突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?
- 「資金繰りが大事なのはわかるけど、具体的にはどういうものなの?」
- 「資金繰りが悪化する理由・改善する方法がよくわからない」
- 「安定した資金繰りのためにできることは?」
資金繰りは会社経営を左右する非常に重要な要素です。資金繰りが悪化してしまうと黒字でも倒産する危険性があり、資金繰りに悩む企業経営者は少なくありません。
とはいえ「資金繰りが大事」とわかってはいるものの「資金繰りって具体的には何を指すの?」というように、正確に把握できていない人も多いでしょう。資金繰りがどのような仕組みなのかを理解することで、よりゆとりのある経営が可能になるはずです。
そこで本記事では、資金繰りに関する基本的な知識から、資金繰りが悪化する理由や改善する方法、資金繰り表について解説していきます。
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はじめに:経済産業省による資金繰り支援の徹底に関する要請
まずはじめに、2021年12月21日に発表された、資金繰りに関する経済産業省のニュースリリースを共有します。
新型コロナウイルスの流行による影響から、厳しい状況に置かれている事業者が数多く存在します。また、そのような事業者からは金融機関等に対して厳しい意見や要望もあり、資金需要が高まる年末に向けて事業者の資金繰りに支障が生じないようにしなければなりません。
このような背景があり、経済産業省は2021年12月21日、経済産業省は財務省・金融庁等の関係省庁とともに、「『コロナ克服・新時代開拓のための経済対策』を踏まえた事業者支援の徹底等について」で記した事項について、営業現場の第一線まで浸透するように周知・徹底するように要請しました。
『コロナ克服・新時代開拓のための経済対策』を踏まえた事業者支援の徹底等について
周知・徹底が養成された事項は、下記のものです。
- 資金需要が高まる年末に備えて、事業者のニーズに応じたきめ細やかな支援を徹底すること
- 事業者の決算状況・借入状況や条件変更の有無等の事象だけで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性や需要の回復なども踏まえ、丁寧かつ親身に対応すること
- 返済期間・措置期間の長期の延長を提案するなど、事業者の実情に応じて柔軟かつ迅速に対応すること
(参考:年末の資金繰り支援の徹底等について要請しました丨経済産業省)
(参考:「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について丨経済産業省)
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Withコロナ時代のマーケティング 鍵はデフレーミングと事業の再定義資金繰りとは
上記で見たように、現在は新型コロナウイルスにより資金繰りが苦しくなっている企業が数多く存在します。
そもそも、「資金繰り」とは何を指しているのでしょうか? 一言でいうと、資金の流れを管理することです。
「資金」とは、
- 現金
- 普通預金
- 当座預金
- 通知預金
などが該当し、会社として「今すぐ支払いに使えるもの」を指しています。その一方で、「売掛金」や「上場株式」「不動産」「設備」などはすぐに支払いに使えず現金化に時間がかかるため、これらは「資金」ではなく、「資産」に該当します。
資金は人の体で例えると「血液」や「空気」のようなもので、資金の流れが滞ると会社は活動することができず、倒産してしまいます。
したがって企業が生き残るためにも、収入として入ってくる資金と支出として会社から出ていく資金の過不足を管理する「資金繰り」を行い、収支の過不足を調整しなければなりません。
「資金=利益」ではない
「資金=利益」というように考えている経営者の方もいるかもしれませんが、この解釈は正しくありません。仮に会社が利益を得て儲かっていたとしても、資金が足りていないケースはあります。
例えば、1月に売上が発生して3月に入金がある場合は、経理処理状は利益と売上が計上されますが、資金は増えていないケースが考えられます。また、200万円の設備を買って1ヶ月後に現金200万円を支払うのであれば、経理上は減価償却として数年にわたり処理されます。
利益のことを資金だと考えていると、経理処理をすることが資金繰りを適切に行うことだと考えてしまうため注意しましょう。資金は帳簿上の利益ではなく、あくまでも「すぐに利用できる現金や預金」であり、会計上の利益は現金を表してるわけではありません。
資金とは?
ここでどのようなものが「資金」に該当するか、詳しく見ていきましょう。下記のものがすぐに支払いに使える資金に該当します。
- 現金
- 普通預金
- 当座預金
- 通知預金
- 譲渡性預金
- 公社債投資信託
- コマーシャルペーパー
- 売戻し条件付き現金
キャッシュフローと資金繰りの違い
資金繰りと混同されがちな概念として「キャッシュフロー」が挙げられます。どちらも「資金の流れ」に注目しているものであり意味合いは似ていますが、その目的や視点は違うため別物として考えるようにしましょう。
キャッシュフローは現金の流れを表し、「決算の数字をもとに財務内容を把握するもの」です。一方で資金繰りは「将来的な支出と収入を把握し、今後の戦略や方針に用いるもの」です。
キャッシュフローは過去から現在にかけてどのように資金が動いたのかを分析することで、経営課題の改善ができます。そして資金繰りでは未来の資金の流れを把握することで、資金不足にならないようにすることができます。
このように、どちらも目的が異なるため、キャッシュフローと資金繰りは分けて考えましょう。
黒字倒産を避けるためにも資金繰りが必要
資金繰りが求められる理由は、今すぐ利用できる資金がある程度なければ企業を存続することができないからです。
ビジネスを続けるために重要なことは黒字を維持することだけではありません。手元にどれだけの資金が残っているかも重要です。
例えば、帳簿上は黒字だとしても資金の回収が遅れたり、設備投資のせいで資金が足りない状態に陥ると、すなわち「資金繰りが悪化している」ことになります。
売上や営業利益が下がったとしても、倒産に直結するわけではありません。しかし、黒字だとしても資金が一時的にでも足りなくなれば、従業員の給与や取引先への支払いができず、結果的に倒産してしまうリスクが高まります。これがいわゆる「黒字倒産」です。
また赤字経営であれば、資金繰りは入念に行わなければなりません。資金がショートしないように、適切な資金繰りを行いましょう。
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なぜ、資金繰りは悪化するのでしょうか? またどのような点に気をつけて資金繰りをするべきなのでしょうか? ここでは資金繰りが悪化する理由や原因を見ていきましょう。
- 売上が減る
- 急激に売上が増える
- 売掛金の回収が遅れる
- コストが増える
それでは1つずつ解説していきます。
売上が減る
売上が減った結果、資金繰りが悪化するのはよくあるケースです。例えば、毎月500万円の売上がある企業が、急に400万円の売上になると収入が100万円減ることになり、100万円の資金が使えなくなります。
このとき、同時に支出も100万円減らせる場合は資金不足にはならず、資金繰りも悪化しません。しかし、売上が減ったとしても同じように経費の支出が減るわけではなく、事業所の家賃や従業員の給与などの固定費は変わらず支払い続ける必要があります。
その結果、資金繰りが悪化してしまいます。
急激に売上が増える
対して、売上が増えた場合にも資金繰りが悪化するケースがあります。売上が増えれば収入も増えるため、資金繰りが改善しそうですよね。しかし、必ずしもそうなるとは限りません。
なぜなら、商品販売を行う小売りの場合は、商品の仕入れにかかる経費も必要になり、人手が必要な場合は人員増加による人件費が増えてしまうからです。
また、売上が増えても売掛金などで販売先からの支払いが遅れて、商品の仕入れや人件費の支払いを先にしなければならない場合も、利益が上がったとしても資金不足に陥ります。
売掛金の回収が遅れる
商品やサービスを売り上げたとしても、その時点で代金を受け取らず支払期日を設けて、後日代金を回収する「掛け売り」の決済形態をとっていた場合は、すぐに資金は入ってきません。
例えば、月末締めで翌月末払いの場合は、当月の売上金が現金として入ってくるのは翌月末です。しかし、この売掛金を期日までにしっかり支払われれば問題はありませんが、販売先の都合で支払いが遅延することも少なくありません。
販売先から支払われる売上金で従業員の給与や事業所の家賃を支払って資金繰りをしている場合、販売先の支払いが遅れることで資金がショートしてしまうことがあります。
したがって、商品販売等による売上が立つのであれば、可能な限り迅速に資金を回収して、仕入などの支払いは猶予してもらうことが、資金繰りを改善するポイントとなります。
コストが増える
コストが増えることも、資金繰りの悪化の要因です。
企業経営においては、
- 仕入れコスト
- 人件費
- 事業所の家賃
- 水道代や光熱費
といった様々なコストがかかります。このとき重要なポイントは、かかるコストのうちどれが「人件費」や「家賃」といったように売上に無関係に生じる「固定費」なのか、仕入れ代などの売上の増減に応じてかかるコストが変わる「変動費」なのかをチェックすることです。
もし、固定費を削減できるのであれば、毎月の支払額を安くできるため資金繰りを改善できる可能性があります。現在利用している事業所の家賃が高すぎる場合、大家さんに家賃交渉をするか、引っ越しを視野に入れてみましょう。
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資金繰りを改善するための方法として、「資金繰り表」の作成が挙げられます。資金繰り表とは、名前の通り企業の資金繰り状況を表した表のことです。収入や支出をもとに、損益計算書では把握できないお金の出入りを把握できます。
この資金繰り表はなぜ重要なのか、そしてどのような項目で構成されているのかを見ていきましょう。
資金繰り表の重要性
上記で解説したように、資金繰りができていないと黒字でも倒産することがあります。資金繰り表を作成することで収支の把握が可能になるため、資金がショートすることを回避できたり、資金繰り計画を改善することに大いに役立ちます。
また、資金繰り表によって事前に会社のキャッシュフローを分析することも可能です。資金繰り表を作ることで、資金化していない資産を見直せば、すぐに資金繰りの悪化が改善されるかもしれません。
資金繰り表に必要な項目
資金繰り表の作成に明確な作り方があるわけではありませんが、最低限必要になる4つの項目を見ていきましょう。
- 営業収支
- 経常収支
- 経常外収支
- 財務収支
それでは1つずつ解説していきます。
営業収支
営業収支とは、事業でどれだけ現金を生み出しているかを表したものです。売上高から、販売する商品などの仕入原価である売上原価を差し引くことで「売上総利益」を求められます。
売上総利益とは、売り上げから商品の原価を引いた利益のことで、「粗利」や「粗利益」ともいいます。この売上総利益から「販売費及び一般管理費」を差し引くと、営業収支における利益を算出することが可能です。
販売費及び一般管理費とは、商品やサービスを売るために直接かかる費用である「販売費」と、会社全般の業務の管理活動にかかる費用である「一般管理費」の合計額のことです。
これらを式にすると下記のようになります。
「営業収支=売上総利益-販売費及び一般管理費」
この営業収支がプラスになっていれば、資金が安定していることがわかります。
経常収支
経常収支とは、事業以外の財務活動による支出と収入を指しています。これにより、事業で営業収支がプラスになっていたとしても、利息の支払いや借入金の返済による負担がある場合は経常収支が赤字になってしまうのです。
経常収支を求めるには下記の計算式で算出できます。
「経常収支=営業収支+営業外収支-営業外費用」
経常収支は、企業の経営成績が現れやすい項目とされています。
経常外収支
経常外収支とは、業務の収支に直接関わらない設備投資費や税金の支払いなど、本業の仕入れや経費以外で支出したものと、補助金の収入、保険の解約収入など本業とは異なる収入のことです。
設備投資の規模が大きい場合は、経常外収支が赤字になりかねません。
財務収支
財務収支とは、主に借入金の調達と返済を指しており、銀行への返済金や借入金を記載します。
財務収支がプラスの場合は借入金(返すべきお金)が増えているということなので、経営が難しい状況に陥っていることがわかります。
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資金繰りを的確に行うことは、経営者にとって最も重要な仕事であるといっても過言ではありません。
なぜなら、資金繰りが悪化して資金がショートすれば、黒字の場合でも倒産する危険性があり、借金だけが残るかもしれないからです。
そのようなことにならないためにも、適切に資金繰りを行っていくことが求められます。
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