現在、世界中でブームとなっている『鬼滅の刃』は、『週刊少年ジャンプ』にて2016年11号から2020年24号まで掲載されていた漫画作品です。
『鬼滅の刃』には、主人公「炭治郎」以外にも個性的なキャラクターが多数登場します。その中でも特に異質な空気を放っているのが、「柱」の実質的なリーダー「悲鳴嶼行冥」です。
本記事では、悲鳴嶼行冥が信頼されるリーダーになれた理由を紐解きます。
目次
鬼滅の刃とは?
※本記事はネタバレを含みます。
『鬼滅の刃』は『週刊少年ジャンプ』で連載されていた、吾峠呼世晴先生の漫画作品です。
本作の主人公「炭次郎」は田舎の一軒家に住む6人兄弟の長男。慎ましくも幸せな生活を送っていました。
物語は一家が鬼に襲撃されるところから幕を開けます。炭を売りに街へ出ていた炭次郎は「今日は鬼が出るから泊まっていきなさい」と知り合いに声をかけられ、その晩は自宅に帰ることを取りやめました。
翌朝、戻ってみると家族は鬼に殺されていて、かろうじて息をしていた妹の禰豆子も鬼に変えられてしまっていました。
そんな妹を人間に戻すための手がかりを探しに、炭次郎は鬼の頭領「鬼舞辻無惨」を探す旅に出るのです。
そして、炭治郎が連れられた「柱合会議」で悲鳴嶼行明が初登場。隊の規律に反して鬼である「禰󠄀豆子」を連れている炭治郎に対し「あぁなんというみすぼらしい子供だ可哀想に。生まれてきたこと自体が可哀想だ」と呟いたのでした。
鬼滅の刃はなぜ日本でヒットしたのか?
『鬼滅の刃』の魅力は個性溢れるキャラクターたちです。主人公の炭治郎とともに行動する我妻善逸、嘴平伊之助や、鬼殺隊の最高戦力である「柱」たちなど、魅力的なキャラクターが登場します。
誰が読んでも「好きなキャラクター」を見つけやすく、感情移入をしやすいことが『鬼滅の刃』の特徴です。
また、鬼殺隊のストーリーは、何者でもなかったひとりの主人公が成長して諸悪の根元を滅する物語。
ジャンプの王道的な「正義」VS「悪」の構図をわかりやすく継承しながらも、実は「悪」にも壮絶な過去があった、という大人泣かせのストーリーでもあります。
鬼滅の刃が日本社会に与えたもの
『鬼滅の刃』は、私たちに作品を通して「有限の美しさ」を教えてくれます。
主人公たちと敵対する鬼たちは、圧倒的な力とほぼ不老不死に近い能力を持ってます。一方で、人間的な生き方はできなくなり、人を襲って喰らうようになるのです。
人は有限の命と力を使って鬼たちを食い止め、未来のためにより良い社会を作ろうとします。
圧倒的な戦力を前に、限られた命で信念を貫く登場人物たちの姿に、感銘を受けた人は多いでしょう。
特に、「無限列車編」で「煉獄杏寿郎」が発した「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」という言葉は、多くの人の心を打ったのではないでしょうか。
鬼殺隊一頼れる隊員【悲鳴嶼行冥】
『鬼滅の刃』に登場する鬼殺隊員の中でも、特に優秀な人員で構成された「柱」は、それぞれのメンバーが圧倒的な戦力を有しています。
悲鳴嶼行冥は、そんな柱を束ねるリーダーの役割を担っています。
ここからは、悲鳴嶼行冥の人生やマネジメント能力を掘り下げていきます。
悲鳴嶼行冥とは?
誕生日 | 8月23日 |
年齢 | 27歳 |
身長 | 220cm |
体重 | 130kg |
出身地 | 東京府 靑梅 日の出山 |
声優 | 杉田 智和 |
悲鳴嶼行冥は、鬼殺隊に9人いる柱の中のひとりで、生まれつき盲目。
普段から僧侶のような格好をしており、常に数珠を身につけていることが特徴的な人物です。
その見た目とは裏腹に、「柱合会議」に連行された「炭治郎」に対して「生まれてきたこと自体が可哀想だから殺してやろう」と発言するなど、無慈悲な側面もあります。
しかし、辛辣な発言をするのは、悲鳴嶼が「鬼殺隊の実質的リーダー」という重大な任務を担っているからであり、責任感が強いことの表れでもあるのです。
鬼殺隊における悲鳴嶼行冥の役割
悲鳴嶼行冥は、鬼殺隊随一の実力者のため、全鬼殺隊のリーダー「産屋敷」から信頼を得ています。
産屋敷が自らを餌にして敵を誘き出すという策を講じた際は、悲鳴嶼にだけ作戦の全貌を事前に伝えていました。
公式ファンブックでは、他の柱が悲鳴嶼に対して抱いている印象が記載されていますが、全員が総じて「尊敬している」「信頼できる」と発言しています。
他人に対してあたりが強い「不死川実弥」ですら悲鳴嶼に対しては敬語で会話しているため、リーダーとして尊敬を集めていたことは間違い無いでしょう。
鬼殺隊最強キャラ
悲鳴嶼行冥は身長が220cmと体が大きく、他の柱よりもフィジカルが優れています。さらに、恵まれた体格に驕ることなく日々鍛錬を積んでいるため、柱の中でも圧倒的な強さを有しているのが特徴です。
その強さは鬼の中で最強クラスの実力を誇る「黒死牟」が「これほどの剣士を拝むのは三百年ぶり」と漏らすほど。
その強さは才能だけではなく、鬼を殲滅するという強い意志から続けた努力からきています。
常に技を磨き続ける悲鳴嶼からは、愚直に努力することの大切さを学べます。
壮絶な過去を秘めている
元々、寺で9人の子供と暮らしていた悲鳴嶼ですが、子供のひとりが言いつけを守らずに夜まで外出し、鬼と遭遇します。
その子供は、自分が助かるために寺の場所を案内して、悲鳴嶼と8人の子供たちを食わせることを鬼に提案しました。
寺にいた子供たちは、目の見えない悲鳴嶼を置いて逃げてしまい、7人の子供が直ぐに鬼に殺されてしまいます。
悲鳴嶼は「沙代」という少女だけは守り抜きたい一心で鬼の顔を朝まで殴り続け、日の光により鬼を消滅させることに成功します。
しかし、悲鳴嶼は命をかけて守った「沙代」に「あの人は化け物。みんなあの人が殺した」と虚偽の発言を受け、悲鳴嶼は死刑になることに。
その後産屋敷に救われ、鬼殺隊に入ることになるのですが、こうした経緯もあり悲鳴嶼は子供によい印象を持っていませんでした。
しかし、このエピソードは悲鳴嶼の勘違いが含まれており、後に真実が発覚することとなります。
悲鳴嶼行冥の戦い方
悲鳴嶼の戦い方は、他の隊員とは少し異なった、フィジカルを活かした戦闘スタイルです。
ここからは、悲鳴嶼が使用している呼吸や武器について具体的に解説していきます。
岩の呼吸の使い手
悲鳴嶼は、炎や水の呼吸と同じように、基本の呼吸のひとつである「岩の呼吸」を用います。
岩の呼吸は「強固な信念を元に行動できる人物」に相応しいとされているため、悲鳴嶼にぴったりな呼吸です。
岩の呼吸は力で押し通す性質があり、足捌きや体捌きで技の威力を向上させる他の呼吸とは異なります。
短調ですが誰もが使える呼吸ではなく、岩の呼吸から派生した他の呼吸はありません。
岩の呼吸には以下の5つの技が存在します。
- 岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極
- 岩の呼吸 弐ノ型 天面砕き
- 岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚
- 岩の呼吸 肆ノ型 流紋岩・速征
- 岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部
特殊な武器を用いる
悲鳴嶼が扱う武器は一般的な刀ではなく、鉄球と斧を鎖でつないだものを使用しています。
練度の高い鉄で作られたこの武器は、太陽光をふんだんに吸収するため、太陽が苦手な大抵の鬼であれば、当てるだけで殲滅することができます。
最強の鬼である上弦の壱「黒死牟」でさえ「当たれば致命傷」と判断し、攻撃を避けていることから武器の強力さがよくわかります。
【悲鳴嶼行冥のマネジメント術】悲鳴嶼行冥が信頼を勝ち取れた理由
悲鳴嶼行冥は仲間に慕われており、上司である産屋敷も一目置くほどでした。
組織において信頼を獲得できたのは、単純な強さだけでなく、信頼に見合った行動をしていたからです。
悲鳴嶼がなぜ信頼を獲得できたのか、具体的なエピソードを踏まえて紐解いていきましょう。
【悲鳴嶼行冥のマネジメント術】何かを達成したら具体的に褒める
悲鳴嶼は基本的に他人にも自分にも厳しい性格ですが「部下が目標を達成したら褒める」という一面を持っています。
例えば、厳しい訓練をやり遂げた炭治郎には「君は特別な子供だ。よくやり遂げたな」と賞賛しています。
そして、この言葉を受け取った炭治郎は謙遜しながらも、子供のような笑みを浮かべ、その後もこの言葉を胸に戦いに挑みます。
組織においても同様です。
部下が目標を達成した際、「それが当たり前」と思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、適切に部下を褒めることで、部下のモチベーションは向上します。
「気に入られるために褒める」は管理職として失格ですが、適度に褒めるという視点は部下のモチベーションアップのために必要です。
【悲鳴嶼行冥のマネジメント術】コーチングをする
悲鳴嶼行明は、コーチング型リーダーとしての素質がありました。
コーチング型リーダーとは、相手の話に耳を傾け、目標達成に向けモチベーションを高める指導者のことです。
悲鳴嶼行明の才能が発揮されたのは、風柱の弟不死川玄弥を指導した時です。
不死川玄弥は呼吸を使う力はありませんでしたが、鬼を食し自身の能力を向上させるスキルを持っていました。
このスキルは鬼を滅したい鬼殺隊からすると異質なスキルであったため、そのことを兄である風柱からも非難されていたのです。(※)
一度は、不死川玄弥が継子(才能が認めれた弟子)に志願しても「呼吸を支える才能がない」という理由で断った悲鳴嶼行明でしたが、鬼食いというスキルがあることを知ってからはそれを案じ、弟子として不死川玄弥を受け入れ、指導しています。
悲鳴嶼行明は、不死川玄弥に土の呼吸を教えることはありませんでしたが、集中力を高める方法など、不死川玄弥の成長に必要なことを教えています。
できないことで一蹴するのではなく、部下の話を聞き、強みを活かすためのアドバイスをした点で、悲鳴嶼行明はコーチング型のリーダーといえそうです。
※後になり、弟には幸せな家庭を築いて欲しかったから厳しく当たっていたということが明らかになります。
悲鳴嶼行冥の名言から学ぶマネジメント
悲鳴嶼行冥は「胡蝶しのぶ」や「煉獄杏寿郎」などと比べると、発言する回数が少ないですが、実は多くの名言を残しています。
悲鳴嶼の名言について、マネジメントの観点も合わせながら確認していきましょう。
「疑いは晴れた 誰が何と言おうと私は君を認める 竈門炭治郎」
『鬼滅の刃』では、鬼殺隊の全体的な戦力を上げるために「柱稽古」が実施されます。
「柱稽古」とは、柱による直々の稽古のことです。
9人の柱が独自に課題を設定していましたが、悲鳴嶼は最後の難所として、滝修行などの厳しい課題を設定しました。
炭治郎が満身創痍になりつつ課題を達成すると、悲鳴嶼が炭治郎に対して「疑いは晴れた 誰が何と言おうと私は君を認める 竈門炭治郎」という言葉を発します。
過去のトラウマから、子供に対して疑心暗鬼になっていた悲鳴嶼でしたが、炭治郎のひたむきな姿や成果を素直に認めたのです。
マネジメントにおいても同様です。
一定の成果を挙げた部下は適切に評価し、時にはモチベーションアップのために褒めるといったことも必要です。
「心頭…滅却すれば……火もまた涼し……」
これは柱稽古での悲鳴嶼のセリフです。
悲鳴嶼は、実際に火に囲まれながら丸太を担いでトレーニングしていました。
一見すると異様な光景ですが、このセリフからは、悲鳴嶼の精神の強さが顕著に現れています。
悲鳴嶼は、鬼殺隊の「岩柱」として、曲者揃いの柱をまとめ上げていました。
人の命を預かる仕事でリーダーを務めるというのは想像を絶するストレスがあるでしょう。
しかし、悲鳴嶼は「鬼を滅する」というブレない信念で役割をこなしています。
理不尽なことが起こったとしても耐え抜くストレス耐性は、現在のリーダーにも必要不可欠です。
悲鳴嶼行冥から学ぶ|リーダーのあるべき姿とは?
悲鳴嶼の信念を貫き、立場を全うする姿からは、以下のようなリーダーのあるべき姿が見て取れます。
- 挫折に負けないストレス耐性
- 部下に任せる姿勢
社会で人の上に立つ人物にとっては役に立つものですから、それぞれ確認していきましょう。
挫折に負けないストレス耐性
組織でチームをまとめ上げるリーダーには、常にストレスがつきまといます。
部下が招いた思わぬトラブル、取引先との関係の破綻、売上の落ち込みなどストレス要因を挙げればきりがありません。
しかし、リーダーはこうしたストレスに耐え抜き、いつでも前を向いて部下を引っ張っていく必要があります。
悲鳴嶼行冥からは、過去の理不尽にも耐え抜き組織をまとめ上げるストレス耐性を学べます。
部下に任せる姿勢
部下を指導する上ではプロセスの全てを明示せず、部下に考え行動させることが大切です。
全て上司から教えてもらえると思った部下は、じきに自分で考えることをやめ、上司からの指示を待つだけの社員となってしまいます。
そして、指示待ち人間がいる限り、上司の負担は減ることはなく、成長性にかける組織になってしまいます。
組織力を上げるためには、考える部下が必要です。
このため、時には自分でやった方が早い仕事も部下に任せ見守る。
そうしたマネジメントが組織を強くするために必要です。
まとめ|悲鳴嶼行冥が尊敬されていたのはコーチング型のリーダーだったから
悲鳴嶼行冥は無惨との死闘で致命傷を負って死亡するという結末を迎えました。
悲鳴嶼は、死ぬ間際、あの世で寺で一緒に生活していた子供たちと会うことになり、真実を聞かされることになります。
それは、鬼が寺に来たとき、子供たちは悲鳴嶼を見捨てて逃亡したのではなく、武器や人を探して目の見えない悲鳴嶼を守ろうとしていたことでした。
また、唯一生き残った「沙代」が発言した「あの人は化け物」というセリフは、鬼に向けたものであり、気が動転して悲鳴嶼に向けた発してしまったことが、作者によって明らかになっています。
沙代は自分の発言を後悔し、謝りたいと思っていたらしく、悲鳴嶼の最後を見送った「隠(鬼殺隊のサポート部隊)」のひとりが沙代ではないかという考察も存在します。
悲鳴嶼行冥は、他の柱たちと比べてもかなり異質な存在ですが、圧倒的な強さとリーダーシップを持っている人物です。
部下の話を聞き、部下の力を最大限まで高める方法を一緒に考え、適切なアドバイスができるコーチング型のリーダー。
リーダーとして活躍していきたい人にとって、悲鳴嶼はまさに見習うべき存在です。
ディスクリプション
「悲鳴嶼行冥」は、鬼滅の刃に登場する柱のひとりであり、リーダーとしての役割を担っています。本記事では、悲鳴嶼の強さの秘訣やリーダーシップについて解説します。