エンパワーメントとは?メリット・デメリットや実践方法、注意点などを解説

エンパワーメントとは、「人は誰しもすばらしい能力や才能を持っている」という考えをもとに、その力を開花させ最大限に発揮してもらうことを指しています。

近年ではビジネスの世界でも注目されており、マネジメントの手法や人材育成としてエンパワーメントを導入する企業が増えています。

今回は、エンパワーメントの意味やメリット・デメリット、実践方法について解説していきます。

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エンパワーメントとは?

エンパワーメント(empowerment)とは、もともとは「empower」という言葉が転じたものです。言葉の本質的な意味は「力を与える」や「権限を与える」ですが、ビジネスや教育、福祉など分野によって意味が異なります。

エンパワーメントの考え方には、「一人ひとり誰もが能力を秘めており、その能力を最大限に活かすことで組織をより活性化させ、社会を発展させていく」という前提があり、そのうえで、組織に所属する一人ひとりの潜在能力を引き出したり、自律的・自発的に行動を起こさせるという広義の意味を持っています。

単純明快に言ってしまえば、「自信や権限をもたせる」や「力をつけさせる」とも言えるでしょう。最近では日本でもエンパワーメントが注目されており、人材教育やマネジメントとして取り入れる企業が増えてきています。

ビジネスや人事領域、企業におけるエンパワーメントの意味

ビジネスの分野においては主に「権限移譲」という意味で用いられますが、「能力の開花」「自立性の促進」という意味でも使われることがあります。

権限移譲とは、上司や管理者にある権限をその下の立場の人間に与えることで、業務や意思決定を積極的にできるようにすることです。

これまでの企業においては、立場が下にある社員やスタッフはただマニュアルに即して行動し、上司の顔色をうかがいながら指示に従うだけといった仕事の進め方が一般的でした。しかし、このやり方だと従業員が自分で考えて動くことができず自立性が育ちません。その結果、組織として弱いものになってしまいます。

このような課題を解決するために、ビジネスにエンパワーメントの概念を導入する企業が増えてきているのです。

具体的には、主に上の立場の人間(監督者や上司)が、下の立場の人間(現場や部下)に対して権限の移譲や付与を行うことで、個人の能力や自立性、モチベーションを引き出します。この結果、仕事がスムーズに進むようになったり、自分で考えて動ける人材が多い組織へと成長するのです。

ここには、エンパワーメントによって組織のパフォーマンスを最大限に引き上げるという狙いがあります。

エンパワーメントの歴史や起源

エンパワーメントという考え方が広まったのは20世紀後半であり、バウロ・フレイというブラジルの教育思想家がこの概念を提唱したことがきっかけです。それからアメリカを中心に世界で市民運動や社会運動が持ち上がり、さらに広まっていきました。

その考え方の核には、全ての人が潜在能力を発揮して豊かな社会を実現できる世界を目指すことにあります。のちにこの考え方が教育や福祉などの分野に広まっていき、現在へと続いているのです。

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分野ごとで異なるエンパワーメントの意味

エンパワーメントは分野によって意味や定義が異なります。ここでは下記の分野における意味を解説します。

  • 教育分野
  • 介護や看護分野
  • 福祉分野

それでは1つずつ解説していきます。

教育分野

教育分野においては「誰しも素晴らしい能力があり、最大限に発揮することができる」という考え方が核であり、その能力を発揮できるように支援するのがこの分野でのエンパワーメントの役割です。

具体的には、大人が子どもに対して何もかもを教え込むという「一方通行のコミュニケーション」ではなく、子ども自身で考えて自発的に行動できるように誘導する教育方針となっています。

子どもが挑戦して失敗することもありますが、それも含めて学びとなり、成長につながるのです。

介護や看護分野

従来の介護・看護では患者はどうしても「治療を受ける」という立場でしたが、治療には本人の前向きな姿勢や行動が欠かせません。

そこで、介護や看護分野においてもエンパワーメントが用いられるようになり、その意味は、患者が治療の際にただ受け身になるのではなく、そのプロセスに積極的に関与することを指します。

患者に積極的になってもらうには、患者自身に選択権を与えたり、自分で何かを決められる環境を用意してあげることが重要です。また、治療に関する情報を細大漏らさず話すといったコミュニケーションも必要になります。

福祉分野

福祉の分野においては、受益者に対して提示する選択肢を増やして、自立や自助を促すという意味でエンパワーメントが用いられます。

これまでは受益者に対して政府が一方的に支援をしていましたが、それでは受益者の自由裁量権がなく自立を妨げる原因の一つにもなってしまいます。そういった状況を打破するべく、エンパワーメントが有用なのです。

エンパワーメントによるメリット

エンパワーメントによって得られるメリットは下記の3つです。

  • 人材育成や組織の成長につながる
  • 意思決定が速くなり生産性が上がる
  • 従業員に責任感が生まれる

人材育成や組織の成長につながる

エンパワーメントを導入すると、社員一人ひとりが自分で考えて行動できるようになり、人材育成ができます。

現代はVUCAの時代と呼ばれているように、我々を取り巻く環境は全く予測ができません。そのなかで仕事を進めていくには、現場で自分の頭で考えて行動できるような能力が必要不可欠です。

エンパワーメントを通してこの予測不能な時代に対処できる人材が育つことにより、組織の成長につながります。

意思決定が速くなり生産性が上がる

エンパワーメントにより権限が移譲されることで、従業員は与えられた権限のなかで行動できるようになります。何かトラブルが生じた際に、上司の判断を待つことなく自分で対処できるようになるため、意思決定が速くなるのです。

この結果、仕事のスピードが上がり、生産性が向上します。

変化の激しい時代において、スピーディーな意思決定は必要不可欠となってきており、これが実現できなければ顧客満足度の低下や機会損失へとつながってしまうでしょう。

従業員に責任感が生まれる

エンパワーメントでは権限を与えることが重要になりますが、権限を与えられることによって従業員には仕事に対する責任感が生まれます。

なぜなら、自分に権限がない場合はほとんどの業務において、上司の指示やマニュアルに沿って行動するため、なにかあったときの責任は上司やマニュアルに生じることになります。

しかし、自分で意思決定で仕事を進めることで、自分の仕事に大きな責任を感じるようになるのです。実際に責任を持つのは権限を移譲した人ですが、責任感をもって仕事をすることで、仕事に取り組む姿勢が真剣そのものになります。

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エンパワーメントを実施・導入する流れ

ビジネスにおいてエンパワーメントの実践・導入を行う流れは下記のとおりです。

  1. エンパワーメントの宣言をする
  2. 目標の設定と理解を得る
  3. 目標達成に必要な環境を整える
  4. 目的実現のための自由の容認

それでは1つずつ解説していきます。

エンパワーメントの宣言をする

まずやるべきことはエンパワーメントを導入することを、部下や組織に属する人間に宣言することです。

なぜなら、エンパワーメントは会社が一丸となって取り組まなければ効果を発揮しないため、組織の人間すべてに理解を得る必要があるからです。組織のリーダーや経営層だけが推進しようとしても、その部下の同意がなければ機能しません。

宣言する際に重要なことは、ただの宣言で終わらせないことです。本当に組織を変えるという意気込みや熱い思いが従業員に伝わらなければなりません。

目標の設定と理解を得る

エンパワーメントの導入を宣言しても、従業員の気持ちがバラバラなままでは何も変わりません。そこで次にすることが目標の設定です。いつも設定している目標よりも高めの目標にしたうえで、権限を使いながら目標に到達するという体験をさせることが重要です。

ただ目標を設定するのではなく、その目標について従業員の理解を得ることが求められます。したがって、「なぜその目標なのか?」を説明できるようにしたり、従業員からもそれらに関して意見を集めるようにしましょう。このように従業員と向き合うことで、共感を得られるようになります。

目標達成に必要な環境を整える

続いて、設定した目標を達成するために必要な環境を整えます。

従業員が自立し目標を達成するには、情報と権限が必要になるため、管理者が持つ情報の公開と権限の移譲をします。この際、権限の範囲を明らかにし、認識のズレが生じないようにしましょう。

また、情報を公開することで従業員に「あなたを信じています」というメッセージを送り、従業員と企業との間に信頼関係の構築ができます。従業員は上司や企業から信用されていると感じることでモチベーションを高く保てるのです。

目的実現のための自由の容認

そして最後のステップは、目標や目的を実現するために、従業員の意思決定と行動の自由を容認することです。エンパワーメントにおける自由とは「方法の自由」と「発言の自由」があります。

方法の自由とは、目的を実現するためにどのような方法を選ぶのかを、自分で決められることを指します。発言の自由は、目的の実現に向けて自分のアイデアや意見を気兼ねなく発言できることです。

権限を移譲したあとは、部下の仕事の進め方についつい手を出したくなるときもありますが、それを我慢して部下自身にやらせることで部下が成長していきます。

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エンパワーメント導入の際に注意するべきポイント

エンパワーメントを導入する際に注意するべきポイントが下記の2つです。

  • 失敗を認める
  • 形だけのものにしない

それでは1つずつ解説していきます。

失敗を認める

まず1つ目の注意点は、失敗を認めることです。

エンパワーメントには、裁量権を与えて自由に仕事をさせることで人材を育成できるメリットがありますが、そこには失敗が付き物です。失敗をして学び、成長していくのですが、それでもやはり想定外の失敗をすることもあります。

そんな時に上司が叱りつけたり、失敗をした従業員に責任を押し付けるようなことはしてはいけません。失敗をしても上司がフォローして、どうすれば良いかを相談して改善できるように導きましょう。

形だけのものにしない

2つ目の注意点は、エンパワーメントを形だけのものにしないことです。

導入することを宣言しても、時間が経つとともに誰も取り組まなくなり、形だけのものになることがあります。そのようなことにならないためにも、エンパワーメントによって得られるメリットを定期的に伝えていく必要があります。

エンパワーメントでありがちな失敗や課題

エンパワーメントを導入する際にありがちな失敗や課題は下記の3つです。

  • 権限の移譲ができない
  • 従業員が権限を行使できない
  • 上司が責任を負わない

それでは1つずつ解説していきます。

権限の移譲ができない

まず1つ目の失敗は、権限の移譲がうまくできないことです。

管理者や上司から部下への権限移譲が必要不可欠なエンパワーメントですが、この際に移譲する側がためらってしまうケースがあります。その理由の1つは、部下を信用できないことや部下の能力不足を心配していることです。

また、仕事を任せるまでの引き継ぎや何かあったときのサポートが面倒に感じて、上司が自分でやったほうが早いと判断してしまうこともあります。さらに、仕事を任せたとしても、誰にでもできるような仕事だけを任せて、部下の成長につながらないというパターンもあります。

このような課題に対しては、組織のリーダーが「エンパワーメントが重要な理由は、社員一人ひとりの成長や能力開花が組織の成長につながるためだ」ということを強く伝えていかなければなりません。

従業員が権限を行使できない

一方で、上司が部下にしっかり権限を移譲した場合でも、うまく機能しないパターンがあります。その原因が、権限を移譲された従業員が責任感を強く感じ過ぎたり、失敗を恐れることで萎縮してしまい、権限を的確に行使できないことにあります。

この場合、従業員の成長につながるどころか、自発性がなくなることも考えられます。したがってこのような場合は、大きな権限にも萎縮せずに自立して業務を遂行できる人材を見極めることが重要になるのです。

上司が責任を負わない

そして最後の失敗原因は、上司が責任を負わないことです。

エンパワーメントでは部下に権限は渡しますが、責任は上司が持たなければなりません。なぜなら、何かあったとしても部下はまだその責任を果たせる立場にはないため、権限を移譲されたとしても自由に行動できないからです。

部下が自由に行動した結果、企業や仕事になんらかの損失が出た場合、権限を渡した上司や管理者が責任を負う必要があります。したがって、権限は移譲しても、責任までは押し付けないようにしましょう。

まとめ

エンパワーメントを成功させるためには、上司が部下の可能性を信頼し、能力を開花させられるように支援していかなければなりません。

そのとき大切になることは、ただ権限を渡したらそこで放任するのではなく、必要な時にフォローをしたり相談に乗ってあげることです。しかし、そこで口を出しすぎても部下の自由裁量がなくなってしまうので、バランスが重要になります。

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