レピュテーションマネジメントは直訳すると「評判管理」です。文字通り、評判を管理して企業ブランドのイメージを維持・向上させる活動を指します。
また不祥事や風評被害があったときに、失墜した社会的信頼や評判を回復することもレピュテーションマネジメントです。
この記事を読むことで、
- レピュテーションマネジメントの意味がわかる
- レピュテーションマネジメントの失敗、成功事例がわかる
- レピュテーションマネジメントの具体的な施策やメリットが分かる
ようになります。
最後まで読むことで、レピュテーションマネジメントの考え方を理解・実践できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
レピュテーションマネジメントとは
レピュテーションマネジメントとは文字通り「評判(reputation)」を「管理(management)」する、マネジメント活動のひとつです。
企業が自社の評判やブランドイメージが悪くならないように、また向上させるための企業活動のことを指します。評判はユーザーや消費者が決めるものですが、そこに企業も積極的に介入することで自社が望む評判を構築していくのです。
そのなかでも最近注目されているのは、評判が悪くなり始めた初期の段階で、それ以上の悪化を防ぐための取り組みです。
もともと「ポジティブなイメージ」よりも「ネガティブなイメージ」のほうが広まるのが早いですが、SNSが普及した今日では、その速度が圧倒的に加速していることが理由にあげられます。
対象のステークホルダー
レピュテーションマネジメントを実践していく際、対象となるステークホルダー(利害関係者)がいます。企業が注意するべきステークホルダーは下記の通りです。
- 企業のイメージや安定性、社会的評価を気にする社員
- 高品質のサービスや製品を望む消費者と取引先
- 企業に対して社会貢献を望む地域社会
- 発言力のあるインフルエンサー
- 将来性に注目する株主
このように、企業は自社に関する数多くのステークホルダーに対して、レピュテーションマネジメントを行っていく必要があります。さらに、それぞれのステークホルダーごとに企業に求めるものが違えば効果的な対応の仕方も違うので、アプローチを変えて行うべきです。
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レピュテーションマネジメントが重要な理由
今日のようにインターネットやスマホが普及し、誰もがSNSで情報を発信している時代において、レピュテーションマネジメントは非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、誰もが情報を発信できるということは、場合によっては真偽が確かめられる前に企業の悪評が瞬く間に広まってしまうからです。そこから事実にそぐわない風評被害が生じるといったレピュテーションリスクに速やかに対応できなければ、「炎上」し株価や売上に大きな悪影響を与えてしまいます。
また、悪いレピュテーションに対応するだけでなく、良いレピュテーションを広げて企業ブランドのイメージや好感度を向上させることも必要です。
評判は良くも悪くも企業にとって非常に強い影響力を持つため、今やレピュテーションマネジメントは必須かつ急務の課題といえます。
レピュテーションマネジメントの2つの目的
レピュテーションマネジメントを実践する目的は、大きく下記の2つに分けられます。
- レピュテーションの維持と向上
- 悪化したレピュテーションの対応と回復
どちらも重要になるため、企業はこの2つをよく理解してレピュテーションマネジメントを実践していくことが重要です。
それでは1つずつ解説していきます。
レピュテーションの維持と向上
まず1つ目の目的は、レピュテーションの維持と向上です。これは「攻めのレピュテーションマネジメント」や「平常時のコミュニケーション」と呼ばれることもあります。
もともとイメージが良い企業が、そのイメージを維持しつつ、さらに好感度を高めていくために行われる活動が攻めのレピュテーションマネジメントです。悪い評判がない状態を維持することも大切ですが、日々変化する時代においては、維持するだけでなく向上させていかなければなりません。
そのためには日常的な広報活動やSNSを用いた情報発信などの「平常時のコミュニケーション」が重要になります。このようにして、ステークホルダーに自社のポジティブなイメージを持ってもらうようにしておきましょう。
悪化したレピュテーションの対応と回復
2つ目の目的は、悪化したレピュテーションの対応と回復です。これは「守りのレピュテーションマネジメント」や「緊急時のコミュニケーション」と呼ばれます。
守りのレピュテーションマネジメントは、風評被害や不祥事によって自社にネガティブなイメージがついてしまった際の対応や、落ちてしまった評判を回復させる活動のことです。
不祥事や風評被害などの緊急時には、ステークホルダーに対して情報を公開したり謝罪会見を行ったりといった「緊急時のコミュニケーション」が求められます。
また、守りのレピュテーションマネジメントには、緊急事態が生じることに対して前もって対策する「リスクマネジメント」と、既に生じたネガティブな事態に対して的確かつ速やかに対応する「クライシスマネジメント」が存在します。
レピュテーションマネジメントの事例
レピュテーションマネジメントは世界中で導入されており、その事例はいくつも知られています。
ここで解説する事例は下記の失敗事例と成功事例です。
- レピュテーションマネジメントを怠り倒産してしまったピザーラ
- トラブルに見事対処し評判を回復させたジョンソン・エンド・ジョンソン
それでは1つずつ解説していきます。
失敗事例:倒産にまで至ったピザーラ
失敗事例として紹介するのは、2016年に倒産した宅配ピザチェーン「ピザーラ」のフランチャイズ経営をしていた有限会社ワンダーです。
売上のピークが2億5,000万円を誇っていた当社が倒産したきっかけは、バイトによる不祥事、いわゆる「バイトテロ」でした。
2013年、ワンダーが経営していたピザーラのフランチャイズ店で働いていたアルバイトが、厨房で不衛生な悪ふざけをしている動画を撮影し、インターネット上にアップロードしたことで大炎上。その結果、社会的信頼を大きく損なったのです。
この時、ワンダーは謝罪文の公表により事態収束を図りましたが、その後に信頼を回復させることができず、2016年に倒産してしまいました。
成功事例:トラブルから評判を回復させたジョンソン・エンド・ジョンソン
続いて成功事例として紹介するのは「これまでで最も優れたレピュテーションマネジメント」と評価される、ジョンソン・エンド・ジョンソンの事例です。
1982年、ジョンソン・エンド・ジョンソンが販売していた鎮痛剤に第三者が毒物を混入させ、7名もの犠牲者がでる事件が発生しました。「タイレノール事件」として社会を震撼させ、ジョンソン・エンド・ジョンソンの社会的信頼は失墜。ついには破産寸前という状況になりました。
しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソンはこの事件に対して、迅速かつ的確な対応を見せました。2,200万本の商品を自主回収し、新聞やテレビなどのメディアを用いて警告を出したのです。テレビによる情報発信では全米の85%の世帯が2回以上も視聴したとされるほど力を入れていました。
この結果、ジョンソン・エンド・ジョンソンでは莫大なコストがかかりましたが、速やかな情報提供と対応により2ヶ月後には事件前の売上の80%まで回復させています。さらに、当社のコンプライアンスに対する意識の高さが社会に評価され、評判も上がりました。
レピュテーションマネジメントを実施する方法
レピュテーションマネジメントを実施する際に対象となる人は消費者だけではなく、株主、取引先や社員、地域社会など様々なステークホルダーが含まれます。
それぞれのステークホルダーによって求められるポイントは異なるため、状況や立場に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
実施する方法は下記の4つがあります。
- 専門とする企業に依頼する
- 緊急事態への体制をつくる
- 社員に対する教育をする
- 対話チャネルを設ける
それでは1つずつ解説していきます。
専門とする企業に依頼する
レピュテーションマネジメントを実施するのであれば、まず最も確実で効果が期待できる方法は、レピュテーションマネジメントを専門とする企業に依頼することです。
専門企業であれば多くの事例を取り扱ってきており、独自の知見や技術があるため、高い効果が期待できます。
しかし、レピュテーションマネジメントは組織のリーダーや担当となった人物だけが対応すれば良いわけではありません。プロに丸投げをするのではなく、社員一人ひとりが専門企業から得たノウハウを吸収する心構えを持つ必要があります。
緊急事態への体制をつくる
レピュテーションマネジメントには「攻め」と「守り」があると解説しましたが、特に重要になるのが「守り」のレピュテーションマネジメントです。
今日ではいつ、どのような形で不祥事が起こるかわかりません。したがって、そのような事態になった際にどれだけ迅速で的確な対処ができるかが勝負になります。
そこで大切になるのが、レピュテーションリスクを明らかにし、そのリスクごとにどのような対処をするべきかをあらかじめ検討することです。こうすることで、いつでも緊急事態に対応できるようになります。
社員に対する教育
先程解説した「ピザーラ」の失敗事例のように、社員による行動や発言が炎上や悪いレピュテーションのきっかけになることが増えています。
したがって、社員だけでなくアルバイトを含めたすべての従業員に対して、評判を下げる行動をとらないように教育していくことが大切です。
対話チャネルを設ける
レピュテーションマネジメントにおいてステークホルダーとのコミュニケーションは非常に重要な意味を持ちます。したがって、可能な限りステークホルダーと密なコミュニケーションをとれるような対話チャネルを設けておくことが必要です。
年齢層によって使用に最適なコミュニケーションツールが異なるので注意しましょう。高齢のステークホルダーであれば電話、若い人に対してはSNSやチャットを用いるのがおすすめです。
また、全てのステークホルダーに対応していると思い込んで、認知されていないステークホルダーの存在を無視してしまうことにも注意しましょう。彼らの存在を無視して対話チャネルを設けると、意外なところで痛い目をみるリスクがあります。
レピュテーションマネジメントを実施するメリット
レピュテーションマネジメントを実施する目的は、企業の評判を良くしたり風評被害をコントロールすることですが、レピュテーションマネジメントに真剣に取り組むことで、他にもいくつかのメリットを得ることができます。
そのメリットが下記の2点です。
- 消費者の潜在的なニーズを深く理解できる
- 自社に対して無関心な相手をファンにできる
消費者の潜在的なニーズを深く理解できる
まず、消費者の潜在的なニーズを深く理解できることです。
消費者のネガティブな意見については目を背けたくなることもありますが、真摯に対応することで消費者が本当に求めている「潜在的なニーズ」を知ることができます。
消費者のニーズを深く把握できれば、新たな商品開発に役立ったり、サービスをより洗練させられるため、結果的に自社の利益になるのです。
自社に対して無関心な相手をファンにできる
続いてのメリットが、自社に対して無関心な相手を自社のファンにできることです。
レピュテーションマネジメントを通して、ネガティブな意見もポジティブな意見も受け入れるようになることに加えて、不祥事が起きた際にも誠実な対応をすることで自社の評判をあげることができます。
先程解説したジョンソン・エンド・ジョンソンのように、社会を震撼させる事件が起きた場合でも、適切なレピュテーションマネジメントを行うことで、以前よりも評判を上げることも可能です。
このような企業の姿勢を社会に見せることで、今まで自社に無関心・もしくは否定的なイメージを持っていた人の態度を、好意的な態度へと変えていくことができます。
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まとめ レピュテーションマネジメントを導入し評判をあげよう
レピュテーションマネジメントは、企業の評判や信頼が重要な意味を持つ現代にとっては重要な施策です。
「評判はステークホルダーによって形作られるもので、企業が影響を及ぼせるものではない」と考える方もいるかもしれません。しかし実際には、企業が積極的に介入してレピュテーションを上げる方法も存在します。
レピュテーションマネジメントは、不祥事が起きたときだけに実施するものではありません。日常的なステークホルダーとの対話や、不祥事に対する体制づくりをしておくことが重要です。
本記事を参考にレピュテーションマネジメントを導入し、企業ブランドのイメージ向上や評判をあげていきましょう。
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