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ボトムアップとは?トップダウンとの違い、メリット、適している職場を解説

ボトムアップとは

ボトムアップとは、現場にいる従業員の意見を積極的に聞き、それをもとに経営陣が経営における意思決定を行うことです。

いわゆる「トップダウン」の対極であり、マネジメントや経営において「トップダウンとボトムアップ、どちらの方がいいか?」というのは何度も議論が繰り広げられてきたテーマと言えるでしょう。

この記事ではボトムアップとトップダウンとの違いと、メリット・デメリットを解説。

ボトムアップが適している職場や成功させるコツ、企業のボトムアップ成功事例についても紹介します。

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ボトムアップとは?【下意上達】

ビジネスシーンにおけるボトムアップは、現場の意見を吸い上げて、それを経営陣の意思決定に活かす手法を指します。

日本語では「下意上達」と呼ばれることがあるそうです。

多くの企業では、社長、管理職、一般従業員というように上下関係があります。

その中で、社長や管理職が一方的に下に指示を出すのではなく、現場の意見を経営に反映させるのがボトムアップ式経営だと言えます。

トップダウンとは?

ボトムアップの対義語であるトップダウンは、経営陣の意思決定がそのままストレートに現場に反映される経営手法を指します。

例えば、極端なトップダウン式経営を採用している企業では、社長の命令が絶対で、現場の意見が反映されることはありません。

一見すると、トップダウンはなんとなく「昭和」のイメージがあるかもしれません。

しかし現在、時価総額ランキング上位に入っている巨大IT企業の多くは、かなり極端なトップダウン式の経営を実施していることで有名です。

ボトムアップとトップダウンの違いとは

ボトムアップとトップダウンとは対極にあるスタイルです。

ボトムアップとトップダウンでは、以下の3つの点に違いが見られます。

  • 従業員の主体性やモチベーション
  • 意思決定のスピード
  • 従業員の成長

詳しく解説します。

従業員の主体性やモチベーション

ボトムアップとトップダウンとでは、従業員のモチベーションや主体性に違いが生まれます。

ボトムアップスタイルは従業員の声が経営陣に届きやすくなり、経営方針に反映されることが少なくありません。

そのため、従業員はやりがいや達成感を得やすく、高いモチベーションを維持できるでしょう。

一方、トップダウンのスタイルでは基本的に従業員は上の指示に従います。

従業員の意見は経営陣に届きにくく、一方的で高圧的な印象も持ちやすいため、モチベーションは上がりづらくなります。

意思決定のスピード

トップダウンの場合、会社の意思決定は上層部が行います。

現場の従業員はその決定事項に従うだけなので、意思決定のスピードが早いという特徴があります。 

対してボトムアップでは、現場の従業員の意見を収集し、精査して、取り入れるかどうかを判断します。

そのため、意思決定のスピードは遅くなりがちです。

従業員の成長への期待度

ボトムアップとトップダウンでは、ボトムアップの方が従業員の成長を期待できます。

ボトムアップでは現場の従業員の声が通りやすいため、従業員は日頃から仕事を主体的に考えて行動します。

主体的に考えられるようになると、新たなアイデアを生みだしたり、生産性が上がったりと成長を期待できるでしょう。

トップダウンの場合は、現場の従業員には意思決定権がありません。そのため現場の従業員は指示待ち状態になりやすいでしょう。

さらにモチベーションやエンゲージメント低下のリスクもあります。

ボトムアップの3つのメリット

ボトムアップ型のマネジメントのメリットは以下の3つです。

  • 従業員の主体性を強化しやすい
  • 現場の意見を抽出しやすい
  • 新しい意見を取り入れやすい

メリット①:従業員の主体性を強化しやすい

ボトムアップは従業員の主体性を強化しやすいと考えられています。

経営者や管理職の言った通りにやることを求められるトップダウンに対し、ボトムアップでは従業員自らが意見を出すことを求められるためです。

ボトムアップ式の経営では、従業員が主体となって意見したり仕事をしたりする必要があるので、その過程で自然と主体性が強化されます。

主体性のある従業員は、命令がなくても自社の利益になりそうな仕事に率先して取り組みます。

主体性のある従業員が増えれば増えるほど、企業は成長していくのです。

この点から、ボトムアップによって従業員の主体性が強化されるのは大きなメリットだと考えられます。

メリット②:現場の意見を抽出しやすい

ボトムアップは、現場の意見を抽出しやすいメリットがあります。

現場の意見は、業務改善や課題抽出のための貴重な材料です。

そのため、経営陣としては可能な限り現場の意見を抽出したいところでしょう。

ボトムアップ式経営であれば、現場の意見を上層に吸い上げるシステムを構築しやすいと言えます。

メリット③:新しい意見を取り入れやすい

ボトムアップは現場の意見を抽出しやすいので、新しい意見を経営に取り入れやすいというメリットがあります。

一般的に、現場に近ければ近いほど従業員の平均年齢は低くなり、新しいアイデアが出てきやすいです。

ボトムアップであれば、現場で生まれたアイデアをすぐに経営に反映させられるので、社内で新しいことを始めるチャンスを増やせます。

ボトムアップの3つのデメリット

ボトムアップのデメリットは以下の3つです。

  • マネジメントが難しい
  • 従業員の能力に左右される
  • スピードが遅い

それぞれ詳しく解説していきます。

デメリット①:マネジメントが難しい

ボトムアップは、現場の意見を尊重する必要があるため、一般的なマネジメントに比べると難易度が高まります。

また、多くのボトムアップ式経営の場合、現場の意見に対してフィードバックしたり評価したりする必要があるため、その分、マネージャーの負担が大きくなるのがデメリットです。

さらに、現場の意見が強くなりすぎると、部門ごとに意見が異なる縦割り経営に陥る可能性があります。

この点で見ても、ボトムアップ式の経営はマネジメントが難しいと言えそうです。

デメリット②:従業員の能力に左右される

ボトムアップは、現場の従業員の能力に大きく左右されるのがデメリットです。

もちろん、優秀な従業員が意見を出してくれるのであれば、何も問題ありません。

一方で、大した意見が出なかったり、そもそも主体性が無かったりすると、ボトムアップを実施するメリットが無くなります。

ボトムアップで従業員のポテンシャルを本当に引き出せるかどうかを吟味する必要があるでしょう。

デメリット③:スピードが遅い

ボトムアップはスピードが遅い点がデメリットとして挙げられます。

ボトムアップは、現場の意見を抽出してから経営陣が意思決定する仕組みなので、最終的な判断に時間がかかります。

また、現場の意見と言っても、従業員や部門によって意見が異なる場合があるため。

意見の精査に時間がかかるのもデメリットです。

現代社会ではスピード感のある経営が必要不可欠なので、意思決定スピードが遅くなるのは大きなデメリットだと言えます。

ボトムアップに適している職場3選

ボトムアップに適している職場は以下の3つです。

  • 専門性が求められる職場
  • リソースに余裕のある職場
  • 個性を最大限に活かしたい職場

それぞれ詳しく解説していきます。

①:専門性が求められる職場

ボトムアップは専門性が求められる職場に適しています。

多くの場合、経営陣は「経営」に特化しているため、現場の従業員に比べて業界の専門知識に弱い印象があります。

そこで、ボトムアップで専門性のある従業員からアイデアを抽出できれば、専門領域に特化した経営が可能になります。

ITや製造など、専門性が求められる職場ではボトムアップが適しているのかもしれません。

②:リソースに余裕のある職場

時間やお金に余裕のある職場も、ボトムアップが適していると言えます。

ボトムアップは、現場の意見を抽出して検討するのに多くの時間と人件費が必要です。

リソースに余裕のある職場であれば、ゆっくりとボトムアップ式経営を進められるはずです。

もちろん、社内全体でゆっくりとしたボトムアップ式経営を実施するのは現実的ではありません。

クリエイティビティが求められる職場だけでボトムアップを活用し、スピードが必要な職場ではトップダウンを採用するなど、臨機応変に導入する必要があるでしょう。

③:個性を最大限に活かしたい職場

ボトムアップは、従業員の個性を最大限に活かしたい職場に適しています。

優秀かつ個性的な従業員が揃っているのであれば、ボトムアップでも、問題なく成果を出すことができるでしょう。

ただし、企業価値向上のために、方向性の統一は必要です。

ボトムアップで従業員のポテンシャルを発揮しつつ、マネージャーは組織のベクトル合わせに集中するのがいいでしょう。

ボトムアップに適していない職場3選

ボトムアップに適していない職場は以下の3つです。

  • 迅速な意思決定を強みにしている職場
  • 強烈なビジョンを持つ経営者が率いる職場
  • 大きな方向転換が求められる職場

それぞれ詳しく解説していきます。

①:迅速な意思決定を強みにしている職場

迅速な意思決定を強みにしている場合、ボトムアップは適していないと言えます。

トップダウンであれば、経営者1人が迅速に意思決定を行い、それを部下にメールを送信するだけで会社を回せます。

一方、ボトムアップは、まず現場の意見を抽出し、管理職が精査し、それを経営者が選び取る仕組みなので、1つの意思決定で時間がかかりすぎてしまいます。

現代社会ではとにかくスピードが求められるため、その点で見ると、ボトムアップは現代的ではないのかもしれません。

②:強烈なビジョンを持つ経営者が率いる職場

強烈なビジョンを持つ経営者が率いる場合も、ボトムアップは適しません。

具体例を挙げるなら、イーロン・マスクがトップに立つテスラが挙げられるでしょう。

テスラは、強烈なビジョンを有したイーロン・マスクによるスピーディーな経営で成長した企業だと言えます。

経営陣に優秀かつクリエイティブな人材が集まっている場合、ボトムアップで現場の意見を抽出しなくても、十分にイノベーションを起こせると考えられます。

③:大きな方向転換が求められる職場

大きな方向転換が求められる職場も、ボトムアップは適しません。

大きな方向転換が求められる例として、スタートアップが挙げられます。

スタートアップは、当初抱えていたビジョンを一気に変更する「ピボット」が珍しくなく、この場合、トップダウンによる意思決定が必要不可欠です。

スタートアップやベンチャー企業のように、大きく方向転換する可能性のある企業は、トップダウンを採用した方がいいでしょう。

ボトムアップを成功させる3つのコツ

ボトムアップを成功させるコツは以下の3つです。

  • 効率的な意見抽出システムを構築する
  • 上下関係の雰囲気を薄くする
  • トップダウンとのバランスポイントを探る

それぞれ詳しく解説していきます。

コツ①:効率的な意見抽出システムを構築する

ボトムアップを成功させるためには、効率的な意見抽出システムの構築が必要不可欠です。

ボトムアップのデメリットは、スピードが遅くなることと、マネージャーの負担増の2つに尽きます。

この問題を解決するには、意見抽出のための効率的なシステムを作るしかありません。

この問題は、ただITツールを導入するだけでは解決しないでしょう。

「考え抜かれたアイデアだけを受け取るために、テキストベースだけで意見を抽出する」というように、コミュニケーションのプロトコルを考える必要があります。

コツ②:上下関係の雰囲気を薄くする

ボトムアップを成功させるコツとして、上下関係の雰囲気を薄くすることが挙げられます。

まず前提として、企業経営では責任と権限による上下関係が必要不可欠です。

その上で、上下関係の雰囲気を薄くして、部下からの意見を活発化させます。

ボトムアップを実施するのであれば、経営者や上司に意見しやすい雰囲気が必要です。

コツ③:トップダウンとのバランスポイントを探る

ボトムアップを実施する際は、トップダウンとのバランスポイントを探りましょう。

スピードが求められる現代社会において、完全なボトムアップで経営を進めることは不可能です。

経営者による迅速な意思決定が求められる場面が必ず出てきます。

ボトムアップを実施する際は、トップダウンとのバランスポイントを探る必要があるでしょう。

これが「9:1」なのか「6:4」なのかは企業や組織によって異なるので、試行錯誤しながらボトムアップを取り入れるのが良いかもしれません。

組織のボトムアップの成功事例5選

ボトムアップの成功事例は以下の5つです。

  • DeNA
  • リクルート
  • Google
  • サイボウズ
  • 小林製薬

それぞれ詳しく解説していきます。

事例①:DeNA

日本を代表するメガベンチャー企業であるDeNAは、以前よりボトムアップを採用していました。

DeNAのボトムアップ施策の基本は「社内提案」です。

これまで「社内ラジオ」や、健康にフォーカスした「ウェルメシ」などの社内プロジェクトが進められています。

DeNAのようにクリエイティブなアイデアが求められる企業では、社内提案という形で現場から意見を抽出するのが良さそうです。

事例②:リクルート

ボトムアップを実施している国内企業で、真っ先に挙げられるのがリクルートです。

リクルートは1982年から「Ring」と呼ばれる新規事業制度が設立されており、選び抜かれた新規事業には予算が与えられます。

実際に「Ring」からは『ゼクシィ』『R25』『スタディサプリ』『ホットペッパー』のような有名サービスが誕生しています。

事例③:Google

Googleはボトムアップ施策として「20%ルール」を提示しています。

これは、業務時間のうち20%を従業員のやりたい仕事(研究)に当てられるルールです。

実際にGoogleは、この20%ルールによってGmail、Googleマップ、Googleニュースのようなサービスを開発することに成功しています。

事例④:サイボウズ

グループウェアで知られるサイボウズは、ボトムアップを取り入れることで、離職率を大幅に下げることに成功しました。

2005年頃のサイボウズの離職率は28%まで増加し、さらに業績悪化と、会社は危機的状況を迎えていました。

そこで今いる従業員がより働きやすい環境を整えるために、さまざまな制度をボトムアップを取り入れて整備。

従業員一人一人の声を聞くことで、従業員同士の信頼関係が改善して従業員のエンゲージメントが高まり、離職率は4%まで低下しました。

事例⑤:小林製薬

小林製薬では、部署や役職などに関係なくいつでも誰でもアイデアや改善案を提案できる「全社員アイデア提案制度」を導入しています。

この制度は30年以上継続していて、この制度を利用して年間3万件以上の提案が寄せられています。

提案は必ず検討されたうえで、提案者へフィードバックが行われるのが特徴です。

同社の大ヒット商品「テイラック」もこのアイデア提案制度から生まれました。

まとめ

それでは本記事をまとめていきます。

  • ボトムアップは現場の意見を吸い上げて経営判断に取り入れる手法のこと
  • ボトムアップは従業員の主体性を強化できたりアイデアが出やすかったりなどのメリットがある
  • ボトムアップは意思決定に時間がかかってしまうこと、マネジメントが難しいことデメリット

成功事例を見る限り、ボトムアップは社内で新しいアイデアを形にする際に、最も大きな効果を生み出すと考えられます。

ボトムアップを実施する際は、従業員に裁量を与えて、経営者やマネージャーはプロセスに関与しない方がいいかもしれません。

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