突然ですが、このようなことを考えてはいませんか?
- 「ピグマリオン効果ってなに?」
- 「よく似ている心理効果との違いは?」
- 「部下のパフォーマンスを上げたい…」
ピグマリオン効果とは、ポジティブな期待をかけられることでパフォーマンスが向上する現象です。この効果はビジネスシーンでも注目されており、人材育成において効果的だとされています。
しかし、使い方を誤ると逆効果になってしまうことがあるため、期待のかけ方には注意しなければなりません。
本記事ではピグマリオン効果の基本的な知識から、混同されがちな心理現象との違いや、注意するべきポイントを解説していきます。
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ピグマリオン効果とは?
ピグマリオン効果は、誰かから期待をかけられることでパフォーマンスが上がるという現象を指す心理学用語です。
この現象を発見したのはアメリカのハーバード大学で教授をしていた、教育心理学者ロバート・ローゼンタール氏が発見し、その名前をとって「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。
また、教師が生徒に対してポジティブな期待をかけることで、生徒の学力や成績が上がるという実験をもとに提唱されたことから「教師期待効果」とも呼ばれます。
その一方で、ネガティブな期待をかけたり期待をされない場合に成績やパフォーマンスが悪くなる現象もあり、「ゴーレム効果」と呼ばれています。
「ピグマリオン」とは? 名前の由来を解説
「ピグマリオン」とは、ギリシア神話に由来する言葉です。ギリシア神話に登場するキプロス島の王の名前が「ピグマリオン」であり、この王は彫刻家でもあったため女性の像を掘っていました。
しかし、自分で掘った女性像が美しかったため、王はその女性の像に恋をしてしまいます。その気持ちを募らせて「女性像が人間になってほしい」と祈り続けた結果、女神が女性像に命を吹き込み、像が人間になったのです。
この「期待をし続けることで良い結果になる」という話が転じて「期待をすることで相手が成長する」というビグマリオン効果となりました。
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この効果が確かめられた実験には下記の2つがあります。
- ネズミを用いた実験
- 教師と子どもによる実験
それでは1つずつ解説していきます。
ネズミを用いた実験
1963年にローゼンタールが行ったネズミを用いた実験により、ピグマリオン効果は発見されました。
実験では、学生にネズミを用いた迷路実験を行ってもらう前に、学生を2つのグループに分けて、それぞれにネズミに関する下記の2通りの説明をしました。
- 「このネズミは賢く、よく訓練を受けている」
- 「このネズミは頭が悪く、訓練も行っていない」
どちらも実際は同じネズミですが、片方のネズミには賢いイメージを与え、もう片方のネズミには頭が悪いイメージを学生に与えたのです。その結果、学生は賢いイメージがついたネズミは丁寧に扱いましたが、頭が悪いとされたネズミは雑に扱うようになりました。
これによりローゼンタールは、「ネズミに対する期待のかけ方を変えることによって、実験結果にも差が生まれる」としたのです。さらに、このことはネズミと実験者の間だけではなく、人間同士でも成立するはずだと考えました。
そして実際に行われたのが、この後に解説する教師と小学生の実験です。
教師と子どもによる実験
実験は、小学生とその教師を対象に行われました。
小学校で行う一般的なテストを「将来的に、頭が良くなる子どもがわかる特別なテスト」と称して実施しました。
テストをした後に無差別に子どもを選別し、その子どもの名前とともに「この子は将来的に成績が良くなり、伸びしろがあります」と教師に伝えます。
その後、8ヶ月後に再度テストを行った結果、「将来的に頭が良くなる」として伝えられた子どもは、無差別に選ばれていたはずなのに20%も成績が良くなったうえに、勉強への関心や積極性もあがったのです。
始めに行ったテストの結果は何の参考にもされず、ランダムに選ばれたはずの子どもたちの成績が良くなった理由はどこにあるのでしょうか?
その理由は、伸びしろがあるとされた子どもに対して、教師が無意識に「この子は成績が良くなる」や「この子はもっとできるはず」とポジティブな期待をかけていたことで、それが子どもに伝わり本当に成績が良くなったのです。
この実験結果から、ポジティブな期待をすることでパフォーマンスが高まるということがわかり、「ピグマリオン効果」の発見につながりました。
この実験からわかる通り、教師に限らず人の上に立ち、教育やマネジメントをしていく立場にある人間は、部下に対してどのような接し方をするべきかが重要になります。
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他人から何も期待されていないことや、ネガティブな期待をされることによって実際にパフォーマンスが悪くなってしまう現象を「ゴーレム効果」といいます。これは良い期待をすることで成績が良くなるピグマリオン効果とは逆の現象を示しているといえます。
この現象を発見した人物もロバート・ローゼンタールです。先程解説した実験と同様に、知能テストをした後に子どもをランダムに選び「この子どもは成績が良くない」と教師に伝えることで、実際にその子供の成績が悪くなったことからこの心理現象が発見されました。
したがって、例えば教師が生徒に対して「この子は頭が悪いからどんなに教えてもダメだろう」とネガティブなことを考えながら接していると、子どもにも無意識下でその考えや行動が伝わり、本当に成績が悪くなってしまうのです。
これは学校のみならずビジネスの世界でも見られる現象で、上司が部下に対して期待をしなければ部下にゴーレム効果が働いてしまいます。
例えば上司が部下に「本当にやる気あるの?」や「君はいつも失敗ばかりだな」などの言葉をかけると、部下は自分が期待されていないことを察してしまい、パフォーマンスが悪くなるでしょう。
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ホーソン効果は、注目されたり目をかけられることによって、その期待に応えたいという思いから高いパフォーマンスを発揮するようになるという現象です。
ピグマリオン効果とよく似ていますが、ピグマリオン効果の場合は上司と部下のように、上下関係において生じるものですが、ホーソン効果はその関係性に制限はありません。
この現象はアメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で別の実験を行っていた際に発見されました。その実験では「工場の明るさや暗さは生産性にどのように関係するのか」が検証されていましたが、これに関わっていたのがハーバード大学です。
権威ある大学が行う実験の対象者に選ばれたことによって、従業員は「ハーバード大学の実験に関わっている」という気持ちになることで、従業員の生産性が上がったのです。このことから、ホーソン効果が明らかになりました。
つまり、ホーソン効果から「人は自分に注目してくれたり目をかけてくれる人の期待に応えたいという願望がある」ということがわかります。
具体的な例としては、観客がいない練習場よりも観客の声援がある試合会場の方が、スポーツ選手のパフォーマンスが良くなるという現象があります。
ピグマリオン効果とハロー効果
相手の第一印象や見た目、肩書きなど、一部の特徴によって相手に対する評価が歪んでしまう現象をハロー効果といい、別名「後光効果」とも呼ばれています。わかりやすく言うと、相手の一部に対する評価を、相手全体の評価として認識してしまう錯覚のようなものです。
例えば、顔がかっこいい男性や美しい女性に対しては、その見た目の良さを根拠に見た目とは関係のない能力にまで高い評価をしてしまうことがあります。
また、仕立ての良いスーツを着て、いかにもエリートビジネスマンのような格好をしている人は、初対面でも「この人は仕事ができそうだ」と思ってしまいますよね。
しかし、ハロー効果は、ネガティブにもポジティブにも働いてしまうことに注意しなければなりません。もしある人物の肩書きや見た目が良ければ、その人の評価は良い方向に誤認されます。
しかし、一方で見た目や肩書きがあまり良くない印象を与える場合は、その人は低く評価されてしまうのです。
ピグマリオン効果も人の評価が関わる現象ですが、ハロー効果は評価する側に影響があるもの、ピグマリオン効果は評価される側に影響があるもの、という違いがあります。
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上記で見てきたように、ピグマリオン効果やゴーレム効果によって、人は成長したりパフォーマンスが低下したりすることがわかりました。
したがって、ビジネスにおいても上司が部下に対してどのように接したり言葉がけをするかで、部下の伸びしろが決まります。
ここでは、ビジネスにピグマリオン効果を用いる下記のような方法を見ていきます。
- 期待をしていることを伝える
- 部下に裁量権を与える
- 期待値をすり合わせる
それでは1つずつ見ていきましょう。
期待をしていることを伝える
まず、上司は部下に対して「自分はあなたに期待している」ということをわかってもらうために、言葉に出して伝えるようにしましょう。ストレートに「期待している」と言うのも良いですが、それだと部下のプレッシャーになる可能性もあるので、褒めることでそれとなく伝える方法が望ましいです。
また、部下の失敗や課題について注意する際はネガティブな言い方ではなく、「期待をしているからこそ言っている」というニュアンスで伝えましょう。例えば、「これは何回も言ってるよね?」と詰め寄るような言い方では、部下が萎縮してしまいます。
そうではなく「こういう失敗をしなくなったら、君はもっと成長するはずだ」と成長を望み、期待を込めたポジティブな表現にすることで、部下は自分が期待されていると感じてピグマリオン効果が働きます。
部下に裁量権を与える
先程も説明したように、いつも事あるごとに「君には期待しているよ」と声をかけていては、部下が重圧を感じてしまいます。また、そういいつつも部下の仕事に口出しをしていては、部下は本当に期待されているとは感じません。
したがって、本当に部下のことを信じて期待していることを示すためにも、部下にある程度の裁量権を与えることが大切です。部下は仕事を任されることでより高いパフォーマンスを発揮するようになるでしょう。
期待値をすり合わせる
部下に期待することも良いですが、その際は過度な期待をかけすぎることは控えましょう。過度な期待をかけることで、部下は「そんな期待されても自分には能力はない…」と返って自信を失わせてしまう可能性があります。
したがって、大切なのは自分の期待と部下の実力をすり合わせておくことです。例えば上司は「この仕事は難しいけど部下ならできる」と期待していても、部下は「こんな難しい仕事はできない」と思っているかもしれません。
このような期待値のギャップにより、部下は自分では良くできたと思っていても、上司からすると期待はずれになってしまうのです。この結果、上司と部下の関係がギクシャクしてしまい、生産性に影響が出ます。
上司は過度な期待をするのではなく、部下の能力や限界を把握したうえで成長を促す期待をかけることが大切です。
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ピグマリオン効果では、上司が部下に期待をかけることで、部下がその期待に応えるべく高いパフォーマンスを発揮します。
それだけではなく、部下は目標を達成するためにどのように行動すればよいのかを上司に相談したり、同僚と協力するようになるため、職場内のコミュニケーションが活発になるというメリットがあります。
しかし、いくつか注意するべき点があります。
褒めすぎない
まず1つ目は、期待していることを伝えるために褒めすぎてしまうことです。部下を過剰に褒めると自分に実力以上の能力があると勘違いしてしまい、成長のための行動をとらなくなってしまいます。これではピグマリオン効果の逆効果となるでしょう。
誰でもとにかく褒めれば良いというわけではなく、一人ひとりの性格や気質を把握して、どのように期待することでピグマリオン効果が働くのかを吟味することが重要です。
部下が望む期待をかける
そしてもう1つの注意点が、部下が望む期待をかけることです。上司が部下に期待をする際によくありがちなことが、上司の一方的な期待をかけてしまうことです。
部下に期待するうちにいつの間にか「部下にはこうなってほしい」という押し付けになってしまうケースがあります。この結果、部下は自分が思い描く理想とは異なるビジョンを押し付けられることになり、モチベーションの低下につながります。
部下の性格に合った期待のかけ方が重要
ここまで、ピグマリオン効果の意味やそのメリット、取り入れる際のポイント・注意点などをお伝えしました。
期待をかけることで部下のパフォーマンスを向上させるというのは言葉にすれば簡単ですが、どのような形で期待を伝えるかや、どの程度期待するかなど、部下の性格や実力とうまくすり合わせて適切な方法で行う必要があります。
この記事を読んでピグマリオン効果やその類似効果のことを深く理解し、実際に自分の部下に行うとすればどうすればいいか、ぜひ検討してみてください。
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