管理職や経営者の方は、会社全体の運営を担うなかで、組織構造を一から見直す場面があります。
とくに組織構造は会社が拡大するにつれて複雑化しやすく、会社に合った組織構造を採用していなければ事業が軌道に乗らない場面も出てきます。
会社の組織構造を見直す際には、主な組織構造とそのメリット・デメリットを事前に理解しておくことが大切です。
この記事を読むことで、
- 組織構造の意味がわかる
- 代表的な5つの組織構造がわかる
- 5つの組織構造のメリット・デメリットがわかる
ようになります。この記事では、組織における重要な要素、さらに5つの組織構造におけるメリット・デメリットまで詳しくご紹介します。
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目次
組織構造とは
組織構造とは、組織の仕組みや組織がどのようなつくりになっているかを表すものです。また、個人の業務や責任、権限などの仕組みを指しています。
組織を構造化することで下記のようなことが明確になります。
- 誰にどのような仕事をしていくのか?
- 誰に仕事の権限を与えるのか?
- 誰が誰に仕事を依頼するのか?
上記のような細かい指揮系統を整え、権限を明らかにさせておくことで、業務の円滑化や生産性の向上につなげることが、組織構造が重要な目的です。
おさえておきたい代表的な組織構造は下記の5つになります。
- 機能別組織
- 事業部制組織
- チーム型組織
- カンパニー型組織
- マトリックス型組織
これら5つの組織構造は、業務や責任、権限などの範囲が決まっています。
したがって、企業が上記の組織構造を企業内の人員配置に当てはめることで、目標達成のために効率よく事業を進められます。
しかし、どの組織構造が自社に相応しいかは、その企業の規模や事業の数、戦略、市場環境がどのようなものかによって異なるため、最適なものに変えていくことが重要です。
組織構造を正しく理解するために、まず「組織」の意味について解説していきます。
組織構造における組織とは
組織とは、「特定の目的を共に目指す秩序を持つグループ」という意味があります。
組織の「特定の目的」を達成するために、企業は組織を上手く機能させることが重要です。
組織を上手く機能させるために必要なことが下記の2点になります。
- 「分業」の最適化
- 「調整」の最適化
たとえば、エンジニアの技術を持つ社員と会計の技術を持つ社員がいた場合、企業内でそれぞれ「分業」し、効率化が図れるように各社員を適切に「調整」していかなければなりません。
企業の目的を達成するために「分業」され、その分業された仕事を「調整」する仕組みが組織です。そして、その組織におけるさまざまな仕組みを表したのが組織構造になります。
組織に必要な3つの要素
組織を効率的に機能をさせるためには、下記の3つの要素が必要です。
- 共通の目的
- 貢献意欲
- コミュニケーション
これら3つは合わせて「組織の3要素」と呼ばれ、アメリカの経営学者テスター・バーナードが定義しています。
それぞれどのような要素か、詳しく解説していきましょう。
共通の目的
組織においては共通の目的を社員全員に理解してもらい、浸透させておくことが必要です。そして、この共通の目的は組織のリーダーや経営者によって定義づけられます。
したがって、共通の目的がなかったり、社員それぞれで目的が異なっていては、どれだけ優秀な社員を集めても組織とは言えません。
共通の目的を設けて社員に浸透させるには、事業ドメインや組織文化を明確にしておくことが大切です。
貢献意欲
また、「貢献意欲」として社員が企業の目的に対し、意欲を持って貢献したいと取り組んでいることも大切です。
もちろん、経営者も社員が「貢献したい」と思えるように意欲を引き出していく必要があります。
例えば、仕事内容を充実させたり給与面での不満の解消をしたりするなど、できることはあるので実施していきましょう。
コミュニケーション
最後の「コミュニケーション」は、組織内で社員同士のコミュニケーションが円滑にできているかどうかが重要になります。
日常的な業務のなかでも、このコミュニケーションが最も重要で大切だと感じることもあるでしょう。
また、組織に必要なこの3つの要素が揃っていれば、組織内で掲げる共通の目的の達成がより効率的になります。
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代表的な5つの組織構造
企業の目的達成を早める、代表的な組織構造が下記の5つです。
- 機能別組織
- 事業部制組織
- チーム型組織
- カンパニー型組織
- マトリックス型組織
それでは、1つずつメリット・デメリットとともに詳しく解説していきます。
機能別組織
企業の組織構造1つ目は、機能別組織です。
機能別組織は、2つ目の組織構造の「事業部制組織」と合わせた「ヒエラルキー型組織」という組織のうちの1つになります。ヒエラルキー型組織とは、ピラミッド型に作られた階層構造が特徴的な、日本企業が最も多用している組織構造です。
ピラミッドの頂点周辺が司令塔である経営者となり、下の層へ末広がりのように責任、機能、権限が小さくなりながら段階的に人員配置されていきます。
そんなヒエラルキー型組織の1つである「機能別組織」は、それぞれの業務内容や機能を区別し単位化する組織形態です。
食品メーカーを例に挙げると、下記のように機能別に分けることができます。
- 食品を製造する「製造」
- ネットで販売する「販売」
- 卸業者を開拓する「営業」
このように業務ごとの機能に合わせて組織を編成します。
最も一般的な組織構造としてほとんどの企業で採用されていることが特徴です。
機能別組織のメリット
機能別組織のメリットは、それぞれの業務内容に特化した人員配置を行うため、能力が専門化しやすく、知識の共有も行いやすいことから生産性の向上が期待できる点です。
また、経営者が組織内の役割を明確に把握できるため、業務が重複することもなく効率的な事業運営が可能になります。
機能別組織のデメリット
機能別組織のデメリットは、事業の決定を上層部が行うことにより、意志決定に時間がかかってしまうことです。
とくに組織が拡大した場合、担当業務や責任の所在などがさらに複雑化するため、意志決定が遅くなると機会損失につながりやすくなってしまいます。
また、機能ごとの組織をまとめるリーダーの育成はしやすいのですが、「社内全体を管理できる人材が育ちにくい」という問題があるためこれもデメリットの1つです。
事業部制組織
事業部制組織とは、サービスや商品ごとに事業部を作り、業務内容を分けていく組織構造です。
食品メーカーであれば、「チョコレート事業部」や「弁当事業部」などのように各事業部を編成し、さらに事業部ごとに「開発部」、「営業部」、「購買部」などを作ります。
企業のなかで、業務内容が大きく異なるものがいくつか存在するケースには、この事業部制組織が最適であり、実際多数の会社で採用されています。
事業部制組織のメリット
事業部制組織のメリットは、事業部内で意志決定ができるため、わざわざ上層部に対する確認の必要がなくスピーディーな意志決定ができる点です。
また、将来的な経営者候補の育成が可能になります。なぜなら、それぞれ事業部単位で管理を行うリーダーを配置することで、事業を全てコントロールできる能力をもつリーダーが生まれるからです。
さらに、もし企業が買収された場合でも部署ごとにマネジメントができているため、買収や事業拡大後もそのまま部署の事業継続ができる点もメリットになります。
事業部制組織のデメリット
事業部制組織では事業部単位で動き、上層部の意志決定なしに業務が進行するため、会社全体での目的を統一することが難しくなる場合があります。
また、事業部ごとに「制作部」や「販売部」などが存在することから、業務内容が複数の事業部と重複するなど、コストや効率化の面でのデメリットが拭いきれません。
チーム型組織
チーム型組織とは、プロジェクトのために短期的に集められた人員で構成されたチームで事業を進めていく組織の形態です。それぞれのチームメンバーが、異なる専門性職種を持つことが特徴になります。
プロジェクト毎にチームをつくる海外では一般的ですが、日本ではあまり広まってはいません。
また、一般的にはプロジェクトが遂行されればチームは解散となります。
チーム型組織のメリット
専門性に特化した能力の高い人材のみでチーム組織を編成することにより、短期的・集中的にプロジェクトにコミットでき、仕事の品質が高く達成スピードも速くなります。
さらチームのメンバー一人ひとりが専門性を持ち合わせているので、チーム内でのコミュニケーションから新たなイノベーションが起きやすくなる点もメリットです。
チーム型組織のデメリット
チーム型組織のデメリットは、プロジェクト内でのみ活動するため、他のプロジェクトを進める社員とのコミュニケーションが減ってしまうことです。
また、専門性に特化している社員を通常稼働の部署から引き抜くため、既存の業務進行への配慮も必要になります。
カンパニー型組織
カンパニー型組織は各事業部を作り、それぞれに意志決定の責任を持たせる組織構造です。
事業部制組織と似ている部分はありますが、カンパニー型組織はさらに意志決定できる権限が大きいという特徴があります。
たとえば、大きな利益が見込まれる案件を請け負う場合、基本的に事業部制組織は上層部への確認が必要になります。
しかしカンパニー型組織の場合は、その名前の通りカンパニー(1つの会社)として意志決定を行い、事業の進めることが可能です。
カンパニー型組織のメリット
カンパニー型組織のメリットは、事業部制組織よりもさらに大きな意志決定ができ、柔軟に事業を進められるため、チャンスがきたらすぐにつかめる点です。
また、独立した1つの会社のように業務を進められることから、事業部の管理を担当する社員は将来的な経営者としてノウハウを蓄えることができ、社員の育成にもつながります。
さらに、事業部制組織と同じように事業の売却が行われても、事業部が独立しているので売却後も変わらずスムーズな業務遂行が可能です。
カンパニー型組織のデメリット
カンパニー型組織は、事業部単位で重要な意思決定を下すので、判断ミスが起これば会社に大きな損害が生まれるデメリットがあります。
他にも、権限を大きく委譲しているため、不正が起こった場合の見逃しリスクが高くなることや、独立している業務を遂行するために他事業部とのコミュニケーションが少なくなる点もデメリットです。
マトリックス型組織
機能別組織と事業部制組織の良い点だけを組み合わせて構成された組織構造がマトリックス型組織です。
たとえば、機能別組織や事業部制組織においては、社員はいずれかの部門、または事業部1つに固定されて業務にあたっていました。しかしマトリックス型組織では1人の社員が、複数の事業部に所属できるようになっています。
例えば、食品メーカーで働くAさんの場合を考えてみましょう。機能別組織ではAさんの所属は「開発部」だけであり、1つの区分に固定されていました。
一方でマトリックス型組織の場合、Aさんは「開発部」へ所属し、さらに事業部では「チョコレート部門」、「弁当部門」、「生鮮部門」など複数の部門に所属することができます。
マトリックス型組織のメリット
マトリックス型組織では、機能別組織の長所である専門性の特化と、事業部制組織の長所である意志決定の迅速化が可能になります。
また、社員がいくつかの事業部を往来できることから、事業部制組織で発生する業務内容の重複化による問題を解消し、人員コストを抑えながら運営することが可能です。
さらに、社員が複数の事業部を行き来できるため、情報共有が円滑になり問題の解決がスピーディーになるメリットもあります。
マトリックス型組織のデメリット
複数の事業部へ所属する社員は、事業部ごとのリーダーはもちろん機能別組織におけるリーダーからも指示を受けるため、混乱が生じやすくなります。
他には、いくつかの組織で仕事をすることから意見の不一致が起こりやすく、社員同士が対立するリスクが増えることもデメリットです。
マトリックス型組織を上手く機能させるためには、会社の運営において重要な事業部へ権限を持たせるなど、会社ごとに最適な対策が必要になります。
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まとめ 目標を達成できる組織づくりをしよう
代表的な5つの組織構造を解説しました。組織構造においてはメリットやデメリットをあわせて把握しておくことが重要です。
ほとんどの場合は機能別組織、事業部制組織、チーム型組織の3つを比べて検討しますが、これ以外にも組織構造の形態はあるため、頭に入れておきましょう。
そのうえで、自社の組織構造を改めて認識し、最適なパターンを模索していくことが、効率的に目標を達成する組織づくりには重要です。
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