リーダーシップは特別な才能や資質ではありません。誰もが意識や目線を変えるだけで、十分リーダーシップを発揮できます。そのためにはリーダーシップについて真に理解し、自分に合ったリーダーシップ能力の伸ばし方、リーダーシップを発揮するために必要なことを知る必要があります。
本記事では、リーダーシップの基礎からはじまり、自分に合ったリーダーシップタイプ・自分に必要なリーダーシップ能力を知る方法などをまとめました。リーダーシップ能力は誰でも身につけることができます。組織でいっそう活躍するために、リーダーシップについて学びましょう。
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目次
リーダーシップとは?
リーダーシップの定義は多岐にわたり、日常生活やビジネスシーンでもさまざまな意味で使われています。多くの人にとってリーダーシップは、特定の人が持つカリスマのようなものをイメージしがちです。リーダーシップという資質に恵まれた人だけが、経営職・管理職につけると考える人もいるでしょう。
しかし、日本でもよく知られている経営学者のP.F.ドラッカーは、リーダーシップを以下のように定義しています。
- リーダーシップは個人の資質ではなく、仕事への向き合い方である
- リーダーシップは地位・特権ではなく、責任意識
- リーダーは信頼されることが不可欠
順番に解説します。
リーダーシップは個人の資質ではなく、仕事への向き合い方
ドラッカーは自著『現代の経営』において、「リーダーシップは資質ではなく仕事である」と述べています。仕事との向き合い方がリーダーシップの有無を決めるなら、生まれながらにリーダーの資質を持つ人はいません。職種に対する適性は少なからず存在しますが、誰でもリーダーを目指せるということです。
また、ドラッカーは「リーダーとは、目標を定め、優先順位を定め、基準を定め、それを維持する者である」とも述べています。リーダーには資質ではなく、目の前の仕事と真摯に向き合うことが求められます。
リーダーシップは地位・特権ではなく、責任意識
ドラッカーは『プロフェッショナルの条件』において、「リーダーたることの第二の条件はリーダーシップを地位や特権ではなく責任と見ること」と述べています。リーダーシップを自分の地位や特権とみなすリーダーは、「成功は自分の手柄に、失敗は部下のせいに」しがちです。
しかし、リーダーシップを責任と捉えれば、部下の失敗はむしろリーダーに帰属します。責任意識の強いリーダーのもとでは、部下は安心して行動がしやすくなります。モチベーションが高まり、組織への貢献も期待できるでしょう。
リーダーは信頼されることが不可欠
ドラッカーは「リーダーに関する唯一の定義は、つき従う者がいるということだ(The only definition of a leader is someone who has followers)」とも述べています。「フォロワー(followers):つき従う者」という言葉を選んでいることからも、リーダーシップとは部下を強制して自分に従わせることではありません。リーダーに人徳があり、信頼できるからこそ、進んで「つき従う」のです。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは混同されやすいビジネス用語ですが、ドラッカーは以下のように両者の違いを語っています。「マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しいことを行うことである(Management is doing things right, leadership is doing the right things.)」。
リーダーシップにおける正しいこととは何でしょうか。例として、企業にとって正しいことは、第一に成果をあげることです。そのためには、リーダーは成果をあげるためのビジョンを、部下に提示する役割があります。
対するマネジメントは、リーダーのビジョンに基づいて成果を出すための計画を立て、正しく着実にプロジェクトの進行を管理することが求められます。似た意味で使われる言葉ですが、業務に落とし込むと違いが明確にわかるのではないでしょうか。
リーダーシップは6種類のタイプにわけられる
前項のとおり、リーダーシップは個人の持つ資質ではないので、誰もが仕事や部下への向き合い方・意識次第でリーダーシップを十分に発揮できる可能性があります。
また、リーダーとしていっそう輝くためには、自分に合ったリーダーシップタイプを把握すると良いでしょう。『EQ 心の知能指数』の著者、ダニエル・ゴールマンはリーダーシップを以下の6つの型に分類しました。
- ビジョン型
- コーチ型
- 関係重視型
- 民主型
- ペースセッター型
- 強制型
それぞれの特徴や注意点を紹介します。経営者や管理職に限らず、自分はどのタイプに該当するのか、所属する組織ではどのリーダーシップタイプが求められているのかを確認しましょう。
ビジョン型
企業が目指す目標(ビジョン)、進むべき方向性を明確に示すことでメンバーを導いていく、最も前向きなリーダーシップタイプです。
メリットは、ビジョンに賛同したメンバーが集まりやすいことです。注意点としては、リーダーの信念がブレたときやメンバーに不信感を抱かれたときに、組織が機能しなくなることが考えられます。
ビジョン型のリーダーの例として、Apple社の元CEOであるスティーブ・ジョブスが挙げられます。彼は個人の利益よりも「より良い製品、人々があっと驚き世の中が変わるような製品」づくりを、ビジョンとして掲げていました。ジョブズのビジョンに対する熱い想いや真摯さが社員・技術者に伝わり、一体となって目標に突き進んだことが、同社が世界的に発展した大きな成功要因のひとつといえます。
コーチ型
リーダーとメンバーという1対1の関係を重視し、リーダーがコーチ的な役割を担い、メンバー個々の目標をサポートしていくタイプです。
メンバーの性格や特徴、長所・短所など、個性を把握したうえで目標達成のサポートができます。
密なコミュニケーションや個別体制のサポートにより、メンバーのモチベーション維持が期待されます。長期的に高い目標を目指す場合に、高い効果が見込めるでしょう。ただし、組織が大きくなると個別対応が難しくなること、信頼関係が仕事への影響に直結することは注意が必要です。
スティーブ・ジョブズの後継者となったApple社の現CEOティム・クックは、コーチ型のリーダーシップタイプといえます。自身が司令塔となり重要な業務は優秀な部下にまかせ、社内全体の協調性やチームプレイを重視しています。
関係重視型
メンバーと同じ目線に立って、信頼関係を築くことを得意とするリーダーシップタイプです。
良好な人間関係を維持でき、、心地よい環境づくりが見込めます。注意すべき点は、問題が生じた場合に、仲の良さから原因や責任の所在が曖昧になることがあります。
民主型
各メンバーの意見や提案を広く受け入れ、組織内の活動に反映させていくリーダーシップタイプです。幅広いアイデアが集まるため、イノベーションやユニークな問題解決策が期待できます。メンバーの考えや意見が共有・評価されることで、従業員の仕事への満足度も高まります。
しかし、個々の意見は異なるため結論が出にくく、急を要する事態にも決断が遅くなる、といったデメリットがあります。
ペースセッター型
高いスキルを持つリーダーが具体的な手本を示し、成功イメージを与えることで組織を引っ張るリーダーシップタイプです。
実力主義の組織や、リーダー個人・メンバーともに能力が高い場合に非常に効果的です。しかし、メンバーがリーダーと同じことをできない場合に、結局リーダー自身がすべての業務を行わなければならない可能性があります。
強制型
権力や圧力など、強い強制力によって目標達成を目指すリーダーシップタイプです。リーダーのみが決定権を握り、メンバーは説明がなくとも即座に従うことが求められます。
ドラッカーのリーダーシップの定義からは外れますが、緊急の決断が迫られる事態には、強制力が必要になることもあります。短期間で成果をあげなければならない場面には効果的ですが、メンバー内で不満が募ると組織が破綻する恐れもあるので、注意が必要です。
リーダーシップを4種類にわけるPM理論
PM理論は、社会心理学者であり『リーダーシップ行動の科学』の著者、三隅二不二(みすみじゅうじ)によって提唱されました。リーダーシップは目標達成能力と集団維持機能によって構成され、2つの能力の大小によってリーダーシップタイプが決まる、という内容です。詳しく解説します。
P・Mの機能について
彼が「PM理論」のなかで言及する「P」とは、Performance function(目標達成機能)。成果をあげるために必要なリーダーシップのことで、業績や生産性を高める機能を指します。
対する「M」は、Maintenance function(集団維持機能)。組織やチームをまとめるために発揮されるリーダーシップであり、協調性の維持、メンバー同士の対立を回避するための調整機能を指します。
三隅はPとMの組み合わせにより、リーダーシップを4つに分類しました。
4種類のリーダーシップタイプ
PM理論における、4種類のリーダーシップタイプは以下のとおりです。
- PM型
成果を上げる力、集団をまとめる力のいずれも強い - Pm型
成果を上げる力は強いが、集団をまとめる力は弱い - pM型
成果を上げる力は弱いが、集団をまとめる力は強い - pm型
成果を上げる力、集団をまとめる力のいずれも弱い
上記からわかるように、PM型がリーダーとしての理想形です。PM理論を活用することで、リーダーとしての自分の強み・弱み、伸ばすべきスキルを知ることができます。
リーダーシップを発揮するために必要な5種類のスキル
自分が目指すべきリーダーシップを把握したら、リーダーとして必要なスキルを伸ばしましょう。本記事では、リーダーとして必須の5種類のスキルを順番に紹介します。
- 明確なビジョン
- リーダーとしての信念
- 行動力
- コミュニケーション能力
- 決断力
明確なビジョン
リーダーが目標やゴール、明確なビジョンを掲げることで、メンバーは組織として進むべき方向性を認識できます。
ビジョンといっても、非現実的な夢を掲げるだけでは不十分です。メンバーがモチベーションを高めるためには、リーダーが提示するビジョンの先にあるものや、ビジョンの達成が必要な理由を明確に示しましょう。
リーダーとしての信念
目標に向かって迷わず進むためには、リーダーはブレることなく、常に一貫した考え・信念を持つ必要があります。
ドラッカーが提唱するリーダーシップの定義において、リーダーシップは資質ではないと断言しました。逆に、リーダーが持つべきものとして唯一挙げたのは、「真摯さ」です。真摯さは「integrity」の訳です。integrityは単に正直であること、誠実であることではなく、「一貫していること」を意味として含みます。
ドラッカーは「真摯さに欠ける者は組織の文化を破壊し、業績を低下させる」との言葉も残しています。一貫性がなく頼りない者がリーダーになると、組織は混乱に陥るでしょう。
行動力
メンバーの積極的な行動を促すためには、リーダーは指示するだけでなく、行動をもって手本を示す必要があります。目標達成のためには、組織のパフォーマンス向上が欠かせません。パフォーマンスを向上させるためには、各メンバーが能動的に行動し、役割をまっとうすることが重要です。
また、リーダーは組織内で問題が発生した際にも、迅速な行動で対処する力が必要です。
コミュニケーション能力
メンバーと良好な関係を築くには、コミュニケーション能力が不可欠です。メンバーの性格や強み・弱みなどを理解し、適切なコミュニケーションを維持することで、質の高いパフォーマンスが期待できます。
メンバーにビジョンを示す際も、できるだけわかりやすく、心に響く言葉で伝えるようにしましょう。また、自身の想いを伝えるだけでなく、メンバーの意見に誠実に耳を傾ける傾聴力も必要です。
決断力
どのような状況でも意思決定ができる、決断力も必要です。ゴールにたどり着くまでには不測の事態が起こることもあり、素早く正しい判断が求められます。
リーダーが優柔不断ではメンバーの士気が下がってしまい、組織力が低下します。緊急時にこそ、リーダーの器量が問われます。組織やメンバーのためにも、どっしりと構えて頼れる存在を目指しましょう。
まとめ リーダーシップの種類を知って目指すリーダー像を明確に
誰もがリーダーとして輝くために、自分に合ったリーダーシップタイプの見つけ方や伸ばすべきスキルについて解説しました。目指すべきリーダー像に近づくためには、自分に合ったタイプや補う能力を上記の分析によって知ることが重要です。
また、リーダーに求められるスキルはこれだけではありませんが、どのリーダータイプにおいても重要なのは、未来を見据えるリーダーとしてのあり方です。未来に目を向けることで、今すべきことを見極め、明確なイメージを共有して人を動かすことが、リーダーには求められます。自然と人がついてくるような、芯の強いリーダーを目指しましょう。