企業で働いていると、多かれ少なかれ、リーダーシップが求められるシーンがおとずれます。
そのようなとき「自分はそんな柄じゃない」「自分には向いていない」などと尻込みしていませんか?
それは、「生まれつき自信があって、周りを先導できるタイプがリーダーになるべき」と決めつけているからかもしれません。
しかし、実際のリーダーシップには数多くの型や種類があり、優れたリーダーのパターンも様々です。
たとえあなたが、引っ込み思案でおとなしい性格であっても、自分に合ったリーダーシップの活かし方を知っていれば、十分に役割をまっとうすることができます。
今回の記事では、ビジネスパーソンが自らの資質を活かしたリーダーとして成長し、より豊かなキャリアを築いていく方法をご紹介します。
目次
リーダーシップを活かす7つの能力
リーダーシップを存分に活かすには、次にあげる7つの能力が求められます。
いきなり完璧にこなせなくても大丈夫です。
優秀なリーダーは、一朝一夕に作れません。時間をかけてできることから、ものにしていきましょう。
1.目標を設定する能力
リーダーには、チームが進むべき方向性を示す役割が求められます。
そのための明確な目標設定は不可欠で、到達するまでの計画もメンバーに開示します。
ただし目標は、「実現が可能」かつ「数字で表せる」という条件を満たした内容にするべきです。
2.問題を解決する能力
計画し、いざ実行に移すと、その途中には必ずと言っていいほど問題が発生します。
どんな時でも、現状を冷静に分析したうえで解決策を講じ、チームを正しい方向に軌道修正するのがリーダーです。
すぐに答えを用意できなくてもかまいません。まずは詳細な情報を収集し、ロジカルに問題点をあぶり出しましょう。
3.決断する能力
判断に迷う局面で優柔不断なリーダーだと、メンバーの信用を失いかねません。
決断を周りの意見に委ねたり曖昧な態度をとったりせず、確固たる信念に基づいて意思決定をしましょう。
決定し実行する強い意志を持つことで、メンバーの士気は上がり信頼感が増します。
4.コミュニケーションする能力
チームで課題を解決し、乗り越えるためには、たとえネガティブな情報であってもチーム内で共有しあうことが大切であり、それができる環境づくりとしても、メンバーとこまめに対話する気持ちは欠かせません。
相手の言葉を傾聴し、コミュニケーションが一方通行にならないよう気をつけましょう。
5.育成する能力
いくらリーダーが優秀でも、一人では何もできません。
メンバーの長所を伸ばす手助けをし、チーム力全体の能力や生産性を底上げするのもリーダーの仕事です。
「名選手かならずしも名監督ならず」の言葉にあるように、各自の個性の違いを把握し、それに応じた育成ができないと、思った通りの成果は出せないでしょう。
6.責任をとる能力
リーダーには、チームの長としての責任がともないます。
自分のミスだけでなく、メンバーのミスも自分事として対処しなければいけません。そのためには問題を事前に予測し、先回りして防いでおくことが重要です。
もしミスが起こったときも「全ての責任は自分にある」と公言し、絶対に逃げないリーダーは、メンバーから大きな信用を得られます。
7.業務を遂行する能力
リーダーは日常の業務でも、模範となるべき存在です。
業務実行力においても、メンバーから一目置かれるよう努めましょう。
精力的に業務をこなす姿を見せていると、チーム全体の士気は上がっていきます。
リーダーの日々の仕事ぶりを見て、メンバーの中でフォロワーシップの醸成が進むのです。
リーダーシップを活かす5つの心がけ
リーダーシップを活かして成果を上げるために、リーダーにふさわしい心がけがあります。
資質や才能にとらわれず、まずはリーダーたる自覚をもって、毎日の業務にあたりましょう。
最初から、全てソツなくできる人などいません。良いリーダーは、日々の積み重ねによって作られます。
これらの心がけを常に意識することで、よりリーダーシップは醸成されていくはずです。
1.常に学び続ける
今の地位にあぐらをかかず、常に学び続けるのがリーダーです。
状況判断や問題解決を適切におこなうためには、継続した自己研鑽が欠かせません。
リーダー自身が自らを向上させようとしていれば、自然にメンバー達にも波及します。
2.自ら率先して動く
リーダーには、かならずしもカリスマ性がないといけないというわけではありません。
もし自分に魅力がないと感じているなら、まずは率先して動きましょう。
素早く行動に移すリーダーを見て、周りはしだいに敬意を抱き始めます。
3.素早く意思決定する
リーダーには、素早い意思決定を求められる場面が多々あります。
そんなとき曖昧な態度でいると、メンバーの不安は大きくなってしまうでしょう。
意思決定において気をつけるべきポイントは、次の4つです。
- 先延ばしにしない
- 判断の基準を示す
- 明確な意思表示をする
- 状況に応じて変更する
4.メンバーを信じて任せる
どれほど優秀なリーダーであっても、ひとりで全てできるわけではありません。
メンバーの力に頼るべきタイミングが必ずあります。任せるときは、思い切って任せましょう。
たとえ部下が失敗したとしても、糧にして成長してくれれば、チーム全体のパフォーマンスは上がります。
5.積極的にコミュニケーションをとる
複数の人間が働く組織においては、リーダーのコミュニケーション力は必須です。
積極的に対話することで、業務内容や人間関係の問題点が可視化されます。
各自の悩みなども聞いてあげると、メンバーの心理的安全性が保たれ、業務に集中しやすくなります。
リーダーシップを活かす4つの理論
リーダーシップを活かす能力や心がけは分かりました。
では、拠りどころとなる理論はあるのでしょうか?
じつはリーダーシップ理論は、100年以上も前からアメリカを中心に研究がされていて、時代ごとの淘汰を経て、体系化が進められています。
代表的なリーダーシップ理論は次の4つです。ひとつずつ見ていきましょう。
- 特性理論( 1900 年代~)
- 行動理論( 1940 年代~ 1960 年代)
- 条件適合理論( 1960 年代後半~)
- コンセプト理論( 1970 年代~現在まで)
1.特性理論
今日まで続くリーダーシップ研究の出発点になったのが、特性理論です。
「リーダーは生まれつきの特性によって、リーダーシップを発揮する」という、もっとも古典的なリーダーシップ論といえます。
ただ、優れたリーダーを研究したところ、必ずしも同じ特性を持っているとは限らず、この理論を科学的に証明することはできませんでした。
2.行動理論
特性理論とは逆に「リーダーシップは、先天的な能力でなく行動によって発揮される」との仮説にもとづいた理論です。
リーダーを「目標の達成」と「人間への配慮」の二軸で評価するのが特徴です。
しかしながら、リーダー側の行動にのみ着目しているため、部下の能力の違いや課題の難易度など、外部の要因に対する適応力までは評価できません。
3.条件適合理論
条件適合理論とは「優れたリーダーには、共通の特性や行動様式があるわけでなく、状況によって数種類のリーダーシップを使い分けている」という理論です。
市況や課題などへの臨機応変な対応力こそ、優秀なリーダーが持つ資質であるとし、のちのコンセプト理論へとつながる礎になりました。
4.コンセプト理論
条件適合理論を発展させたコンセプト理論は「優れたリーダーは、相対的なものである」という概念にもとづいています。
リーダーシップのベストな活かし方は、与えられた環境によってさまざまな類型に変化するという考え方です。
コンセプト理論の代表的な類型は次の5つです。
1.カリスマ型リーダーシップ
壮大なビジョンと達成する行動力を併せ持ち、力強くチームを牽引していくのがカリスマ型リーダーシップです。
組織を急成長させる可能性がある一方で、メンバーたちの自主性が育たず、後継者問題に悩むパターンも多くあります。
2.変革型リーダーシップ
変革型リーダーシップは、経営方針を改革するなど組織をドラスティックに変化させるリーダーシップです。
変革を最優先させるため、管理は二の次と捉えています。
明確なビジョンを提示し、チーム全体に浸透させ、メンバーの行動変容を促すのが特徴です。
3.EQ型リーダーシップ
メンバーの気持ちに寄り添い信頼関係を築いていくのが、EQ型リーダーシップです。
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、「心の知能指数」と呼ばれています。
リーダーはメンバーとの会話を大切にし、より良い雰囲気作りに努めますが、ただ甘やかすだけにならないよう気をつけなければいけません。
4.ファシリテーション型リーダーシップ
ファシリテーション型リーダーシップは、メンバーから積極的に意見を聞き出し、組織運営に反映させるリーダーシップです。
リーダーは、できるだけ中立の立場でまとめ役に徹します。
メンバーの当事者意識を高めるリーダーシップとして有効です。
5.サーバント型リーダーシップ
メンバーを徹底して支援するのが、サーバント型リーダーシップです。
サーバントとは「奉仕者」の意味を持ち、組織として重要な意思決定はリーダーがおこないつつも、日常業務では裏方にまわります。
現代の企業経営でもっとも注目されるリーダーシップですが、締める部分はしっかりと締め、存在感が希薄にならないように注意すべきです。
まとめ
ひとりひとりに個性があるように、リーダーシップも単一ではありません。
どのような活かし方がベストかは、個人の志向や置かれた状況により異なります。
学習によって身に着けた様々な理論を、道具として柔軟に使いこなし、その場その場で最適解を探し続ける。
そのような姿勢でいることが、あなたらしさの伴ったリーダーシップを活かす、現実的な方法なのです。