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「コングロマリット」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?言葉そのものは抽象的な印象が強く、意味がわかりにくいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
コングロマリットとは、直接的な関連性を持たない複数の事業が集まって成り立つ企業を意味します。単なる巨大企業ではなく、多様な事業・業種が集合している点が特徴です。
本記事ではそんなコングロマリットの意味、効果とメリットをわかりやすく解説します。
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目次
コングロマリットとは?
経営者
はじめにコングロマリットの概要を解説します。
以下3つの切り口から、わかりやすく見ていきましょう。
- コングロマリットの意味
- コングロマリットは異業種の統合のこと
- なぜ今コングロマリットが必要なのか
コングロマリットの意味
コングロマリットは英語の「Conglomerate」が語源です。これには「集団になった、密集的な」などの意味があり、ラテン語で「丸く固まる」を意味する言葉が由来となっています。
専門家
コングロマリットは異業種の統合のこと
コングロマリットは、異業種の統合によって成り立つ企業のことです。
直接的な関連性を持たない業種同士の場合はコングロマリットと言えるわけですが、必ずしもそれぞれに関連性が全くないわけではありません。
例えば、音楽・教育・出版などの事業を扱う企業がコングロマリットの例として挙げられます。これは異業種ではありますがどれも文化に関わる面があると言えるでしょう。
また一方で、業態は異なるものの業種自体は近いケースも存在します。例えば保険業と証券業という関連性の近い業種同士で成り立つ場合も、一種のコングロマリットに該当します。
なぜ今コングロマリットが必要なのか
コングロマリットの必要性は、日本のマザーマーケット(母国市場)の大きさに関係します。
日本は国土が小さく、世界的に見るとマザーマーケットは中規模程度です。マザーマーケットが大きい国に比ると売上高の限界があり、海外進出を打ち出すだけの利益を出すことができない企業もあります。そのため、コングロマリットで複数事業を行うことで全体としての売上高の拡大を目指すのです。
また、コングロマリットを形成することで経営のリスクヘッジになることもあります。例えば、飲食事業しか持っていない企業はコロナ下でかなり苦しみましたが、別事業を持つことでその損失をカバーできる可能性があります。
経営者
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コングロマリットには2つの効果がある
コングロマリットによって企業価値は上昇もしくは下落します。このような効果・現象を表現する用語は以下2つです。
- コングロマリット・プレミアム
- コングロマリット・ディスカウント
それぞれどのような効果か解説します。
専門家
コングロマリット・プレミアム
コングロマリット・プレミアムとは、コングロマリットによって企業価値が上がる効果を意味します。
他業種や事業の取得によってシナジー効果が生まれ、結果として企業価値が向上するという、まさにコングロマリットの目的を実現できた状態です。
コングロマリット・プレミアムは、株式価値といった市場評価の向上以外を指すケースもあります。以下のような効果もコングロマリット・プレミアムです。
- より高度・優秀な人材の確保
- 経営資源の確保
- 売上・利益の広報
事業が単体で存在していた場合の合計よりも価値が大きい状態を指します。
コングロマリット・ディスカウント
コングロマリット・ディスカウントとは、コングロマリットによって株価が低下してしまうという現象です。コングロマリット・プレミアムの真逆となります。
コングロマリット・ディスカウントが発生してしまう要因として以下の例が挙げられます。
- 事業間でシナジー効果が生まれなかった
- 好調な状態の事業が不振な事業に引っ張られてしまう
- これまでリスク投資のために様々な業種・事業へ投資していた投資家の興味から外れてしまう
事業が単体で存在していた場合の価値を合計した結果より、コングロマリット後の価値が小さくなってしまう状態を意味します。
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経営者
「コングロマリット」の用語の派生で、「コングロマリット型」というものがあります。これはM&Aにおける買収方法の1つです。M&Aの買収方法は、コングロマリット型を含む以下の3つに分けることができます。
- 水平統合型
- 垂直型統合
- 異業種統合(コングロマリット型)
それぞれの特徴について解説します。
水平統合型
水平統合型とは同業種・同業態の企業が統合するM&Aです。
水平統合型のM&Aは市場における事業規模の拡大などを目的として実施されるケースが多いです。
他にも以下のような効果が期待できます。
- 事業にかかるコストの削減
- 両社の強みを活かした事業発展および競争力向上
水平統合型で当事者となる企業は同業種・同業態なため、統合することでコストの削減が可能になります。
M&Aの手法の中で最もわかりやすいのが水平統合型といえるでしょう。
垂直型統合
垂直型統合とは川上と川下という立場関係の企業が統合するM&Aを意味します。
例えばある商品が消費者の元へたどり着くまでには、製造・卸売・小売の立場にある企業を通るのが一般的です。この過程にある企業同士が統合した場合、垂直型統合となります。
垂直型統合は川上から川下までの体制を一貫させるために実施されるケースが多いです。
以下のような効果が得られます。
- 別の企業を通さなくなるため手数料などのコスト削減
- 消費者へ届くまでの流れを具体的に把握できる
規模の拡大というよりは、より深い事業展開が可能となるのが主なメリット・目的となります。
異業種統合:コングロマリット型
異業種統合はコングロマリット型とも呼ばれているM&A手法です。
これまで紹介した水平型・垂直型は、いずれも事業において関連性がありました。
しかしコングロマリットは、直接的な関連のない企業同士の統合を意味します。
水平統合型のような、足し算のイメージに近い市場拡大効果は薄く、川上川下という関係性もないため、垂直型統合のように深み実現の効果もありません。
コングロマリットは一般的に多くみられるM&Aとは異なる性質・効果を持ちます。
専門家
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コングロマリットは水平型・垂直型いずれのM&A方法とも違う性質を持ちます。コングロマリットのメリットは以下3点です。
- シナジー効果が生まれる可能性がある
- 敵対的買収がされにくくなる
- リスクヘッジが取れるようになる
それぞれの内容について解説します。
シナジー効果が生まれる可能性がある
コングロマリットの大きなメリットは、異業種・異業態の統合によるシナジー効果が生まれる可能性があることです。
シナジー効果とは相乗効果を意味し、単純な足し算ではない結果が起こり得ます。
関連性の強い要素同士が合わさる場合は価値と価値同士を合わせた足し算的な結果となるケースが多いですが、関連性のない異なる要素同士の場合、思いもよらない相互作用が起きる可能性があります。単体では実現できない大きな効果は、コングロマリットだからこそ得られるメリットです。
敵対的買収がされにくくなる
コングロマリットには敵対的買収がされにくくなるというメリットもあります。
敵対的買収とは、買収される側にある企業や投資家の合意を得ず、株式の大部分を買い占める行為をいいます。発行済株式の50%を超える部分を保有し、実質的な支配権を得るというM&A戦略です。なお合意を得た上で実施する場合、友好的買収と呼ばれます。
専門家
リスクヘッジが取れるようになる
コングロマリットの実施によって、リスクヘッジが取れるようになります。
リスクヘッジの方法として事業の多角化が挙げられます。しかしこれまで未参入であった事業をいきなり始めるのは、それ自体がリスクの高い行為です。
コングロマリットを実行すれば、すでに実績のある事業をそのまま取り込めます。最低限のリスクやコストのみで事業の多角化が可能です。
市場は予測できない様々な変化を遂げています。そのような変化への対策として、多角化によるリスクヘッジは重要です。
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コングロマリットは大きなメリットが期待できる一方で、無視できないデメリットも存在します。今回紹介するデメリットは以下の3つです。
- シナジー効果が生まれないケースがある
- 外から見て中がわかりづらくなる
- コーポレートガバナンスがはかりづらくなる
それぞれ具体的に解説します。
シナジー効果が生まれないケースがある
コングロマリットは事業単体では実現できない、大きなシナジー効果の可能性があると紹介しました。しかし可能性という表現の通り、シナジー効果が生まれないケースもあるのです。
異なる性質を持つ要素同士が相乗効果を発揮するかは、実際に試してみないとわかりません。したがってコングロマリットの実施前に、シナジー効果の可能性を予測するのは難しいと言われています。
外から見て中がわかりづらくなる
コングロマリットによって関連性の低い様々な事業が集まると、企業の仕組みや構成がわかりづらくなります。
投資先として安心か否かの判断が難しくなるため、投資家など利害関係者からの信頼低下のリスクは高いです。
実態のわかりやすさは、信頼の獲得しやすさにつながります。しかしコングロマリットによる統合はどうしても複雑化を避けられません。
専門家
コーポレートガバナンスがはかりづらくなる
コーポレートガバナンスがはかりづらくなるのも、コングロマリットにおけるデメリットのひとつです。
コーポレートガバナンスとは企業の管理・監督を意味し、不正行為の防止や適切な活動を実現させるために行う取り組みを指します。
コングロマリット企業は、各事業間に関連性がほぼありません。
同じ企業に属しているといえ、実態としては各事業が独立している状態に近いです。
しかし、コーポレートガバナンスは企業全体で実施する行為です。コングロマリット企業は全体がまとまりにくく、コーポレートガバナンスも難しくなってしまいます。
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コングロマリットについてよりイメージするには、具体的な事例を知るのが効果的です。
以下の有名な3社は、いずれもコングロマリット企業に当てはまります。
- 楽天
- ソニー
- 日立製作所
それぞれの企業について、コングロマリットという面から掘り下げます。
楽天
楽天グループ株式会社はかつてECモールが主要事業でしたが、現在はかなり幅広い事業を展開しているコングロマリット企業です。
主な事業内容だけでも以下が挙げられます。
- 通販サイトやネットスーパーなどEC事業
- 生命保険・損害保険・ペット保険など保険業
- 銀行や証券取引といった金融業
楽天の特徴は、コングロマリットをかなりの短期間で進めた点です。
1997年に設立され、2000年の上場を機に積極的なコングロマリットM&Aを進めた結果、わずか20年程度で今のように巨大なコングロマリット企業へ成長したのです。
ソニー
ソニーグループ株式会社も日本を代表するコングロマリット企業です。
電子機器が中心ですが、他にも以下のような事業を展開しています。
- 映画や音楽などのエンターテイメント業
- 生命保険・銀行といった金融業
- 学校法人設置による教育業
飲食店や小売業さらに幅広い事業を手掛けていた過去もあります。
ソニーの売上はかつてトップの分野が7割近くを占めていましたが、現在はトップの分野で3割、続く2分野が2割を占めている状態です。
事業の幅が広がると同時に、売上高も大きく成長しています。
日立製作所
日立製作所は日本国内のコングロマリット企業のうち、成功例として挙げられることが多い企業です。
電機メーカーとして有名な日立製作所では、以下のような事業を展開しています。
- 通信処理機器や通信機器の開発業
- 電力設備および原子炉などエネルギー関連の事業
- 医療機器の製造・販売・営業といったヘルスケア事業
日立製作所はIT事業と製造業という一見関連性の低い事業を統合し、シナジー効果を発現させた実績を持ちます。
他にも様々な組み合わせでシナジー効果を生み出し、企業価値の向上を実現しました。
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ドイツ企業であるシーメンスは、これまで紹介した例とは逆で、脱コングロマリット型を進めた企業です。
電気機器の製造やシステム・ソリューション事業などを行っています。
シーメンスは発電やガスといったエナジー事業を分社化し、別の組織として自社から切り離しました。分社されたシーメンスエナジーは、2020年9月に上場しています。
コングロマリットによって解決できた難題が多くあったと明言しつつも、その上で今後は取り組む事業について焦点を絞って活動を進めると発表しました。コングロマリット化が適切かどうかは、自社の状態とその後の戦略によるといういい例です。
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コングロマリットは関連性の低い複数の事業によって企業が構成されている状態を意味します。
シナジー効果による価値向上などのメリットがある一方で、企業がまとまりにくいなどのデメリットも存在します。
コングロマリットについて正しく押さえるためには、メリット・デメリットをはじめ、偏りのない情報収集が大切です。
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