「最近の若い人は常識がない」とは、いつの時代にも聞かれる言葉です。
とくに最近では、環境や価値観の変化が急激になり、世代間でのコミュニケーションがさらに難しくなってきました。
こんな時代、マネジメントが知っておくべきは異文化とのコミュニケーションの方法です。
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目次
バックグラウンドの違う人とコミュニケーションする
かつての日本企業では、人の入れ替わりも少なく、終身雇用制度が一般的でした。
そこでは「空気」とか「不文律」がなんとなく共有され、それでうまくいっていたのです。
「メンバーの暗黙知」が共有されやすく、「黙って仕事のやり方を盗みなさい」と言っていてもOKな時代だったと言って良いでしょう
しかし「終身雇用」の崩壊に伴い、会社の流動性も高くなると、外国ルーツの人を受け入れる会社も増えるようになってきました。
また日本国内市場の発展が見込めないため、アジアなどの諸外国にマーケットを求めて進出する会社も少なくないようです。
つまり現在は、「雰囲気」に頼っているとコミュニケーションのエラーが起きやすい時代になってしまったということです。
そのような中、マネジメントをする人の悩みといえば、外国人や世代の違う人々と、どうやってコミュニケーションを取るかではないでしょうか。
そのような時代にあって、どのような考え方がヒントになるのか。
今回は大石哲之さんの「コンサル一年目が学ぶこと」からヒントを得てみます。
予め結論から言うと、世界共通言語は、論理(ロジック)と数字だと知っておくことです。
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できるだけ端的に話す
「コンサル一年目が学ぶこと」では、多国籍企業で多くの国からバックグラウンドが違う人が集まって働く場合に、どのようにすれば良いかを説明しています。
問題となるのは、「日本人だけが共有している常識が通じない」ことです。
残念ながら日本人は、文化の違う外国の人と仕事をするのがあまり上手くないと言われています。日本での仕事の進め方が通用しなかったり、コミュニケーションですれ違いが起きたり。[1]
例えば、日本人が書くメールは、海外では「わかりにくい」とか「まどろっこしい」とか言われることが少なくありません。
それは日本人が「結論から書く方法」に慣れていないからです。
外資系コンサルティング会社の標語の一つに、「Talk Straight」があります。
大石さんは、「これは端的に喋る、簡潔に喋る、という意味と、率直に喋る、という意味が合わさったものだと理解していただければいいでしょう。」と書いています。
ところが筆者が指摘するように、日本語の語順自体がそのような構成になっていないので、なかなかこれが思考法として身につけにくいのです。
さらに大きな問題は、こうした話し方や文章の書き方を日本の学校では教えていないことです。
日本の学校では「起承転結」を教わりますが、このように起きた順番に話すことを「演繹的(えんえきてき)な話し方」と言います。
ただこの方法だと、話を伝えるのに、くどくどと時間がかかります。
外国人が日本人に合わせるべきでは?と思われるかも知れませんが、そうもいきません。
顧客が全員日本人の場合には問題ないですが、お客さんが外国人になってくると、それぞれの顧客の文化に合わせた対応というものが必要になってきます。
日本のやり方を押し通していると、顧客からの思わぬクレームにつながることもあります。
多国籍企業の場合には特に、「どこの常識が正しく」て「どこの常識が間違っているか」などを議論することに意味がなかったりします。
「理解しようとしない」ことが重要な時代
よく多文化理解にある誤解が、「相手の文化を理解しなければいけない」ということです。
しかし、理解しようと思ってできるほど簡単なものではありません。
例えば東南アジアの多国籍企業では、ヒンズー教のインド人、仏教の中国人、イスラム教のインドネシア人などが一緒に働いています。
生まれつき、階級や宗教が決まっている人たちの考えは、そもそも理解するのが難しいのです。
自分のことに置き換えたらわかります。
日本人が何年もかけて培ってきた恥を気にする文化や、他人と合わせようとする心情などを外国人が理解しようと思っても難しいのです。
中途半端に理解したつもりになると、むしろトラブルがおきます。
そこで重要なのが、むしろこういった背景を無理に理解しようとせずに、骨組みのみを共有しようとすることです。
つまり「合わせない」ということです。
ポイントは、文化のような差が生じやすい高度な次元のコミニュケーションを、あえてしないことです。これを文脈が低いという意味で「ローコンテクスト」と言います。[2]
「コミュニケーションをあえてしない」ことなのです。
その代わり、理解できる共通の言語である「論理」と「数字」を使うのです。
違うところ、理解できないところは、合わせるのではなく、そのままにしておく。それが多様性というものです。そして、理解できる共通の言語は何かを探って、それでコミニケーションをします。ビジネスの世界では、それは論理と数字なのです。[3]
もちろん、共通語は英語だったり中国語だったりいろいろですが、実は言葉を使う能力より、この「いらないものを切り捨てて、論理で説得する」ことが重要。
そのおかげで、1年目のコンサルタントでも仕事ができるというのです。
ではどうやってロジックを身に付けるのか
本書では、「結論から話す」「PREPの型に従う」「端的に話す」など具体的な方法が述べられています。
1つの方法として利用できるのが、英会話学校かも知れません。
言語を英語にしてみると、日本語との思考の違いが分かります。
ビジネス英語や英語でのビジネスマナーを海外の人たちから学ぶと、日本人と全く違う思考をすることが見えてくると思います。
例えば、オンラインでライティングを教える学校には、「アカデミックライティング」など、論理的な文章の書き方を教えてくれるところがあります。
最近では無料で海外の大学の授業を聴講できるMOOCなどのサービスも増えていますから、利用して学習するのも1つの方法かも知れません。
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まとめ 多様性問題は、日本でも始まっている
著者は日本企業で働くときも、同じように論理と数字でコミニケーションするのが便利だと提言しています。
なぜなら日本でも世代間のギャップがあり新人と団塊世代では考え方や基礎になる経験も全く異なるからです。
たとえば、日本でも、世代間のギャップにそれが表れています。新人とバブル世代の人、もっと上の世代では、考え方も、基礎になる経験もまったく異なります。[4]
日本国内でもロジックと数字による「ローコンテクスト」なコミニケーションが必要とされる時代が来ているのです。
ぜひ、参考にしてみて下さい。
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出典
1) - 4)
「コンサル一年目が学ぶこと」大石哲之著(ディスカヴァー)より引用
のもときょうこ プロフィル
早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。その後フリー。「MacPower」「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者、「マレーシアマガジン」編集長などを歴任。著書に「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。2013年ごろから、マレーシアの教育分野についての情報を発信。