近年「インバウンドマーケティング」という言葉をビジネスの世界でよく見かけるようになりました。
本記事では、そんなインバウンドマーケティングに関する基本的な知識から、注目される背景、メリットや具体的な方法を解説していきます。
目次
インバウンドマーケティングとは?
「インバウンドマーケティング(Inbound Marketing)」とは、価値あるコンテンツをつくって公開することで、自社が提供する商品やサービスの顧客となりうる「見込み顧客」や「潜在顧客」に見つけてもらい、その後育成し、最終的に顧客にしていくマーケティング手法です。
インバウンドマーケティングで使われる「価値あるコンテンツ」には以下のようなものが挙げられます。
- ブログ
- ウェブサイト
- eBook
- 動画
- ソーシャルメディア
- ホワイトペーパー
- ニュースリリース
言い換えるなら「消費者の興味関心、または課題に寄り添って関係を深めていく、顧客中心のマーケティング」となります。
具体的に行うことは、下記のような施策です。
- 検索エンジンの上位表示を狙ってSEOをする
- SNSによるコンテンツの共有・拡散
- 動画コンテンツを作成し公開する
上記のような施策を実施することで、潜在顧客に自社が提供する商品やサービスに気づいてもらい、購買意欲を高めていくのです。
インバウンドマーケティングが誕生した背景
インバウンドマーケティングは、アメリカのHubSpot社を創業したブライアン・ハリガン氏と、ダーメッシュ・シャア氏が提唱しました。
以前はテレビCMやラジオCM、新聞広告などのように、企業が一方的にアピールするマスマーケティングなどの「アウトバウンドマーケティング」が主流でした。
そこから、消費者の興味や課題を中心とした「インバウンドマーケティング」が誕生したのです。
HubSpot社はインバウンドマーケティングツールやサービスを提供する会社です。
その創業者と有名なマーケティング戦略家であるデイビット・マーマン・スコット氏が出版した書籍が日本でも発売されたことで、日本でもインバウンドマーケティングの概念が広く知られるようになりました。
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近年、インバウンドマーケティングは重視されるようになり、注力する企業が増えました。
その理由は、従来のアウトバウンドマーケティングの効果が薄れてきたからです。
アウトバウンドマーケティングが効果を発揮しなくなったのには、下記のような変化が起こったことが要因です。
- インタラプション・マーケティングが避けられるようになった
- 誰でも好きな情報にアクセスできるようになった
- インターネット・スマホの普及で行動様式が変わった
それでは1つずつ解説していきます。
インタラプション・マーケティングが避けられるようになった
あなたは、YouTubeで動画を見ているときやネットサーフィンをしている際に広告が差し込まれてイライラした経験はないでしょうか?
このようにコンテンツの途中に広告を差し込むマーケティングを「インタラプション・マーケティング」といいます。インタラプション(Interruption)は「妨害」や「中断」といった意味があります。
2009年にニールセンが行った25,000人のネットユーザーを対象にした調査では、およそ90%が「個人的な知り合いからのおすすめ」を信用している一方で、インタラプション・マーケティングに用いられるインターネット広告やテレビCMなどへの信用度は低い結果となりました。
つまり、興味のない広告を強制的に見せられるのは不愉快であるため、反感を買い悪印象を抱く可能性が高まるのです。
(参考:世界で最も信頼される広告形態は「知り合いからのおすすめ」「ネットのクチコミ」【ニールセン調査】)
誰でも好きな情報にアクセスできるようになった
従来は、主な情報源はテレビや新聞、雑誌、ラジオしかなかったため、消費者はこれらのマスメディアからの情報を頼りにしていました。
その結果、テレビCMや新聞広告、雑誌広告、ラジオCMなどのマスマーケティングを行うことで、一定の成果をあげることができていたのです。
しかし、スマートフォンやインターネットが広く普及したことで、状況が大きく変化します。誰もが欲しい情報にアクセスできるようになった結果、自分にとって必要ない情報や興味・関心のない情報に対して多くの人が見向きもしなくなったのです。
これにより、企業が発信する情報が消費者に伝わらなくなりました。
インターネット・スマホの普及で行動様式が変わった
インターネットやスマホの普及は、私たちの行動様式も大きく変えました。
「テレビCMでやっていたから」という理由だけで購入する消費者が減り、逆にレビューや口コミ、インフルエンサーが発信する情報を参考に、意思決定する消費者が増えたのです。
このように、インターネットやスマホによって消費者の行動様式が変化したため、消費者が自ら関心や好意をもって情報にアクセスする際にアプローチするインバウンドマーケティングが効果をあげるようになりました。
このような行動様式の変化は、一般的な消費者だけではなく法人間取引においても生じています。
トライベック・ブランド戦略研究所による調査では、業務における製品またはサービスに関する情報源として最も多く選ばれているのは、企業のウェブサイト(51.3%)でした。
この数字は、2番目に参照されている「テレビ・ラジオ」の38%を大幅に上回っており、「営業員・技術員の説明」ですら31.5%しかありません。ここからも分かるように、多くの企業が自らウェブサイトを参考にして探す時代になっているのです。
(参考:BtoBサイト調査 2016│トライベック・ブランド戦略研究所)
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上記でインバウンドマーケティングの重要性が高まる理由がわかりましたが、実際にはどのような効果やメリットがあるのでしょうか? ここでは下記の4点を確認していきましょう。
- 消費者と良好な関係を築ける
- 費用対効果が高い
- コンテンツの資産化が可能
- 運用データの分析ができる
それでは1つずつ解説していきます。
消費者と良好な関係を築ける
現代はなんらかの不祥事や問題を起こすと、すぐに伝播して企業の評判や信用が失墜してしまいます。これを可能にするのが一人ひとりが持つスマホとソーシャルメディアです。
このような状況下では、企業は消費者に嫌われるとすぐにその評判が広まり、根も葉もない悪質な噂まで流れるようになるでしょう。
つまり、ダイレクトメールやポスティングなど従来のアウトバウンドマーケティングといった消費者の反感を買いやすい広告・マーケティング手法を行っていると、企業に対してマイナスの感情を抱かれやすく、さらにそれが広がりやすくなっているのです。
そこで効果的な方法が、インバウンドマーケティングです。この方法なら、消費者が知りたいことや興味があること、抱えている課題によりそって情報発信やコンテンツの作成を行っていくため、消費者と良好な関係を築けます。
費用対効果が高い
企業側が積極的に顧客に働きかけるアウトバウンドマーケティングでは、テレビCMや新聞広告、ウェブサイトへの出稿などを行いますが、これらは総じてコストが高い割にそれに見合う成果を必ずしも得られるわけではありません。
しかし一方で、インバウンドマーケティングであれば、自社が所有する媒体で情報発信やコンテンツの公開をするだけなので、低コストで済みます。
さらに、それらを見に来てくれるのはすでに自社製品やサービスに興味がある潜在顧客であるため、費用対効果も上がります。
コンテンツの資産化が可能
こつこつとコンテンツの作成と公開を繰り返していけば、いずれ資産となりうる点もメリットです。
例えば、SNS広告や検索エンジンに連動して表示されるリスティング広告の利用は潜在顧客とタッチポイントをつくることができますが、広告を出さなくなればそれと同時にタッチポイントも消失するでしょう。
それとは逆に、消費者にとって有益なコンテンツ・関心のある情報を継続的に公開しておけば、検索やシェアなどを通して消費者の側から寄ってくるようになります。つまり、コンテンツが資産となるのです。
運用データの分析ができる
従来のテレビやラジオCM、新聞広告の場合、広告を出したとしてもどのような属性の人が広告を見て、その後、どれくらいの割合の人がアクションを起こしたのか、ほぼわかりませんでした。
これにより、どの広告が商品やサービスの売り上げとどのように関係し、どのように貢献しているのかが明確にならなかったのです。
しかし、インバウンドマーケティングはウェブサイトやSNS、ブログなどのインターネット上のアプローチができるため、広告に関するデータの収集が可能になりました。
どのような人がどのコンテンツに触れ、どのようなアクションを起こしたのかを明確にできるのです。
このデータを分析して顧客の行動様式を予測すれば、最適なマーケティングの策定が可能になり、PDCAを回して改善し続けることができます。
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実際にインバウンドマーケティングを行うには、まず下記の4つのステップに分けることが重要です。
- ATTRACT:興味・関心を得る
- CONVERT:見込み顧客にする
- CLOSE:成約し、顧客にする
- DELIGHT:ファン・リピーターにする
ここでカギとなるのは、最終的な目標が商品やサービスを売ることではない点にあります。つまり、売ったあとに満足してもらい、ファンやリピーターになってもらうことが大切なのです。
それでは1つずつ解説していきます。
①ATTRACT:興味・関心を得る
まず初めにやるべきことは、興味や関心を得ることです。どれだけ品質の高い商品やサービスであろうと、それを欲しがる人に知られていなければ売れることはありません。
具体的には、可能な限り多くの潜在顧客が関心を持ってくれそうなコンテンツをつくることから始めます。
ただおもしろいコンテンツをつくろうとしても、それが潜在顧客にとって刺さる内容でなければ、関心をもってもらうことはできないでしょう。
したがって、インバウンドマーケティングをはじめるにおいて重要な点は「ペルソナ」です。ターゲットがどのような人物なのかを明確にしなければ、効果的な施策ができません。
②CONVERT:見込み顧客にする
つくったコンテンツによって潜在顧客を集めることができれば、次のステップに進みましょう。このステップでは潜在顧客を見込み顧客にするために、潜在顧客に関する下記の情報を集めます。
- 名前
- 企業名
- 電話番号
- メールアドレス
ホワイトペーパーやオンラインセミナーといったような、潜在顧客にとって価値あるコンテンツを提供する代わりに上記の情報を登録してもらい、より効果的なアプローチをしていきます。
③CLOSE:成約し、顧客にする
そして、いよいよ見込み顧客を顧客にするステップです。
このステップでは、見込み顧客はすでに購入意欲が高まっており、競合他社と比べて検討し始めている段階となります。つまり、自社製品やサービスをアピールするには絶好のチャンスです。
しかし、そのタイミングは慎重に選ぶ必要があります。なぜなら、育成ができていない段階で成約をせまると逃げられる可能性があるからです。
したがって、適切なタイミングで適切なコンテンツの提供を続けて、自社を選ぶ根拠を与えていきましょう。
④DELIGHT:ファン・リピーターにする
繰り返しになりますが、インバウンドマーケティングは成約が最終目標ではありません。その後のアフターフォローをすることで顧客の満足度を高め、ファンやリピーターにすることがゴールです。
顧客満足度が高まれば、顧客自身が周囲に対して良い評判を広げてくれるため、新たな潜在顧客の獲得につながります。
また、アップセルやクロスセルも可能になるでしょう。
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「まずはコンテンツが必要だ!」と考えて、闇雲に作り続けても失敗してしまうでしょう。
そこで、ここでは失敗しないためのポイントを解説していきます。
ペルソナの設定が何より重要
上記でも軽く触れましたが、インバウンドマーケティングにおいて最も重要なことは、ペルソナです。
ペルソナとは、自社製品やサービスを購入する典型的なユーザー像を指しており、これが不明瞭なままコンテンツをつくっても空回りしてしまいます。
年齢や性別などからどういった嗜好なのかなど、細かく設定していきましょう。
顧客が求めるコンテンツをつくる
企業が情報発信やコンテンツを作成する際にやりがちな失敗が、自分が作りたいものをつくったり、伝えたい情報を発信してしまうことです。
しかし、大切なことは顧客が求めるコンテンツや情報を発信することであるため、注意しなければなりません。
あくまで顧客の興味関心をスタートに、その先に自社の製品やサービスがあると考えてコンテンツ作りを行いましょう。
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インバウンドマーケティングは、テレビや新聞などのマスメディアを用いたアウトバウンドマーケティングと対をなすもので、誰でも自分の意志で情報を探し、アクセスできる今の時代に即したマーケティング方法と言えます。
アウトバウンドマーケティングに比べて費用対効果も期待でき、また低コストで始められるのもメリットです。
自社の製品やサービスがどんな人に刺さるのか?またそういった潜在顧客はどんな人なのか?といった分析を踏まえ、効果的な情報発信に繋げていきましょう。
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