本記事では、人事領域における「エンゲージメント」について深掘りしていきます。
エンゲージメントの高い会社の特徴や、測定方法も紹介しているので、人事担当者やマネジメント職の方におすすめの内容です。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
会社におけるエンゲージメントとは?
エンゲージメントは様々な解釈がありますが、一般的には「愛着心」や「結びつき」を意味する言葉です。
そのため、会社におけるエンゲージメントとは、従業員と会社の関係性、および自社と顧客の関係性を表すと考えていいでしょう。
従業員と会社の関係性は従業員エンゲージメント、自社と顧客の関係性は顧客エンゲージメントで表されます。
エンゲージメントとロイヤルティ、従業員満足度の違い
エンゲージメントに似た言葉としてロイヤルティと従業員満足度がありますが、それぞれで意味が異なります。
まずロイヤルティは英語の「Loyalty」からきている言葉で、意味は「忠義」や「忠誠」です。
人事の用語として従業員ロイヤルティがありますが、これは従業員が企業に対してどれだけの忠誠を誓っているかを表しています。
次に、従業員満足度は、待遇や報酬に対して従業員がどれだけ満足しているのかを表したものです。
従業員エンゲージメントは企業と従業員の双方向の関係性を表しますが、従業員満足度は企業に対する従業員の一方的な評価となっており、意味が異なります。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントは、企業と従業員との間の信頼関係のことです。
つまり従業員エンゲージメントが高い状態は、企業と従業員の信頼関係が強い状態だといえるでしょう。
近年は「従業員エンゲージメントの高い企業の経営成績が優れている」という調査結果が注目されていることから、従業員エンゲージメントの向上に努める企業が増えてきています。
顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントは、企業と顧客の親密度のことです。
つまり顧客エンゲージメントが高い状態は、顧客が企業に対して良好なイメージを抱いている状態だといえるでしょう。
顧客エンゲージメントが向上すると、顧客が企業の製品・サービスを利用するようになり、売り上げが向上します。
それだけでなく、顧客からの意見を抽出しやすくなるため、それらを参考にして業績向上にも繋げることが可能です。
関連記事:【企業事例7選】社員(従業員)エンゲージメントとは?高めるメリットはあるの?
会社におけるエンゲージメントが注目される理由
会社におけるエンゲージメントが注目される理由は以下の通りです。
- 組織と個人の関係性の変化
- モチベーションが下がりやすい環境になった
- 従来のマネジメントスタイルに限界がきた
まず、組織と個人の関係性の変化についてです。
従来は終身雇用制度に代表されるように、個人が一つの組織に所属し続けることが当たり前でした。
しかし近年は流動的なキャリアが一般化しています。
そのため、組織と個人を結びつける新しい方法として、エンゲージメントが注目されるようになりました。
次に、モチベーションが下がりやすい環境についてです。
2019年のIMF(国家通貨基金)の調査によると、日本のGDP成長率はG8の中で最下位であり、194ヵ国中147位という散々な結果となっています。
もちろん、従業員の賃金はほとんどあがっていません。
これによってモチベーションを維持できない従業員が続出したなか、この状況に対する救世主として期待されているのがエンゲージメントです。
そして最後にマネジメントスタイルの限界についてです。
近年は雇用関係が多様化しており、モチベーションの源泉も同時に多様化しています。
そのため、画一性を重んじる従来のマネジメントスタイルを維持するのが難しくなってきました。
そこで、多様化する個人に適したマネジメントを形成するために、エンゲージメントが注目されているのです。
関連記事:ワークエンゲージメントとは?従業員満足で業績アップにつなげるには
エンゲージメントの高い会社の特徴
ここではエンゲージメントの高い会社の特徴を紹介していきます。
会社のビジョンに従業員が共感している
エンゲージメントの高い会社の特徴として、会社のビジョンに従業員が共感していることが挙げられます。
これは会社と従業員の方針が一致している状態なので、エンゲージメントの高い状態だと言えそうです。
従業員が自主的に会社のビジョンに応えようとするので、中長期的に成果を出せるようになるでしょう。
適正な評価制度が整備されている
エンゲージメントの高い会社は適正な評価制度が整備されています。
従業員に対して公平な評価を下すことで、従業員は評価を受け入れやすくなり、業務改善に努めるようになるためです。
適正な評価制度は、従業員のモチベーション維持に繋がります。
従業員育成・キャリアアップ支援が豊富
エンゲージメントの高い会社は、従業員一人ひとりの成長を大切にしているため、人材育成やキャリアアップ支援が豊富です。
企業が従業員の成長を期待しているので、従業員はやりがいを感じやすくなり、エンゲージメントが高まっていきます。
人材育成に力を入れることで、従業員一人ひとりの向上心も高まり、会社全体としても成長するでしょう。
適材適所に人材が配置されている
適材適所に人材を配置している企業は、エンゲージメントが高い傾向があります。
従業員一人ひとりを適した部署に配属させることで、従業員がやりがいを感じるためです。
また、キャリアが充実しやすい状態となります。
会社のエンゲージメント測定方法
会社のエンゲージメントの測定方法は、パルスサーベイとエンゲージメントサーベイの2種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
パルスサーベイ
パルスサーベイは、簡単な質問の調査を高頻度で繰り返し行うことを指します。
週1回や月1回の頻度で実施され、質問数も10個程度と手軽な内容です。
メリットとしては以下が挙げられます。
- 集計の負担が少ない
- 回答率が高くなる
- 高頻度で実施されるため、時系列での変化がわかる
- すぐにアクションに移せる
変化の激しい現代社会において「すぐにアクションに移せる」というメリットは大きいでしょう。
パルスサーベイは短時間で結果を収集・分析することができるため、行動に移しやすいのが特徴です。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、50個以上の質問を1年に1回ほどの頻度で実施する調査のことを指します。
エンゲージメントサーベイで得られる結果は情報量が多いのですが、1年に1度の実施であるため、その間に起こった変化を読み取ることができません。
また、質問数が多いため回答率が低い傾向にあり、分析にもそれなりの時間を要します。
一つの大きな情報のまとまりを得られる特徴がありますが、それを実務に落とし込むのは非常に難しいでしょう。
関連記事:エンゲージメントとは?意味や上げ方、サーベイの方法など事例も含め解説!
会社のエンゲージメントを高めるには?
会社のエンゲージメントを高める方法は以下の手順が考えられます。
- 従業員の価値観をサーベイを用いて把握する
- 会社のビジョンを明確にして、従業員に周知する
- 会社のビジョンに沿った人事評価を行う
- 評価を基に適材適所に人材を配置する
まず、サーベイを用いて従業員の価値観を把握しましょう。
すぐに導入できる、パルスサーベイ形式の調査を行うのがおすすめです。
次に、企業のビジョンを明確にし、それを従業員に発信しましょう。
どんなに素晴らしいビジョンも、従業員が理解していなければ意味がありません。
抽象的なビジョンになっている場合は、より具体的なものに再設定する必要があります。
また、会社のビジョンに沿った人事評価を行うべきです。
業績だけで人事評価を行うのでなく、ビジョンに沿った行動をどれだけできているかも評価しましょう。
そうすることで、従業員はよりビジョンの重要度を感じるとともに、人事評価を素直に受け止め、業務改善に努めるようになります。
そして人事評価を基に、適材適所に人材を配置しましょう。
これにより従業員のキャリアの成長が見込め、従業員自身もやりがいを感じます。
従業員同士の結びつきも強くなり、結果的に企業全体が成長するでしょう。
エンゲージメントの高い会社のメリット
エンゲージメントが高いことによって、経営成績はどのように変化していくのでしょうか。
ここではエンゲージメントの高い会社のメリットを解説していきます。
採用力の強化
エンゲージメントの高い会社は、採用力が強くなります。
なぜなら「エンゲージメントの高い会社」ということは、そのまま会社としての高い評価に繋がるかまた、企業に所属している従業員が、転職を考えている知人に転職先として自社を紹介する可能性も出てきます。
このように、エンゲージメントの高い会社は様々なアプローチで優良人材を採用できるようになるのです。
離職率の低下
エンゲージメントの高い会社は離職率が低下します。
企業に所属している従業員が常にやりがいや満足度を感じているからです。
従業員と企業の信頼関係が強くなれば、終身雇用の時代のように、従業員が同じ企業で長く勤めたくなります。
離職率の低下を防ぐことができれば、ベテラン従業員が出現するようになり、業務の効率アップにも繋がるでしょう。
また、離職によって穴が開いた分を新たに採用する労力やコストも抑えられます。
健康経営につながる
エンゲージメントの高い会社は健康経営に繋げやすいです。
エンゲージメントの高い従業員はポジティブな気持ちで仕事に取り組んでいるため、メンタルヘルスの問題が発生することもなく、高い生産性を維持します。
これにより業績が向上し、その利益を従業員の健康投資に回すことも可能です。
エンゲージメントの高い会社は、健康経営を作り上げるための好循環を回しやすいと言えます。
関連記事:ワークライフバランスとは?従業員や企業のメリットや注意点、導入事例を徹底解説!
会社におけるエンゲージメントのFAQ
ここからはFAQ形式で、会社におけるエンゲージメントを解説していきます。
エンゲージメントの高い企業の実例はありますか?
エンゲージメントの高い企業として知られている企業は以下が挙げられます。
- スターバックスコーヒージャパン
- ヤマト運輸
- 小松製作所
- サントリーホールディングス
ここではto Cの企業でイメージしやすいスターバックスコーヒージャパンの取り組みを紹介していきます。
まず、同社は全スタッフの8割以上がアルバイトですが、マニュアルが用意されていません。
従業員エンゲージメントの高いスタッフが自発的に行動できるからです。
むしろマニュアルがないからこそ、スタッフは自分自身を認め、尊重されていると感じることができ、やりがいを持っています。
このように同社は、スタッフの自発的な行動を尊重する雰囲気を作り出すことに成功しました。
スタッフの行動が顧客の満足度を高め、それによりスタッフもやりがいを感じ、従業員エンゲージメントが高まるという好循環を生み出しています。
従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントは、どちらの方が向上しやすい?
従業員エンゲージメントの方が向上しやすいといえるでしょう。
なぜなら顧客よりも従業員の方が、データを集めやすいからです。
顧客エンゲージメントの向上は業績に直結しますが、データ収集のために莫大なコストを必要とします。
まずは従業員エンゲージメントを高めてサービスの質を向上させてから顧客エンゲージメントも向上させる、というアプローチを取ると良いでしょう。
エンゲージメントを高めるのに最も効果的な方法は?
エンゲージメントを高めるのに最も効果的な方法は、公平な人事評価だと考えられます。
従業員がどれだけ企業方針を理解していても、公平な人事評価がされないのであれば、従業員のモチベーションは減退し続けます。
また、ほとんどの従業員は、それなりの生活ができるほどの報酬を求めています。
そして報酬は人事評価と相関関係にある場合が多いので、そういった観点でもやはり公平な人事評価は絶対に必要です。
近年はベンチャー企業を中心にストックオプションを支給することが増えました。
ストックオプションは自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利のことで、自社の株価を上げれば上げるほど報酬が増えます。
つまり企業に貢献した分だけ報酬が増えるということです。
このような制度を取り入れることで、従業員エンゲージメントが高まっていくでしょう。