近ごろ、大学の不祥事が相次いでニュースで取り上げられるようになっています。
そんな中で、アカハラという言葉が注目されるようになりました。
アカハラは、言わば「大学版パワハラ」です。
アカハラ問題を解決することが、教育機関の健全化に繋がっていくでしょう。
本記事では、アカハラの具体例や悪影響について解説していきます。
教育機関の職員の方々はもちろんのこと、教育機関と提携している企業の方々におすすめの記事です。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
アカハラ(アカデミックハラスメント)とは?【教育機関のハラスメント】
アカハラは「アカデミックハラスメント」の略語で、大学などの教育機関及び研究機関で発生するハラスメントのことを指します。
アカハラは、力関係によって発生するパワハラの一種です。
アカハラの場合、教育機関の職員間だけでなく、先生と学生、学生同士など、様々な力関係によってパワハラが発生します。
そのため、一般的なパワハラに比べると、事実関係が複雑な可能性が高いのかもしれません。
アカハラの具体例8選
アカハラの具体例としては、以下の8つが挙げられます。
- 学習・研究の妨害
- 単位取得・進級・卒業の妨害
- セクハラ発言
- 暴言・暴力・誹謗中傷
- プライバシー侵害
- 研究成果の盗用
- 権力の濫用
- 業績の不当な評価
それぞれ詳しく解説していきます。
具体例①:学習・研究の妨害
アカハラの具体例としてまず挙げられるのが、学習・研究の妨害です。
学生同士で学習を妨害したり、教員同士で研究を邪魔したりするのがアカハラに該当します。
ほかにも、授業を受けさせない、希望とは違う研究を強制させる、最低限の指導を実施しない、などがアカハラに該当します。
具体例②:単位取得・進級・卒業の妨害
アカハラの具体例として、単位取得・進級・卒業の妨害も挙げられます。
不当な評価で単位を与えなかったり、卒論の提出を受け入れなかったりする行為が該当するでしょう。
また、部活動・サークル活動による単位取得・進級の妨害も、アカハラと言えるかもしれません。
具体例③:セクハラ発言
セクハラ発言もアカハラに該当します。
性別を理由とした発言や、業務に関係ない交際の強要などが該当するでしょう。
また、大学特有のセクハラとして「交際したら単位取得を有利にする」というものもあります。
どちらにせよ、教育の場では性別関係なく、すべての学生は対等な立場であるべきでしょう。
具体例④:暴言・暴力・誹謗中傷
暴言・暴力・誹謗中傷も、当たり前ですが、アカハラに該当します。
特に教育機関の場合、企業とは異なり、人の上に立つ「教授」などの役職の方々が、マネジメントの訓練を受けているわけではありません。
部下に対する適切な接し方を理解してない可能性が高いのです。
教授や職員の方々が「イジメ」と思っていなくても、被害者が「イジメ」だと思っているなら、それは大抵の場合「イジメ」なのです。
具体例⑤:プライバシー侵害
プライバシー侵害も、アカハラに該当します。
教育機関では、学生・職員・教員の個人情報や健康診断の結果などが、データベースで記録されていることがほとんどです。
そして、それらのデータにアクセスできる職員・教員が、学生に対してプライバシー侵害行為を実施することがあります。
また、必要以上に連絡先を聞くのもアカハラに該当します。
ほとんどの教育機関では、教育機関専用のメールアドレスが交付されていることがほとんどなので、それらを用いて連絡すべきです。
具体例⑥:研究成果の盗用
学生や職員の研究成果を盗用するのもアカハラに該当します。
特に想定されるのが、研究室内の盗用です。研究室では、室長が最も力が強い役職なので、研究室で最も優秀な成果を残した研究員の研究成果を、研究室長が自分名義で論文にする可能性があります。
そして、その研究成果があまりにも社会的意義の大きいものだった場合、大きな問題に発展する可能性があるので、特に注意が必要です。
具体例⑦:権力の濫用
教授・学長などの上位役職による権力の濫用もアカハラに該当します。
企業と同じように、教育機関でも、上位役職によって、教員や職員の出世が決まります。
そのため、どうしても上位役職の力が強くなり、これがアカハラに発展してしまうのです。
権力の濫用を防ぐには、上下関係に依存しないキャリアシステムを構築する必要があります。
具体例⑧:業績の不当な評価
業績の不当な評価も、アカハラに該当します。
職員・教員が打ち出した素晴らしい研究成果をわざと下方修正で評価したり、逆に微妙な研究成果を大々的に評価したりする行為が「不当な評価」です。
この「業績の不当な評価」も、教育機関特有の上下関係によって生み出されると考えられます。
アカハラがもたらす3つの悪影響
アカハラがもたらす悪影響は以下の3つです。
- 被害者が心理的ダメージを負う
- 教育機関のイメージが低下する
- 組織内の雰囲気が悪化する
それぞれ詳しく解説していきます。
悪影響①:被害者が心理的ダメージを負う
アカハラの悪影響として、まず挙げられるのが被害者の心理的ダメージです。
ほとんどの場合、教員や学生は、華やかな生活を夢見て教育機関に所属するはずです。
それにもかかわらず、教育機関で上下関係によるアカハラを受けてしまうのは、心理的に相当大きなダメージになることでしょう。
また、アカハラによって研究成果の盗用や単位取得の妨害が発生していた場合、心理的ダメージだけでなく、社会的ダメージも大きいと言えます。
言ってしまえば、アカハラは被害者の人生をめちゃくちゃにしてしまうのです。アカハラの罪は大きいと言えます。
悪影響②:教育機関のイメージが低下する
アカハラの悪影響として、教育機関のイメージが低下することが挙げられます。
基本的に、教育機関は実力主義の社会です。テストで良い結果を出せば単位を取得でき、優れた研究成果を発表できれば、それが高く評価されます。
一方で、教育機関の運営費のほとんどは、学生からの授業料です。
そのため、教育機関のイメージが低下し、学生が入ってこなくなってしまうと、教育機関の存続問題に発展してしまいます。
また、教育機関の中には100年以上の歴史を持つことが全く珍しくないため、アカハラがそのブランドを傷つける可能性があることに留意する必要があります。
悪影響③:組織内の雰囲気が悪化する
アカハラによって、組織内の雰囲気が悪化する可能性があります。
例えば、研究成果の盗用が明るみに出てしまった場合、組織内で研究過程を共有しづらくなることでしょう。
れでは、研究員同士の交流が減り、効果的な研究が実施できなくなります。
同じようなことは、教員・学生でも言えるでしょう。
教育機関は、志ある若者が集まり、お互いに協力し合えるからこそ意味のある場所です。
アカハラによって、組織内の雰囲気が悪化するのは大きなダメージだと言えます。
アカハラが発生する3つの理由
アカハラが発生する理由としては、以下の3つが考えられます。
- 環境が閉鎖的
- 教育機関内の権力構造
- 教育機関の伝統的な文化
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:環境が閉鎖的
アカハラが発生する理由として、まず挙げられるのが「閉鎖的な環境」です。
基本的に教育機関は、環境が極めて閉鎖的だと言えます。
例えば、小学校から高校までの教育現場では、30人から40人の学生が1つのクラスでまとめられ、同じメンバーで1年間過ごさなくてはなりません。
また研究室では、研究過程を外に持ち出せないことが多いため、厳重な管理がなされています。
このように、教育機関は外からの目が行き届かない構造になっていることが多いため、アカハラが明るみに出づらくなっているのです。
理由②:教育機関内の権力構造
教育機関内の権力構造も、アカハラが発生する理由として挙げられます。
日本の場合、上下関係を重んじる儒教が教育システムのベースになっていることから、教師と学生、上級生と下級生の力関係がハッキリしています。
その結果、権力に甘んじた上位の人間が、下位の人間にアカハラを実施するようになってしまうのです。
そのうえ、下位の人間が上位の人間に対して反抗的な態度を取りづらく、結果的に、アカハラが黙秘されてしまう傾向があります。
理由③:教育機関の伝統的な文化
教育機関特有の伝統的な文化も、アカハラが発生する理由として挙げられます。
実際、有名大学のほとんどは100年以上の歴史を抱えており、OB・OGからの援助もかなり大きいです。
そのため、現代的ではない組織特有の伝統的な文化が色濃く残り、それがアカハラに繋がってしまうのです。
簡単に言えば、昭和だからこそ許されていたことが、教育機関内でまかり通っている現状があるように思えます。
教育機関とは少し異なりますが、宝塚歌劇団のパワハラ問題が、その典型例です。
教育機関特有の伝統的な文化は、あくまでも「文化」として重んじられるため、簡単に「排除」と言えないのも正直なところです。
アカハラを防止するための対策3選
アカハラを防止するための対策としては以下の3つが考えられます。
- アカハラを正しく理解する
- 相談窓口を設ける
- 外部機関による監視制度を設ける
それぞれ詳しく解説していきます。
防止策①:アカハラを正しく理解する
まずは教育機関に所属する全ての人々が、アカハラを正しく理解する必要があります。
アカハラの場合、当人がアカハラを自覚せずに、行為に及んでいることがあるためです。
職員や学生に対して定期的な研修を実施したり、ガイドラインを作成したりすることで、アカハラの理解度を深めていきます。
また、本記事で紹介したようなアカハラの具体例をポスターにして、教育機関内の掲示板に張り出すのも有効な防止策です。
防止策②:相談窓口を設ける
アカハラの防止策として、相談窓口の設定も挙げられます。
基本的に、アカハラは閉鎖的な環境であるが故に発生するパワハラです。
そのため、まずは被害者がアカハラを外に伝えられる環境を構築する必要があります。その手段の1つが相談窓口です。
アカハラの相談窓口を設ける際は、以下の要素を取り込むようにします。
- 匿名のメール相談を受け付ける
- 少数精鋭で相談窓口部署を設ける
- 臨床心理士などのカウンセラー関連の有資格者を配置する
- 無料で対応する
このように、学生でも気軽に相談できる環境を構築することが重要です。
また、アカハラの内容が外部に漏れないようにするためにも、少数精鋭で部署を構築するのがいいでしょう。
防止策③:外部機関による監視制度を設ける
外部機関による監視制度を設けるのも有効な防止策の1つです。
教育機関は閉鎖的な環境になりやすく、かつ伝統的な文化を重視する傾向があるため、客観的な視点でアカハラ問題に取り組みづらい現状があります。
そこで、弁護士や臨床心理士のような、専門性の高い外部の人間による監視制度を設置するのです。
外部の目が届くようになれば、アカハラの抑止力に繋がる可能性もあります。
閉鎖的な環境を可能な限りオープンにするには、外部機関による外圧が必要不可欠だと言えるでしょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- アカハラは教育機関及び研究機関で発生するパワハラのこと
- 教育機関はほかの組織に比べて、環境が閉鎖的かつ保守的なので、時代錯誤のアカハラが発生しやすい
- アカハラの防止策としては相談窓口や外部による監視制度の設置が挙げられる
アカハラは、教育機関で発生するパワハラのことです。
現在、教育の現場は極めて閉鎖的な環境になっており、それに加えて「制服」に代表される保守的な文化が色濃く残っている現状があります。
たしかに文化は保存すべきなのかもしれませんが、それを名目に時代錯誤な上下構造も同時に保存され、アカハラ問題が中々解決されない現状があります。
アカハラ問題を解決するには、可能な限り透明性のある環境構築を心がける必要があるでしょう。
そしてこれは、企業のパワハラ問題でも同じことが言えそうです。