その目標に対して具体的にやるべきこともハッキリするのです。
数値を根拠とした具体的で明確な目標を作成するPDCAを利用することで、目標の達成や生産性向上のために必要なアクションプランも具体的に立案できます。
やるべきことに集中できる
2つ目のメリットは、やるべきことに集中できるということです。
Plan(計画)のプロセスでは、設定した目標に向けて明確な行動計画を作成するため、個人レベルで何をするべきかや、何をしなくてよいかが明確になり、自分がやるべきことに集中できるようになります。
また、自分が組織に何を求められているかがわかるため、社員の自発的な行動を促せます。
Planで作成した行動計画への理解は、仕事への集中力や生産性に影響を与えるため、ただ押し付けるのではなく積極的なコミュニケーションのなかで理解を得るように心がけましょう。
課題や問題点が明確になる
3つ目のメリットは、目標達成の際に解決するべき課題や問題点が明らかになることです。
Planのプロセスでは、数値を元にした定量的な測定を使って目標を設定します。そしてその後、その目標を達成するための計画を立てて、実行・分析していくなかでうまくいった点や失敗した点、課題、問題点を明らかにすることが可能です。
こうした課題や問題点を見つけることで、その後、さらにどうすれば改善できるのかが明確になります。
継続的な業務改善や品質管理が可能
4つ目のメリットは、継続的な業務改善や品質管理が可能になる点です。
あらゆる仕事において、その場限りの工夫や改善では、業務効率や生産性が良くなっていくことはありません。
具体的な目標や行動計画を作成し、実践する、改善を目指すといったことを繰り返していかなければ、するべきことが明らかにならなかったり、改善できたとしても後々なぜそうなったのかという評価ができないのです。
しかし、PDCAサイクルを回し続けることで、継続的な業務の削減や効率化につながります。
<<あわせて読みたい>>

PDCAサイクルのコツは?効果を引き上げるための2つのポイントを解説!
PDCAを効果的に使用するポイントは下記の2つです。
- Planで作成する目標を明確にする
- サイクルをまわすのを止めない
それでは1つずつ解説していきます。
Planの目標は明確に設定する
まず1つ目のポイントは、Planの段階で作成する目標はハッキリさせておくことです。
4つのプロセスのなかで最も重要なのは「Plan」であり、ここが明確に設定されていなければ、後のDCAが全てズレて失敗してしまいます。Planにおけるありがちな失敗は、目標が数値で設定されていないことや、計画が曖昧で浅いものになっていることです。
したがって、Planで作成する目標は数字で定量的に測定可能なものにし、計画は抽象的ではなく具体的かつ詳細に作成しましょう。
例えば、「営業成績を上げる」という曖昧な目標よりも「新しい顧客を5件獲得し、売上を20%上げる」といった数値を用いた目標の方が、次の行動を考えやすくなります。目標が具体的になると行動も具体的になり、その結果、大幅な業務改善へと向かいます。
サイクルをまわすのを止めない
2つ目のポイントは、サイクルをまわすのを止めないことです。
名前に「サイクル」と付いている通り、回し続けてこそ効果を発揮します。一度や二度回しただけでは効果は得られないため、継続的に回し続けましょう。螺旋階段のように循環して改善を続けるプロセスであるため、このループを止めてはいけません。
例えば、Chack(評価)の段階で「実行」の分析はできたが、Action(改善)でさらなる改善案が思いつかないということもあります。この時「革新的な改善案でなければならない」という思い込みにハマっているかもしれません。
確かに革新的な改善案であれば良いですが、そうでなくとも小さな改善案でも良いのです。それより良くないのは、「こんな改善案ではダメだ」と膠着状態に陥って、サイクルが止まってしまうことです。
そうではなく、小さな改善案でもよいのでとにかく止まらずにサイクルを回し続けることを優先させましょう。そうすることで小さな改善であろうとも、それが重なることで大きな改善につながります。
<<あわせて読みたい>>

PDCAに代わるOODAループとは?
近年になってPDCAと似た概念で注目されているものに「OODA(ウーダ)ループ」があります。PDCAと似ていますが別の概念であるため、ここでその概要や違いを解説していきます。
OODAループとは?
OODAループは下記の単語の頭文字をとったもので、米空軍のジョン・ボイド氏が提唱しました。
- Observe(見る)
- Orient(わかる)
- Decide(決める)
- Act(動く)
OODAは個人の行動に焦点をあてた問題解決の手法で、環境に適応しながらより良い結果をだすことを目的としています。
OODAループのプロセス
OODAループのプロセスを簡単に解説していきます。
Observe(観察=見る)
OODAループでは、まずはじめに現状や対象を観察します。例えば自社内外の動きや事情など、今後の行動や決定を左右する状態を観察してデータを集めます。ここで集めたデータの精度や量は、この後のプロセスに大きな影響を及ぼすため、重要です。
Orient(状況判断=わかる)
続いてOrientは、観察して得たデータをもとに、この後の方向性を決定するプロセスです。
観察して得た情報に解釈を加え、判断の際に使える価値ある情報へと変換します。
Decide(意思決定=決める)
Decideではここまでのプロセスで決めた方向性とデータをもとに、具体的な行動計画や戦略を決めます。
Act(行動=動く)
そして最後のActでDecideで策定した計画や戦略を実行します。そしてPDCAと同じように、またObserveに戻ってループを繰り返します。これがOODAループの大まかな内容です。
PDCAサイクルとOODAループの違い
PDCAは課題や問題に焦点を当てていますが、OODAループは個人の行動に焦点を当てています。
また、PDCAは最初に数値を用いた目標を設定したり、それをもとにした具体的な行動計画を作成しますが、OODAループは具体性よりも今置かれている状況の観察と、状況に合わせた的確な判断が重要視されます。
もともとは生きるか死ぬかをわける戦場で生まれたメソッドであるため、機動性を重視した手法なのです。PDCAは課題を中長期的にとらえて品質管理・業務改善を目指す、プロセスを重視した問題解決のメソッドですが、OODAは迅速な判断と実行を求められるスピーディなメソッドと言えるでしょう。
しかし、両者とも4つのプロセスを用いて何度も繰り返すことでブラッシュアップしていく点では同じです。
この2つの手法を使い分ける際は、中長期的な期間がとれる際はPDCAを用いて、緊急性が高く迅速な行動が求められる際はOODAループを用いるのがよいでしょう。
<<あわせて読みたい>>

まとめ PDCAサイクルやOODAループで改善を目指そう
PDCAは生産管理や業務改善における課題や問題を解決するのに、簡易的に用いることができる効果的なメソッドです。
ビジネスに限ったことではありませんが、最初から完璧な仕組みやプロダクトはありません。だからこそ、少しずつ改善を重ねていくことで完璧に近づけることが重要になります。そのためにもPDCAサイクルやOODAループを有効活用していきましょう。
しかし、PDCAは便利ですが、Planの段階で目標を曖昧にするなど、使い方を誤ると効果を発揮しないので、その点は注意が必要です。本記事を参考にPDCAサイクルを用いて、さらなる生産性の向上に役立ててみてください。
<<あわせて読みたい>>
