リーダーシップを高める上で役立つのが、リーダーシップに関する理論や考え方です。PM理論、パス・ゴール理論、特性理論、条件適合理論、MECE、マズローの欲求5段階説など、優れたリーダーシップを発揮するために必要な考え方を学ぶことができます。
またOODAループやマッキンゼーの7Sのように、意思決定や事業戦略に役立つフレームワークもあるため、有効活用しましょう。
本記事では、リーダーシップを発揮するために知っておきたい11のフレームワーク・考え方について分かりやすく紹介します。
目次
そもそもリーダーシップとは?
そもそもリーダーシップとは、さまざまな定義がある言葉です。
リーダーシップと言っても自分のビジョンを組織に伝搬させていく「ビジョンリーダーシップ」、コーチングによってチームのパフォーマンスを引き出す「コーチングリーダーシップ」、チームメンバーと友好関係を築く「仲良しリーダーシップ」など、そのスタイルは千差万別です。
それでも近年のリーダーシップ研究には、3つの共通点があると言われています。
- リーダーシップは管理職やマネージャーだけのものではない
- リーダーシップはチームを率いたり、引っ張ったりする行動だけではない
- リーダーシップは先天的な才能やセンス、カリスマで決まるわけではない
管理職やマネージャーだけでなく、新入社員や中堅社員も、リーダーシップを身に付ける必要があります。その理由は、リーダーシップにはチームの長として周囲を引っ張っていく行動だけでなく、チームを影から支える行動も含まれるからです。
つまり組織やチームの目的を達成するため、周囲の人に良い影響を及ぼす行動全般が、近年のリーダーシップ研究でリーダーシップと呼ばれます。
そしてリーダーシップは先天的な才能やセンス、カリスマ性で決まるわけではなく、後天的に身に付けることが可能です。
リーダーシップを強化するには、リーダーシップ研修を受けるだけでなく、PM理論やパス・ゴール理論、特性理論、MECEなど、リーダーシップの考え方やフレームワークを学ぶことが大切です。
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リーダーシップの11の考え方やフレームワークについては、次の項目で詳しく解説していきます。
リーダーシップを発揮するために知っておきたい11の考え方・フレームワーク
優れたリーダーは、リーダーシップを発揮するためのフレームワークを使いこなしています。リーダーシップの主な考え方やフレームワークは以下の11点です。
- PM理論
- パス・ゴール理論
- 特性理論
- 条件適合理論
- MECE
- マズローの欲求5段階説
- SECIモデル
- マッキンゼーの7S
- X理論Y理論
- OODA
- プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)
これまで組織のリーダーとして働いた経験が乏しい人も、リーダーシップの考え方やフレームワークを活用することで、リーダーに求められる考え方やビジョンを学べます。
1. PM理論
PM理論(行動理論)とは、「目標を達成する力(Performance)」と「チームをまとめる力(Maintenance)」の2つの指標を使って、リーダーシップを4つに分類する考え方・フレームワークです。
例えば、以下の表のとおり、目標を達成する力が高い場合は大文字のP、低い場合は小文字のpで現します。
リーダーシップのタイプ 目標を達成する力(P) チームをまとめる力(M) 特徴
リーダーシップのタイプ | 目標を達成する力(P) | チームをまとめる力(M) | 特徴 |
pm | 低い | 低い | 十分な成果や実績がなく、チームもまとめられない |
Pm | 高い | 低い | 成果や実績は出しているが、チームにまとまりがない |
pM | 低い | 高い | チームがまとまっているが、十分な成果や実績がない |
PM | 高い | 高い | すばらしい成果や実績を挙げており、チームからの人望も厚い |
PM理論では、理想のリーダーシップは「すばらしい成果や実績を挙げており、チームからの人望も厚い(PM)」状態として表現されます。PM理論の表を見ながら、自分のリーダーシップのあり方を振り返り、足りていない点や改善が必要な点を探しましょう。
2. パス・ゴール理論
パス・ゴール理論は、パス(道筋)とゴール(目標)の2つの視点でリーダーシップを捉える考え方です。パス・ゴール理論におけるリーダーとは、チームに道筋を示し、目標達成に向けてサポートする存在です。
なおパス・ゴール理論では、リーダーの役割は状況によって変わります。チームのメンバーに合わせて、4つのリーダーシップのスタイルを臨機応変に使い分けることが大切です。
リーダーシップのスタイル | 特長 |
指示型リーダーシップ | メンバーに経験者や熟練者が少ない場合、リーダーが指示を出して具体的な道筋を示す |
支援型リーダーシップ | メンバーが独自の考えやアイデアを持っている場合は、メンバーを信頼し、リーダーがサポート役に徹する |
参加型リーダーシップ | メンバーから意見や提案がある場合は、メンバーに相談し、民主的に意思決定を行う |
達成志向型リーダーシップ | メンバーが強いモチベーションを持っている場合は、目標達成に向けて全力を尽くすように求める |
3. 特性理論
特性理論は、古典的なリーダーシップの考え方の一つです。特性理論では、リーダーシップをリーダーが生まれ持った才能やセンス、カリスマ性によるものだと考えます。
近年のリーダーシップ研究では、特性理論は主流の考え方ではありません。リーダーシップは本人の生まれつきの資質に関わらず、リーダーシップ教育や現場での実践を通じて、後天的に身に付けることが可能です。
もちろん、リーダーとして天性の才能を持った人もいます。しかし天性の才能を持った人を探すよりも、リーダーシップを開発する環境づくりに取り組み、優れたリーダーを育てる方がより現実的です。
4. 条件適合理論
条件適合理論とは、行動理論(PM理論)と深い関わりのある考え方です。行動理論では、リーダーシップの本質を行動だと捉え、リーダーシップの要素を「目標を達成する力(P)」「チームをまとめる力(M)」の2つに分けました。
しかし、PとMの2つの要素がそろっているからといって、全ての業務に対応できるとは限りません。チームを取り巻く状況によって、理想的なリーダーシップは変わってきます。
その点に注目したのが、条件適合理論です。条件適合理論は、チームの条件によって求められるリーダーシップが変わるという前提に立ち、新しいリーダー像を分析した理論です。
例えば、チームメンバーのモチベーションやスキルセットによって、リーダーがとるべき行動は変わってきます。先ほど紹介したパス・ゴール理論も、実は条件適合理論の一つです。
優れたリーダーになるには、チームが置かれた状況に目を配り、柔軟にリーダーシップのスタイルを変えていく必要があります。
5. MECE
MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)は、リーダーシップだけでなく、ビジネス一般に使われているフレームワークの一つです。
MECEは日本語で「漏れなく、ダブりなく」を意味する言葉で、優れたリーダーに必要なロジカルシンキングを養う上で役に立ちます。
例えば、トラブルに対処するとき、MECEの考え方が役に立ちます。トラブルの発生原因を「漏れなく、ダブりなく」洗い出すことで、問題を正確に特定し、スムーズに解決することが可能です。
逆にMECEの考え方ができていない場合、重要なポイントを見落としたり、同じ問題を何度も検討していたりと、リーダーとして頼りない印象を与えかねません。リーダーとして意思決定を行うときはMECEを意識し、常にロジカルシンキングを心掛けましょう。
6. マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説は、人間の欲求は生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の5つの段階に分けられるという理論です。リーダーシップにおいては、部下のやる気やモチベーションを管理するときにマズローの欲求5段階説が役に立ちます。
チームメンバーが不満を感じている場合は、5つの欲求のどの段階によるものかを理解することで、問題を解決できる場合があります。
例えば、部下の人間関係やチームへの帰属意識などといった社会的欲求が満たされていない場合に、経済的安定などの安全欲求を満たすような提案をしても、チームメンバーの不満は解消されません。
チームメンバーを褒めるときは、相手の存在価値を認めたり、他のメンバーからの評価をほのめかしたりするなど、承認欲求を刺激するような言葉が有効です。
7. SECIモデル
SECIモデルは、主に社内の知見やノウハウを蓄積するナレッジマネジメントで使われるフレームワークです。
言語化が難しい暗黙知は、共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)の4つのプロセスを経ることで、他者と共有可能な形式知へと変換できます。
チームメンバーの知見やノウハウを活かしたい場合は、SECIモデルを参考にしてみましょう。
8. マッキンゼーの7S
マッキンゼーの7Sとは、企業の経営資源を3つの「ハード」と4つの「ソフト」に分け、事業戦略に活かすフレームワークです。ハードな経営資源とは、戦略(Strategy)、機構(Structure)、システム(System)の3つを指します。
一方で、スタッフ(Staff)、経営スタイル(Style)、経営スキル(Skills)、上位目標(Superordinate Goals/Shared Value)の4つがソフトな経営資源です。
マッキンゼーの7Sを活用すれば、組織運営に欠かせない経営資源を一目で見渡し、現状を分析できます。リーダーとして事業戦略に関わる人は、マッキンゼーの7Sを活用してみましょう。
9. X理論Y理論
X理論Y理論(XY理論)は、アメリカの心理学者、経営学者であるダグラス・マクレガーが提唱した理論です。X理論は性悪説を前提とした考え方で、人間は生まれながらに働かないことを好むため、組織による統制が必要だとしています。
一方で、Y理論は性善説の立場に立ち、人間は生まれつき自己統制の力を持つため、他者の命令がなくても進んで仕事をするという考え方です。
マクレガーは、組織のマネジメントはY理論の考え方に立って行うべきだと考えました。人間には、X理論、Y理論それぞれに当てはまる部分があります。
リーダーシップを発揮する際は、X理論、Y理論という対立する2つの考え方を念頭に置くことで、部下をマネジメントしやすくなります。
10. OODA
OODAとは、「観察(Observe)」、「判断(Orient)」「決定(Decide)」「行動(Act)」の頭文字をとった言葉で、OODAループとも呼ばれます。
PDCAサイクルと同様に、意思決定のフレームワークとして使用されることが多いです。PDCAサイクルとの違いは、PDCAがいきなり「計画(Plan)」から始まるのに対し、OODAは「観察(Observe)」から始まっている点があります。
OODAループでは、まずチームの置かれた状況を観察し、現状を変えるために必要な判断材料を集めます。そのためOODAループは新しいことに挑戦するときや、先が見通せない問題に取り組むときに適したフレームワークです。
11. プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)
プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)とは、製品やサービスが市場に登場してから売れなくなり、衰退するまでのライフサイクルを現したものです。
大きく分けて、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのフェーズで製品・サービスの寿命を考えます。マーケティングに関わるリーダーの場合は、プロダクト・ライフ・サイクルを把握し、各フェーズに合わせた施策を打ち出すことが大切です。
リーダーシップを強化する11の考え方やフレームワークの中からできるものを実践しよう
リーダーシップを学ぶ最初のきっかけの一つが、リーダーシップの考え方やフレームワークです。リーダーシップの考え方やフレームワークには、リーダーシップの基礎となるさまざまな考え方が詰まっています。
また本記事で紹介したOODAループやマッキンゼーの7Sのように、リーダーとして意思決定に関わったり、事業戦略を立てたりするときに役立つフレームワークもあります。
リーダーシップを発揮するために必要な考え方やフレームワークを知り、少しずつ実践に移していきましょう。
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