2020/06/10

脳科学と心理学を応用しよう 信頼関係を構築するコミュニケーション術とは

信頼関係を築くというのは、顧客とのやり取りや、部下の育成においては、基本中の基本ともいえることです。
ただ、信頼を獲得しようとしてもなかなか思うようにいくものではありません。
「素直さ」や「誠実さ」が大切だと言われますが、本当にそれだけでしょうか?

脳科学や心理学の観点から、どのようなことに注意すれば信頼獲得につながるのかについて解説します。

 

当たり前でも使いこなせていないTPO

 

TPOに応じた服装や立ち振る舞いといえば、社会人であれば常識です。
またTPOに応じた対応ができるかどうかは、仕事仲間として信用できるかどうかの判断の目安になるという側面もあります。

科学的な観点から見た場合、TPOは使い方によっては、信頼関係を構築するための強力なツールとなり得ます。
とりわけ場所とタイミングは、特に大きな影響を及ぼします。

場所が信頼関係の構築に影響を及ぼす例としては、恋愛心理学でもよく取り上げられる「吊り橋効果」があります。

カナダの心理学者ダットンとアロンは、男性を対象に、頑丈な橋と吊り橋どちらかにわたってもらった後、女性と会うという実験をしました。
そうすると、大きくゆれる吊り橋を渡った男性の方が、女性に好印象を持つということを発見しました。[1]
これは吊り橋を渡った時の恐怖によるドキドキを、脳が恋によるドキドキだと勘違いすることによって起こったものです。

デートスポットに遊園地が選ばれることも、同じ理屈かもしれません。
ジェットコースターやお化け屋敷のドキドキを恋のドキドキと勘違いしてしまうということを、多くの先輩カップルは知っていたのです。

またこの他にも、人は心地よい環境にいると、その場に一緒にいる人にも良い感情を抱くとされています。
これはフィーリンググッド効果と呼ばれています。[1]

デートスポットに水族館や動物園が選ばれるということもありますが、これはこちらの効果を無意識に狙っているのかも知れません。
水族館での癒されるような雰囲気が、
「この人と一緒にいると、なんだか安心する」
という印象を相手に与えるからです。
また、動物園においても、可愛い動物と触れあって幸福な気分になっている感覚が、
「この人と一緒にいると、なんだか幸せ」
という印象を与えます。

このように、場所によって生じる感情は信頼関係の構築に非常に大きな影響をもたらします。

これと同じ原理で、タイミングというのも非常に重要になってきます。
相手が多忙でイライラしている時に話をしようとしても、うまくはいきません。
何か頼み事や交渉をするのであれば、相手がポジティブな気持ちになっているときを見定めてからやるというのがポイントです。

相手と良好な関係を築くのであれば、相手の状態をよく見極めたうえでアプローチする必要があります。

TPOについて考えるうえで重要なのが、一般常識がどうなっているのかということよりも、TPOによって相手にどんな感情が生じるのかということです。

『人間は論理的思考ではなく、感情で動いている』とは、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授の言葉です。[2]

つまり、信頼関係をうまく構築するためには、TPOを巧みに使い、相手に与える感情を適切にマネジメントすることが重要なのです。

 

立ち振る舞いが信頼関係に影響を及ぼす影響

 

人としての礼儀をわきまえた振る舞いと言うのも、信頼関係を築くうえで重要であることは言うまでもありません。

マナーを守るというのも、もちろん大事な要素ではありますが、それ以外にも重要な要素があります。
それが、非言語コミュニケーションと呼ばれるものです。

見た目、しぐさや声の印象といった非言語による情報も、信頼関係の構築に大きく影響します。
人間のコミュニケーションは、無意識に大きく影響を受けるのです。

採用活動において、応募者の顕著な業績によって応募者を過大に評価してしまうハロー効果や、第一印象に関するメラビアンの法則は、特に有名です。
信頼できるかどうかは意識的に考えて判断していると思われている方も多いかもしれませんが、実際には脳が無意識的に判断しているのです。

したがって、信頼関係を築くためには、相手の無意識に与える影響というものを考慮する必要があります。

では、どういった点に気をつければいいのでしょうか?

重要になってくるのが、動作と声のトーンです。

交渉の場面においては、無駄のない、ゆっくりした動作がよいとされています。
こうすることで、相手に自信に満ちた力強い印象を与えることができます。
また、声についても、低めのトーンというのを意識すると、相手に安心感が生まれ、信頼感が増します。[3]

相手と話をする際には、話の中身にばかり注意がいってしまいがちですが、内容よりも見せ方というのが大事になってきます。
それくらい相手に与える印象は、相手の判断に影響を及ぼします。

相手の目にはどう映るのかということを意識するのが重要です。

 

SNSにおける信頼構築のポイント

 

SNSを集客や採用活動の手段として利用するというケースもあるでしょう。

SNS上では、相手と直接合わずにやり取りをすることが可能です。
相手の顔が見えづらいということもあり、やりにくさを感じることもあるかもしれません。

そのようなSNSにおいて、信頼できる相手として認識されるうえで、何がポイントになるのでしょうか?

直接会う場合と同様に、見た目で判断されてしまうという点は変わりません。
カバー写真やアイコンの画像、プロフィールの内容、誰とつながっているのかということによって、信頼できそうかが判断されます。

いくら言語情報がたくさんあるからといっても、受け手はそれらを全て読むわけではありません。
ネット上には情報があふれているということもあり、印象だけで判断されてしまうことも少なくありません。

そこでポイントとなってくるのが、「自己開示力」です。
自己開示をするというのは、心理学的に見ても有効な手段です。

相手から親近感を持たれることに加え、相手も自己開示しようとする意志が働き、心を開いてくれます。
大事なポイントは、自分の性格や環境などについて、弱みも含めて正直に打ち明けることです。
そうすることで相手は「信頼してくれている」と好感を抱くようになります。[1]

これらが、直接会わないSNS上において信頼を獲得するためのポイントとなってきます。

 

信頼関係を崩さないために重要なこと

 

信頼関係は、一度構築してしまえば後は安心というものではありません。
ちょっとしたトラブルや考え方のすれ違いによって、関係にヒビがはいってしまいます。
信頼関係は築き上げるのが難しいものの、崩壊する時は一瞬で崩壊するものです。

そんな壊れやすい信頼関係を維持していくうえで、大事なことは何でしょうか?

一番気をつけるべきポイントが、相手に「違う」と思わせないことです。

筆者は心理カウンセラーですが、クライアントから
「いや、そうじゃなくて・・・」
という言葉が出てしまうと、たいていそのカウンセリングは、うまくいきません。

ビジネスの世界においても、相手から
「本当に、それで大丈夫なんでしょうか?」
と質問を受けることもあるでしょう。
一見すると質問しているだけのように見えますが、その多くは、相手からの不安や疑問があるというクレームなのです。

相手のその疑問や不安を丁寧に聞き取ることなしに、「大丈夫です」と答えて押し通してしまうと、後々トラブルになりかねません。

そうはいっても、相手の期待に百発百中で応えるのも無理があります。

そこで注意したいのが、「無理に当てようとしないこと」なのです。
当てようとしなければ、外してしまう心配もありません。

一部の占い師の間では、あたかも心の中を読み取っているかのように見せかけるコールド・リーディングと呼ばれる一連のテクニックが使われています。

その中の一つがバーナム・ステートメントと呼ばれるもので、例えば
「自分にはまだ使っていない能力がたくさんあるのに、まわりの人は必ずしもその能力を十分評価してくれていない、と感じる傾向があります」
といった、多くの人が自分に当てはまることだと感じるものです。[4]

実際に、このバーナム・ステートメントを活用し、本来は顧客が興味を示さないものを「自分ごと化」することによって、大きな反響を得たという事例もあります。[2]

相手からの信頼を得るには、相手に対して
「こちらのことをちゃんと分かってくれている」
という印象を与えることが大切です。

相手から「違う」という反応を引き出てしまわないためには、相手が口にした情報以外のことに対して言及するのは避けるようにするというのがポイントです。
うっかり思い込みによる決めつけをしてしまうと、相手はそれによって不快感を示し、信頼関係が損なわれてしまいます。

相手をよく観察し、思い込みで決めつけてしまわないようにすることが重要です。

素直であることや誠実であることも信頼関係を構築するうえで大切なことですが、それでは信頼関係が構築されるまでに時間がかかります。

科学的な視点も取り入れたアプローチの方法というのも、取り入れてみてはいかがでしょうか。

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参照
[1] 出所)「教養のトリセツ 心理学」横田正夫監修 P228~229,231
[2]出所)「マーケティングの本質 「心理」に関する「真理」」ADEX SYNRI ラボ 日本経済新聞出版社 P15,180~183
[3] 出所)「伝わり方が劇的に変わる!しぐさの技術」荒木シゲル著 P112~114
[4] 出所)「コールド・リーディング」イアン・ローランド著 P84