1,000万人超。
この数は、世界中で大人気のアイドルグループBTSのファンの数です。
東京都の人口が、2021年12月時点で1,400万人ということを考えると、BTSの人気ぶりがどれほどのものなのか、想像しやすいのではないでしょうか。
本記事では、BTSが人気になった理由を、マーケティングとブランディングの視点から解説していきたいと思います。
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目次
BTSとは?
BTSは、世界で大人気の韓国のK-POPアイドルグループの名前です。
BTSは韓国で「防弾少年団(読み:Ban Tan Sonyondan)」という名でデビュー、活動しており、その頭文字をとって「BTS」という名で、日本を含め世界で活躍しています。
ファンたちの間では、防弾少年団の「防弾(Ban Tan)」部分を取り、バンタンと呼ばれることもあります。
2013年にデビューしたBTSは、その後徹底したファンとのコミュニケーションで認知度を高めていきます。
2014年に発足したファンクラブの投票で決まったファンの名称はARMY(Adorable Representative M.C for Youth)。
その後、BTSはファンに対して呼びかける際には、ファンの皆さんではなく「ARMY」と語りかけています。
そうしたBTSの姿勢は現在でも変わらず、ファン向けの有料コンテンツなどのクローズドな番組だけでなく、オープンな番組であっても「ARMY」と変わらず呼び続けます。
そうしたファン視点に立ったコミュニケーションに、ファンたちは「沼って」いくのです。
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BTSのグローバルマーケティング戦略
BTSは、韓国での人気はさることながら、日本や米国、世界での人気を高めているアイドルグループです。
2008年のK-POPの輸出金額が1,600万ドルだったのに対し、11年後には26億ドルと飛躍的に成長してきたことを踏まえると、K-pop自体が海外を視野に入れた展開を前提に考えていたことが伺えます。
今やK-POPの代名詞にもなっているBTSのグローバルマーケティングを以下にて解説していきます。
参考:米国トップチャートを制したK-POP、日本音楽産業に勝機はあるのか?|世界でエンタメ三昧【第68回】 | TORJA
海外文化に合わせたプロモーションを行う
BTSが利用したマーケティング手法として、海外に合わせたプロモーションが挙げられます。
例えば、以前からK-POPアーティストが日本でのプロモーションを行う際には、日本語バージョンの楽曲を出すという文化がありました。
第二次K-POP時代と称されるKARA、少女時代、BIGBANGなどのアイドルグループは日本語バージョンの歌詞でプロモーションを行い人気を集めてきました。
BTSも同様に日本に対して曲を発表する際は日本語バージョンの歌詞を発表しており、これは日本語へローカライズした方が伝わりやすいことを踏まえた背景があります。
しかしその一方で、海外(特にアメリカ)に対して英語の歌詞を出しているかというと、そうではありません。
BTSがデビューした2013年6月から2022年2月までに出した英語バージョンの歌は「Dynamite」と「Butter」「Permission To Dance」の3曲のみ。
もちろん、日本語と韓国語は語源的に近い位置にあるため歌いやすいということもあるでしょうが、決してそれだけではありません。
というのも、アメリカでは非英語圏の曲であってもヒットするという土壌が既にあったからです。
例えば、Daddy Yankeeの「Despacito」はアメリカチャートで何週にも渡り1位を獲得した曲ですが、これはスペイン語の曲です。
このように、マイノリティであるラテンミュージックにも一定のファンダムがつくことを考えると、アメリカの主流音楽とは別ジャンルの音楽として、韓国語の音楽「BTS」に興味をもつコアなファン層がつく可能性は十分にあります。
実際に2016年にアルバム「LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’」でビルボード・アルバム・チャート1位を獲得したBTSの目論見は、見事当たったと考えてよいでしょう。
参考:なぜBTSだったのか。全米1位の背景や意義を米Billboardコラムニストに訊く | CINRA
インターネット時代のSNS戦略
BTSが世界中で人気を集めるようになったのは、そのSNS戦略も大きく寄与しています。
BTSは多種多様なSNS、メディアを活用して情報発信をしており、その媒体、アカウントには以下のようなものがあります。
- HYBE LABELS:Youtube
- BANGTAN TV:Youtube
- BTS_official:Twitter
- 방탄소년단:Twitter
- BTS (방탄소년단) :Facebook
- bts.bighitofficial:Instagram
- bts_official_bighit:Tiktok
- BTS:VLIVE
- BTS:Weverse
多種多様なSNSにおいてさらにアカウントによって細分化されており、それぞれでフェーズの異なるARMYが楽しめるようになっています。
例えば、BTS公式のお知らせなどが知りたい人はTwitter、写真や動画を見たい人はTwitterやTiktok、Instagram。
メイキング動画やBTSメンバーのメッセージを見たい人はYoutube。
そして、もっと踏み込んでメンバーの日常生活を見たり、よりBTSと繋がりたい人は、ファンとBTS本人との相互交流も可能なWeverseでと、ファンの熱量の段階に応じてBTSを楽しめるようになっているのです。
そして、SNSが賑わうほどにBTSの活躍は拡散され、新しいファンの獲得にも繋がっていきます。
SNS時代の口コミを活用したマーケティングが、グローバルに人気を集めることができる理由です。
関連記事:インフルエンサーとは?SNSマーケティングに活用される理由や注意点を解説
世界に通用するクリエイティブ
日本においても音楽はただ耳で聞くだけの楽曲という視点では捉えきれなくなっています。今や、音楽はかつてのレコードのような音源ではなく、ひとつのクリエイティブとして捉えるのが正しいでしょう。
ダンス、デザイン、ファッション、服装へのこだわりが、動画として公開されるのが現在です。
このため、音楽をただ聴くだけではなく、見る、楽しむことが増えています。
これは、私たちが音楽を聴く手段の一つに、Youtubeなどの動画配信プラットフォームにまで拡大してきた背景があります。
BTSは、ひとつの楽曲をメインコンテンツと考えるのならば、そのコンテンツに力を入れるのはもちろん、サブコンテンツの配信にも力を入れています。
例えば、新しい楽曲の発表をひとつのプロジェクトとして捉えるなら、それに付随して楽曲のコンセプト発表、Teaser公開、カウントダウン、トーク、メイキング動画、MVなどが順次公開されていきます。
このスタイルそのものはK-POP全体でとられているものではありますが、そのクオリティと先述したSNS戦略が相まってBTSの人気につながったと言えるでしょう。
ひとつひとつにこだわり、世界に負けないクリエイティブを作るのはもちろんのこと、それらをファンが楽しみ、拡散していく、言わばファンと一緒に作り上げるコンテンツという意味でも、BTSは注目を集めたのです。
関連記事:「組織にルールを。」ルールに縛られた職場こそが、もっとも「クリエイティブ」である理由。
BTSのマーケティングはブランディングに支えられている
ここまでBTSのマーケティングについて解説をしましたが、全てのマーケティングは高いブランディングに支えられています。
BTSは以下の要素をブランディングとして持ち合わせています。
- 一貫したコンセプト
- ストーリー性
当初、防弾少年団という名前のコンセプトは、10代、20代に向けられる社会の偏見、抑圧から自分たちを守りぬくというものでした。
その後、2017年にはBTSのメンバーが成長したことから「新たな夢に向かって絶えず成長する」というブランドアイデンティティが付け加えられましたが、その根本にあるのは「守りぬく」という概念です。
現在では、ファンの心の痛みに寄り添うために、「自分を大切にしよう」という趣旨の歌詞が増えており、その根本にあるのも「ファンや自分たちを社会から守る」という姿勢であり、BTS結成当時より変わっていません。
また、BTSの歌詞はメンバー自身が作詞をすることもあるため、彼らが歌う曲には彼らを追いかけ応援してきたファンの感情を動かすストーリーが含まれています。
こうした高いブランディングがあるからこそ、マーケティング戦略においても結果を残してこれたといえるでしょう。
関連記事:【わかりやすく】ストーリーブランディングとは?一般的なブランディングとの違いや具体例をわかりやすく解説
まとめ
2020年の「Dynamite」が世界的大ヒットして以降、いまもBTSの人気はとどまることを知りません。
表面的に「アイドルグループ」とだけ捉えると、「かっこいいから人気」などという短絡的な思考になりがちです。
しかし実際には、ファンを思う高いブランディング、緻密に計算されたマーケティングが裏にはあります。
企業ブランドの醸成の観点からも、BTSの事例は企業経営において参考になることでしょう。