少子高齢化が進む日本において、家族の介護やその準備によって会社を休まざるをえない機会が増えるという方の数は、上昇傾向にあります。
そんなとき、活用したいのが「介護休暇」や「介護休業」、そして「介護休業給付金」です。これらは法律によって定められており、介護が必要な家族がいる労働者が仕事と両立できるように支援する制度です。
本記事では介護休暇と介護休業の概要や違い、条件、使い分けるポイントなどを解説していきます。
目次
介護休暇とは
介護休暇とは、労働者が介護が必要な家族の介護や世話をするために取得できる、短期間の休暇制度です。
取得できるのが「短期間の休暇」であるため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせといった、短いスパンでの休暇をとることができます。
介護休暇の内容や対象者、条件などは下記の通りです。
項目 | 内容 |
対象労働者 | 対象家族を介護する男女の労働者※労使協定を結んでいる場合、下記の労働者は対象外となる入社6ヶ月未満の労働者1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 |
対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
取得条件 | 要介護状態にある家族を介護している |
取得可能日数 | 対象家族が1人:年5日まで対象家族が2人以上:年10日まで |
取得単位 | 1日または時間単位 |
手続方法 | 書面だけではなく口頭での申出も可能 |
(参考:介護休暇とは丨厚生労働省)
介護休暇の内容
介護休暇は法律で定められた労働者の権利であり、対象者であれば気兼ねなく利用できます。
利用できる期間は対象家族が1人であれば1年に5日まで、2人であれば10日までの休暇の取得が可能です。
ただし休暇中の給与については定められておらず、事業主の裁量となっていますが、原則は無給なので支払われないケースが多いです。
介護休業とは
介護休暇と似ている制度に介護休業があります。
介護休業も介護休暇と同じように、介護と仕事を両立する労働者を支援するための制度です。
大きく異なるのは利用できる期間で、介護休業では対象家族1人につき3回まで、合計で93日まで休むことができます。
介護休業の内容や対象者は下記の通りです。
項目 | 内容 |
対象労働者 | 対象家族を介護する男女の労働者(※日雇い労働者を除く ※有期雇用労働者は取得条件あり)※労使協定を結んでいる場合は下記の労働者は対象外となる入社1年未満申込日から93日以内に退職する1週間の所定労働日数が2日以下 |
対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
取得条件 | 要介護状態にある家族を介護している |
取得可能日数 | 対象家族につき3回まで、合計93日まで休業可能 |
手続方法 | 休業開始予定日の2週間前までに書面で申出 |
(参考:介護休業とは丨厚生労働省)
介護休暇と介護休業との違いとは
介護休業も介護休暇と同様に、法律で定められた労働者の権利です。
大きく異なる点が2つあり、1つ目が上述した「利用できる期間の長さ」です。介護休業は介護休暇とは異なり、通算93日までという長期で休みを取得できます。
2つ目は休業中の給与です。介護休業も休業中の給与については法的に定められていないため事業者によって対応が異なります。しかし、介護休業の場合は「介護休業給付金制度」を利用することで、給付金を受け取ることができます。
介護休業給付金についての詳細は後述します。
介護休暇と介護休業、どちらを使うべき?
介護休暇と介護休業はどのように使い分けると良いのでしょうか? ここでは両者の特徴を活かした活用方法を解説していきます。
介護休暇は短期間・突発的な用事に活用
介護休暇は時間単位の休みを手軽に取得できるという特徴があるため、突発的な用事や短時間の用事を済ませる際に活用するのが最適です。
例えば、
- ケアマネジャーとの打ち合わせ
- 介護保険に必要な手続き
- 通院の送迎
などのケースが考えられます。
介護休業は仕事と両立をする際に活用
介護休業は長期の休みがとれるため、介護と仕事を両立するために必要な準備をする期間として活用するのが最適です。
例えば、
- 介護サービスや老人ホームの利用準備
- 家のバリアフリーリフォームの準備
- 遠距離介護から近居・同居介護に切り替える
などのケースが考えられます。
介護休業給付金とは
介護休業を取得する際に利用したいのが、介護休業給付金制度です。
この制度を利用することで、介護休業中に賃金月額の67%を受け取ることができます。支給額の計算式は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。
しかし、介護休業給付金を受け取るには、主に下記の条件を満たしていなければなりません。
- 介護休業開始日前の2年間に、賃金や報酬の支払対象の日数が11日以上の月が12ヶ月以上あること
- 介護のために2週間以上の休業が必要であること
- 職場復帰が前提であること
上記の条件を満たした上で、介護休業が始まる10日以内に「休業開始時賃金証明書」の提出が必要となります。
ハローワークで申請手続きをするため、詳細についてはハローワークで問い合わせて疑問点を確認しましょう。
まとめ
少子高齢化に伴い「介護をしながら働く」働き方は今後一般化する可能性があります。
その際、従業員にとっては介護休暇や介護休業が必要不可欠になるかもしれません。
ダイバーシティーが叫ばれる昨今。
今後は、幅広い働き方を支援する姿勢が会社に求められそうです。