ピアボーナスは従業員がお互いの仕事を評価して報酬を贈り合う制度のことを指します。
元々はアメリカで普及した報酬制度で、近年は日本でも導入企業が増えています。
そこで本記事では、人事担当者やマネージャー向けに、ピアボーナスを徹底解説していきます。
※「ピアボーナス®」はUnipos株式会社の商標です。
目次
ピアボーナスとは?【従業員同士で報酬を送り合う】
ピアボーナスは、英語で同僚を意味する「Peer」と特別手当を意味する「Bonus」が組み合わさってできた言葉です。
従業員同士で仕事を評価して報酬を贈り合う制度を指します。
ピアボーナスで用いられる報酬としては、現金はもちろんのこと、ギフト券、社内通貨なども挙げられます。
従来の報酬制度は、上司が一方的に評価を決定することがほとんどでした。
一方、ピアボーナスであれば、従業員視点で人材を評価できるようになるので、従来より多角的な視点で人材を評価可能です。
ピアボーナスが注目されている背景
ピアボーナスが注目されている背景として、働き方改革が挙げられます。
働き方改革によって、働き方が多様化しつつある現代社会では、魅力的な職場環境を提供できるかどうかが、離職率を左右します。
このような状況の中、ピアボーナスは、職場環境の改善に繋がる施策として注目を集めるようになっているのです。
また、Googleやメルカリなどの有名企業で導入されていることも、注目されている理由として挙げられます。
ピアボーナスの5つのメリット
ピアボーナスのメリットとして以下の5つが挙げられます。
- 従業員エンゲージメントが高まる
- 横断的な組織内コミュニケーションが高まる
- 社内の雰囲気がポジティブになる
- 可視化しづらい業務を評価できる
- 人材流出を防げる
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:従業員エンゲージメントが高まる
ピアボーナスのメリットとして、まず挙げられるのが、従業員エンゲージメントの向上です。
一般的に、従業員エンゲージメントは評価制度や昇給などで向上すると言われています。
しかしこれは一時的な向上であり、継続的な向上とは言えません。
一方のピアボーナスは、職場内の人間関係が続く限り、永続的に従業員エンゲージメントが向上すると考えられています。
従業員エンゲージメントを真の意味で向上させたいのであれば、ピアボーナスを導入するのがいいかもしれません。
メリット②:横断的な組織内コミュニケーションが増える
ピアボーナスを導入することで、横断的な組織内コミュニケーションが増える可能性があります。
基本的に、企業規模が大きくなればなるほど、横断的なコミュニケーションが減少し、上司と部下の縦のコミュニケーションが増えていきます。
この状態では、一人ひとりの従業員が、社内全体を把握できません。
そこでピアボーナスを導入します。
ピアボーナスを導入することで、従業員はお互いの良いところを見つけるようになるため、その中で自然と会話が増えていくことが考えられます。
メリット③:社内の雰囲気がポジティブになる
ピアボーナスを導入することで、社内の雰囲気がポジティブになる可能性があります。
ピアボーナスは、従来の評価制度とは異なり、業績に関係ない部分の仕事を評価しやすいです。
そのため、数字に囚われすぎない状態で、自分の仕事を見つめ直す機会が増えるため、社内でポジティブな雰囲気が醸成されるようになるのです。
実際、お互いの良いところを褒め合うのは、とても気持ちのいいことです。
ピアボーナスは社内の雰囲気をポジティブにするメリットがあります。
メリット④:可視化しづらい業務を評価できる
ピアボーナスを導入することで、可視化しづらい業務を評価できるようになります。
一般的な評価制度では、営業成績やコスト削減など、企業の業績に直結する要素を中心に評価します。
そのため、職場の雰囲気を影で支えるような仕事は、一切評価されません。
一方でピアボーナスの場合、企業の業績に直結する要素を評価する必要はなく、それぞれの従業員に判断が任されます。
また、同僚だからこそ見えるものがあるのも事実で、それをしっかり評価できるのがピアボーナスのメリットです。
メリット⑤:人材流出を防げる
ピアボーナスを導入することで、人材流出を防ぐことができます。
先ほど述べた通り、ピアボーナスは可視化しづらい仕事も評価できるので、上司と部下で評価のギャップが生じづらいと考えられます。
そのため、評価制度によるモチベーション低下を避けることができるのです。
ピアボーナスを導入することで、従業員はやりがいを感じやすくなるため、離職を検討しなくなります。
このように、ピアボーナスを導入することで、人材流出を防げる可能性があるのです。
ピアボーナスの3つのデメリット
ピアボーナスのデメリットは以下の3つです。
- 運用コストが発生する
- 内部での貢献に気を取られる
- 運用ルールの設定が難しい
それぞれ詳しく解説していきます。
デメリット①:運用コストが発生する
ピアボーナスは、運用コストが発生するのがデメリットです。
まず、ピアボーナスを運用するためのサービスを利用する際にコストが発生します。
また、ピアボーナスで提供される報酬も準備しなければなりません。
もちろん、ピアボーナスを導入・運用する際の工数も無視できないものです。
ピアボーナスを導入する際は、はたして本当に投資対効果が見込めるのかをテストする必要があるでしょう。
デメリット②:内部での貢献に気を取られる
ピアボーナスを導入することで、従業員が内部での貢献に気を取られる可能性があります。
企業活動の基本は、外部の顧客との取引にあります。
つまり、企業が業績を出すには、常に社外を見る必要があるのです。
ピアボーナスは、従業員同士で報酬を贈り合う制度なので、ピアボーナスの存在感が強すぎると、社内での貢献に気を取られる可能性があります。
ピアボーナスの目的を明確にし、それを従業員に周知してから運用を始めるのがいいでしょう。
デメリット③:運用ルールの設定が難しい
ピアボーナスは、運用ルールの設定が難しいのもデメリットです。
先ほども述べた通り、ピアボーナスの存在感を強めすぎると、社内での貢献に気を取られるようになってしまいます。
しかしだからといって、ピアボーナスの存在感を薄めても、ただのオマケになってしまうので、十分な効果が見込めません。
報酬をどのように設定し、従業員同士の評価をどのように管理するのかをあらかじめ決めておく必要があります。
ピアボーナスの代表的なツール3選
ピアボーナスの代表的なツールとして以下の3つが挙げられます。
- Unipos
- HeyTaco!
- THANKS GIFT
それぞれ詳しく解説していきます。
ツール①:Unipos
ピアボーナスの代表的なツールとして、まず挙げられるのがUniposです。
Uniposの特徴は以下の通りです。
- Twitterのような掲示板型のUIデザイン
- Microsoft Teams、Slack、ChatWork、Facebook Workplaceなどのビジネスチャットツールと連携可能
- データ活用が可能
- 料金イメージは初期費用+システム利用料+支援費用
Uniposは、タイムライン型のUIデザインです。
例えば、誰かを賞賛したい場合は、タイムラインに賞賛のメッセージを投稿します。
投稿内容は全従業員が閲覧可能で、従業員が投稿に対して拍手を送ることが可能です。
また、チャットツールとも連携可能なので、安定した利用率も見込めます。
ツール②:HeyTaco!
HeyTaco!は海外発の相互評価SaaSで、従業員同士でタコスを贈り合うというちょっと風変わりなピアボーナスツールです。
HeyTaco!の特徴は以下の通りです。
- SlackまたはMicrosoft Teamsでのみ利用可能
- 利用方法は、チャットツール内でメッセージに🌮を追加するだけ
- 導入することで離職率が26%低下する
- 全体的にサービス内容がシンプル
- 価格は1人あたり3ドル
HeyTaco!のサービス概要は「チャットツールの中でタコスを贈り合う」というシンプルなものです。獲
得したタコスの数にあわせて、報酬が決定されます。
また、タコスがどのように取引されているかをレポートで分析可能です。
そしてHeyYaco!は、公式HPでROI(投資対効果)も公開しています。
HeyTaco!によると、当ツールを導入することで離職率が26%低下し、投資収益率は1200%を超えるとしています。
たしかに、1人あたり3ドルという価格と、1人あたりの離職コストが約100万円だと考えると、相当の投資対効果が見込めそうです。
確実にパフォーマンスを出したいのであれば、HeyTaco!を導入するのがいいかもしれません。
ツール③:THANKS GIFT
THANKS GIFTは、株式会社Take Actionが運営する相互評価SaaSです。
特徴は以下の通りです。
- ChatWork、Slack、Teams、LINE WORKSなどのチャットツールと連携可能
- 掲示板だけでなくチャット機能も搭載されている
- 運用サポートが充実している
THANKS GIFTは、その他の相互評価SaaSに比べて、横断的なコミュニケーションだけでなく、縦の繋がりも意識された設計になっています。
また、チャット機能が搭載されていることから、THANKS GIFTを「社内におけるプライベート用コミュニケーションツール」としても利用可能です。
ピアボーナスの導入事例3選
ここではピアボーナスの導入事例を3つ紹介していきます。
事例①:メルカリ
メルカリはUniposを導入して「メルチップ」というピアボーナス制度を運営しています。
「メルチップ」はSlack上での利用が多く、実際に導入してから「他部署との連携がやりやすくなった」という声があったそうです。
元々メルカリは、四半期ごとにThanksカードを贈り、従業員を相互に評価する文化がありました。
その延長線で導入されたのが「メルチップ」です。
メルカリは、自社のバリューである「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Proffesional(プロフェッショナルであれ)」を重視しており、この3つを満たした行動を取った従業員が「メルチップ」で評価されるようです。
事例②:CAMPFIRE
クラウドファンディングサイトを手掛けるCAMPFIREも、Uniposを導入することでピアボーナス制度を開始しています。
一方でCAMPFIREは、Uniposのような相互評価サービスを自社で開発していたことがあったそうです。
それが、ビットコイン送付botの「OKIMOCHI」です。
OKIMOCHIは、Slack上でスタンプを押すことで少額のビットコインを送れるツールで、従業員の相互評価だけでなく、ビットコインを知ってもらうためのきっかけという役割もあります。
ただし、OKIMOCHIを利用するには仮想通貨のウォレットが必要など、一定の条件が必要だったことから、安定した利用率が見込めませんでした。
以上の経緯からCAMPFIREの創業者・家入一真は、安定した利用率が見込めるUniposを導入したそうです。
事例③:Google
Googleは、世界で初めてピアボーナス制度を導入したとされる企業として知られています。
元々の発端は、Googleの研究「プロジェクトアリストテレス」です。
この研究から「組織の生産性を決めるのは心理的安全性」と確信したGoogleは、社内の心理的安全性を高めるために、ピアボーナス制度の導入を開始したのです。
制度内容はシンプルで、毎回16,000円の現金を従業員同士で贈り合うシステムとなっています。
取り扱っている金額が多いので、一定の制限を設けているものの、金銭的なモチベーションがかなり高まる仕組みだと言えるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- ピアボーナスは従業員同士で仕事を評価して報酬を贈り合う制度のこと
- ピアボーナスを実施することで従業員エンゲージメント向上や離職率低下が見込める
- ピアボーナスは運用コストがネック
- ピアボーナスを導入する際はROIをしっかり算出するようにする
ピアボーナスは、十分な投資対効果が見込める立派な人事戦略です。
離職率改善や生産性向上のきっかけになるポテンシャルを秘めています。
気になる方は、ピアボーナスの導入を検討してみるといいかもしれません。