即戦力人材が求められる現代社会では、さまざまなアプローチで人材獲得に動く企業が増えています。
特に近年は「中途採用」ではなく、「キャリア採用」という名目で人材を集めるケースが増えているようです。
では一体、キャリア採用と中途採用にはどのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではキャリア採用と中途採用の違いについて解説していきます。
目次
キャリア採用と中途採用は何が違う?
まず、キャリア採用と中途採用がそれぞれどのような意味なのかを詳しくみていきましょう。
キャリア採用とは?
キャリア採用は、業界経験や職種経験を保有している人材を即戦力として採用することを指します。
例えばエンジニア職の中途採用であれば「エンジニア歴3年以上」など、経験年数を提示されることが多いです。
キャリア採用は基本的に経験者のみを対象としています。
キャリア採用に応募する人材も、大半がキャリアアップを望んでいるため、一般的な採用方式よりも優秀な人材を獲得しやすいのが特長です。
関連記事:キャリア採用とは?メリット・デメリットを徹底解説【成功法も紹介】
中途採用とは?
中途採用は、簡単に言えば新卒以外を対象とした採用方式です。
一般的には、就業経験のある人材を対象とします。
この際、特定の職種や業界の就業経験を必ず指定しなければいけないというわけではなく、未経験者を対象にした採用が多いです。
例えばエンジニア職の中途採用でも、エンジニアの職種経験を必要としないケースが見受けられます。
そのため、新卒で入社してから3年以内の人材である第二新卒の採用も、中途採用に含まれます。
上記のことから、中途採用の中にキャリア採用が含まれているという解釈で問題ありません。
関連記事:中途採用とは?新卒採用との違いやメリット・デメリットについても解説
キャリア採用と中途採用の違い
つまり、キャリア採用と中途採用の違いは、即戦力採用であるかそうでないかにあります。
中途採用は業界経験を必要とせず、その代わりに社会人経験が重視されます。
一方のキャリア採用は、社会人経験は大前提として、そこからさらに業界経験や職種経験まで踏み込みます。
そのため、キャリア採用を実施する際は「エンジニア歴3年以上」や「マネージャー経験」など、具体的な条件を記載すべきです。
そしてキャリア採用で獲得した人材は、基本的に即戦力人材として扱われます。
その分、給与が高くなる傾向があるものの、教育コストを節約できるのが魅力です。
キャリア採用と中途採用を徹底比較
ここではキャリア採用と中途採用を、以下の7つの項目で徹底比較していきます。
- 即戦力度
- 給与
- 教育コスト
- 入社後の転職率
- 人事の柔軟性
- 採用プロセス
- それぞれの採用に適した職種
それぞれ詳しく見ていきましょう。
比較①:即戦力度
即戦力度については、キャリア採用の方が優れています。
先ほども述べた通り、キャリア採用では業界経験やスキルなどが条件に盛り込まれるためです。
ただし、キャリア採用で獲得した即戦力人材でも、自社のカルチャーや独自ルールなどの教育は必要です。
一方の中途採用は、未経験者を採用することがあるため、戦力になるまでの人材育成が必要です。
もちろん、新卒採用のように社会人の基礎的なスキルを指導する必要性は低いでしょう。
ただし専門職の場合、やはり専門的なスキルを教育するのに一定の時間を必要とします。
もし、事業をスピーディに立ち上げる必要があるのであればキャリア採用、時間に余裕があるのであれば中途採用を活用するのがいいでしょう。
比較②:給与
キャリア採用は、既にスキルを習得している即戦力人材を対象としているため、必然的に給与が高くなります。
また、キャリア採用の求職者は、キャリアアップや昇進に積極的なため、長期的にも給与が上がっていくでしょう。
それに比べ、中途採用で獲得した人材は、必ずしも専門的なスキルを習得しているわけではないため、給与を抑えることができます。
しかしその分、教育コストが発生するうえ、実際に成果を出せるかどうかは未知数です。
どれだけの予算を人材に投入できるか、総合的な目線で採用方式を決定する必要があるでしょう。
比較③:教育コスト
キャリア採用は既にスキルを習得している人材を対象としているため、教育コストはほとんど発生しません。
ただし、企業特有の文化やカルチャーを指導する必要がある点には注意が必要です。
一方、中途採用は社会人基礎力を身につけていることが前提にあるので、新卒採用に比べると教育コストが低いかもしれません。
しかし、スキルを既に有しているキャリア採用に比べると、やはり教育コストは高くつくでしょう。
また、教育コストはお金だけでなく、時間も含まれます。即戦力人材であれば入社して数日後にはパフォーマンスを発揮するでしょう。
しかし未経験者の場合、入社して数ヶ月は育成が必要です。
比較④:入社後の転職率
入社後の転職率は、一概には言えません。
ただし傾向として、中途採用よりもキャリア採用で獲得した人材の方が、キャリア構築に積極的です。
そのため、職場環境が自身のキャリアアップに適していると判断したら、転職せずに長期間所属してくれる確率が高まるでしょう。
逆に「ここで学ぶことはもうない」と判断したら、またすぐに転職活動を始めるはずです。
つまり入社後の転職率は、採用方式の違いではなく、従業員にとって魅力的な職場環境であるかそうでないかで変動します。
もし、入社後の転職率を低くしたいのであれば、キャリア採用や中途採用で獲得した人材の受け入れ態勢を、しっかり整えるべきです。
関連記事:離職防止とは?注目される背景やリスク、原因や対策を解説
比較⑤:人事の柔軟性
人事の柔軟性については、中途採用で獲得した人材の方が、柔軟な人材配置を実施することができると考えられます。
なぜなら、中途採用は未経験採用を実施することが多いためです。業界経験や職種経験に囚われない配置ができます。
一方、キャリア採用は、業界経験や職種経験を有している人材を獲得することになるため、その経験が最大限活用できる人材配置が求められます。
例えばマーケティング職の経験を有しているのであれば、マーケティングの知識を活用できる商品開発・広報などの部署に配属させるべきです。
また、キャリア採用の応募者の多くは、自身でキャリアプランを構築している可能性が高い傾向にあります。
そのため、キャリアプランに合わせた人材配置を実施する必要があるのです。
比較⑥:採用プロセス
中途採用とキャリア採用で、採用プロセスに大きな違いはありません。
一般的には以下の流れで実施すべきだと考えられています。
- 採用計画を立てる
- 求める人物像と選考基準を決める
- 募集条件を決定し、求人票を作成する
- 募集方法と募集媒体を決める
- 選考フローを決める
- 選考を進める
- 内定者を決定して、通知する
- 内定者をフォローする
- 入社手続きや受け入れ準備を実施する
キャリア採用は中途採用の一部だと捉えられているので、採用プロセスの流れに大きな違いはありません。
ただし、別途で意識しなければならないポイントが3つあります。
1つめは、キャリア採用では「求める人物像」を明確にするという点です。
キャリア採用は業界・職種経験を有している即戦力人材を獲得するのが基本方針なので、スキルや経験など、求める人物像を明確にし、それに合わせた募集条件を決定する必要があります。
2つめは、募集媒体です。
現在、数多くの募集媒体が存在していますが、その中でも「エンジニア専門」や「ハイクラス人材専門」などの専門性のある募集媒体が増えてきています。
即戦力人材を獲得したいのであれば、このような専門性のある募集媒体を検討していいかもしれません。
3つめは、受け入れ準備です。
キャリア採用で獲得した人材を、すぐにでも活躍させるための職場環境の整理を実施する必要があります。
場合によっては、既存社員のポジションを明け渡すことも考えられるため、人間関係の面でのフォローも必要です。
比較⑦:それぞれの採用に適した職種
キャリア採用と中途採用では、それぞれの採用に適した職種が存在します。
キャリア採用に適した職種
キャリア採用に適した職種は以下の通りです。
- エンジニア
- 営業・企画
- バックオフィス
高度なプログラミングスキルを有するエンジニアを獲得するのであれば、キャリア採用がおすすめです。
プログラミングスキルや論理的思考は、短期間で習得できるものではありません。
また、ITサービスの立ち上げを経験しているかそうでないかも、大きな違いです。
エンジニアをキャリア採用で募集する場合は、業界経験だけでなく、具体的な職務内容も募集条件に盛り込むと良いでしょう。
営業・企画に関しては、専門的な業界経験が必要不可欠です。
他の人にはない業界経験は、商品開発や営業の効率化に大きく貢献するでしょう。
そのうえ、営業・企画は実力至上主義の職種です。既に実績を保有している人材を、キャリア採用で獲得するのが確実でしょう。
人事・法務・財務などのバックオフィス部門は、専門的な知識が求められるため、キャリア採用が好ましいです。
特に、政府へのロビイング活動や資金調達などのミスが許されない業務は、経験豊富な人材が担当しなければなりません。
キャリア採用に適した職種の多くは、短時間で習得不可能な専門的なスキル・知識が必要です。
これを人材教育で習得させようと思うと数年の時間を要するので、やはりキャリア採用を積極的に活用する必要があります。
中途採用に適した職種
中途採用に適した職種は以下の通りです。
- 接客
- 保育
- 医療・福祉
- ブルーカラー
接客に関しては、コミュニケーション能力さえあれば、未経験者でも十分に活躍できます。
近年はインバウンド需要に応えるため、英語を話せる人材を獲得できるとなお良いでしょう。
保育・医療・福祉は、多くの企業にとってはあまり馴染みのない領域かもしれません。
しかし、近年は働き方改革の動きが強くなっており、社内に託児所を設けるケースも増えてきています。
その際は中途採用で人材を募集するのが良いかもしれません。
そして技能工・農林水産などのブルーカラーは、専門的なスキルが必要なので、本来であれば経験者を採用したいところです。
しかし、現在は多くの人がホワイトカラー志望のため、ブルーカラーの経験者が少ない傾向にあります。
そのため、いっそのこと中途採用で成長意欲の高い未経験者を募集し、ゼロからブルーカラーを育てていくという方向に切り替えている企業が増えているようです。
どの職種も、中途採用による未経験者募集とはいえ、やはりコミュニケーション能力と成長意欲の高い人材を獲得すべきです。
適性検査などで採用プロセスを充実させて、ポテンシャルの高い未経験者を採用できるといいでしょう。
関連記事:中途採用の目的と失敗しないために必要なポイントを紹介
キャリア採用を成功させるポイント
キャリア採用を成功させるポイントは以下の3つです。
- 採用基準を明確にする
- 給与・職場環境を整える
- 自社の弱み・課題をさらけ出す
それぞれ詳しく解説していきます。
採用基準を明確にする
まずは採用基準を明確にしましょう。
可能な限り客観的な基準を設けることで、一定の選考結果を出せるようになります。
具体的には「業界経験◯年以上」だけでなく、「サービス立ち上げ経験」などの職務内容にも切り込んでいくべきです。
特にエンジニア職の場合、職務内容が多岐に渡るため、採用基準の明確化は必須です。
採用基準を明確にして、自社が求める人材を確実に獲得できるようにしましょう。
給与・職場環境を整える
キャリア採用で獲得した人材は、それなりの緊張を抱えて自社に入社することがほとんどです。
また、自身のキャリアアップを中心に考えるため、給与・職場環境に不満があれば、すぐに転職してしまうでしょう。
早期転職率を可能な限り低くするためにも、キャリア採用で獲得した人材のための給与・職場環境を設定すべきです。
具体的には、まず既存社員に対するフォローを徹底しましょう。
キャリア採用で獲得した人材を暖かく受け入れる体制は、最低限作っておくべきです。
自社の弱み・課題をさらけ出す
キャリア採用における面談の際は、あらかじめ自社の弱み・課題を明示しておきましょう。
思い違いによる早期転職を防ぐためです。
また、企業の弱みや課題を改善することが、その人材のキャリアアップに繋がることは多々あります。
そのため、キャリア採用で入社した人材が、自社にはないノウハウを用いて、意欲的に課題を解決してくれることも十分に考えられるのです。
自社を誇張するのではなく、ありのままの姿を伝えるのが一番です。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- キャリア採用は業界経験や職種経験を有する即戦力人材の獲得に特化した採用方式のこと
- 中途採用よりキャリア採用の方が教育コストがかからないが、給与が高くなる傾向にある
- キャリア採用に適した職種は「エンジニア」「営業・企画」「バックオフィス」
- キャリア採用を成功させたいのであれば、採用基準を明確にすべき
人材の流動性の高い現代社会では、キャリア採用による即戦力人材のスピーディーな採用が必要不可欠です。
キャリア採用を積極的に活用して、スピーディーな事業展開で企業を成長させましょう。