企業において労務はさまざまな業務を遂行しており、企業が円滑に事業活動を進めることや生産性向上において、重要な役割を果たしています。
しかし、労務の業務や人事との違いを正しく理解している人は多くありません。
そこで本記事では労務について、
- 概要や仕事内容
- 人事との違い
- 担当者に求められるスキル
- 業務効率化の方法
を解説していきます。
目次
労務とは
企業における労務とは、従業員の労働に伴って生じる事務処理や管理業務などの関連業務全般のことです。
労働時間の管理、給与の計算、保険の手続きなど、企業にとっては「縁の下の力持ち」といえるでしょう。
労務担当者が行う仕事内容とは
ここでは、労務担当者が実際に行う具体的な仕事内容をみていきましょう。
勤怠管理
勤怠管理とは、出退勤をはじめ、従業員の「就業状況」を把握して適切に管理することです。
企業が勤怠管理をしなければならない理由として、従業員の長時間労働、つまり働きすぎを防ぐことが挙げられます。
近年、働き方改革が推進されるなか、労働安全衛生法の改正によって2019年4月1日から、客観的方法による労働時間の把握が義務化されました。
このように、労務担当者は重要な業務を担っています。
関連記事:テレワークの勤怠管理とは?在宅勤務の社員をマネジメントする際の注意点を徹底解説!
給与の算出
従業員に支払う給与額を算出する給与計算業務も、労務担当者の仕事です。
雇用契約や企業の規定に従って、勤怠状況や手当なども加味したうえで最終的に支払う給与の総額を算出します。
健康保険料や厚生年金保険料などの各種保険、所得税や住民税などの税金を差し引く必要があり、単純な計算業務とは異なるといえるでしょう。
また、税金や社会保険料の徴収・納付まで行うので、国の事務代行のような重要な業務も担っています。
各種保険の手続き
民間企業の従業員は、下記のような各種保険に加入しなければなりません。
- 雇用保険
- 労災保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険(40歳以上)
労務担当者はこれらの保険に関する手続きを行います。
関連記事:労働保険とは?対象者や加入・計算方法、労災・雇用保険の違いを解説
年末調整
年末調整とは、所得税の過不足を精算する手続きのことです。
企業が雇用する従業員個々人の所得税は、企業が給与から差し引く形で代わりに納めています。
しかし、この時点の所得税額は概算であるため正しくなく、所得額が確定した段階で再計算して正しい税額を納めなければなりません。
これらの管理も労務が担っています。
関連記事:年末調整とは?損をしないための方法確定申告との違いなどを解説
福利厚生の管理
従業員に支払う給与以外に、企業が従業員やその家族の暮らしを支援するためのものです。
近年、新卒で就職活動する学生は、給与だけではなく福利厚生を企業選びの判断材料として注目するようになっています。
関連記事:福利厚生とは?種類や具体例、メリット・デメリット、施行方法や注意点を解説
規則・規程管理
企業内のさまざまな規則や規程を管理することも労務担当者の仕事です。
企業における主な規則は就業規則であり、これを労働基準法に従って作成・届出しなければなりません。
安全衛生管理
企業は従業員の安全と健康を守るため、医師により健康診断を行う必要があります。
また、従業員からの申し出があった場合は、医師による面接指導の実施、その結果に基づいた必要な措置を講じることが義務付けられています。
労務と人事の違いとは
労務と混同されがちなものとして挙げられる「人事」ですが、労務とはどのように異なるのでしょうか?
簡潔に述べるなら、人事は一人ひとりの従業員に対する業務であるのに対し、労務は従業員全体を対象にした業務だといえます。
人事の仕事内容には下記のようなものがあります。
項目 | 内容 |
採用活動 | 新卒・中途採用の選考、面接の実施、内定者フォローなどを行う |
社内研修 | 社内研修制度の準備を行う。
従業員を育成し、コンプライアンスの強化に貢献する。 |
評価制度の作成 | 従業員に対して上司が主観による一方的な評価を下さないように、企業として評価基準を作成する |
配属先の決定 | 適材適所な人材配置を実現するために、人事異動の決定を行う |
労務担当者に必要なスキルや能力とは
ここでは、労務担当者に必要なスキルや能力を解説していきます。
高度な専門性
労務に関する業務は、前述したように給与の計算や各種保険の手続き、規則や規程の管理など、多くの業務で法律や制度に関する知識が求められます。
さまざまな法令を考慮しながら判断しなければならなかったり、過去の事例を読み解かなければならなかったりと、高度な専門性が無ければこなせない業務があります。
コミュニケーション能力
労務担当者にはコミュニケーション能力が求められます。
なぜなら、従業員の対応をする際にコミュニケーションが原因で不快感や不信感を与えてしまえば、従業員の意欲低下や企業への不信感を招く可能性があるからです。
また、労働トラブルが生じた際には、労務担当者は従業員や労働組合などの対応をする必要があるので、極端な態度をとらないように注意しなければなりません。
関連記事:コミュニケーション能力とは?高い人が意識していることや能力向上法
高いセキュリティリテラシー
3つ目の必要な能力は、高いセキュリティリテラシーです。
セキュリティリテラシーとは、企業の機密情報や顧客情報の書類などの、あらゆるセキュリティに対する専門知識や判断能力を指しています。
労務の業務においては、従業員のプライバシーや個人情報を多く取り扱うので、秘密を外に漏らさないための高い意識や判断力が求められるのです。
まとめ
労務に求められる能力は多く、高い意識能力、判断が求められます。
同時にコンプライアンス意識、セキュリティ能力も求められますので、自社にとって管理部門の労務が占める割合は大きいでしょう。
しかし問題点としては、労務の目標設定が難しいということが挙げられます。
労務に限らず、管理部門の評価制度をどうすればいいのか?という問題は各社の悩みの種となっていることでしょう。
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