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アメリカや中国を中心に注目を集める無人店舗。コンビニやスーパーマーケットなどの小規模な店舗でも、無人店舗が拡大しています。
日本でも新型コロナウイルス騒動をきっかけに無人店舗が普及しつつあります。本記事では無人店舗について、以下について解説します。
- 無人店舗の定義や起源、特徴
- 無人店舗の実例
- 無人店舗のメリットとデメリット
「無人店舗」の事例を知りたいという方や、無人店舗に商機を見出したビジネスパーソンの方にもおすすめの記事となっていますので、ぜひご一読ください。
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無人店舗とは?
経営者
無人店舗とは、人工知能や顔認証、キャッシュレス決済などを利用した、従業員がいない店舗のことです。
来店者の購買データを収集できるうえ、コスト圧縮などの利点があり、現在注目されています。
これまでにも従業員がいない店舗は、コインランドリーや野菜の無人販売所という形で存在していました。
しかし、これらの店舗は「利用者数が限られること」を前提としていました。
近年の無人店舗は、コンビニやスーパーマーケットなど、「一定の利用者が訪れることを前提」とし、AIやキャッシュレス決済などのテクノロジーを用いて運営することを指します。
無人店舗の起源
「無人店舗」は2012年からシスコシステムズによって言及されています。
シスコシステムズは論文において、「スマートフォンやタブレットの普及による無人店舗の可能性」について触れました。
論文では、いわゆる「コンテナ型」の無人店舗のあり方について言及されています。
2014年には、Shelfx社が無人店舗を開店。同店ではスマートフォンによる決済が導入され、レジで会計せず退店することができるようになりました。
無人店舗の仕組み
無人店舗の仕組みは、おおむね以下のとおりです。
- 店舗入り口でIDカードなどを認証して入店する
- 従来どおり商品を選ぶ
- 商品を無人のレジで認識させる
- 決済して退店する
上記の仕組みのため従業員と接触することなく、入退店できます。
ちなみに、ほとんどの無人店舗にはカメラが設置されており、来店者の動きを追跡することが可能です。
カメラには人工知能が内蔵されており、商品を「手に取る」「棚に戻す」といった行動も追跡できます。さらに進んだ無人店舗では、棚にかかる商品の重量を計測する仕組みが導入されています。
重量を計測し、在庫状態について把握することで、自動で発注データを作成できるまでに進んでいるのです。
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無人店舗に注目が集まるのは「非接触」が理由です。
新型コロナウイルス騒動の影響により、非接触のニーズが高まり、店舗としても多くの対応を政府より指示されました。
なかには、入場規制やサービスの縮小などを余儀なくされている店舗もあります。
無人店舗は、新型コロナウイルの爆発的な増加要因、クラスター化などのリスクを避け、非接触で長期的に運用することができます。
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無人店舗での決済方法
無人店舗では、以下のような決済方法が使われます。
- キャッシュレス決済アプリ
- 電子マネー
- クレジットカード
- ポイント決済
スマートフォンやタブレット、クレジットカードの導入と無人店舗の掛け合わせにより、上記のような決済方法を選択することができるようになりました。
無人店舗の特徴
無人店舗の特徴としては、以下の点が挙げられます。
- AIで購入者を特定する
- 圧力センサー・重力センサーの利用する
- 需要予測を精密にできる
AIで購入者を特定する
無人店舗の最大の特徴は「AIの昨日により購入者を特定できる」点です。多くの無人店舗では、入店段階でAIによる本人の識別が行われます。
店舗入口に顔認証や決済情報を確認する装置があり、このデータに基づいて購入者を特定します。
圧力センサー・重力センサーの利用する
無人店舗では、圧力センサーや重力センサーが利用されます。商品棚に圧力や重力を検知するセンサーが設置し、商品の増減を把握できるのです。
ちなみにマイクを設置し、商品が動く音を拾って在庫を管理する無人店舗も存在します。
需要予測を精密にできる
無人店舗では、より精密な需要予測を実施できます。カメラに内蔵されたAIなどで、来店者数や年齢層など、さまざまな情報を獲得することができるのです。
そうした購買データを元に、何の商品がどのくらい売れるのかをAIが学ぶため、より正確な需要を予測できるようになります。
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無人店舗の代表例としては、以下3つが挙げられます。
- コンテナ型
- 最先端テクノロジー型
- スマート自動販売機型
コンテナ型
「コンテナ型」は、10数平米のガラス張りになったコンテナを無人店舗として運用するスタイルで、無人店舗の原型といわれています。
コンテナ型の無人店舗では、電子タグで商品が管理されているため、キャッシャーに入った商品を自動清算し、会計をしてくれます。
このため、人の手による会計が楽になるのが特徴です。会計が終了すれば、入り口の扉のロックが開き、退店できる仕組みになっています。
最先端テクノロジ型
最先端テクノロジー型の無人店舗では、人工知能や画像認識などの技術が取り入れられています。
より進んだ無人店舗では、圧力・重力センサーも利用しているため、顧客が商品を手に持っているのか、棚に返したのかなどを把握することができます。
スマート自動販売機型
スマート自販機は今まで紹介したものとは少し違った種類ですが、無人店舗として扱われることがあります。
従来型の自動販売機には、残りの本数などは人間の目で見る必要があり、機会損失の可能性も少なくありませんでした。
一方で、現在広がっているスマート販売機では、リアルタイムで在庫状況を確認し、多言語にも対応。無人店舗と変わらない機能を持っている自動販売機が今まさに開発をされています。
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無人店舗のメリット
無人店舗には、その特性から顧客とお店にさまざまなメリットをもたらします。
- 待ち時間が激減する
- 人件費が削減される
- 機会損失コストを削減する
それぞれについて詳しく解説します。
【顧客】待ち時間が激減する
無人店舗は顧客に対して、「待ち時間が激減する」というメリットをもたらします。
有人店舗の場合、レジを待つ時間が顧客のデメリットでした。しかし無人店舗では、レジに並ぶ必要がないケースがあります。
例えば、富士通の提供する社員向けコンビニ「Bee There Go」は、AIカメラやIOTなどを活用し、レジに通さずに持ち帰るだけで商品の決済が行われる仕組みを活用しています。
好きな商品をピックアップして退店した後に、専用のアプリに購入した商品の領収書が届くため、顧客が「待つ」という時間を削減できる仕組みが整っています。
【お店】人件費の削減
お店の視点に立てば、無人店舗によって人件費を削減するメリットが見えてきます。
無人店舗のスーパーマーケットは、レジ担当者を常駐させる必要はありません。
そのうえ新しいテクノロジーによって在庫管理や陳列なども自動化でき、大幅に人件費を削減できる可能性があります。
また、現在は少子高齢化などにより、働き手が足りないというコンビニも多くありますが、無人店舗を活用することでスタッフ不足の問題を解消できるかもしれません。
【お店】機会損失コストの削減
無人店舗には「機会損失コストの削減」というメリットもあります。
人工知能により来店者の行動傾向をデータとして収集することが可能なので、そのデータに基づいて「ピークタイム」や「条件下ごとの商品の増減」、「売れ筋の商品」といった部分も予測できます。
つまりデータに基づいて適切な仕入れや在庫管理が可能となり「必要なときに、必要なものを適切な個数」で用意できます。
上記より、最も大きな機会損失、在庫切れなどを避けることができます。
無人店舗のデメリット
一方で無人店舗には、無視できないデメリットもあります。
特に以下のようなデメリットについては注意が必要です。
- キャッシュレス化は必須
- 初期コストがかかる
- オペレーションの仕組み化必要
【顧客】キャッシュレス化は必須
無人店舗の多くは、キャッシュレス決済を導入しているため、顧客もキャッシュレスに対応しなければならないのがデメリットです。
特にスマートフォンの決済では、電池が切れてしまえば決済することができません。
急遽買わなければならないものができた際に、「現金しか手元にない」という事態が発生すれば大きなストレスになるでしょう。
【お店】初期コストがかかる
無人店舗を開設するには、初期コストがかかります。例えば、以下のような設備投資が必要になります。
- 人工知能が搭載されたカメラ
- 圧力・重力センサー
- 顔認証機能
- キャッシュレス決済機
- 認証ゲート
上記には高額の初期コストがかかるため、投資を回収するための期間が長引き可能性も高く、採算を考えると「割りに合わない」ケースは散見されます。
【お店】オペレーションの仕組化が必要
- 在庫管理はどうするのか
- 緊急時は誰が対応するのか
- 店舗に何人の人員を待機させるか
- 苦情が出た際は誰が対応するのか
無人店舗へと変わることで、今までとは全く異なるオペレーションを組む必要があるのが無人店舗です。
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無人店舗の事例として、下記3つをご紹介します。
DIME LOUNGE STORE
DIME LOUNGE STOREは株式会社セキュアが主体となって運営している無人店舗です。同店では、DIMEのオリジナルグッズを販売しています。
DIME LOUNGE STOREには顔認証で入店でき、商品付近に備え付けられたタッチディスプレイでは、商品情報を確認することができます。
商品を持った状態で退店者用ゲートをくぐると、購入画面が表示・購入できる仕組みになっています。
同店はカメラとセンサーにより監視されており、万引きなどの犯罪にも対策されています。
ハコジム
新型コロナウイルス騒動により、通常のトレーニングジムは利用しづらくなりました。そうした背景から、個室トレーニングジム「ハコジム」が注目されています。
入り口にはICカードの読み取り機があり、対人での受付はありません。ジム自体が無店舗になっているのです。
トレーニングルーム内には大きなデジタルサイネージがあり、そこにはパーソナルトレーナーの姿が表示されます。それをみながら筋肉トレーニングができるため、非接触の状態で、パーソナルトレーナーの指導やアドバイスを受けることが可能です。
KINOKUNIYA Sutto
「紀ノ國屋」は、無人店舗のスーパーマケット「KINOKUNIYA Sutto」を運営しています。
KINOKUNIYA Suttoでは、商品を手に取って状態で出口に近づくと、設置されているタッチパネルに決済内容が表示されます。
そして決済が完了すれば、退店できる仕組みです。
対応はキャッシュレス決済のみですので、決済には交通系電子マネーかクレジットカードのみを利用できます。
また同店には、「カゴの中の商品総額」をカメラやセンサーの分析による自動計算など、高度なテクノロジーが導入されています。
無人店舗の課題と注意点
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専門家
最新テクノロジーの発達によって拡大を続ける無人店舗ですが、まだまだ課題は残っています。以下3つの課題を解説します。
- 業種によっては規制がある
- 顧客の理解も必要
- 必ずしも便利とは限らない
それぞれについてわかりやすく解説します。
業種によっては規制がある
無人店舗は、すべての業種で自由に導入できるものではありません。
業種によっては法律で無人店舗化できないこともあります。
例えば、日本において現在のところ「特別養護老人ホーム」は無人店舗にはできません。なぜなら法律で、特別養護老人ホームにはスタッフの常駐が義務付けられているからです。
もちろん法律面ではなく、サービス内容から無人店舗化が望ましくないケースも多々あります。
無人店舗の普及においては、業種ごとの法緩和が必要です。一方で「スタッフの常駐が望ましい業種は無人店舗化を認めない」という線引きも重要になります。
参考:常駐規制又は専任規制に該当しない必置規制の公表 | 厚生労働省
顧客の理解も必要
無人店舗の運営については、顧客が最新設備に対して理解し順応できるかがポイントです。
無人店舗においては、その簡便さと防犯の観点からキャッシュレス決済のみを導入するケースがほとんどです。
また、無人店舗によっては専用のアプリのインストールも必要です。
しかしインストール方法がわからないという声に応えるため、無人店舗なのにスタッフを配置している場合もあります。これでは、無人の意味がなくなってしまいます。
必ずしも便利とは限らない
無人店舗は、最新テクノロジーの導入で利便性が向上している部分が目立ちます。しかし、かならずしも便利になるとは限りません。
例えば、顧客の立場から見れば無人店舗の利用には以下のような課題があります。
- キャッシュレス決済のインストールやチャージ
- スマートフォンの用意
- 商品について質問できず自己判断する
顧客のなかには、手間が減ることが便利と考える人もいれば、いつでも何かを聞けるから高くても商品を購入する人がいます。
自社にとっての顧客はどちらなのかを考えることが、無人店舗導入の可否を検討する重要な判断根拠となるでしょう。
まとめ
近年、注目を集めている無人店舗。最新テクノロジーを用いて、無人でも顧客対応できる仕組みが出来つつあります。
さらに、重量計測による在庫管理や人工知能による顧客行動の把握や予測など、有人店舗には出来ないことも実現されています。
ただし、全ての人々にとって果たして無人店舗が便利なのかは、顧客の属性によって異なります。
したがって、自社での導入を検討する際は、他がどうしているのかではなく、顧客が何を求めているのかという視点で見ることで、最善の方法が見つかるかもしれません。
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