「人材育成」と聞くと、「なんだかよくわからないから後回しにしている」という方もいるでしょう。
ただ、この人材育成が上手くいかない企業は、優秀な人材が流出し、企業の成長が損なわれる可能性があります。
人材育成は生まれつき「できる」か「できない」かではなく、誰もがその気になればできるものです。また、人材育成のスキルを身に付けることで仕事に対する取り組み方が変わり、組織の中でやりがいを感じられます。
ここでは人材育成について次の点について解説します。
- 人材育成ってそもそも何?
- 人材育成が必要な理由は?
- 人材育成にはどんなスキルが必要?
- 人材育成について詳しく学べる本
- 人材育成に役立つ資格
この記事と参考リンクを参照することで、マネジメントについて体系的・横断的に理解できます。ぜひ、あなたのマネジメント力アップにお役立てください。
目次
人材育成とは?人材育成の考え方
人材育成とは、所属している企業に売上などで貢献できるよう、人材を育成することを指しています。
まずは人材育成について以下3つの切り口からわかりやすく解説します。
- 人材育成の意味、定義
- 人材育成と人材開発の違い
- 人材育成とマネジメントの違い
人材育成の意味、定義
そもそも人材育成とは、社員を「企業が望む方向(成長や発展)へと導いてくれる人材として育成すること」を意味しています。
社員のパフォーマンスが向上することで、企業業績アップが期待できるため、企業にとって人材育成は必要不可欠です。
人材育成と人材開発の違い
人材育成と似たような単語で、人材開発というものがあります。
人材開発は、英語の「Human Resource Development(人的資源の開発)」から派生した言葉であり、人材を経営資源として捉え、それを有効活用するために能力を開発していくという意味です。
つまり、人材育成は成長を促すためのものであり、人材開発は潜在能力を開花させるなど、人的な資源を有効活用しようというものです。
人材育成とマネジメントの違い
人材育成と似た意味としてよく混同されがちな言葉に「マネジメント」がありますが、この2つは下記のように明確な違いがあるため注意しましょう。
- マネジメント:目標や方向性に沿って組織が正しく動くように管理・先導することが目的
- 人材育成:社員を企業が望む方向(成長や発展)へと導いてくれる人材として育成することが目的
要は、人材育成とマネジメントの違いは、人材育成に求められるのは「育成力」であることに対し、マネジメントに求められるのは「設定した目標を達成するための手段を提示する」ことなのです。
<<マネジメントについてはこちらもチェック>>
★リンク要確認★(マネジメントとは?種類や役割、必要なスキルなどを事例も含めて解説! の記事)
https://souken.shikigaku.jp/23717
人材育成が必要な理由
これから企業が成長していくためには、人材育成が必要不可欠です。
とはいえ、なぜ人材育成が必要であるのか、しっかりと理解できている方はあまり多くないかもしれません。
以下で、人材育成が必要な理由についてご紹介します。
- 生産性を向上させるため
- 優秀な人材の流出を防ぐため
理由1:生産性を向上させるため
日本では少子高齢化が進み、今のところ改善される見通しは立っていません。
労働人口が減っていくことが明白になっているいま、企業が成長するには生産性の向上は必須だと言えるでしょう。
なぜなら、これまでよりも少ない人数でこれまで以上の成果を出し続ける必要があるからです。
そして個々の業務の生産性を向上させるには、企業が積極的に人材育成に取り組む必要があります。
優秀な人材の流出を防ぐため
バブル期からの終身雇用の考え方が徐々に薄まり、現在では転職を行うことも珍しくなくなりました。特にコロナ禍を経て、人材の流動性は増しています。
なぜ転職を行う人が増えたのでしょうか?
dodaの調査結果によると、「他にやりたい仕事がある」が1位で、そのほかにも「市場価値を上げたい」や「専門知識・技術を習得したい」などが上位にランクインしています。
参照:doda中途採用支援サービス 転職理由ランキング【最新】
これらの理由は、会社の利益を生み出す可能性が高い人材=優秀な人材が考える内容です。
つまり、今の会社だと、自分のやりたい仕事に就くことはできず、市場価値が上がりにくいと判断されて、優秀な人材が流出していることになります。優秀な人材を流出させないためにも、人材育成をきっちりと行っていく必要があるのです。
人材育成で必要なスキルとは?
人材育成に必要とされるスキルを知っておけば、自らの人材育成能力を高めることができます。
ただがむしゃらに頑張るよりも、事前に必要なスキルを知っておき、そのスキルを習得していけば、効率よく人材育成能力を高めることが可能です。
人材育成能力を高めるためには複数のスキルが必要となります。しかし、一度に全てを習得しようとせず、1つずつ着実にスキルを取得していくようにしましょう。
- 現状把握スキル
- 目標・計画設定スキル
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
現状把握スキル
人材育成を行うのであれば、現状把握スキルは必要です。
会社の現状を把握することで、今どのポジションが足りていないかなどを分析でき、そのためにどんな人材を育成すべきなのかが見えてきます。
また、会社全体のビジョンや目標など経営判断の方向性を把握することも大切です。未来を見越して人材を育成しないことには会社の発展は見込めません。
目標・計画設定スキル
目標を設定し、その目標に向けて計画を立てるスキルも、人材育成をする上で大切なスキルのひとつです。目標を立てて人材育成をしないと、目指すべきゴールが途中でブレてしまうこともあります。
また、計画を立てるスキルがないと、ゴールまでの道のりが見えず、育成する方もされる方も、モチベーションが下がることもあります。
しっかりと目標を設定し、目標に向けて計画を立てることで、達成すべきステップが明確になり、現時点で何ができて、何ができていないのかが明らかになります。効率的に人材育成をするためにも目標・計画設定スキルは重要です。
人材育成をするときの目標やその計画は、部下の育成時だけでなく、人事評価にもそのまま使えるので、おすすめです。
コミュニケーションスキル
人材育成は、人対人のやり取りが中心になるため、コミュニケーションスキルが非常に重要です。
人材育成では、上司が部下に一方的に指示を出すだけではなく、部下からの話も聴き、その話を柔軟に取り入れることも大切です。そのような上司だと、部下もアドバイスを受け入れやすくなり、効率よくスキルを伸ばすことが期待できます。
とはいっても、部下がミスをした時などには指摘・指導をする必要があります。そんなときは、「だからダメなんだ」と人格を否定するのではなく、「次からはどうしようか」などの言葉をかけ、自ら考えてもらうようにしましょう。
また、コロナ禍でオンライン面談やチャットを使っている方も多くいると思いますが、人材育成を図るのであればできる限り対面でのやり取りを行うようにしましょう。なぜなら、オンライン面談やチャットでは雑談がしにくく、その人の人間性がわかることは難しいためです。
マネジメントスキル
マネジメントとは、企業が経営資源を利用して効率的に企業の目標やミッションの達成を目指すことです。人材育成の過程では、マネジメントのスキルも欠かせません。
目標達成を推進したり、モチベーションを管理したり、できていないところは指摘するなど、人材育成中はその育てられている人と向き合うことばかりになるためです。
<<マネジメントスキルについてはこちらもチェック>>
★リンク要確認★(マネジメント スキル の記事)
人材育成をする中で大切な5つのこと
人材育成は企業の成長のために重要であること・必要なスキルを認識していただけたと思います。さて、ここからは人材育成をする中で大切なことについてご紹介します。
目的を明確化する
人材育成をする中で大切なのは、目的を明確化することです。なぜなら、目的を明確にすることで、その目的を達成するために必要なことが見えてくるからです。
例えば人材育成をする目的がIT人材を確保することである場合、社内におけるIT人材に求められる要件の定義や候補者の選抜が必要です。また、実際に選抜された対象者に育成研修を行う場合、IT人材としての意識付けを研修中に行うことで、研修の効果は高まるでしょう。
自発性を引き出す
社員が自発性を失ってしまうと、どれほど素晴らしい研修を行っても人材育成は上手くいきません。入社前はやる気に満ち溢れていた社員が、日がたつにつれて自発性を失っていくことはよくあります。
これはその人個人の問題よりも、社内風土の問題であることが多いです。
たとえば、「納得のいく評価制度を作る」「失敗したとしても、チャレンジした人を責めるのではなく褒める」などです。
社員が自ら行動する自発性を引き出す環境を作ることで、人材育成は成功します。
アウトプットする
座学の場合、基本的に内容を聞くことが中心になります。その時は真剣に聞いていても、日が経つとだんだん忘れていくものです。
そのため、研修で習ったことを実践でアウトプットする機会を設けることが大切です。
このとき、いきなり全てを任せるのではなく、指導する側によるサポートも徹底するようにしましょう。サポートがあることで、のびのびと仕事をすることができます。
指導する側の育成も行う
人材育成を行う上で、指導する側の育成方法も考えるべきです。
人材育成は何も学ばなくても、ある程度はできてしまうので、つい後回しにしてしまう管理職の方は多いですが、注意が必要です。
指導する側の育成方法に関わらず、人によっては人材育成が上手くいくことはあります。ただ、実際に人材育成をすべき人は、指導する側の育成方法も重要です。指導する側の育成方法が良ければ、継続的に優秀な人材を育成することができます。
企業側が人材育成の意義や、なぜ大切なのかを共通して知らせておく必要があります。
PDCAを回す
PDCAを回して、研修で得た内容を体得することが重要です。
PDCAを回すことで、自分ができなかったことが明確になるほか、以前に比べてできるようになったこともわかり、成長具合が可視化されます。
比較すべき相手は、同期や同僚ではなく、過去の自分です。過去の自分の成績を付けておくことで、過去の自分と比較し、成長できていると実感できます。
人材育成でよくある課題とその対策
ここまで紹介してきたように、人材育成は企業の中でも重要なものです。ただ、目に見えて成果が出ないためなのか、後回しにしている企業も多く存在しています。
ここからは、人材育成でよくある課題とその対策についてご紹介します。
人材育成に割く時間を確保できない
ほとんどの企業では、人材育成以外にも大量の仕事があります。中には、残業をしてもその仕事が終わらない方もいるでしょう。
そのため、緊急性の低い人材育成に割く時間を確保できず、つい目の前の仕事を優先してしまうのです。
とはいっても、人材育成は重要なので、決して後回しにしていいものではありません。
このような状況を打破するには、人材育成を業務の一環として取り組んでもらえるよう、業務分担や人事制度の見直しを図る必要があります。
人材育成の目的・評価基準が明確になっていない
人材育成の課題としてよくあるのが、人材育成の目的・評価基準が明確になっていないことです。
目的や評価基準が明確にならなければ、どのようなスキルをどれくらいの期間で身につけてもらえればいいのかわからないため、結局後回しになってしまうのです。人材育成に取り組むときは、まずは目的・評価基準を明確にしましょう。
基準があることで人材育成をする側も育成に取り組みやすくなり、人事評価も連動させることができるようになり、より効率的かつ透明性の高い人事評価ができるようになります。
指導する側のスキルがない
指導する側のスキルがないことも、人材育成ではよくある課題です。
人材育成は、何も考えなくてもできているように見える一方、きちんとしたスキルがない方が人材育成してしまうと、人材育成が進みません。間違った情報が伝わってしまうことで、むしろマイナスになることも考えられます。
人材育成では、人材育成される側と同じように、指導する側のスキルも非常に重要です。
まずは、指導する側の方に、人材育成の重要性について説明し、その上で研修を行ったり、指導方法を詳しく頭に入れさせたりして、スキルを身に着けてもらいましょう。
人材育成をするときの計画・目標の立て方
人材育成の重要性や必要なスキル・ポイントを抑えていただいたところで、人材育成をするときの計画の立て方を見ていきましょう。
- 計画の目標を定める
- 現時点の状況を把握する
- 必要なスキルを把握する
- スキルマップから育成手段を決める
- スキルを得る手段を検討する
- 計画の実行・評価・対話を行う
それでは1つずつ解説していきます。
①計画の目標を定める
まずは、人材育成の目標を定めましょう。
この時、現状と乖離していないことがポイント。従業員のモチベーションを保つことが難しくなります。「簡単すぎず、頑張れば達成できそうな目標」を設定しましょう。
また、計画全体の目標だけではなく、段階的な目標も設けましょう。1週間の目標、1ヶ月の目標と小刻みに設定していきます。
②現時点の状況を把握する
目標を設定したら、現状を把握しましょう。
例えば、
- 現時点で何ができているのか
- 現時点では何ができないのか
- 目標達成までに必要な時間はどれくらいか
などを明確にしていきます。
そして、①で設定した目標と現状が離れているようなら、もう一度目標を検討しましょう。
この時、育成する人材についても確認します。それぞれに能力やスキルが異なるのは当然ですが、育成する個人のスキルが①からかなり遠いのであれば、①を検討し直しましょう。
③必要なスキルを把握する
次は、①の達成のために社員が身につけておくべきスキルを検討します。
この時、一人でアイデアを出さずに、チームで行いましょう。大人数のほうがアイデアやスキルが出るのでおすすめです。
最終的には洗い出したアイデアのなかから必要なスキルと不要なスキルとを選別しましょう。
④スキルマップから育成手段を決める
③で決定したスキルをもとに、スキルマップを作成しましょう。
スキルマップとは、対象者の年次や現時点での役職にふさわしいスキルや能力はどんなものかを精査するために使います。
スキルマップを作成することのメリットは次の通り。
- 整理して考えることができる
- スキルを体系的に考えることができる
- 人事評価項目としても利用できる
人材育成を行う側にもメリットがあるので、多少時間はかかりますが、スキママップを作成することをおすすめします。
⑤スキルを得る手段を検討する
必要なスキルがわかったら、次はスキルを学ぶ方法を考えます。
- OJT
- 集合研修
- eラーニング
などの方法が挙げられます。それぞれ紹介します。
OJT
OJTは「On the Job Training」の略で、実際に仕事を行いながらスキルを身につけていくことです。
育成される側のメリットは、「実践的なスキルが身につくこと」や「即座にフィードバックを受けられること」が挙げられます。企業としてのメリットは「従業員間のコミュニケーションを促進できること」や「育成コストを抑えられること」です。
しかし、その一方で
- 指導者の能力によって育成の質が異なる
- 育成計画の作成にコストがかかる
などのデメリットもあります。
<<OJTについてはこちらもチェック>>
集合研修
集合研修とは、講師が受講生に対して対面で講習を行うことを言います。大人数を同時に育成するのに適しています。
また、OJTだけでは身につけることが難しいスキル・知識を伝えることができます。
近年では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オンラインで行われることも増えており、今後はオフラインとオンラインを組み合わせるような効率的な利用がポイントになるでしょう。
eラーニング
eラーニングはオンラインで行われる学習方法で、メリットは従業員が好きな時間に自由に学習できる点。
近年では集合研修とeラーニングを組み合わせて、両者のいいとこ取りをした「ブレンディッドラーニング」という学習方法も登場しています。
<<eラーニングについてはこちらもチェック>>
⑥計画の実行・評価・対話を行う
人材育成計画が確定したら、実行に移しましょう。
実行後に「こうしたら良いかもしれない」「こうしたらどうだろう」という気づきが出てくるはずです。したがって、計画を実行した後は評価し、さらなる改善案を出していきます。
また現場とも対話を行い、さまざまな立場の人間からの意見を取り入れてPDCAを回していきましょう。
人材育成を成功させるためのポイント
人材育成を成功させるためには、いくつか重要なポイントを踏まえておく必要があります。
- 階層別に行う
- 人材育成の対象者目線で行う
- 企業全体で取り組む
以下で詳しく解説します。
階層別に人材育成を行う
階層によって仕事内容・必要なスキルが異なることが多いので、指導される側の階層によって内容を変えて行いましょう。
新入社員
新入社員は会社や組織について未知数なことが多く、上司との上下関係にも不慣れです。
これにより、新入社員は「わからないこと」がわからなかったり、それについて上司や先輩に適切な質問ができないなどの悩みを抱えていることが少なくありません。
このような些細な悩みでも適切に解消できるように教育していくことは、新入社員の早期退職などの人材流出の防止につながります。
したがって、下記のような育成手段を実践して、社会人としてのマナーや常識を教育することが重要です。
- 入社・内定の際の集団研修
- OJT
それでは1つずつ解説していきます。
●入社・内定の際の集団研修
内定辞退や退職防止のためにも、内定や入社の際に集団研修を行いましょう。
この段階での彼らは、会社や、成長・仕事内容・人間関係、会社で起こる全てに対して疑問や不安を抱えています。それを集団研修のなかで少しでも解消することが大切です。
またアクティビティやディベートなど、参加者同士で協力して行うような体験型研修もおすすめです。体験型研修にすることもおすすめです。例えば、チームを作り謎解きにトライしたり、模擬商品開発を行ったりとユニークな研修を行う企業も多く存在します。
目的から外れていなければ、内容は会社の業種・仕事に結びつきがなくても構いません。
●OJT
上述の通り、実際の業務のなかで仕事にあたってもらうOJTも効果的です。すぐに実務で使える技や知識を学ばせることができます。
現場の上司先輩が指導するため、たとえば外部の講師を招かずとも実施できるため、コストがかからないことも魅力の一つ。
また、集団研修よりも少人数を対象とするので、一人ひとりの知識やスキルに合わせた教育が可能です。
新入社員は実際の仕事に触れるので、才能や素養を見極めることができるのもメリットです。OJT後に配属決定するときのヒントになります。
デメリットとしては、OJTを行っても新入社員全体の能力をベースアップすることはできないということ。新入社員それぞれのスキルや成長には差が出てしまいます。
中堅社員
入社後数年、中堅社員に差し掛かってくると、できる実務も増え、会社の内情も把握できてきました。自身のキャリアプランが気になる時期です。
「リーダーやマネージャー、経営陣や管理者として活躍したい」「ずっと専門分野を極めていきたい」など希望を持つ従業員がいれば、「このままでいいのか不安」と悩みを抱える従業員も出てきます。
また、中堅社員になってくると、後輩や部下ができて教育をするシーンも増えてきます。そのため、これまで以上に効率的に仕事をこなす必要があります。
そのため中堅社員に向けて行いたいのがこのような研修です。
- スキルアップ研修
- メンター制度
- タイムマネジメント研修
1つずつ紹介していきます。
●スキルアップ研修
その名の通り”スキルアップ”を行うための研修です。
中堅社員がすでに持っているスキルをさらに高めることで、活躍の場を増やしたり効率の良い仕事をする目標です。中堅社員がこのスキルを付けることは企業の業績向上にもつながります。
このスキルアップ研修の内容は対象となる中堅社員の所属部署や勤続年数、現在の能力によって決定しましょう。レベル別の研修を用意して、中堅社員のレベルに合わせて取り組ませることが大切です。
これにより実力から遠く離れた目標を追うことによるモチベーション低下を避けることができます。
●メンター制度
直属の上司ではなく勤続年数や年齢が近い先輩がメンターという相談役となることも多くあります。
メンターとは上司には言えない悩みや、上司に相談するほどではないが悩んでいることなど気軽に話せる関係を築きます。ときには相談の中で会社として必要なアドバイスを与えることができます。
また、この制度は社内のコミュニケーションを盛んにするだけではなく、メンター側の社員の成長を促すことも可能です。
一方、メンターとなる社員は通常の業務にプラスして、後輩の面倒を見なければならないため負担が大きくなることもあったり、メンターによってサポートの質が異なったり、とデメリットもあります。
<<メンター制度についてはこちらもチェック>>
●タイムマネジメント研修
生産性向上や業務効率化が求められる昨今、時間の使い方を分析して、より効率的に時間を使えるようになるタイムマネジメント研修もおすすめです。
タイムマネジメント研修により時間に対する意識を変えることで、ワークライフバランスを見直すきっかけにもなり、今後の働き方を考え直す手助けとなるでしょう。
<<タイムマネジメントについてはこちらもチェック>>
リーダー・管理職向け
「チームの生産性を上げたい」「今の組織にふさわしいマネジメントが知りたい」といったように、リーダーや管理職はプレイヤーとは異なる悩みを抱えるようになります。
したがって、リーダーや管理職には以下のような教育がおすすめです。
- リーダーシップ研修
- 経営戦略研修
1つずつ紹介していきます。
●リーダーシップ研修
管理職、または管理職候補となる方に行う研修です。「リーダーシップ」とは人によって考え方が異なり、定義が曖昧です。そのため、研修によってリーダーシップ像を体系的に学習します。
●経営戦略研修
管理職、または管理職候補にとって、経営陣の視点で物事を捉えることは一層の成長に繋がります。
経営陣の考えを知り、将来企業担う重要な人材を育てましょう。
また、経営幹部の育成が重要な理由や後継者を育てるための方法は以下の記事で解説しています。
<<経営戦略についてはこちらもチェック>>
人材育成の対象者目線で行う
以上、階層別に研修を紹介してきました。これら全てに当てはまるのですが、人材育成の対象者目線で研修を行うこともポイントです。
なぜなら、指導する側の理想ばかりを共有しても、指導される側は「研修をする理由がわからない」という気持ちになります。
なぜそのスキルを身に着けてほしいのか、研修目的を伝え、指導される側のために行っているをしているということを理解してもらいましょう。
企業全体で行う
人材育成は、企業全体で行いましょう。
社内報で人材育成に関することを伝えたり、研修の受講を促してみたりすることで、組織全体で人材育成に興味を持ち始めます。
企業全体が人材育成を意識することで、対象者の意識も上がります。
結果、人材育成が上手くいきやすくなるのです。
人材育成が学べる本
ここまで紹介してきたように、企業において、社員の適切な人材育成は経営の要ともいえる重要事項です。
企業がどれだけ優秀な人材を抱えていても、人材育成が適切になされなければ継続して成果を出すことはできません。経営陣だけでなく、管理職やマネージャーが人材育成についてきちんと理解し、実践する方法を知っていれば、生産性が向上し、継続的に結果を出し続けることが可能になるでしょう。
以下では、人材育成が学べる本をご紹介します。
なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか
政府は、女性の活躍を成長戦略の中枢に位置づけて、「全上場企業で、まずは役員に1人は女性の登用を」と呼びかけ、経営層、管理職層への女性の登用を進めています。
しかし、現実には女性の登用はなかなか進みません。女性管理職を増やすにはどうしたらよいのでしょうか。
本書は「日経WOMAN企業の女性活用度調査2014」の結果をもとに、14年の「女性が活躍する会社ベスト100」にランキングされた企業20社の女性管理職・経営人材育成の戦略と施策をまとめたものです。
順調に女性管理職を増やすことに成功している企業がどんな戦略を取っているのか、奏功した人材育成の方法はなんだったのかということを、人事担当者などに聞いています。
ヤフーとその仲間たちのすごい研修
ヤフー、インテリジェンス、日本郵便、アサヒビール、電通北海道、美瑛町役場。
バックボーンも年齢も共通言語も異なるメンバーが集まり、半年にわたって北海道の美瑛町の課題解決に取り組みます。
こちらは、前例のない研修内容を描いた本です。どのようにしたら上手く人材育成ができるのか、そのコツがちりばめられています。これから指導する側になる人や、まさに今、指導する側として現場で悩む人たちにも、たくさんの学びのヒントが宿っています。
デジタル時代の人材マネジメント
こちらは、デジタル時代の人材マネジメントに焦点をあてて書かれた本です。新型コロナウイルスの影響でデジタル化が余儀なくされました。
ただ、デジタルでの人材育成をしたことがない管理職の方の中には、どのように人材育成をしたらいいのか頭を悩ませている方もいるでしょう。
デジタル時代の人材マネジメントを正確に捉え、時代に合った戦略を提唱しています。
人材育成を行う企業事例3選
ここからは実際に、人材育成を実施している企業の事例を見ていきいましょう。
- ディズニー
- トヨタ
- ANA
それぞれ詳しく解説します。
ディズニー|サービス
「夢の国」でゲストを迎える従業員たちが非常に活き活きとしていて、時にその様ははネット上で「神対応」とまで言われているほど。
ディズニーが考える人材育成は、上司がなすべきは「行動の管理」よりも「メンバーが自己肯定感を持ち、創造性を発揮できる場所を作る」「その風土を維持・管理する」ことです。
メンバーが自ら考えて自由な意見を打ち出せるような「空間を提供する」のがリーダーの仕事だという考え方。これはまさにディズニーの理念の根底にある「ホスピタリティ」を、社内の人間にも提供することでもあるでしょう。
<<ディズニーの事例についてはこちらもチェック>>
トヨタ自動車|自動車
日本の自動車業界を牽引しているトヨタ自動車では、基本的な人材育成の理念として、昔から「モノづくりは人づくり」を掲げています。これは豊田英二最高顧問の考えである「人間がモノをつくるのだから、人をつくらねば仕事も始まらない」という思想を受け継いだものです。
したがって、トヨタ自動車では人を第一として考え、人間を尊重するための経営として、中長期的な人材育成に力を入れています。
特に、社会へ貢献できると判断した人材に対しては、キャリアパスを提示し、自己申告制度で本人へ意思確認を行うように施策しました。
<<トヨタの事例についてはこちらもチェック>>
ANA|航空
ANAでは「あんしん、あったか、あかるく元気!」を目標に、ANAグループ全体で「ANA’s Way」を行動指針として掲げています。
ANA’s Wayの概要は以下の5つです。
- 安全
- お客様視点
- 社会への責任
- チームスピリット
- 努力と挑戦
こちらを理解し、社会へ貢献できる人物の育成がANAの人事戦略であり「ANA’s Way Ambassador養成研修」や「ANA’s Day研修」を実施しています。
<<ANAの事例についてはこちらもチェック>>
人材育成の自治体事例3選
人材育成方針を取り入れている自治体の例として、以下3つの例を紹介します。
- 横浜市:神奈川県
- 池田市:大阪府
- 北九州市:福岡県
それぞれの自治体の例について以下で紹介します。
横浜市:神奈川県
横浜市では「人材こそが最も重要な経営資源」という理念を基にしており、特に女性の活躍やワークライフバランスの推進に力を入れています。
そのために、管理職の取り組みへの意識を強めるために研修をしたり、ライフイベントが多い女性のキャリア形成を考えるために、ロールモデルとの意見交換会を実施しています。
池田市:大阪府
池田市は、人事評価制度や研修制度の体系化などに取り組んでいます。
部分休業や育児時短勤務などで多様な働き方を支えるとともに、採用10年未満の職員に対しては、自己申告制の柔軟な人事配置を行っています。
北九州市:福岡県
北九州市は、人材育成やワークライフバランスの実現に力を入れてきました。女性が活躍できる環境作りはもちろん、男性職員の支援にも取り組んでいます。男性職員の育児休業取得率は12.6%まで上昇し、政令指定都市の中では上位の水準です。
参考:人材育成方針|北九州市
<<自治体の事例についてはこちらもチェック>>
人材育成担当者に取得してほしい資格
人材育成をするために取得しなければならない資格はありません。ですが、知識を体現的に学ぶためには、資格の取得は適しています。
ここでは、人材育成をするために、取っておきたい資格を3つご紹介します。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルティングに関するスキルを認定する国家資格です。
キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいいます。
キャリアコンサルティングを通じて、自分の適性や能力、関心などに気づき、自己理解を深めるとともに、社会や企業内にある仕事について理解することにより、その中から自身に合った仕事を主体的に選択できるようになることが期待できます。
ビジネスマネージメント認定試験
ビジネスマネージメント認定試験は、日本生活環境支援協会による資格です。人間関係を良好に保つ方法や、お互いがプラスとして働く関係性を構築するための心理トレーニング方法など、主に認知科学を活用した社員教育の知識が試験内容となります。協調性や自立する力が養われ、マネジメント職だけでなくその他の職種にも役立ちます。
メンタルヘルス・マネジメント検定
職場でのストレス、不安、悩みが問題視されつつある現代においては、メンバーのメンタル管理も重要です。メンタルヘルス・マネジメント検定では、働く人のもつスキルを最大限に発揮させるために、必要となる心の健康管理を習得します。
自分のメンタルヘルスを整えるだけでなく、社員のストレスを未然に防ぐ方法など、ビジネスシーンにおけるメンタルヘルス全般が学べます。
まとめ | 人材育成を学ぶなら識学
本記事では人材育成の役割と意味をわかりやすく解説しました。
人材育成は社員を「企業が望む方向(成長や発展)へと導いてくれる人材として育成すること」を意味しています。
社員のパフォーマンスが向上することで、企業業績アップが期待できるため、企業にとって人材育成は必要不可欠です。人材育成を行うときは、無理のない範囲で目標を定めて、社内で浸透させることが重要です。
また、対象者の理解を深め、効果的な人材育成方針の設定をしていきましょう。国内では、多くの企業や自治体で、すでに人材育成が取り入れられています。
事例を参考にして、自社にどのような方針が必要なのか、改めて検討してみてください。