経営者の中には、漠然と「自社の生産性が悪い」と感じており、生産性の高い人を求めている、という方も多いのではないでしょうか。
たとえ気づけたとしても、生産性の高い人とは、そもそもどんな人材のことなのか、また、どのように育成すべきなのか、具体的なアクションは見えないかもしれません。
この記事では「生産性が高い人」にはどのような特徴があるのかお伝えします。
具体的な定義がわかれば、それに向けてどうアクションを起こしていくべきか、明らかになるでしょう。
目次
「生産性が高い」とはどういう状態か?
「生産性が高い」とは具体的にどのような状態を指すのか、正しく理解できている方は少ないかもしれません。
そもそも「生産性」とは労働(インプット)に対する成果(アウトプット)の比率を指し、これが高ければ「生産性が高い」といえます。
この項目では、下記に分けて解説していきます。
- 生産性=労働に対して得られる成果の比率
- 「生産性」と「効率」は似て非なるもの
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生産性=労働に対して得られる成果の比率
少ない労働(インプット)で多くの成果(アウトプット)が出せれば「生産性が高い」状態になります。
「労働」とは労働者数や労働時間を指し、労働に対する成果の比率が「労働生産性」です。
具体的な計算式に落とし込むと以下となります。
- 1人当たりの労働生産性=成果÷労働者数
- 1時間当たりの労働生産性=成果÷(労働者数×労働時間)
自社の生産性を調べることから、実態の把握や市場との比較が可能となるでしょう。
「生産性」と「効率」は似て非なるもの
生産性を上げるための一手として、業務の効率化は有効な手段です。
しかしながら、「生産性」と「効率」は、似て非なるもののため、注意しなければいけません。
まず、両者の違いは以下のとおりです。
- 生産性とは、リソースに対して出した成果を示す指標
- 業務効率化とは、生産性を上げるために取る施策
「生産性」は、労働に対してどれだけの「成果が出せたか」を示す指標です。
つまり、少ない労働者数・労働時間で、より多くの成果を出して初めて「生産性が高い」状態になるわけです。
対して「効率」は、労働に投入した時間や費用といったリソースを下げることを指します。
つまり「生産性」を考える上で、その分母となる労働にかかるリソースが下がれば「効率がよくなった」状態であり、業務効率化を意味します。
生産性の高い人が実行する2つのアプローチ
生産性が高い人は「労働(インプット)を効率化して労働時間を減らし、成果(アウトプット)を最大化する」という2種類のアプローチを、常に考えて行動している人が多い傾向にあります。
1つ目の労働(インプット)では、ツールを導入して自動化したり、そもそもの手順や内容を見直したりすることで、労働時間の短縮を図っています。
自ずと多くの成果を生み出せる、効率的な労働が可能です。
2つ目の成果(アウトプット)は、労働の効率化が進んだ分だけ得られる結果です。
他人からすると「楽をしようとしている」というネガティブな評価になるケースも少なくありません。
しかし、効率的にミスなく多くの仕事ができていれば、会社にとってどちらが優秀・有益かはいうまでもないでしょう。
関連記事:生産性向上を実現する方法とは?必要性や向上しない企業の共通点を解説
生産性が高い人の特徴8選
生産性が高い人には、どのような特徴があるのでしょうか。
ここでは下記8つの内容を抜粋して紹介します。
- ゴールを決めて目標を意識している
- スケジュールやタスクを適切に管理している
- 情報整理を常に心がけている
- 自分の能力を客観的に把握している
- マルチタスクにならないように進めている
- 途中経過でのこまめな報連相を意識している
- こだわり過ぎずにスピード感を重視している
- 慣例にとらわれず柔軟に判断している
ゴールを決めて目標を意識している
生産性が高い人は、限られた時間の中で常に仕事のゴールと目標を意識して、最短ルートで向かう姿勢を持っています。
仕事の全体像を把握し目標とゴールを定めているのは、一貫した方向性を軸に、業務を完遂する原動力としているためです。
もし、想定外の事態が起こったとしても間違った方向にいくことがありません。
一緒に働いているチームメンバーも安心してプロジェクトに取り組めます。
反対にゴールが見えていないと、場当たり的で無駄な時間になりかねません。
以上の点から、生産性の高い人材は、無理のない範囲で、かつ効果の出るゴールを設定し、進める努力が見られます。
スケジュールやタスクを適切に管理している
生産性が高い人は、仕事を細かいタスクに分解し、それぞれのボリュームを減らしてスケジュールを組むことで効率的を図っています。
また、多くのタスクを抱える場合は、アラート機能付きツールを活用して、工夫している人も多い傾向です。
結果として、抜け漏れ防止だけでなく、目の前の仕事に集中して生産性を上げています。
関連記事:タイムマネジメントは生産性向上に効果的!メリットや方法、注意点などを解説
情報整理を常に心がけている
生産性が高い人は、日頃からさまざまな方向にアンテナを貼りながら、受け取った情報に優先度を付けて整理しています。
整理する理由は、必要なときに必要な情報をすぐに引き出し、活用できるためです。
ここでいう情報とは、受けた仕事の内容や思いついた改善提案の内容や、人から聞いた有益な情報などさまざまです。
優先度をつけることで探す手間も省けるほか、組織内での情報共有も容易になります。
自分の能力を客観的に把握している
生産性の高い人は、適切な作業量から始めることの大切さを知っています。
なぜなら、自分の能力を超える仕事はパフォーマンスが低下してミスが多くなり、納期遅れにもつながってしまうからです。
さらに、そういったトラブルに陥らないための対策として、自分自身の能力と限界を客観的に把握する工夫を凝らしています。
具体的には、目標を高く設定しつつ、就業時間内では消化しきれないタスクを組まないように進めています。
マルチタスクにならないように進めている
数ある業務の中には、マルチタスク(業務のタスクを同時進行する)とシングルタスク(1個ずつタスクを進行する)があり、生産性の高い人ほどシングルタスクでの消化を目指しています。
マルチタスクは「2つ以上の作業を同時に行う」もしくは「短時間で切り替えながら行う」ことを指します。
全体で見ればマルチタスクに見えてしまう業務でも、実際は細かく分類した多くのシングルタスクを進めている状態です。
複数のシングルタスクを同時並行で進めてしまうと、思うような進捗にはなりません。
一つひとつに集中した方がパフォーマンスが上がるため、シングルタスク対応中は目の前に集中し次々と完了させたほうが、モチベーションの向上にも有効です。
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途中経過でのこまめな報連相を意識している
仕事を進めている中で、全体を理解しているつもりでも方向性が違っていることは少なくありません。
生産性の高い人は常に細かい進捗報告(報告・連絡・相談)によりズレを調整し、手戻りを可能な限り減らしています。
こちらの行動は頭文字を取り一般的に「報連相」と呼ばれ、業務の進捗や成果、起きている事実などを上司に伝えることを指します。
完璧に仕上げてからの修正は非効率なため、社内で進めているプロジェクトが独断で動いていないかをチェックしています。
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こだわり過ぎずにスピード感を重視している
生産性の高い人は、どんな仕事でも「いかに早くできるか」を意識して業務を遂行しています。
なぜなら、最短ルートを進むためにはスピード感も重要なためです。
最初から時間をかけずに大枠から固めて行くことで、全体の完成速度を上げています。
結果として、最終的には余裕が生まれ、プラスアルファの部分を盛り込んで仕事の質を高めています。
また、1つのタスクに短時間で集中してパフォーマンスを向上させることで、効果的なアウトプットを出しています。
慣例にとらわれず柔軟に判断している
「これまでこうしていたから」という慣例を守っていたのでは、生産性は上がりません。
生産性の高い人は、常に「どうすれば効率が上がるか」を意識して、新しい知識・情報をインプットしています。
すると、過去の常識にとらわれない柔軟な発想と広い視野で仕事が可能になります。
なお、「慣例にとらわれない」というのはルールを破る意味ではなく、常識に疑問を持ちながら、最善策を取れるようにする思考方法です。
生産性が低い人の特徴3選
生産性の高い人の特徴に反して、生産性が低い人には以下3つの特徴があります。
- 計画を立てずにマルチタスクで進める
- 長時間労働で休みを取らない
- 目的とゴールが曖昧
計画を立てずにマルチタスクで進める
計画性がなければ目についたことから着手してしまうため、生産性が下がる傾向にあります。
たとえば出社してすぐメールをチェックする社員を思い浮かべてみてください。
メールに記載されている内容によって新たなタスクが生まれ、簡単なことなら先にやってしまおうとするでしょう。
対応自体は間違いではありませんが、まずはその日の計画立案が優先されるべきです。
その上で、新たなタスクをどう組み込むかを検討するステップが重要です。
場当たり的な対応になると、結果的にマルチタスクになり、オーバーフローしてしまって最終的に生産性の低い人になってしまいます。
長時間労働で休みを取らない
「残業は偉い」「休みは悪い」といった感覚が根付いている日本において、成果よりも長く働くことが美徳とされています。
生産性の低い人はこうした働き方の人が多いのです。
実際は労働時間が長いほどパフォーマンスが落ちる傾向にあるため、メリハリのある働き方を推奨するようにしましょう。
目的とゴールが曖昧
「この仕事はなぜ発生したのか」「何を達成するための依頼なのか」といった本来の目的が理解できていなければ、たどり着くべきゴールがずれてしまいます。
たとえば調査依頼があった場合、下記を踏まえた明確なゴール設定が重要です。
- 何をターゲットにした企画か
- このデータは何のために使用されるのか
- どのくらいの件数が必要か
- どのようなデータが必要か
詳細を確認せずに進めてしまう社員には、まずはゴールを定める重要性を説くようにしましょう。
生産性が高い人は全体と自分を俯瞰し計画的に業務を行なう
生産性が高い人は、常に目標達成までのスピードを意識し、全体から導き出したタスクを細分化して業務を遂行しています。
また、常識にとらわれることなく柔軟な発想で最短ルートを通って進めるため効率的です。
一見するとハードルの高い取り組み姿勢に思われるかもしれませんが、生産性の高い人の特徴を細分化すれば、自社で実現可能なアイデアが見えてきます。
1つでも自社に取り入れて意識改革を進めていけば、会社としての生産性向上が期待できるようになるでしょう。