離職という言葉を聞くとまずネガティブな印象しかなく、会社側としては出来れば避けたいと思うものです。
しかしながら、個人は会社の奴隷ではなく、会社を取捨選択できる権利を持っています。
ましてや今は時代の流れで働く意味にも多様性が増しており、終身雇用制というものはもはや崩れているに等しいこの世の中において、離職という現象は起きて当たり前という時代になっていると言わざるを得ません。
では、離職は仕方ないのかというと一概にそうではなく、やむを得ない離職とそうでないものに分けられます。
少し言い方を変えるならば、離職する本人にとって幸か不幸かに分かれるということです。
今回は、このやむを得ない幸せな離職とそうでない不幸な離職の違いについてご説明をし、不幸な離職を避ける為の考え方についてご紹介します。
目次
幸か不幸かの離職の違い
幸せな離職と表現すると誤解を招くかもしれませんが、要は個人が今後より高みへステップアップする為の、会社側にとっては残念だが致し方ない離職という意味です。
例えば、あるIT企業でバリバリ活躍していたベテラン社員から、「自分は学生の頃からミュージシャンに憧れており、今でもそれが捨てられずどうしてもその道に挑戦したく、某音楽会社に転職したい」と少し極端な例えですがこのような理由で離職の申し出があったとします。
会社側はこの人に今の会社にいることでそれを実現させてあげることは不可能に近い、つまり別の組織に移らない限りこの社員の欲している有益性は獲得できない為、その人の今後の成長そして幸せを考えた場合、どうすることもできないのです。
このような個人が欲している有益性が自組織では実現できない場合は致し方ない、つまり個人にとって幸せな離職となりますが、
次のようなケースは違います。
同じように、あるIT企業でバリバリ活躍していた社員が、「自分はここではもう成長し尽くしたので、もっと上のスキルを目指せる同業の〇〇社へ転職したいです」といった申し出があった場合は注意が必要です。
何故ならその社員が欲している“もっと上のスキル”という成長の有益性は今の会社にいても実現可能かもしれないのに、自己評価により勝手に決めつけている可能性が高いからです。
実は本人のスキルは他者評価的には低かったにも関わらずもし〇〇社へ転職してしまったら、その会社についていけず成長感を感じるなんてことはなく辛くなり、また今度は逃げることが趣旨となった転職をするといった不幸な離職に繋がりかねません。
成長感を感じ続けられる環境が大切
幸か不幸かを分ける離職の違いのポイントは、個人が求める成長という有益性がその会社で獲得することが可能かどうかによります。
よって、個人はその時々で内容は異なることはあれ、成長感を感じている間は無駄に離職はし難くなります。
まだまだ今の会社で成長できる努力要素は多分にあるにも関わらず、「別の会社であれば自分はもっと成長できる」と錯覚を起こさないよう、上司は常に部下が成長感を感じることができる環境をつくらなければなりません。
その中で特にポイントになることは、常に不足が発生する環境を作ることです。
成長とは「出来なかったことが出来るようになること」であり、その為にはまず出来なかったことつまり不足を認識することからスタートします。
間違っても永遠にクリアーさせないゴール設定をするということではなく、達成した事実があれば次のゴールの設定基準を少しでも上げていき、不足が発生し得る環境をつくることです。
そして、発生した不足に対して正しい改善行動を取ることで必ずいつか出来たというタイミングが訪れ、成長感という有益性を獲得するのです。
まとめ
今回は、致し方ない離職とそうでない離職との違いを幸か不幸かという表現に分けて説明し、不幸な離職を発生させないポイントを簡単にご紹介しました。
- 今の会社でも欲している有益性は獲得可能にも関わらず、自己評価により別の会社でなければそれが不可能だと錯覚し離職をすることは不幸な離職となる。
- 不幸な離職を発生させない為に上司は部下に対して常に成長感を感じることが可能な環境設定、つまり不足を認識させるマネジメントをすることが求められる。
不幸な離職を減らすために、まずは成長できる環境づくりにフォーカスしましょう。