良い組織を考えるための組織論とは?組織の要件から最近注目のティール組織まで解説

今、あらゆる組織は、環境の激しい変化に対応しようと組織開発に取り組んでいます。その中では、近年注目されている「ティール組織」や「組織論」に関して取り組んでいくシーンもあるかもしれません。

しかし、組織の運営や経営において、まず考えるべきことは「組織とは何か?」です。組織について最も基本的なことを理解していないと、良い組織がどのようなものか考えることはできません。

したがって本記事では、良い組織にするために必要な、組織の基本的な知識と、社会科学や経営学などの学問における組織論、そして近年注目を集めているティール組織について解説していきます。

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「良い組織とは何か?」を考える前に

企業や組織が不調に陥った際、他に原因がある場合でも、すぐに流行りの新しい組織論に頼ったり、「組織のカタチ」を変えて乗り切ろうとするケースが少なくありません。もちろん、組織論や組織構造を変えることが効果的なパターンもあります。

しかし、あくまでもそれらは「方法」であり、その方法を使うことが目的化してはいないか、注意しなければなりません。

例えば、身体の調子が悪くなって病院に行ったとします。そこで診てくれたお医者さんが「最近、流行りの治療法があるんですけど、それを試してみましょうか!」と言ってきたら、どう感じるでしょうか? 当然、このような医者は信用できませんよね。

この例で言うならば、本来は身体の不調がどのような原因で生じているのかを探って、原因を解消するための治療を行うべきで、これが初歩的な対処法となります。さらに一流の医師ならば、「なぜその不調が生じたのか、本人の習慣のせいなのか、仕事のせいなのか、または家族に同じ症状がでる人はいないか」といったことまで探り、長期的な目で治療を行っていくでしょう。

つまり、身体の不調を治したいのであれば、医師は「人の身体はどうのように働いているのか?」や「各臓器の関わりや機能はどうなっているのか?」、「人の身体の理想の状態はどうあるべきか?」といったことを把握して、解説できなければなりません。

組織の話に置き換えると、組織の課題を解決して、より良い組織にしたいのであれば、この医師のように考える必要があります。つまり「組織とはどのように働いているのか?」や「組織の各機関はどうなっている? 関わりや機能に必要なものは何か?」といった、組織に関わる原理原則を理解していなければならないでしょう。

日本企業は「組織論」に頼りすぎ?

日本企業は課題を解決したり、経営難を乗り切ろうとする際に、組織改革や組織再編を多用する節があります。つまり、本質的なことに取り組んでおらず、表面的に「組織のカタチ」を変えたに過ぎないケースが多いのです。その結果、組織の構造や部署名が変わっただけで、実態として何も変わらずに終わってしまいます。

つまり、組織の課題に直面した時に、組織の構造を変えることで何かをやりとげ、達成した気持ちになっているだけと言えます。先程も言いましたが、組織を変えることは手段にすぎず、重要なことはパフォーマンスの向上や課題の解決といった目的なのです。

むしろ、組織の構造に手を加えずにその目的が達成されるのであれば、組織改革の必要はないでしょう。また、日本企業もグローバル企業も、基本的な組織構造は「事業部制」をとっているため、海外との大きな違いはありません。しかし、なぜか日本のビジネスにおいては組織論が重要視されているのです。

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組織とは何か? 組織として成立するために必要な3つの要素

組織をより良いものにするためには、まず組織について理解している必要があります。

つまり、「組織とは何か?」という問に対する基本的な答えである、「組織の成立要件」を認識しておくことが重要です。ここではチェスター・バーナード氏が1938年に提唱した「組織の3要素」を解説していきます。

アメリカの電話会社の社長であり、経営学者でもあるチェスター・バーナード氏は組織をシステムとして捉えて下記のように定義しました。

意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム

チェスター・バーナード

彼がこの理論を提唱した1938年当時は、人間を機械のように扱っていた時代でしたが、彼は「自由な意思をもち、行動する存在」と捉えました。そのうえで、彼は下記の3つがあることで、組織がただの集団とは異なる「組織」として成り立つと考えました。

  • 組織の目的(共通の目的があること)
  • 協働の意欲(メンバー同士に協力する意思があること)
  • 情報の共有(問題なくコミュニケーションがとれること)

それでは1つずつ解説していきます。

組織の目的(共通の目的があること)

組織が組織として成立するために、最も欠かせないことが「共通の目的があること」です。組織を構成するメンバー全員に共通する目的がなければ、それは組織ではなく、ただの人の集まりであり「集団」と呼ぶべきでしょう。

この「目的」には下記の2種類があるとしています。

  • 協力して成し遂げるべき組織としての目的(協働的側面)
  • 組織のメンバー一人ひとりがもつ働く目的(主観的側面)

またこの理論を生みの親であるバーナード氏は、組織に目的がなければ存在意義もないと語っているほど、共通の目的を重要視しています。共通の目的は現代の企業でいうところの「ミッション」や「企業理念」「ビジョン」です。

組織において、ビジョンや企業理念は単なるスローガンのようになっていて形骸化していることが少なくありません。しかし、これらが従業員に浸透し、機能していることは、強い組織として欠かせない条件です。

協働の意欲(メンバー同士に協力する意思があること)

「協働の意欲」は、組織のメンバー同士に協力する意思があることを指しています。また、仕事に対するモチベーションや組織への貢献意欲なども該当します。言い換えるならば「チームワーク」や「エンゲージメント」となるでしょう。

一人でできる仕事には限界がありますが、組織のメンバーと協力することで大きな仕事を成し遂げることができます。しかし、自分が働く会社に対して従業員が貢献する意欲がない場合や、従業員同士が協力しようとしない場合は、組織として成り立ちなりません。

従業員に対して協働や貢献する意欲を持ってもらうためには、それ相応の「報酬」を与える必要があります。報酬には下記の2種類があり、どちらも提供できる組織が強い組織と言えるでしょう。

  • 給与や賞与、役職、表彰といった「物質的要素」
  • 信頼関係、自己肯定感、感謝といった「精神的要素」

組織に対して貢献することで、上記のようなリターンがあると従業員が認識できてこそ、協働や貢献の意欲が引き出せるというものです。この信頼関係があってこそ組織は強くなり、貢献に対して報酬がもらえていると感じやすい組織ほど、長い間存続するといわれています。

情報の共有(問題なくコミュニケーションがとれること)

そして組織が成立する最後の要素が、問題なくコミュニケーションがとれることです。

仮に、共通の目的と、協働する意欲があったとしても、円滑なコミュニケーションができなければ組織とは言えません。

「阿吽の呼吸のように、何も言わなくても伝わるような関係なら良いのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、そのような以心伝心なコミュニケーションは効率がいい半面、それが常態化してしまうと時に大きな失敗につながることもあります。

組織における円滑なコミュニケーションは、身体に例えると健康な神経のようなものです。身体に神経がなければ、身体のどこかで異常が起きても痛みが脳に届かないため、異常に気づくことができません。これと同じように、組織でも滞りのないコミュニケーションが不可欠で、もしなければ気づかぬうちに組織がボロボロになってしまうでしょう。

また、円滑なコミュニケーションがなければ組織の目的を従業員と共有することもできませんし、組織としてメンバーと協働するためにも意思疎通が欠かせません。

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別の角度から見た組織論

組織を成立させる3つの要素を見てきましたが、組織は様々な側面から研究されており、別の学問からみた組織というものを知っておくことも、とても参考になります。

ここでは社会科学と経営学という2つの側面からみた組織を解説していきます。

社会科学における組織とは

社会科学とは、私たちが普段生活している「社会」について、科学的に分析する学問です。

人は集団生活をしているため、そのなかで生じる集団同士の問題や障害を解決しつつ、合理的な社会で集団として活動する過程でできたのが組織だといえます。また、社会において組織とは、人体における臓器のようなもので、それぞれ固有の役割や機能をもっていると考えられています。

社会科学では、組織は人の能力を高めるものとしています。つまり、人は一人では能力に限界がありますが、組織として集団で活動することによって能力やスキルを高められる、ということです。

社会科学における2種類の「組織」

社会科学では組織を下記の2種類に分けて考えています。

  • フォーマルグループ(公式組織)
  • インフォーマルグループ(非公式組織)

これら2種類の組織がどのように異なるのかを理解しておけば、組織を運営する人にとっては有益となるでしょう。

一般的に組織の構造には「社長」や「課長」といった階層があり、その階層に沿った権限の関係もあります。こういった組織の構造と権限を組織図として示したものが「フォーマルグループ」です。つまり、組織のトップに経営層が置かれ、その下に「営業」や「マーケティング」といった部署にわかれている組織は「フォーマルグループ」となります。

一方で、「インフォーマルグループ」とは公式組織の中にある、個人的な人と人との関わり合いを示しています。例えば、「いつも一緒に話しているグループ」や「いつも一緒に食事をしている仲間」、「飲み会を開いているメンバー」などが該当します。

このような個人的に関わりのあるメンバーは、価値観や考え方に共通点があったり似通っているため、仕事の進め方も近いものがあり、自然に仲が良くなってインフォーマルグループとなるのです。インフォーマルグループの間柄では円滑なコミュニケーションができたり、仲間の相談にのるといったことも行われ、メンタルヘルス対策としても効果があります。

このように、インフォーマルグループを活用することで業務効率化や、従業員の満足度を高めることができるため、フォーマルグループとの違いを把握し、どちらもマネジメントしていくことで効果的な組織運営ができるでしょう。

経営学における組織とは

経営学における組織も重要な意味を持っています。なぜなら、経営学は組織をいかに効率的・効果的に運営するかを研究する学問であるため、企業における組織とは切っても切り離せないからです。実際に、上記で解説してバーナード氏の「組織が成立する3つの要素」は経営学で頻繁にでてくる理論です。

経営学では、「マクロ組織論」と「ミクロ組織論」の2つに大きく別れています。「マクロ組織論」は企業や組織が目的を達成するために、どのように組織構造や機能を設計するのか、その理論などを研究するもので、対して「ミクロ組織論」は個人の動機づけや分析する対象を小集団とする研究を指します。

経営学では実際に存在する企業の事例をもとに学んでいくことが多いため、経営学において組織とはどのように分析されているのかを知っておけば、組織運営に大いに役立つでしょう。

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近年、注目を集めている組織論「ティール組織」とは

組織開発はどのような組織においても重要な課題となっており、現在までに数々の組織論が誕生してきました。そのなかで2018年以降に注目されているのが「ティール組織」です。

「名前だけは知ってるけど、詳しくはわからない」という人も多いかと思います。ここではティール組織について簡単に解説してきます。

ティール組織とはどのような組織か

ティール組織とは、上司や管理者が部下を管理しなくても、自分自身で制度を把握し試行錯誤をして、意思決定をしていく組織のことです。一人ひとりの従業員に意思決定権があるため、従来のような上司の指示で動く上下関係の構造が必要なくなることが特徴となります。

上司の指示を仰ぐのではなく、ティール組織では従業員が自ら意思決定をして動くようになるため、旧来型組織とはまるで異なる「組織のかたち」なのです。

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まとめ

組織を運営する者にとって、どうすればより良い組織にできるのか考えることは重要です。その際には、数ある組織論にすぐに頼るのではなく、まずは「組織とは何か?」を理解することが必須です。

人体の構造や各臓器の機能、役割を理解し、どうあるべきかを常に考えている医師が優秀であるように、組織の運営をする者も同様に、組織がどのようなものかを深く理解しておくべきでしょう。

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