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棋士 『米長邦雄』名人に学ぶ脱・残念キャラのすすめ!成功するためのコツを学ぼう!

棋士 『米長邦雄』名人に学ぶ脱・残念キャラのすすめ!成功するためのコツを学ぼう!

「地位が人を造る」という言葉があります。
ある人が要職に就く。すると、それほどでもない、頼りないと思われていた人であっても、それまでとは打って変わってメキメキと力をつけ、気がつくとその要職にふさわしい立派な人間になっている。

人は重要なポストに就いた途端、その役割を遂行することを求められます。
必死にその責任を果たしているうちに、その地位にふさしい考え方や立ち居振る舞いが身につき、それが風貌、風格にも現れて、いつしか本モノになっている―そんなことを表す言葉です。

囲碁・将棋、武術の昇段やビッグタイトル、伝統芸能の襲名、アスリートの成績も同じですね。
ビジネスパーソンも例外ではありません。

でも、本稿で考えてみたいのは、その逆バージョンです。
なにかの事情でドロップアウトしてしまった人をイメージしてみてください。
「どうせ、俺/私なんて・・・」
「どうせ、この先も浮上することなんかできっこない」
と、「負け犬」「底辺」としてのキャラクタに自分を当てはめてしまう、そんなパターンです。

そこまでではなくても、自分の能力を発揮しきれなかった、思ったような成果が上げられなかった、ここぞというところで失敗してしまった、というような経験が全くない人などいないでしょう。
そんなとき、いわばその厳しい現実を受入れて、まるでその現実に適応するかのように自分の境遇にふさわしいキャラクタに埋没する。

そのうち、いつの間にか本当にそのキャラクタ通りの人間になり、そこから逃れられなくなってしまう。
そんなことも往々にしてあるのではないでしょうか。

でも、そうした「残念キャラ」は本当に自分にふさわしいものといえるでしょうか。
もし、今のキャラクタが自分にそぐわない、そこから脱出したい、自分本来のキャラクタを生きていきたいと思ったら、どうすればいいのでしょうか。

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「キャラクタ」とは

 

筆者はここまでで、タイトルも含め既に8回、「キャラクタ(キャラ)」という言葉を使いました。
なぜこの言葉を多用するのか、それには訳があります。

この「キャラクタ(キャラ)」は日本文化が初めて産み出したコンセプトだということをご存じでしょうか。
以下は、高名な日本語学研究者、定延利之氏の説です [1]。

日本語の「キャラクタ」は、英語の‘character’と「性格」「登場人物」などの意味を共有する外来語
だが、それが日本で独自の発展を遂げ、もはや英語の‘character’に訳すことができない概念となった [1]。

伝統的に、多重人格でもないかぎり、「人間は変わらないもの」と考えられてきました。
もちろん、一個の人間は、その時々で別の側面を見せます。でも、それは人間が変ったわけではなくて、状況や相手に合わせてスタイルを変えるのだと捉えられてきたわけです。
そして、「人間は変わらない」は、良き市民社会の「お約束」でした。

「お約束」ですから、それが破られたことが露見すると、
「見られた方も、見た方もそれが何事であるかすぐにわかり、気まずい思いをする」
ことになります。

ところが、「日本語社会」に住む若者の独自性が、「キャラ」ということばでそれとは異なる実態をカミングアウトしました。
例えば、「家、バイト、彼氏、学校で、全部キャラが違う」(電子掲示板「2ちゃんねる」への投稿)にみられるような「キャラ」ですね。

つまり、日本語社会の若者たちが創造した「キャラクタ」という概念は、固定的で唯一絶対のものではなく、
「意図的に変えることができる」
ものなのです。

こうした捉え方は、先ほどの「残念キャラ」からの脱出にも応用できると筆者は考えます。
つまり、自分がなりたいキャラクタを想定して、それに自分を合わせていくという方向性です。

本稿ではその具体的な方法を提案しますが、その前に、そうする必要性を確認し、その方向性を探るために、興味深い事例をご紹介したいと思います。

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「人生で一番大切なこと」を賭けた脱「残念キャラ」

 

米長邦雄という類まれな棋士がいました。
名人、十段、王位、棋王、王将、棋聖・・・タイトル獲得は19期、NHK杯など大会優勝16回という猛者で、特に有名なのは50歳にして初の「名人」(タイトルホルダー)になったことです [2]。
若いほど有利で、優秀な棋士は師匠に勝るのが当たり前であるという世界にあって、それは快挙と称えられました。

以下は、その米長氏が語ったエピソードです [3]。

 

~「勝負の女神」が最も嫌う言葉~

あるとき、子息が学校で、「事件」を起こしました。
数学で0点を取ったのですが、問題は点数ではなくて、その態度。
1枚目の答えは、第1問の「ねむい」に始まり、「やきそば」、「ラーメン」、「バナナ」、英単語、落書き・・・、しかも2枚目には卑猥なことまで書いてある。

紆余曲折あった末、学校から4者面談の通知が届くという事態に発展しました。
こうした状況の中、米長氏がまず放った一言は、
「よくやった。お父さんには、こんな度胸はない。大したもんだ」
でした。

米長氏は勝負師です。
棋士としての長年の経験と探求から、どうすれば「勝利の女神」が微笑むのか、勝利の女神の判断基準を把握していました。
それは、「謙虚さ」と「笑い」です。
逆にいうと、どれほど努力をしても、能力があっても、この2つがなければ勝てないということ。
どのような局面にあっても、「自分が絶対に正しい」と思っていては、また笑いがなければ、どこかで必ず破綻するというのがその原則です。

そして、勝利の女神が最も嫌う言葉は、
「どうせ俺/私なんて・・・」、これです。
「どうせ俺/私なんて・・・」と思っている間は、勝利の女神は絶対に微笑んではくれないと米長氏はいいます。

 

~動機付けと目標設定~

次に、米長氏は子息からそもそもの理由を聞き出しました。
数学の女性教師が大嫌いで、顔を見ただけでムカムカする、授業なんて聞いていられる状態ではない、というのがその理由でした。

そこで、米長氏は、子息と同じ行動をとった2人の友だちを自宅に呼び寄せ、3人に「人生で一番、大切なこと」を考えさせます。
その答えは、「女運」。

米長氏は、こう説きました。
「どんなに金持ちになっても、どんなに権力者になっても、周りの女がひどかったら、なんにもならない。こんなつまらない人生はないんだよ。自分の周りにどういう女がいるか。男の幸せというのは、それに尽きるんだ」

そして、女運をよくするのに一番、大事なことは、「最初の女性」に尊敬されることだと告げます。
それは、3人の目下の最大関心事である「異性」を動機付けに活用するという作戦でした。

「おまえたちの最初の女性は、数学の先生だ。数学の先生に勝たなければ、一生女運が悪いことになる。なんとしても勝たなければならない」

数学の先生に勝つための方法は、次の試験で100点を取ること。他の教科は0点でもいいから、とにかく数学で100点を取ることでした。

 

~結果をどう捉え、どう生かすか~

3人の中学生は猛勉強しました。
結果は、93点(学年2位)、90点、90点(学年3位)。
100点が取れなかった、これで一生の女運を賭けた勝負に敗れてしまったと、3人は痛々しいまでに落胆していました。

「いや、100点だ。100点取ったのと同じだ。勝負というのは、100点を取るために一所懸命、これ以上はできないというくらい努力することで、実はそのことが一番、大事なんだ。おまえたちは100点を取ろうと頑張った。そのことが100点なんだ。90点でも93点でも100点と同じだ」

こうして米長氏は3人を「どうせ俺なんて」という「残念キャラ」から掬い上げました。

「残念キャラ」に留まっていたら、3人はどうなっていたのか。
「残念キャラ」を脱するための努力は何をもたらしたのか。
脱「残念キャラ」に取り組んだ結果をどう捉えるか。

米長氏のエピソードはビジネスに即したものではありませんが、「残念キャラ」を脱する必要性とその結果の捉え方について、ビジネスにも生かせる優れた知見が示されています。
それらも参考にしつつ、脱「残念キャラ」の方策を探ってみましょう。

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 脱「残念キャラ」の方法

 

~まず、脱「残念キャラ」を目指す~

まず、米長氏のエピソードから得られた知見のひとつは、脱「残念キャラ」のための試みや努力は、それ自体が大きな成果をもたらすということです。

0点を100点にしようとする取り組みの目的は、実は100点を取ることではなく、自分の力を最大限、発揮するというところにあります。
そして、それこそが成果でもあります。
それができれば、その結果として、自分でも意外なほどの能力が顕在化するかもしれません。

次に、自分が受け止めたシビアな現実を、周りの人は案外、気にしていない可能性もあります。

下の表1は、新入社員とその上司を対象としたアンケート調査で、「働く上での不安」を尋ねた回答結果を表しています。


表1 新入社員が働く上での不安
出典:[4] 一般社団法人 日本能率協会(2019)「2019年度 新入社員意識調査報告書」p.7
https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/new_employees_2019.pdf

この表をみると、新入社員には「仕事での失敗やミス」と「自分のスキルや能力」に不安を感じている人が多く、それぞれ1位と3位なのに対して、上司は7位と8位です。

何か失敗したり思ったほどの成果が上げられなかったとき、真面目な人ほどその結果をシビアに受け止め、落ち込む傾向があるように思います。
でも、この調査結果をみるかぎりでは、上司は、少なくとも若い部下に対しては、部下が思うほど部下の失敗やミスを気にせず、スキルや能力も徐々に身につけていけばいいと考えている様子が窺えます。

もしかしたら、「俺/私なんて・・・」は、周りからの評価やプレッシャーからというより、自分が自分に負荷をかけている結果かもしれません。
そう考えると、新たなキャラクタを作って脱「残念キャラ」を果たすことは、自分自身のプレッシャーから自分を解放する手段ともなり得るのではないでしょうか。

 

~自分がこうありたいというキャラクタを形成する~

ここで、キャラクタの話に戻ります。
先ほど、「キャラクタは意図的に変えることができる」と書きました。
では、それを脱「残念キャラ」に援用するためにはどうすればいいのでしょうか。

それは、自分がなりたいキャラクタを想定し、そのキャラクタに自分を合わせることによって、徐々に自分がこうありたいというキャラクタを形成していくという方法です。

その際に参考になるのが、身近にいるロールモデルです。
以下のグラフは先ほどとは別の新入社員意識調査の結果で、「社内にロールモデルはいるか」という質問に対する回答結果を表しています。


図1 社内にロールモデルはいるか
出典:[5] マイナビ(2019)「2019マイナビ新入社員意識調査~3ヶ月後の現状~」p.9
https://hrd.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/08/ishiki-report201907.pdf

このグラフをみると、身近にロールモデルがいる社員は約80%に達しています。
そのロールモデルを手がかりにして、新たなキャラクタを想定するのは有益な方法です。
では、これから想定する新キャラクタに、ロールモデルの何をどのように盛り込めばいいのでしょうか。

その参考になりそうな研究成果があります。
日本語学のキャラクタ研究では、キャラクタと言語行動は結びついていると考えられています。
ここでいう言語行動とは、どのような言葉や表現を使うかだけでなく、声色や声の大きさ、スピードなど話し方も含めた行動のことです。

人の言語行動はその人のあり方、キャラクタを如実に表します。
ロールモデルがよく使う格言や口癖は何か。
ロールモデルはどのような状況で、どのような相手に対して、どのような言葉で、どのようなことを言うのか。
話し方は? 表情は?
そこから、ロールモデルの本質の一端が見えてきます。

それらを観察し、取捨選択して、自分がよしとする自分らしいキャラクタを想定する。
そして、そのキャラクタに自分を沿わせながら、試行錯誤しつつ、徐々に新たなキャラクタを形成していく。
そうしたプロセスで、きっと脱「残念キャラ」が実現するでしょう。

日本文化が産んだキャラクタという概念は、自分らしく働き、自分らしく生きるための大きな支えとなるはずです。

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参照
[1]定延利之(2015)「内言の役割語―ことばとキャラの新たな関わり」役割語・キャラクター言語研究 国際ワークショップ2015 報告論集』(科学研究費「役割語の総合研究」)
[2]日本将棋連盟「棋士データベース:米長邦雄」https://www.shogi.or.jp/player/pro/85.html
[3]米長邦雄(1999)「第1章 生涯の女運を賭けた勝負 ―勝負の女神の判断基準とは何か」『運を育てる―肝心なのは負けたあと』祥伝社(黄金文庫、Kindle版)
[4]一般社団法人 日本能率協会(2019)「2019年度 新入社員意識調査報告書」https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/new_employees_2019.pdf
[5]マイナビ(2019)「2019マイナビ新入社員意識調査~3ヶ月後の現状~」
https://hrd.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/08/ishiki-report201907.pdf

 

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