ジェフ・ベゾスは言わずと知れた最強の通販サイト、「Amazon.com」の創設者であり取締役会長です。新型コロナウイルスの流行によって多くのビジネスが立ち行かなくなるなか、Amazonは破竹の勢いで純利益を伸ばしていきました。
もちろん、新型コロナウイルスによって売上を伸ばしたハイテク企業はAmazon以外にも、AppleやMeta(元Facebook)などが挙げられますが、ロックダウンや外出制限によって大きな恩恵を受けたのがAmazonでした。
このような企業を創業し、ここまで巨大な企業に育て上げた「ジェフ・ベゾス」という人物はどのような人物なのでしょうか?
そこで本記事では、世界トップレベルの大富豪であるジェフ・ベゾス氏の人物像や成功した理由、宇宙を目指す理由を解説していきます。
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世界一の億万長者、ジェフ・ベゾスとは?
まず、ジェフ・ベゾス氏について簡単に紹介していきます。
Amazonの創設者であり取締役会長でもあるジェフ・ベゾス氏の本名は、「ジェフリー・プレストン・ベゾス」といいます。1964年にアメリカで生まれて、現在は57歳です。
アメリカの経済誌「フォーブス」が発表した2021年版の世界長者番付によると、ジェフ・ベゾス氏は4年連続で1位になっています。その資産は1,770億ドル(およそ19兆4,400円)であり、株価が上がったことにより前年から640億ドル(およそ7兆円)増加しています。
また、ジェフ・ベゾス氏は世界で初めて資産が2,000億ドルを超えた人物でもあり、2013年にはワシントン都市圏で最も多く発行されているアメリカの日刊紙である「ワシントン・ポスト」を買収して、オーナーとなりました。
ジェフ・ベゾスの学生時代
ジェフ・ベゾスは小学校時代から科学に興味があり、工作の才能もありました。その腕前はアラームを仕掛けることで、兄弟が自室に入らないようにしていたほどです。
高校生時代はマクドナルドで仕事をしており、簡単な調理を行っていました。また、フロリダ大学で開かれた科学の生徒研修プログラムにも参加しており、1982年には卒業生総代を務めています。
その際には優秀な学生に贈られる表彰制度である「ナショナル・メリット・スカラーシップ」や「シルバー・ナイト賞」を獲得しました。
名門校「アイビー・リーグ」に入学
その後はアメリカの8つの私立エリート大学グループの「アイビー・リーグ」の一角である、プリンストン大学に入学しています。
プリンストン大学はアイビー・リーグのなかでもビッグスリーと言われる名門校で、U.S. Newsの「2022年世界のベスト大学ランキング」では、常に上位にランクインする世界屈指の名門大学です。
また、ジェフ・ベゾスは大学で「Students for the Exploration and Development of Space(SEDS)」のプリンストン市部長になっています。SEDSとは、宇宙探査と宇宙開発を促進するための国際的な学生組織のことです。
ジェフ・ベゾスは後に宇宙事業が目的の「ブルー・オリジン」を創業し、2021年7月に宇宙旅行を成功させていますが、ベゾスは大学時代の頃から宇宙に関心を持っていたのです。
ジェフ・ベゾスの起業
プリンストン大学の卒業後、ジェフ・ベゾスはインテルなどからオファーを受けましたが、ベゾスが入社したのはスタートアップ企業でした。その後は大手金入サービス会社で2年働いた後、ヘッジファンドに移っています。
ヘッジファンドでは30歳のときに、同社で4人目のシニアバイスプレジデントとなりました。
さらに、同社でインターネットについて調べていた際に、インターネットが急速に大きくなっていることに気づき、ジェフ・ベゾスはインターネットビジネスの世界に飛び込むことを決意したのです。
Amazonの始まり
1993年、ジェフ・ベゾスはAmazonを起業し、書籍のオンライン販売を始めます。両親はベゾスに30万ドル(およそ3,400万円)もの金額を託してくれたため、ベゾスはこのお金をもとにビジネスをスタートしました。
しかし、自身に投資してくれた投資家たちには、「Amazonが倒産したり自身が破産する可能性が70%ほどだ」とも告白していたのです。
しかし、その心配は杞憂に終わり、3年後にはIPO(株式公開)を行っています。
その後、Amazonでは音楽や日用品を扱うようになり、現在のAmazonのような「何でも揃うサイト」に進化していきました。
その後、2014年には「Amazon Web Services(AWS)」についてCIA(アメリカ中央情報局)と契約を結んでおり、IBMなど既存のITベンダーを上回ったと「お墨付き」を与える形となったのです。
宇宙を目指すジェフ・ベゾス
ジェフ・ベゾスは学生時代から関心を持っていた宇宙に関する企業である「ブルー・オリジン」を2000年に設立します。
ブルー・オリジンは有人宇宙飛行事業を目的とする民間企業であり、ジェフ・ベゾスは実際にブルー・オリジンが開発した宇宙船「ニュー・シェパード」に乗って、10分10秒の宇宙旅行を成功させました。
また、ベゾスは1982年の高校の卒業式の際に行ったスピーチについて取材を受けており、そこでも宇宙にホテルやコロニーをつくることに関心があると明かしています。
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このように、ジェフ・ベゾスはAmazon.comやブルー・オリジンといった企業を創設し、革新的な企業に成長させていますが、その成功の秘密はどこにあるのでしょうか?
ここでは、ジェフ・ベゾスが成功した秘密やジェフ・ベゾスの経営哲学を見ていきましょう。
- 徹底的な顧客至上主義
- 失敗を恐れないチャレンジ精神
- 「後悔最小化」のフレームワークを使う
- 時代の波に乗る
それでは1つずつ解説していきます。
徹底的な顧客至上主義
Amazonといえば徹底的な顧客至上主義が有名ですが、多くの企業も顧客重視の戦略をとっています。しかし、Amazonは一般的な企業とは一線を画すほど顧客を重視しているのです。
例えば、Amazonでは「マーケットプレイス」という仕組みが導入されており、自社サイト上で他の販売会社も商品を販売できるようになっています。
これは一般的には、自社サイトの売り上げが減ってしまうため避けられていますが、なぜAmazonはマーケットプレイスを導入したのでしょうか?
それは「顧客に『中古も見たい、購入したい』というニーズがあるのなら、中古も販売するべきだ」とジェフ・ベゾスに提案した人がいたからです。
この提案は、最初は他のメンバーからは反対されていましたが、「顧客にとって正しいことであれば会社の利益になる」ということで合意に至りました。
ジェフ・ベゾスの考え方
このような徹底的な顧客至上主義を貫く姿勢を保つことこそ、Amazonがここまで成長できた秘密の1つでしょう。
こうした判断ができるのはジェフ・ベゾスに、
「Amazonよりも安く販売できるところがあれば自由に販売してもらい、顧客に満足してもらう方が良い。価格競争でサードパーティーに負けるなら、Amazonが安く売れる方法を考えるべきだ。サードパーティーがAmazonにはない商品を提供してくれて、顧客がAmazonを使ってくれればいい」
という考えがあるからこそなのです。
失敗を恐れないチャレンジ精神
続いてジェフ・ベゾスが成功した秘密は、失敗を恐れないチャレンジ精神を大切にしていたことです。
ベゾスは「ほとんどの場合、求める情報量のおよそ7割が集まった段階で判断をしなければならない。9割になるまで待つのは遅すぎる」と語っています。
つまり、市場を握るためには素早く行動しなければならず、そのためには大胆かつ迅速な意思決定をしなければならない、ということです。
大胆かつ迅速な意思決定にはリスクを恐れないチャレンジ精神が必要になりますが、ここでもし失敗したとしても将来的により良い結果を出すための学びや気づきを得られます。
上記で解説した「マーケットプレイス」ですが、これを導入するのにAmazonは2度も失敗しています。しかし、3度目で成功しており、現在では売り上げの半分を占めているのです。
「後悔最小化」のフレームワークを使う
今でこそAmazonは何でも揃うオンラインストアになっていますが、ジェフ・ベゾスがAmazonを創業した当初は書籍しか扱っていませんでした。このとき、ジェフ・ベゾスのマインドを支えていたのが「後悔最小化のフレームワーク」です。
このフレームワークは、自身が80歳になったときのことをイメージして、それまでの人生を振り返るものです。ベゾスはこのフレームワークについて下記のように語っています。
”その時点で後悔の数を最小限にしたいのです。私が80歳になったとき、大変な影響力を持つと思ったインターネットと呼ばれるものに参画しようとしたことを後悔しないはずだと感じました。”
時代の波に乗る
Amazonを創業した当初は書籍しか扱っていませんでしたが、ジェフ・ベゾスは自身のビジネスをただの「オンライン書店」とは考えていませんでした。ベゾスは初めから「インターネットビジネス」だと考えてビジネスを進めていたのです。
なぜなら、ベゾスがインターネットの可能性に気づいたのは、インターネットの使用が年率2,300%で増加していることに気づいたからです。しかし、実はベゾスが算出したこの数字は誤りでした。
実は、インターネットは2,300倍に成長しており、実際の成長率は23万%だったのです。時代の波に乗ることでベゾスは自身の予想以上に成功しましたが、このように時代の波に乗ることは大きく成功するうえでは欠かせない要素でしょう。
なぜジェフ・ベゾスは宇宙を目指すのか?
ここまで見てきたように、ジェフ・ベゾスは先見の明に長けており、大胆な決断と行動を繰り返してきたことで世界一の億万長者になりました。
しかしジェフ・ベゾスはそれだけではなく、有人宇宙飛行事業を行う「ブルー・オリジン」を創業し、自身でも宇宙旅行を成功させています。
なぜ、ジェフ・ベゾスは宇宙を目指しているのでしょうか? 有り余るほどのお金を使うために宇宙事業に手を伸ばしていると考える人もいるかもしれませんが、ベゾスはしっかりとした考えのもとで宇宙事業を進めています。
その考えとは「いつか地球の資源は枯渇するため、その前に宇宙で生活ができるようにする」というものです。
増え続けるエネルギー消費量
世界的なエネルギー使用量は毎年3%増えています。「たった3%なら大丈夫そうだ」と感じるかもしれませんが、何十年もの間3%ずつ増えていけば、膨大なエネルギーとなります。複利で増加し続ければ、人間のエネルギー消費量は25年ごとに倍になっていくのです。
このような背景もあり、昨今ではSDGsやESG投資、再生可能エネルギー、サステナビリティ、といったキーワードをよく目にするようになりました。
しかし、いくらSDGsや再生可能エネルギーが普及したとしても、地球環境が悪化するスピードを減速させられるだけで状況が良くなることはありません。
エネルギー効率が良くなるほど使用量が増える
昔であれば明かりに使用していたのはロウソクですが、それが灯油ランプになり、白熱灯、LEDとエネルギー効率は飛躍的に良くなりました。また、50年前は飛行機でアメリカを横断するのに必要な燃料は一人当たりおよそ410リットルでした。
それが現在であればおよそ90リットルで済むため、これは驚異的な進化といえるでしょう。このように、照明であれ移動手段であれ、効率が上がると人類はさらにエネルギーを消費するようになります。
ロウソクや水が貴重な時代であれば大切にロウソクを使っていましたが、いまや電気や水はタダ同然で使っていますよね。このように、人間はエネルギー効率が良くなるほどエネルギーを消費していくのです。
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しかし、当然ですが資源は無限に存在するわけではなく、限りがあります。そうなれば限りある資源を膨大な数の人間に分け与えるために、エネルギーの使用を制限せざるを得なくなるでしょう。
こうなれば人類の発展はそこで止まります。しかし、地球外には未だ手を付けられていない膨大な資源が眠っています。人類が宇宙に出て生活できれば、1兆人だろうと資源が枯渇することなく繁栄できるかもしれません。
そこで必要になるのは、コロニーです。
宇宙に人が住めるコロニーをつくる
プリンストン大学の物理学教授であるジェラルド・オニール教授は、「人が宇宙で生活するために最適な場所は惑星の表面ではない」と結論づけています。
なぜなら、惑星の表面は地球の表面と同じようにそれほど広くなく、多くても地球の2倍ほどの人口しか維持できないからです。
さらに、地球と惑星の距離が遠すぎるという問題もあります。仮に火星に住むとしても往復だけで数年かかってしまうのです。また、遠すぎると地球との通信にも時間がかかり、不便でしょう。
また、地球以外の惑星では人間に適した重力がないという点も問題です。人間には重力が必要であり、無重力空間で生活するにはさまざまな条件をクリアしなければなりません。
そこで、コロニーであれば回転させることによって遠心力で生まれる人工重力を活用できるのです。
「人間は宇宙で生まれるだろう」
このような背景があり、ジェフ・ベゾスは人類は宇宙で生活するようになると確信し、ブルー・オリジンを創業したのです。ベゾスは「いつか人間は宇宙で生まれ、宇宙植民地で生活するだろう」と語っています。
また、「スペースX」の創業者であるイーロン・マスク氏も宇宙に関連する事業を進めていますが、ジェフ・ベゾスとは考え方が異なっているようです。マスク氏は火星を植民地化することや、核兵器を用いて人間が住めるように環境を変える考えを支持しています。
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ここまでジェフ・ベゾス氏の半生や成功の秘密などを見てきました。
ジェフ・ベゾス氏はインターネットの可能性に着目し、大胆な決断と行動によってAmazonを巨大な企業に成長させました。さらに、学生時代から地球環境を危惧しており、人類が宇宙で生活できるように「ブルー・オリジン」を創業し、着実に目標に向かっています。
ベゾスが徹底する顧客至上主義やチャレンジ精神は、日本企業においても学ぶべき点が多いでしょう。ぜひ、ジェフ・ベゾスから自社に活かせる教訓を見つけてみてはいかがでしょうか。
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