突然ですが、下記のような悩みを抱えていませんか?
- 「経営理念を社内に浸透させるために施策を打ってきたがなかなか浸透しない」
- 「経営理念の浸透なんて事業を進める上で本当に必要なの?」
- 「経営理念に対して従業員からの理解がなく、現場レベルの実現は困難」
経営理念が従業員一人ひとりに、そして社内の隅々まで浸透していれば、従業員はタスクベースではなく自社の経営理念にしたがって高いモチベーションで仕事をします。
そして、そのような企業は顧客を惹きつけるため、経営理念とその浸透は企業の成長や存続には欠かせません。
しかし、実際のところは従業員に経営理念が浸透せず、苦慮している企業も少なくありません。
したがって本記事では、経営理念を浸透させるための方法やその重要性、また浸透しない原因などを解説していきます。
関連記事:アマゾンの経営理念とCEOジェフ・ベゾスの「ビジョナリー・リーダーシップ」
目次
経営理念を浸透させる重要性とは
経営理念とは、経営を進める上で基本となる考え方や創業者・経営者の思い、価値観などを言葉で表したものです。
経営理念は企業の経営者や創業者によって社内外を問わず広められ、「事業を展開する上で根本的な信念・考え方」や「経営判断をする際の判断基準」ともいえます。
具体的には企業の「使命(ミッション)」や「ビジョン」「価値観」「行動指針」などが含まれます。
こうした経営理念を社内に浸透させることは、なぜ重要なのでしょうか?
変化する環境・時代のなかで土台となる経営理念
昨今は、企業を取り巻くビジネス環境や市場環境が目まぐるしく変化し、不確実性や曖昧性・複雑性が増しており、先を見通せない時代となりました。
そこに新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、さらに混迷を極める時代へと突入しています。
働き方改革による長時間労働の是正やリモートワークの推進、テクノロジーの加速度的な発展、従業員が抱く将来への不安など、実に様々な変化が巻き起こる中、企業はどのように在るべきかが問われているのです。
このような不安定で変化が激しい時代だからこそ、企業は従業員の足場となり共感できる経営理念を策定し、浸透させることで従業員とのつながりを強化しなければなりません。
つまり経営理念とは、従業員一人ひとりが企業に対して愛着を持ち、エンゲージメントを高めるための重要なファクターなのです。
経営理念と企業理念の違いとは
経営理念と混同されがちな言葉として「企業理念」が挙げられます。
明確な違いはなくどちらも同じ意味の言葉として使っている企業もありますが、厳密には異なる側面もあります。
企業理念は「創業者が会社にとって重要だと考えた信条」や「企業において一番重要で基本的な考え方や価値観」などと定義づけられたものです。
企業理念はどのような時代・環境においても変わることはほとんどありません。
一方で、そういった「企業理念」に基づいて経営を進める上で判断基準となるものが、「経営理念」です。環境の変化やニーズに合わせて見直され、最適化されることが多い点が企業理念と異なります。
経営理念を浸透させるメリットや効果
経営理念を浸透させることが必要だと考えている企業は多く存在します。
実際、HR総合調査研究所の調査によると、「社員に経営理念を浸透させる必要性があるか」という意味の設問に対し、「そう思う」が85%、「ややそう思う」が13%となり、9割以上の企業が必要性を感じていることがわかっています。
なぜ、経営理念を社員に浸透させる必要があるのでしょうか?
それは、経営理念を浸透させることで下記のようなメリットが期待できるからです。
- 従業員の一体感を強め、チームワークが高まる
- 従業員のモチベーションが高まる
- 従業員の自律性が高まり、自発的に行動できるようになる
それでは一つずつ解説していきます。
(参考:「企業理念浸透に関するアンケート調査」結果報告丨HR総合調査研究所)
従業員の一体感を強め、チームワークが高まる
経営理念を従業員に浸透させることで、従業員は経営においてどのような判断基準を持つべきかがわかります。
これにより、従業員一人ひとりが同じ価値観や行動指針を持つため、企業やチームの結束力が強くなります。
経営理念が浸透していればチームメンバー全員が同じ方向に向かって仕事をするため、高いチームワークを発揮するようになるのです。
組織の業績向上には、こうした従業員同士のチームワークが欠かせません。
従業員のモチベーションが高まる
従業員は、
- 「自分は何のために働いているのか」
- 「この企業はこの事業によって、何を達成しようとしているのか」
- 「自社はどのような経営方針なのか」
といった仕事の意味や目的、企業の存在意義などを考えています。
そしてこの答えが不明瞭なまま仕事をする場合、その従業員はただ給与を得るために働くことになるでしょう。
しかし、経営理念を従業員に浸透させることで、従業員は「社会に対して貢献している会社で自分は働いている」という自己意識や、「この企業のビジョン実現に貢献したい」という帰属意識を持ちます。
このように自分の仕事の意味や、企業の存在意義を実感することは、仕事に対するモチベーション向上・維持につながります。
従業員の自律性が高まり、自発的に行動できるようになる
明確な経営理念は行動や判断の基準となるため、従業員は経営理念に照らして自身の行動や選択をするようになります。
つまり、従業員の自律性が高まり、自発的に行動するようになるのです。
経営理念が浸透していれば、従業員は企業からどのような行動や判断を求められているのかが理解できます。
したがって、現場レベルで迅速な判断が必要になった際にも、意思決定に悩まず的確な判断ができるようになるでしょう。
さらに従業員が自発的に行動できるようになれば、杓子定規な業務マニュアルを用意する必要もなくなり、コストカットにもつながります。
関連記事:人材育成計画の作成方法とは?理想の人材が育つ計画の立て方やポイントを解説
経営理念は従業員の半数には浸透していない
実際に経営理念が従業員に浸透している企業はどれくらい存在するのでしょうか?
HR総合調査研究所の調査を見てみると、企業理念が浸透していると認識している企業はたったの6%しか存在しませんでした。「やや浸透している」の36%を足しても40%ほどです。
一方で「(浸透しているとは)あまり思わない」の40%と、「思わない」の13%を合計すると50%を超えてしまいます。
50%の従業員は自社のビジョンを知らない
さらに、株式会社JTBコミュニケーションデザインが行った調査「会社のビジョンに関する意識調査2020」では、従業員数100名以上の規模の企業で働く、従業員およそ600名を対象に意識調査を行いました。
そこで自社のビジョンを知っているかどうか質問したところ、「知っている」と答えた割合は51.1%とおよそ半分でした。
一方で「知らない」が17.2%、「ビジョンがあるかどうか知らない」が21.7%と、およそ40%の従業員が存在を含めて「知らない」と回答しています。
上記では理念やビジョンの重要性を解説しましたが、実際にはおよそ50%近い企業や従業員が、その内容を理解・納得するどころか「知らない」のです。
(参考:【2020年最新調査公表】会社員600人の意識調査から見えた、会社のビジョン浸透のリアル丨JTBコミュニケーションデザイン)
社内に広く浸透する経営理念とは
経営理念を社内に広く浸透させるには、経営理念を明確にして周知しなければなりません。
しかし、その大前提として、明文化する経営理念は従業員や顧客などのステークホルダーから共感・支持されるものである必要があります。
したがって、ここでは社内に広く浸透する経営理念の条件をみていきましょう。
- 明確でわかりやすい内容であること
- 経営者自身が真剣に取り組める理念であること
それでは一つずつ解説していきます。
明確でわかりやすい内容であること
経営理念は自社だけで完結するものではなく、社内外に広く示されるものであるため、ステークホルダーや社会に対して、わかりやすく明確であることが求められます。
崇高なイメージや理念を表現するために、あまりにも抽象的で曖昧な内容にすると、経営理念を見た時・聞いた時に漠然としたイメージしか浮かびません。
「何が言いたいかわからない」という印象に終わってしまう可能性があります。
また、人によって解釈が異なるという状態も避けなければなりません。
さらに、時代に合わせた表現をすることも重要です。
歴史が長い企業の場合、企業理念に基づいて経営理念にも当時の難しい漢字や言い回しを用いている場合もあるため、現代人に伝わらないことがあります。
「わかりやすい経営理念」の良い例として、京セラグループの下記の経営理念が挙げられます。
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。
このように、誰が見てもわかりやすく具体的な企業理念が望ましいでしょう。
(参考:社是・経営理念・経営思想丨京セラグループ公式サイト)
経営者自身が真剣に取り組める理念であること
経営理念は、経営者自身が真剣に取り組める内容の理念でなければなりません。
当たり前のように感じるかもしれませんが、実際に真剣に理念経営を行っている中小企業の経営者はあまり多くないでしょう。
腑に落ちていないまま、なんとなく経営理念を定めている経営者も少なくないはずです。
では、経営理念が腑に落ちているかどうかの基準とはどこにあるのでしょうか?
それは、経営理念に関する物語を語れるかどうかです。
経営理念とはつまるところ、経営者の価値観であり、譲れない想いといえます。
そのような強い想いがあるということは、その想いを大切にしたいと考えるきっかけがあったはずです。それこそが、経営理念の物語です。
この物語を真剣に語れるのであれば、多くの人の共感を呼び、経営理念の浸透に貢献するでしょう。
関連記事:【実は知らない】「胆識」とは?これからのリーダーにとって大切な実行力を徹底解説!
経営理念が浸透しない原因
社内に浸透する経営理念の条件を解説しましたが、条件を満たしていても社内に浸透しないケースもあるでしょう。
その場合、下記のような原因が考えられるため、自社と照らし合わせてみましょう。
- 経営理念を策定しただけで満足してしまう
- 時代錯誤な経営理念になっている
それでは一つずつ解説していきます。
経営理念を策定しただけで満足してしまう
スタートアップ企業やベンチャー企業にありがちなパターンですが、経営理念を策定したことに満足してしまい、実際に浸透させる手立てをうっていないパターンです。
企業の公式サイトや採用の際には経営理念を掲げますが、従業員に対して経営理念を浸透させるための施策や工夫を実行することがないため、浸透もしません。
この結果、自社に経営理念が存在することすら知らない従業員が出てきたり、知っていたとしても誰も気にしていないため形骸化してしまいます。
時代錯誤な経営理念になっている
歴史がある企業によくあるケースですが、経営理念を創業当初に決めたまま変えずにいるため、環境や時代・市場の変化に対応できておらず、時代錯誤な経営理念になっていることがあります。
現代はテクノロジーの発展や価値観の多様化が進んでいるため、古い経営理念のままだと時代にそぐわないのです。
これにより、従業員が持つ現代的な価値観や考え方とギャップが生じるため、いくら周知されても共感できません。したがって、経営理念が浸透しない結果となってしまいます。
経営理念を浸透させる具体的な施策
経営理念を浸透させるには下記のような施策が効果的です。
- 経営層が従業員に対して積極的に伝える
- さまざまなチャネルを使って発信する
それでは一つずつ解説していきます。
経営層が従業員に対して積極的に伝える
経営理念の策定に関わった経営層は、従業員に対して積極的に経営理念の意味やストーリーを伝えなければなりません。
そのためにも、経営層が従業員に経営理念を説明する機会を、定期的に設けることが重要です。
また、従業員にとって経営層は大きな存在であるため、多くの従業員が経営層に注目しています。だからこそ、経営理念に基づいた行動や意思決定をすることで、模範的な存在になる必要があります。
さまざまなチャネルを使って発信する
経営理念を浸透させる際は、定期的に説明をするだけではなく、さまざまなチャネルを用いて発信することが重要です。
例えば、社内ポータルサイトで経営層による情報発信ページをつくり、経営理念について伝えることができます。社内ポータルサイトであれば、従業員が自分の好きなタイミングで見られる点がメリットです。
また、社内報を発行することで、経営層が経営理念についてコラムとして説明することもできるでしょう。
社内報であれば定期的に発行するため、経営理念について繰り返し伝えられるというメリットがあります。
まとめ
ここまで経営理念を浸透させる方法や、経営理念が浸透しない原因についてみてきました。
一般的には経営理念は正しく設定して、社内全域に浸透させることが重要と考えられています。
しかし、識学式では「会社の経営理念は浸透させなくていい」という考え方があるため、こちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。